Volume 276,
Issue 12,
2021
-
特集 ケトン体による生体制御
-
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1097-1097 (2021);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1098-1103 (2021);
View Description
Hide Description
肥満症や2 型糖尿病などの代謝性疾患に対する予防・改善効果の観点から,ケトン食(低炭水化物高脂肪食)や断続的断食に代表される擬似絶食療法が再評価されており,ケトン体を介した生理機能調節を背景として臨床応用が期待されている.ところが,生体に及ぼす影響についての多くが事象論にとどまっており,ケトジェニック環境下におけるケトン体の認識機構と,それに続く機能発現を含めた代謝機能制御に関する詳細な分子作用機序は明らかにされていない.近年,ケトン体をリガンドとする細胞膜上受容体としてGPR41,GPR43,GPR109A が同定され,ケトン体が単なるグルコースの代替エネルギー源として働くだけでなく,シグナル分子として作用することで生体機能制御に関与する可能性が明らかになってきた.ケトン体とその受容体を介した分子栄養メカニズムの解明は,ケトン食を利用した食事介入や栄養管理を通じた先制医療や予防医学,さらにはケトン体受容体を標的とした代謝性疾患治療薬の開発につながる可能性が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1104-1109 (2021);
View Description
Hide Description
近年,代謝物質によるエピゲノム修飾を介した概日時計の制御機構が明らかにされつつあるが,栄養素や代謝物質がさまざまな末梢組織の概日リズムを調節するメカニズムについてはまだ多くが解明されていない.筆者らは,ケトン食が肝臓と腸管の概日リズムに組織特異的な影響を及ぼすことを明らかにした.ケトン食によって腸管の脂質代謝系遺伝子の日内リズム形成が時計遺伝子非依存的に誘導される一方,肝臓での時計タンパク質の標的プロモーターへのリクルートメントが増強し,下流の時計制御遺伝子の発現量が増加した.本研究によって,ケトン食やケトン体が組織特異的なエピゲノム制御を介して末梢組織での概日リズムを再編し,時空間に適応した生理的作用を及ぼすことが明らかになった.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1110-1113 (2021);
View Description
Hide Description
3-ヒドロキシ酪酸やアセト酢酸などのケトン体は飢餓状態で肝臓から生成され,さまざまな臓器・細胞で代謝される.これらケトン体は細胞内で細胞呼吸の基質として代謝されるが,この反応過程でコハク酸(succinate)が生成される.コハク酸はTCA 回路の中間代謝産物としてミトコンドリアで代謝されるだけでなく,signaling metabolite としていくつかの細胞内シグナルに関わっていることがわかってきた.このなかには低酸素応答をつかさどる転写因子である hypoxia inducible facto(r HIF)-1αシグナルも含まれており,ケトン体代謝が細胞の低酸素応答を調節する可能性が指摘されている.本稿では,HIF-1α活性調節における代謝シグナルの役割を紹介し,細胞の低酸素応答機構におけるケトン体代謝の意義について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1114-1118 (2021);
View Description
Hide Description
近年,ケトン体3-ヒドロキシ酪酸はグルコース欠乏状態における代替エネルギーとしての役割のみならず,グルコース充足状態ではシグナル因子として,β-hydroxybutyrylation やヒストン脱アセチル化阻害などによりエピジェネティックなヒストン修飾を誘導したり,G タンパク質共役受容体(GPR)のリガンドとして結合したりして,さまざまな作用を発揮することが明らかになってきた.肥満・糖尿病マウスおよび培養成熟白色脂肪細胞を用いた筆者らの検討では,3-ヒドロキシ酪酸は白色脂肪細胞においてβ-hydroxybutyrylationによるヒストン修飾を介してアディポネクチン遺伝子発現を増加させることが示唆された.また,従来は肝臓でのみ発現していると考えられてきたケトン体合成酵素Hmgcs2 が,肝臓以外のさまざまな細胞で発現しており,それぞれの細胞で起こるケトン体生合成がそれらの細胞自体の分化に影響している可能性も想定される.Hmgcs2 を白色脂肪細胞特異的に制御することで,アディポネクチン遺伝子発現を増強する新たな治療法の開発につながることが期待され,さらなる知見の集積が待たれる.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1119-1122 (2021);
View Description
Hide Description
主に1 型糖尿病の発症期に生じるケトアシドーシスは糖尿病における重篤な急性合併症のひとつである.よって,100 年前の1921 年にインスリンが発見され,その後の医療の進歩によりケトアシドーシスの治療が可能となった今でも,ケトン体には非常に強い“負のイメージ”が根付いている.しかし元来,飢餓に曝され進化してきた生物にとって,ケトン体が飢餓時のエネルギー源として重要な役割を果たしてきたことを考慮すると,ケトン体そのものが本当に生体にとって毒性を示すのかとの疑問が浮かぶ.さらに近年,ケトン体研究が進むにつれ,ケトン体の持つ生体に対する有益性が明らかとされ,ケトン体にも“正のイメージ”が少しずつ芽生えはじめている.本稿では,筆者らの研究成果である糖尿病性腎臓病におけるケトン体の腎保護効果をはじめ,既報のケトン体と腎障害に関する報告について概説させていただく.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1123-1127 (2021);
View Description
Hide Description
心臓は絶え間なく動くことを特徴する臓器であり,安静時においてもエネルギー需要が多く,かつ高い予備能を必要とする.ケトン体は糖,脂肪酸に続く第3 のエネルギー源として知られ,とくに近年,エネルギー基質としての有用性が期待されるようになった.しかし,心臓におけるケトン体利用の実態については未解明な点が多い.本稿では,前半部分で心臓におけるエネルギー利用の特徴を示したうえで,ヒトの心臓におけるエネルギー代謝測定法を紹介する.また,心臓におけるケトン体の利用について生理的・病的状態における特徴を概説する.また,ケトン体はエネルギー基質以外の,多面的作用があることも注目されている.後半ではそのような特徴のうち,ミトコンドリア保護作用やエピゲノム修飾因子といった,ケトン体が持つ新たな作用についてもケトン体合成不全モデルなどの基礎的知見を交えて紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1128-1133 (2021);
View Description
Hide Description
2015 年に発表された大規模臨床試験を皮切りに,ナトリウム/グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬は糖尿病患者の心血管イベントを著明に低下させることが報告された.糖尿病を有さない心不全患者においても同様の結果が得られ,その作用メカニズムのひとつとして,SGLT2 阻害薬による血中ケトン体濃度上昇との関連が示唆されている.健常な心筋細胞はATP 産生のために主に脂肪酸や糖を利用しているが,病的心筋では代謝リモデリングをきたし,ケトン体利用が亢進していることが明らかとなった.また,ケトン体のひとつである3-ヒドロキシ酪酸はシグナル分子としてレセプターを介した交感神経活性の抑制や抗動脈硬化作用,エピジェネテッィクな遺伝子発現制御による抗酸化作用などを発揮することも報告されている.本稿では,ケトン体の持つ多彩な分子機序による心保護作用について,今後の心不全治療への応用の可能性も含め,最新の知見を概説する.
-
連載
-
-
臨床医が知っておくべき最新の基礎免疫学 23(最終回)
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1139-1144 (2021);
View Description
Hide Description
免疫は感染症のみならず自己免疫性疾患,アレルギー,がんなど多くの疾患に関与しており,各疾患における病的な免疫現象の解明は疾患の予防や治療に貢献する.免疫現象の詳細な総合的理解に動物モデルを用いた解析が非常に重要である一方,その知見のヒト臨床へのtranslation の限界も見え始めている.これは,ヒトとマウスで免疫系においてさまざまなレベルで差異が存在することに由来する.したがって,ヒトにおける免疫機構の解明,さらにヒト疾患における免疫機構の関与の詳細な理解のために,ヒト由来検体を用いたヒト免疫研究が重要となる.近年,ヒト免疫研究における技術面,さらにオミックスデータの統合的な解析を可能にするソフト面の著しい進歩により,限られた検体から膨大なデータの取得・解析が可能になってきた.本稿では,ヒトとマウスの免疫系での違いを概説した後に,筆者らの研究室で明らかにしたヒトとマウスでの免疫制御機構の違いを例にヒト免疫学の重要性を紹介,さらに最新のヒト免疫研究アプローチについて概説したい.
-
この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症 (新連載)
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1145-1145 (2021);
View Description
Hide Description
-
この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症 1
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1146-1151 (2021);
View Description
Hide Description
マラリアは,アフリカなど熱帯地域,亜熱帯地域にみられる熱帯感染症であり,その中のひとつである熱帯熱マラリアは,速やかに診断,治療を行わななければ,短期間に重症化する.とくに,初期症状は発熱など非特異的な症状であるため,土着していない国内での診療においては,渡航歴を聴取して鑑別疾患とあげた場合には,速やかにギムザ染色した血液塗抹標本による検査を行い,診断をするとともに,臨床症状や他の検査所見から重症度を評価してアルテメテル・ルメファントリン配合剤などの抗マラリア薬による適切な治療と必要に応じて支持療法を行う必要がある.また,流行地域に行く人には,事前にマラリアへの防蚊対策や予防内服といった予防方法の情報提供を行うことが望ましい.
-
TOPICS
-
-
臨床検査医学
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1134-1135 (2021);
View Description
Hide Description
-
神経精神医学
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1135-1136 (2021);
View Description
Hide Description
-
小児科学
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1137-1138 (2021);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
病院建築への誘い ─ 医療者と病院建築のかかわりを考える
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1153-1157 (2021);
View Description
Hide Description
◎本シリーズでは,医療者であり,建築学を経て病院建築のしくみつくりを研究する著者が,病院建築に携わる建築家へのインタビューを通じて,医療者と病院建築のかかわりについて考察していきます.
-
天才の精神分析 ─ 病跡学(パトグラフィ)への誘い 16
-
Source:
医学のあゆみ 276巻12号, 1158-1160 (2021);
View Description
Hide Description