Volume 272,
Issue 12,
2020
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特集 遺伝と精神疾患
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医学のあゆみ 272巻12号, 1177-1177 (2020);
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医学のあゆみ 272巻12号, 1179-1183 (2020);
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ほとんどの精神疾患には確定したバイオマーカーは存在せず,診断は“精神科医の合意”による症状の羅列をもとに決められている.この形で遺伝研究が進められ,サンプル数の増大とともに統計学的には有意とされる多数の遺伝子上の領域が報告されるようになっている.さらに複数の精神疾患,たとえば統合失調症と双極性障害の遺伝情報には重なり合う情報がきわめて多いといった報告もされている.見方によっては,遺伝情報に基づくと,さまざまな精神疾患は“ひとつながり”のようにもうつる.病因論を棚上げにして“精神科医の合意”に基づいた遺伝研究がもたらした地平において,決定的な,あるいは治療に応用が可能な遺伝情報はいまだもたらされてはいない.今後の神経科学研究の進展が待たれるものの,精神科医が捕捉している表現型と遺伝情報の生物学的な距離を考えると,これまでの遺伝研究の方策はもしかすると希望的観測が過ぎていたのかもしれない.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1185-1188 (2020);
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統合失調症のゲノム研究,とくにゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いた研究は,2010 年以降,革命的な結果を創出し続けている.とりわけ,世界中の研究者が参画するPsychiatric Genomics Consortium(PGC)の成果はきわだっており,毎年サンプル数を拡大し続けることで,2019 年時点での有意な疾患感受性領域は267 領域と報告している.また近年では,個々の感受性領域が相加的に寄与することを想定したポリジェニックモデルの考え方,およびその応用方法論は大きく進展し,診断や疾患概念に新たな知見をもたらしつつある.本稿では,現状の統合失調症を対象としたGWAS の結果をまとめるとともに,ポリジェニックモデルから得られた“統合失調症と遺伝的に共通する表現型”を振り返ることで,統合失調症という疾患の立ち位置や臨床的な側面をGWAS の立場から考察する.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1189-1193 (2020);
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双極性障害は重篤な症状が慢性に持続する疾患であるが,病態はいまだに十分に解明されておらず,その解明が待ち望まれている.双極性障害は遺伝率が高いことから,発症には遺伝的要因の占める割合が大きいと考えられている.したがって,遺伝子研究によって疾患感受性遺伝子を同定し,双極性障害の遺伝的構造を明らかにすることは,双極性障害の病態解明の基盤となり,さらには病態に基づく治療薬の開発につながるという大きな意味を持つと考えられる.本稿では,近年の双極性障害の疾患感受性遺伝子同定に大きく寄与している双極性障害のゲノムワイド関連解析(GWAS)の概説と日本におけるGWAS の成果について紹介し,双極性障害遺伝子研究の意義について論じる.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1194-1199 (2020);
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うつ病は生涯有病率が15%程度と高い一方,ほかの精神疾患と比較しても多様性が大きく,環境要因の影響が大きいとされる.また,個々の遺伝子要因の表現型への効果量が低いことが示唆されている.そのため全ゲノム関連解析(GWAS)により,有意な相関を示す多型を特定することは長年困難な状況が続いた.しかし2015 年,中国で反復性の重症うつ病の女性罹患者を対象としたGWAS により,うつ病と統計学的に有意に相関する2 カ所の多型部位が報告された.さらに2016 年以降,大規模なGWAS 研究によりうつ病に関連する表現型と相関する100 を超す多型部位が報告されるに至っている.うつ病の遺伝子要因についても多くの知見が集積され,今後,うつ病の病態の理解が進むものと期待される.一方,日本人特有のうつ病の遺伝子要因研究体制の構築を進めることが課題となると考えられる.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1200-1205 (2020);
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次世代シーケンサーの登場と発展普及に伴って,シーケンスコストは集積回路のムーアの法則を上回る速度で下落し,数十万人に1 人でしか認めないような超レアバリアントや,両親で認めず子どもでのみ認めるde novo 変異をも網羅的に解析することが可能となった.こういった変異を対象とした精神神経疾患の研究も2011 年頃ごろから報告されはじめ,自閉スペクトラム症(ASD)や統合失調症で研究の大規模化が進んだ.その結果,とくにASD では単一遺伝子の変異によってASD の診断がほぼ規定される,“メンデル遺伝型ASD”とよべるような群が少なからず存在することが明らかとなった.また,そういった単一遺伝子の発見は,モデル動物の作製と解析による病態理解と治療法創出へとtranslate されようとしている.さらに,取得されるシーケンスデータ量の爆発的増加は,ゲノム医科学と計算科学,とくに機械学習・人工知能分野との融合を加速させ,学際的研究から興味深い知見が得られている.本稿ではそれらの研究について概観したい.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1206-1211 (2020);
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Precision medicine という概念の根幹を形成する学問でもある薬理遺伝研究は,1980 年代後半にジェノタイピングによりシトクロムP450(CYP)ファミリーの表現型の分類が可能になったことで幕を開け,その後30 年の間に多くの研究成果が報告された.本稿ではそれらを概観すべく,最近の知見を中心に注目すべき研究を紹介したい.CYP に関しては,2C19 と2D6 は多くの薬剤の代謝に関連し,表現型と血中濃度との関連も明らかになっているため,薬剤選択や用量調整においてprecision medicine の実践に有用な分子である.薬剤誘発性の無顆粒球症や薬疹といった比較的重度の副作用のリスクのあるクロザピンやカルバマゼピンに関してはゲノムワイド関連解析(GWAS)にて,日本人患者のリスク遺伝子変異の同定に成功している.一方で,治療効果と関連する遺伝子に関しては,臨床的に十分な効果量を有する遺伝子変異の同定はできておらず,polygenic score 解析やpathway 解析などを駆使し,臨床的解釈に落とし込む努力が継続されている.しかし残念ながら現時点においては,こうした30 年間の努力は薬理遺伝学(PGx)を用いたprecision medicineの実現には至っていない.本稿の最後では,現在のPGx の限界と今後成功させるための展望を述べたい.
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医学のあゆみ 272巻12号, 1212-1215 (2020);
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ゲノムワイド関連解析や高解像度のコピー数多型解析,およびエクソーム・全ゲノム解析などにより,統合失調症や双極性障害といった主要な精神疾患のゲノム要因が急速に明らかにされつつある.ゲノム解析では患者・健常人合計で数万検体を超える解析がなされるようになり,小さなオッズ比を有する多数の遺伝的要因が関与するpolygenic 性が背景にあることが共通認識となりつつある.一方で,精神疾患の遺伝学的解析初期から行われていた候補遺伝子の関連解析については,一部を除きほとんど再現されない結果となり,改めて精神疾患研究の困難さが浮き彫りにされている.本稿では,精神疾患研究のなかでも最も多くの関連研究が行われてきたセロトニントランスポーター遺伝子について,エピゲノム解析であるDNA メチル化解析の観点から紹介し,現状と課題について考察する.
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連載
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 15
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医学のあゆみ 272巻12号, 1223-1229 (2020);
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診療ガイドラインによりエビデンスに基づくプラクティスが提示されるようになったが,その現場への適用が課題となっている.実装科学は,エビデンスの適用法について一般化された知識を得ようとする学問領域である.実装科学に基づくフレームワークのひとつであるKnowledge to Action framework(KTA framework)は,「知識の創出」,「実行サイクル」の2 つのコンポーネントから構成されている.知識の創出は,診療ガイドラインを作成する部分であり,実行サイクルがその適用のプロセスを示すものである.実行サイクルには,エビデンスに基づくプラクティス実施の阻害・促進要因の特定,阻害要因に対処するための実装戦略の選択,プロセス評価としての実装アウトカムの測定が含まれる.わが国においても,実装科学の推進により,実行サイクルを支援するツールが利用可能になれば,診療ガイドラインの現場への適用が進むことが期待される.
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老化研究の進歩 4
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医学のあゆみ 272巻12号, 1230-1235 (2020);
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加齢に伴い内臓脂肪などの白色脂肪組織量が増加することで,肥満や脂質異常症の発症率が増加する.白色脂肪組織は過剰なエネルギーを中性脂肪として貯蔵する臓器であるとともに,アディポカインの分泌を行う内分泌組織として肥満や脂質異常症と密接に関わっている.肥満などにより過剰に中性脂肪が蓄積した白色脂肪組織ではアディポカイン分泌に変化が生じ,インスリン抵抗性や老化関連疾患の発症の一因となっている.また,白色脂肪組織は寿命を制御することが明らかとなってきており,白色脂肪組織の質を高めることで老化関連疾患を予防できる可能性が示唆されている.その参考となりうる介入法がカロリー制限である.カロリー制限により,白色脂肪組織においてミトコンドリア生合成の亢進などにより代謝リモデリングが生じ,白色脂肪組織の質が向上する.高齢化社会が進む現代における健康寿命の延伸に向け,白色脂肪組織での代謝制御がますます重要となっていくであろう.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 272巻12号, 1216-1217 (2020);
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神経内科学
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医学のあゆみ 272巻12号, 1217-1219 (2020);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 272巻12号, 1219-1222 (2020);
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FORUM
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医療社会学の冒険 23
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医学のあゆみ 272巻12号, 1236-1239 (2020);
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医学のあゆみ 272巻12号, 1240-1243 (2020);
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