Volume 273,
Issue 8,
2020
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連載
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老化研究の進歩 11
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Source:
医学のあゆみ 273巻8号, 663-669 (2020);
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ハダカデバネズミ(デバ)は,マウスと同程度の大きさながら最大寿命30 年以上というきわめて長寿な齧歯類である.しかもその生存期間の8 割もの間,老化の兆候を示さず,加齢に伴う死亡率の上昇も認められない.さらに,これまで自発的な腫瘍形成はほとんど確認されていない.つまりデバは老化およびがんなどの老化関連疾患に対して顕著な抵抗性を示す哺乳類であり,このことから“老化・がん化抑制法”の開発のための新たなモデル動物として注目を集めている.デバは当初,哺乳類ではきわめて珍しい真社会性動物として研究室で飼育されるようになったが,その過程で顕著な老化・がん化耐性を持つことが見出された.現在までにin vitro を主としたさまざまな研究が行われ,他の動物種にはみられない特徴が明らかになってきた.しかしデバが今後,老化や老化関連疾患研究のモデル動物として広く受け入れられるには発生工学的手法・遺伝子改変法の開発を行い,デバ個体を直接解析する実験系の確立が重要であると考えている.
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再生医療はどこまで進んだか 3
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医学のあゆみ 273巻8号, 670-675 (2020);
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これまで,脊髄損傷は再生が不可能と考えられてきたが,基礎研究の進歩によりその定説は覆されようとしている.われわれはiPS 細胞由来の神経幹/前駆細胞を損傷脊髄に移植し,その結果,移植した細胞が失われた神経回路を再構築し,脱髄した軸索を髄鞘化し,さらに神経栄養因子を分泌することによって,運動機能の改善をもたらすことを報告した.一方で特定のiPS 細胞株では移植後の腫瘍化などの危険性があることも判明し,われわれは安全性への対策も行ってきた.脊髄損傷患者への臨床研究が,2019 年2 月に厚生労働省の厚生科学審議会より正式に認可され,いよいよ始まろうとしている.損傷脊髄の再生医療実現に向けて引き続き有効性と安全性の両面について検討を行っていく.
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TOPICS
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免疫学
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Source:
医学のあゆみ 273巻8号, 657-658 (2020);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 273巻8号, 658-659 (2020);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 273巻8号, 660-661 (2020);
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FORUM
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日本型セルフケアへのあゆみ 5
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Source:
医学のあゆみ 273巻8号, 676-679 (2020);
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● 感染性が強く,急速に重症化する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックが起こっている.診断にあたっては,検体を採取し標的DNA を増幅させて検査するPCR 法が主流である.この検査法は,ウイルス抗原を的確に採取できるかが,検出率に影響する.インフルエンザと同様,鼻咽頭の粘膜を綿棒でぬぐいとるのが推奨されているが,刺激された患者が咳き込んだりして採取する人が感染するリスクもある.● 2020 年4 月17 日現在,アメリカではすでに300 万人超がPCR 検査を受けているが,さらなる検査数の増加をめざしている.そこでワシントン大学の研究者は500 人を対象に検査を行い,鼻腔周辺をぬぐう採取方法でもPCR 法なら陽性率が変わらないことを報告した.それを受けて米国CDC は「医療従事者による採取が期待できないときには,自己または介護者による採取でPCR 検査用のサンプルとしてよい」と方針を変えた.自己採取は検査拡充の鍵となるだろうか.
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特別寄稿
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医学のあゆみ 273巻8号, 680-690 (2020);
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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は世界を席巻しパンデミックに至った.SARS-CoV-2 はコウモリを宿主としていたが,遺伝子変異を繰り返すうちにSARS-CoV と同様にヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2 に結合するものが生じ,細胞内に感染を起こしヒト感染症(COVID-19)として成立するようになった.これに対して生体は自然免疫系の反応を起動させ,IL-6,IL-1β,IL-8,TNF-αなどの炎症性サイトカインやG-CSF,IP10,MCP1 などのケモカインを産生・放出し,炎症状態を形成する.しかし,COVID-19 では過剰炎症によりサイトカイン放出症候群(cytokine releasing syndrome:CRS)を生じ,過度の炎症病態,過大な酸化の進展,免疫系の破綻などにより多臓器不全に至ることが明らかになった.過剰な炎症状態は持続的ストレスによるミトコンドリア機能不全を招来し,ミトコンドリアDNA を含むミトコンドリア破砕産物や損傷した細胞はDAMPs(damage-associated molecularpattern) として過剰炎症の慢性化に関わり,呼吸器感染はARDS,血管内皮細胞障害と凝固線溶系の破綻からDIC に至り,中枢神経障害,腎不全,肝不全と多臓器不全に至ることになる.治療にはSARS-CoV-2 の抑制にファビピラビル,ACE2 の機能阻害にナファモスタットなどが考えられているが,CRS という病態認識の下に,抗IL-6 受容体拮抗薬(トシリズマブ)などの抗リウマチ薬やミトコンドリア機能改善のためにメラトニンが奏効する可能性がある.本稿ではこれらについて,中国からの報告などを交えて検討する.
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Source:
医学のあゆみ 273巻8号, 691-692 (2020);
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Source:
医学のあゆみ 273巻8号, 693-695 (2020);
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