Volume 273,
Issue 4,
2020
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特集 ヒトの分子進化からみた疾患の理解
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医学のあゆみ 273巻4号, 285-285 (2020);
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医学のあゆみ 273巻4号, 287-292 (2020);
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ヒトの疾患の原因や“なぜヒトは病気になるのか”といった素朴な疑問を,その起源にまでさかのぼって追求する“進化医学”.本稿では,この進化医学の立場から,霊長類の進化と関係した壊血病と痛風,およびヒトの歴史と関係した乳糖不耐症と統合失調症について概説する.これらの疾患の遺伝的な原因は,遺伝子の不活化や遺伝子の発現調節部位などに起きた変化である.しかし,“病気になる”という特定の症状(表現型)の変化には環境との相互作用が重要な役割を果たす.もちろん,どの生物にとっても進化とはゲノムと環境の相互作用の結果に違いないが,ヒトの場合には相互作用する重要な独自の環境要因として文化がある.ヒトの4 つの疾病を通じて,ゲノムと環境の進化的相互作用をみる.
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医学のあゆみ 273巻4号, 293-297 (2020);
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弱有害変異は,集団サイズをN,変異の適応度効果をs としたとき,|Ns| ≦1 の変異と定義される.近年,弱有害変異が進化生物学や医学で注目を集めている.本稿では,弱有害変異の進化を理解するために必要な自然選択と遺伝的浮動についてまず説明した後,分子進化の弱有害変異説について解説する.中立変異とは異なり,弱有害変異の進化は集団サイズに大きく依存する.この特徴を利用して,アミノ酸を変える塩基置換(非同義置換)がもたらす種内多型や種間の違いに,弱有害変異が大きく寄与していることを支持した最近の研究を紹介する.弱有害変異はタンパク質進化のみでなく,ゲノム進化のあらゆる場面で重要な役割を果たしてきた可能性がある.今後,適切な弱有害変異モデルに基づいてその寄与の程度を明らかにするともに,弱有害変異がどのような生物機能と対応し,適応度を変化させているかを明らかにしていく必要がある.
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医学のあゆみ 273巻4号, 298-304 (2020);
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ヒトの疾患に関係する遺伝的変異のなかには,過去に適応的であったものが含まれる.では,そもそもヒトの生存に有利に働いていた遺伝的変異が,なぜ現代においては疾患に関係してしまっているのであろうか.そのひとつの可能性として,祖先から長い時間をかけて脈々と受け継がれてきた,いわば“進化の産物”であるわれわれのゲノムが,世代ごとに大きく変わる現代の環境下では予期せぬ“副産物”を生み出してしまっているのかもしれない.本稿では,進化という視点からヒトの疾患へと切り込む最新の研究事例を紹介する.とくに,われわれの祖先がアフリカから世界各地へと拡散し,狩猟採集から農耕・家畜化へと生活様式を変え,急激に人口を増加してきたなかで,“いつ,どのように自然選択が起こってきたのか”という謎に迫る.そして,ゲノムデータから環境適応の歴史を復元する統計学的手法にも触れることで,集団遺伝学と医学を融合させた実践的な学際研究を広く知ってもらうことをめざす.
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医学のあゆみ 273巻4号, 305-309 (2020);
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ヒト白血球抗原(HLA)は外来あるいは自己由来の抗原に対する免疫応答性を制御し,自己・非自己の識別に重要な分子である.その遺伝子群は最高度の多型性を示し,ユニークな進化を遂げてきた.最近,次世代シークエンサー(NGS)の活用によりHLA 遺伝子全長の解析が可能となったことから,今後はタンパクコード領域のみならず非コード領域の多型と疾患との関わりも明らかになるであろう.近年のGWAS(ゲノム全域関連解析)の発達により,従来から知られていた疾患に加えて多数の疾患がHLA と関連することがわかってきた.これらは移植・輸血,自己免疫疾患,感染症,アレルギー,がんに大別される.今後はHLA-疾患関連の機序を理解することが重要であり,また疾患のリスク予測に基づく新しい予防医学にも貢献することが期待される.
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医学のあゆみ 273巻4号, 311-315 (2020);
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集団における頻度が低い遺伝子バリアントは,レアバリアントとよばれる.ゲノムワイド関連解析(GWAS)により,疾患との関係が大規模に解析されてきたコモンバリアントに比べて,シークエンス解析が必要なレアバリアントは,疾患研究においては十分に研究がなされているとはいえない.しかし,次世代シークエンサーの出現とともに,レアバリアントが持つコモンバリアントにはない利点もあり,疾患研究においても重要な貢献がなされてきている.本稿では,そのうち3 つの主な研究分野について紹介したい.
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医学のあゆみ 273巻4号, 316-320 (2020);
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インフルエンザA 型ウイルス(IAV)やノロウイルス(NoV)に対して有効性の高いワクチンを開発するためには,抗原性の進化予測が有用と考えられる.IAV に対してはワクチンが利用可能であり,すでに適応度モデルを用いた進化予測がワクチン推奨株選定のプロセスに組込まれている.適応度モデルでは,今シーズンに分離された株のそれぞれについて,ヘマグルチニン(HA)のアミノ酸配列をもとに適応度が推定され,次シーズンに最も頻度が高くなる株が予測される.一方,NoV に対してはまだワクチンが利用可能でないが,カプシドタンパク質(VP1)のアミノ酸配列に基づく適応度モデルを用いて,今シーズンから次シーズンにかけての遺伝子型頻度の増減を予測できるようになってきている.ただし,適応度モデルを用いた進化予測では,新たに生じる突然変異体などによる流行は予測されない.また,遺伝的浮動も主要な進化メカニズムであることにも注意する必要がある.
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医学のあゆみ 273巻4号, 321-325 (2020);
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がん化の過程で,正常細胞は変異の蓄積と自然選択によって悪性化した細胞に進化する.近年のゲノム解析により,その過程で分岐して生み出された多数のサブクローンが形成する広範な腫瘍内不均一性の存在が明らかになった.コピー数異常や構造異常を生み出す大規模なゲノム変化が,発がん過程の早期段階に短時間で起こっていることも明らかになっている.このような多様ながんの進化を理解するには,ゲノム解析とともに数理モデルを利用することが有用である.また,がんの進化の理解は治療抵抗性の克服に直結するが,投薬スケジュールを調整することによって,治療感受性クローンと治療抵抗性クローンをうまく競合させることで,腫瘍の成長を遅らせられることが数理的に示され,実験的な検証も進んでいる.本稿では,がんの進化の理解および治療抵抗性克服を目的とした研究の昨今の流れを,数理モデルを用いたものを中心に概観する.
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連載
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老化研究の進歩 8
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医学のあゆみ 273巻4号, 332-337 (2020);
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哺乳動物の体細胞の分裂回数には限りがあり,ある程度の分裂を繰り返した後に不可逆的な増殖停止状態に陥る.“細胞老化”とよばれるこの現象は,細胞の異常な増殖を防ぐ重要ながん抑制機構として機能している.一方で,細胞老化と個体老化との直接的な因果関係については,長い間議論が続けられてきた.そのなかで,老化した細胞が起こす細胞老化随伴分泌現象(SASP)が発見され,老化研究における細胞老化の重要性が改めて認識された.さらに近年,生体から任意に老化した細胞を除去することのできる遺伝子改変マウスを用いた解析から,個体における細胞老化の生理的な役割や組織の加齢性変化との因果関係が明らかになりつつある.本稿では,細胞老化やSASP の分子メカニズムを概説するとともに,老化細胞を標的とした創薬の現状や可能性を紹介する.
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TOPICS
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 273巻4号, 327-328 (2020);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 273巻4号, 328-329 (2020);
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免疫学
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医学のあゆみ 273巻4号, 330-331 (2020);
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FORUM
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対話―ダイアローグのはじめかた 8(最終回)
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医学のあゆみ 273巻4号, 338-342 (2020);
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映画や演劇にも対話は多く登場する.日常における二者のコミュニケーションは何気ない会話であるのに比べて,医師と患者の対話は,治療する側の医療者と,病いを抱え治療される側の患者との間の,緊張感に満ちた対話(ダイアローグ)となることが多い.それでは,映画に登場する医師と患者の対話の場面を見てみよう.
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医学のあゆみ 273巻4号, 343-345 (2020);
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医学のあゆみ 273巻4号, 346-351 (2020);
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