Volume 278,
Issue 4,
2021
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特集 脳卒中・循環器病対策基本法─今後の展開
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医学のあゆみ 278巻4号, 255-255 (2021);
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医学のあゆみ 278巻4号, 256-260 (2021);
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2018 年12 月の臨時国会で,いわゆる「脳卒中・循環器病対策基本法(以下,脳循法)」が成立,公布され,2019 年12 月に施行された.国の循環器病対策推進協議会での議論を経て,2020 年10 月に国の「循環器病対策推進基本計画」が閣議決定された.2021 年度中には,各都道府県で地域の実情に応じた具体的な「循環器病対策推進計画」が策定,実行されはじめる予定である.脳循法により,脳卒中・循環器病に関する全国レベルでの予防の推進,発症時から在宅までの継ぎ目のない保健・医療・福祉サービス体制の確保,患者・家族の生活の質の改善などが期待される.本稿では,主に脳卒中の立場から脳循法成立までの経緯,および脳循法の基本理念や目的について解説する.
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医学のあゆみ 278巻4号, 261-264 (2021);
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わが国では超高齢化に伴って脳卒中,心血管病などの循環器疾患が増加している.従来の診療体系では対応できない面が大きく,その対策は急務である.脳卒中・循環器病対策基本法(以下,基本法)に基づいて,2020 年10 月に循環器病対策推進基本計画が制定された.基本法は3 つの理念として,①循環器病の予防・啓発,②診療提供体制の整備,③研究の推進,を目指している.予防と早期発見のためには学校教育や市民教育を通じた啓発活動や適切な検診システムの普及が必要である.また救急診療体制の改革,急性期病院,回復期・慢性期病院,かかりつけ医,介護・福祉と一体となった医療連携が求められる.とくに高齢心不全患者のADL 改善,再入院予防のためのリハビリテーションや地域でのケア体制の普及は急務である.一方,疫学的情報収集のための登録事業,病態解明や原因治療の開発が遅れている循環器病の克服を目指して研究体制の充実が必要である.
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医学のあゆみ 278巻4号, 265-270 (2021);
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脳卒中と心臓病は共通の危険因子が多く,この2 つの領域が共同して予防啓発を行えば相乗効果が期待され,国民の行動変容を大きく促すことになると考えられる.脳卒中と心臓病では“専門性”と“時間との戦い”の2 つが両立しなければ対応できないことは共通しているが,診療提供体制は疾患特異性があり,それぞれの対応が必要である.脳卒中はリハビリテーションの観点からは急性期,回復期,維持期(生活期・慢性期)と病期が分けられ,2000 年に回復期リハビリテーション病棟と介護保険が開始され,医療・介護の提供体制の枠組みは明確となっている.遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)静注療法や機械的血栓回収療法(MT)などの治療の登場により,これらの治療法が提供できる脳卒中センターの認定が世界的に行われており,急性期病院間の連携も必要となってきている.わが国でも2019 年より脳卒中センターの認定が日本脳卒中学会により開始され,急性期診療提供体制の再構築がはじまっている.
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医学のあゆみ 278巻4号, 271-276 (2021);
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わが国は世界有数の長寿国であるが,自立して生活できる健康寿命との間には隔たりがあり,いかにして健康寿命を延伸するかが喫緊の課題となっている.脳卒中や心臓病などの循環器病は,その多くが高齢者に発症するために,健康寿命の延伸のためには循環器病への対策はきわめて重要である.そのような背景のもと,2019 年12 月に「健康寿命の延伸等をはかるための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法.以下,基本法)が施行された.そして基本法で取り組むべき具体的な施策は循環器病対策推進基本計画として策定され,2020 年10 月に閣議決定された.基本法が施行されたことにより,今後,循環器病に対する対策が大きく進歩すると期待される.本稿では,循環器病対策推進基本計画の概要と,今後取り組むべき施策についてとくに予防と診療提供体制を中心に概説したい.
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医学のあゆみ 278巻4号, 277-281 (2021);
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脳卒中循環器病対策基本法の制定と第二次五ヵ年計画が出揃い,行政とアカデミアが協働して研究推進に取り組む体制が確立された.脳卒中領域では,一次脳卒中センターの整備によって疾患データベース登録研究が推進された.基礎研究ではRNF213 関連疾患の成果が著しく,橋渡し研究・臨床研究では細胞治療の一部が臨床応用間近という状況にある.また,ロボティクスやbrain machine interface(BMI)を用いた神経機能再建治療は日本の得意とする分野である.創薬・デバイス開発のシーズは多いが,産官学が連携したオールジャパン体制での推進が求められる.すでに構築された「次世代のための脳卒中臨床試験基盤整備ネットワーク(NeCST)」も活用し,多施設が連携してわが国発の研究成果をあげることが期待されている.
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医学のあゆみ 278巻4号, 282-285 (2021);
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循環器病の発症や重症化には多くの遺伝要因と環境要因が関わっているため,その病態は非常に複雑であり十分な理解がされていない.そのため,治療の多くは対症療法にとどまっており,“治す”ことができていない.今後,対症療法ではなく病態に基づいた治療法を確立していくためには,ゲノムなどのオミックス研究や疾患モデル研究などの基礎研究によって病態を解明したうえで,病態発症の分子機序を標的とした新規治療法を開発することが重要である.ゲノムなどのオミックス解析技術の進歩により循環器病の病態解析が可能となり,さらにAI の活用により膨大な基礎研究結果と臨床情報との統合も可能となったため,“超複雑系”である循環器病の病態解明が急速に進んでいる.したがって,がんのように国をあげて研究を推進することによって,わが国の循環器研究はふたたび世界をリードし,国民の福祉にも大きく貢献することが期待される.
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医学のあゆみ 278巻4号, 286-294 (2021);
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2021 年度,都道府県が循環器病対策推進計画の策定を進めている.質の高い計画となり,かつ実行されて成果を出せるか.それが多くの“救えるはずの命”を救えるかどうかの岐路となる.PDCA サイクルに“適切な評価”をビルトインしておく必要がある.適切な評価の要点は,①“プログラム評価(総合評価)”の考えに基づく,②“セオリー(整合性)評価”の方法で,“ロジックモデル(目的と施策の体系図)”を使って計画を策定する,③データを活用し,施策が目的に効果を与えたかをみる“インパクト評価(効果評価)”を行う,である.47 都道府県がこのように計画を策定・実行することで,地域の患者アウトカム向上と,結果としての地域差の“均てん化”が格段に進むことが期待できる.本稿では,あるべき循環器病対策推進計画のあり方と現実的で有効な作成法を,国際標準となるプログラム評価の理論と国内の好事例を踏まえながら,明らかにしたい.
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連載
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この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症 14
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医学のあゆみ 278巻4号, 300-306 (2021);
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フィラリア類を例外として,蠕虫の大部分は腸管寄生虫である.つまり成虫はおおむね小腸や大腸に寄生している.ところが幼虫の段階では逆に腸管外に脱出するものがほとんどで,肝臓,肺,中枢神経など種々の臓器から寄生虫は見つかる.そして特定の種類の寄生虫の幼虫はなぜか皮膚を好む.寄生虫が皮下結合織を進んでいくと移動性皮下腫瘤となり,真皮や表皮など比較的浅いところを進むと爬行疹として認識される.顎口虫は典型的な皮膚爬行疹を形成する寄生虫で,ミミズ腫れ状の皮疹が出現する.ただし皮疹の性状だけで虫種を言い当てることは不可能で,確定診断には生検による虫体の証明が必要である.生検組織内に虫体がみられないときは,詳細な食歴,旅行歴を聴取して抗体検査を実施し,原因寄生虫を推定する.内科的な治療は,線虫類であればアルベンダゾール,吸虫または条虫であればプラジカンテルが基本.ただし,マンソン孤虫に対しては有効な薬剤はない.
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いま知っておきたい最新の臨床検査 ─ 身近な疾患を先端技術で診断 13
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医学のあゆみ 278巻4号, 307-315 (2021);
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◎新型コロナウイルス症(COVID-19)の診断のためのCOVID-19 病原体(SARS-CoV-2)検査体制が整ってきた.徐々にCOVID-19 の病態や検査性能の理解が進み,さまざまな検査法が開発され保険適用となっている.SARS-CoV-2 検査のための検体としては,鼻咽頭ぬぐい液,鼻腔ぬぐい液,唾液が主に用いられ,検査法には核酸検出検査と抗原検出検査がある.鼻咽頭ぬぐい液を用いたリアルタイムPCR 検査が最も標準的で信頼性が高いとされ,抗原定性検査では唾液は使用できない.SARS-CoV-2 検出の感度は,おおまかに言ってRNA 精製による核酸検出検査が最も高く,簡易抽出による核酸検出検査・抗原定量検査がそれに次ぎ,抗原定性検査が最も低いと考えられている.それぞれの検体や検査法の特徴を理解し,状況に応じて適切な方法を選択する必要がある.
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TOPICS
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 278巻4号, 295-296 (2021);
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再生医学
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医学のあゆみ 278巻4号, 296-297 (2021);
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加齢医学
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医学のあゆみ 278巻4号, 298-299 (2021);
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FORUM
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日本型セルフケアへのあゆみ 12
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医学のあゆみ 278巻4号, 316-320 (2021);
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● 新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された.接種の推進により集団免疫の獲得が期待される一方で,副反応を心配する声もある.● ワクチンの種類ごと,メーカーごとに副反応の特徴がある.副反応自体は高い頻度でみられるが,ほとんどが軽度で一時的なものである.● ワクチン接種によるメリットをいかに高齢者や若い世代に届けるか,情報提供のシステムづくりが課題となっている.
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子育て中の学会参加 6
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医学のあゆみ 278巻4号, 321-323 (2021);
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筆者は,医師12 年目,大学病院に助教として平日はフルタイムで勤務,子供は1 歳半と4 歳の男児二人で,普段は保育園に通っている.夫は他施設で口腔外科医として勤務しており,双方の両親は遠方におり共働きで子育てを行っている.現在は保育園があってこそ成り立っている状況である.子供たちはまだ幼く可愛い盛りであるものの,男児ということもあり活発で目が離せない時期である(図1).