Volume 274,
Issue 2,
2020
-
特集 熱中症に立ち向かう─予防と応急処置
-
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 173-174 (2020);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 175-179 (2020);
View Description
Hide Description
熱中症とは“暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称”とされる.生体は,暑熱環境下では発汗や体表の毛細血管の拡張・冷却などで体温上昇を防いでいる.その暑熱環境や激しい運動により大量の発汗を伴い,水分や塩分が不足すると,脳血流も低下することでめまい,立ちくらみなどの症状が最初に出現する.本体は脱水であることは間違いなく,適切な水分補給は必須になる.また,発症の形態として累積効果と暑熱順化が知られ,暑熱とのタイムラグ,および暑熱への慣れは重要である.非労作性(古典的)熱中症では熱中症が本態であるのか,内因性疾患が先に生じて,その後の長時間の暑熱への曝露に伴う結果なのかに苦慮する場合も非常に多い.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 180-185 (2020);
View Description
Hide Description
日本の夏の暑熱環境は悪化しており,2010 年,2018 年の猛暑では,熱中症搬送者数が以前よりも高いレベルに増加した.東京の真夏の暑熱環境は厳しく,屋外活動は日中を避け,朝晩の涼しい時間に移すこと,高齢者の居室では涼しい時間に積極的に換気し,厳しい暑熱環境の下では積極的にエアコンを利用することが必要である.また,イベントなどでの暑熱環境を緩和するには,直射日光を遮る,人混みを作らない,風通しをよくすることが求められる.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 186-190 (2020);
View Description
Hide Description
熱中症は,高温多湿環境下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど電解質)のバランスが崩れ,そして体内の温度調整を行う機能が破綻し発症する障害である.熱中症を引き起こす条件は,“環境”と“身体”と“行動”によるものが考えられる.“環境”の要因は気温が高い,湿度が高い,風が弱いなどがあり,“身体”と“行動”の要因は激しい労働や運動によって体内に著しい熱がこもったり,暑い環境に体が十分に対応できないことなどがある.その結果,熱中症を引き起こす可能性がある.熱中症の予防は上記の状況にならないようにすることが大切で,熱中症は湿度やスポーツなどによる体調変化,水分補給の状態,健康状態などによりかならずしも気温が高い状態ではなくても発症することがあるので,注意が必要である.熱中症を予防するため日常生活での注意事項を列挙する.①適切にエアコンディショナーを使用し測定室内温度28 度以下にする,②涼しい服装にする,③こまめに水分補給を行う,④急に暑くなる日に注意する,⑤暑さに慣れるため,暑熱順化を行う.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 191-195 (2020);
View Description
Hide Description
熱中症は高体温で多臓器不全を呈する重症と,多様な臨床症状を呈する非重症に分類される.初期段階では特定の臨床症状を呈さないので,何かしらの体調不良を認めた場合は熱中症の可能性があると考えて迅速に対応するべきである.通常は涼しい場所での休憩と水分摂取で十分なことが多い.体調不良が改善しない症例が病院を受診することになるが,非重症例は点滴による水分補給,重症例では全身の冷却やバイタルサインの安定化をめざした集中治療管理の導入が必要になることもある.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 196-200 (2020);
View Description
Hide Description
職場における熱中症による死傷者数は,2011 年以降,年間400~500 人で推移していたが,2018 年は1,100 人を超え,2019 年も790 人に上った.2019 年の熱中症による死傷災害の26%は屋内作業で発生しており,かならずしも屋外の作業でのみ発生しやすいわけではないことに注意する必要がある.職場における熱中症の発生リスクについては,環境,作業,労働者の3 つに分けて考えることができる.労働者の熱中症を予防するためには,まず暑さ指数(WBGT)値を正確に測定し,労働環境における熱中症発生のリスクを評価する必要がある.また,予防対策として実施する作業環境および作業の管理,労働者の健康管理,労働衛生教育では,それぞれの業種やその職場の特徴に応じた,実効性のある対策を講じる必要がある.さらに熱中症を早期に発見し,適切に対応できるように管理者,労働者自身の理解を深めることも重要である.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 201-204 (2020);
View Description
Hide Description
発生原因が外部からの熱のみによる,いわゆる古典的熱中症(非労作性熱中症)は,基礎疾患のある高齢者が屋内において発症することが多い.また,日常生活下において徐々に進行するという特徴を持つため,主に若年層から中年層が,炎天下の屋外でのスポーツ時に短時間に急激に生じる労作性熱中症と異なり,気づきにくく重症化しやすい.高齢化が進み,住み慣れた地域で人生の最期まで暮らし続ける社会をめざすうえで,高齢者の熱中症対策が重要なことはいうまでもなく,それには地域における多職種によるケアが有効といえる.ここではとくに高齢者において熱中症が生じやすい状況や対策の方法,各地の取り組みについて解説する.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 205-209 (2020);
View Description
Hide Description
重症(Ⅲ度)熱中症は高体温による脱水,電解質異常のみならず,播種性血管内凝固症(DIC)や感染症,多臓器不全,高次(脳)機能障害や小脳失調などの中枢神経後遺症も惹起しうる.これらの併発症や後遺症は患者転帰を大きく左右する要因であり,患者を暑熱環境から救出し,より早い冷却を行うことが肝要である.従来普及している冷却方法には冷却輸液,蒸散法(体表を濡らしたガーゼなどで覆い,送風にて気化熱を奪う)や患者を身体ごと冷水に浸透させる方法(冷水浸漬:れいすいしんし)がある.また近年では,ジェルパッド灌流冷却法や血管内冷却法など,新規の冷却手法も普及しつつあり,これらの基礎的知識についても習熟しておく必要がある.本稿ではまず,熱中症の集中治療に必要な基礎的事項に触れ,さらに臨床的に重要と思われるクリニカルクエスチョンとそれに対する最新の知見を提示したい.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 210-213 (2020);
View Description
Hide Description
今夏の一大イベントである“2020 年東京オリンピック・パラリンピック”は,1 年延期になった.延期の決定が下るまで,安全な大会運営のために選手だけでなく,観客,そしてボランティアを含む大会運営スタッフの暑さ対策は,CBRNE 災害への備え(本誌2019 年6 月15 日号参照)以上に重大な問題であり,競歩とマラソンの札幌移転,路面の輻射熱対策,ラストマイルの暑さ対策,水分の持ち込みに関する取り決め(オフィシャルスポンサーの飲料メーカーにも配慮する),スタッフ・ボランティアへの熱中症教育と応急処置の訓練など,東京都や大会組織委員会,医師会,救急・災害医療体制検討合同委員会(コンソーシアム)を中心に,次々と暑さ対策を打ち出し,マスコミもその費用対効果などについて取材を行うなど,各方面での準備が進められてきた.残念ながら,新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こってしまったが,ちょうど1年後の開催ということは,同じ真夏の開催に変わりなく,暑さのリスクが好転するわけではない.大規模イベントにおける熱中症対策は,予防のための効果的な事前の備え,そして,熱中症そのものを理解し,予防法と発症時の対処の仕方を身に付けるという基本的事項の習得1)を,参加するすべての人々が心がけることが安全な開催へのポイントとなる.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 214-218 (2020);
View Description
Hide Description
地球温暖化や異常気象などの影響により,夏季におけるスポーツ環境が悪化している.また近年は,競技レベルを問わず多くの競技会が暑熱環境下において頻繁に行われている.このような環境下のスポーツ活動では熱中症発生の危険性が高いため,これまでは“暑熱環境下では運動を控える”という考え方が一般的であった.しかし近年は,暑熱順化や水分摂取,身体冷却などの暑熱対策を積極的に取り入れ,熱中症のリスクを避けながら安全かつ従来通りのパフォーマンスを発揮することが注目されている.本稿では,暑熱環境および過度な体温上昇に伴う身体の変化,スポーツ現場においてニーズが高まっている身体冷却に関するエビデンス,競技現場への応用に関する知見を紹介する.スポーツ現場における暑熱対策の重要性,さらには熱中症予防に関する認識を一層深めていただきたい.
-
連載
-
-
老化研究の進歩 15
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 225-230 (2020);
View Description
Hide Description
厚生労働省は,高齢者が要介護になる前の段階で把握して健康寿命を延ばし介護予防を目的とするフレイル検診を,令和2(2020)年から75 歳以上の人を対象に実施することを発表した.フレイルの考え方,定義および診断法については関連する専門家の間でもいまだいろいろと議論が行われているなかではあるが,超高齢社会を迎えたわが国においては介護予防に有効な対策を早急に立てる必要があるため,フレイル対策に向けて一歩前進した.現在使われているフレイルの診断基準はいわゆる身体的フレイルといわれるものであるが,認知機能の低下,うつ状態なども,認知的フレイルおよび精神・心理的フレイルとして身体的フレイルと同様に要支援・要介護の直接原因となり,疫学研究から因果関係があることが示されている.フレイル検診はまず問診で行われるが,科学的根拠に基づくサルコペニア・フレイルに対して有効なバイオマーカーおよび介入方法の開発研究が強く求められている.その目標を達成するためには,なぜ運動習慣と食事・栄養管理が健康長寿に対して有効であるのか,基礎研究で明らかにすることが必要である.
-
再生医療はどこまで進んだか 7
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 231-234 (2020);
View Description
Hide Description
2007 年11 月,山中伸弥教授らがヒトiPS 細胞の樹立に成功したニュースは世界中を駆けめぐり,再生医療実現化に対する期待はおおいに高まっている.実際に,ヒトiPS 細胞の樹立が報道され,山中教授らが報告した雑誌『Cell』のオンラインサイトで閲覧できる,iPS 細胞から作製された心筋細胞が拍動している動画を見たときの衝撃は記憶に新しい.さらに山中教授は2012 年10 月にノーベル生理学・医学賞を受賞された.この快挙は,これまでの生命科学のメカニズムを解き明かすたいへん大きな発見であるとともに,これまで治療法がなかった難病の患者にも光が届く可能性がおおいに期待され,発見から8 年でのノーベル賞受賞となった.さらに,2014 年には神戸理研の高橋政代プロジェクトリーダーは,世界初のiPS 細胞を用いた網膜再生の臨床試験に成功した.このような背景のもとに著者らも,重症心不全に対するiPS 細胞による再生医療を2008 年から開始し,ついに2020 年には臨床応用を開始した.このように実現したiPS 細胞の治療応用が今後ますます期待される.
-
TOPICS
-
-
循環器内科学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 219-220 (2020);
View Description
Hide Description
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 221-222 (2020);
View Description
Hide Description
-
生化学・分子生物学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 223-224 (2020);
View Description
Hide Description
-
速報
-
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 235-236 (2020);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
パリから見えるこの世界 93
-
Source:
医学のあゆみ 274巻2号, 237-240 (2020);
View Description
Hide Description