Volume 278,
Issue 9,
2021
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特集 腸内細菌と免疫
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医学のあゆみ 278巻9号, 749-749 (2021);
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医学のあゆみ 278巻9号, 750-755 (2021);
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近年,特定の細菌を無菌マウスに定着させたノトバイオートマウスの解析により,特定の細菌やその代謝物が宿主の腸管免疫系にどのような影響を及ぼすかが明らかになってきている.たとえば腸内細菌代謝物については,食物繊維の分解で産生される酪酸を中心とした短鎖脂肪酸が,制御性T 細胞(Treg)への分化を促進させ,またマクロファージに作用し抗炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-10 の産生を促進させることで,常在菌に対する宿主の過剰な免疫応答を制御していることが近年明らかになった.一方で,腸管免疫細胞もまたサイトカイン産生や抗菌分子の産生によって,腸内微生物を制御していることが明らかとなっている.今後は,メタゲノム解析などによる腸内微生物叢の機能的解析と腸管免疫細胞のシングルセルRNAシークエンシングなどによる網羅的解析により,さらに両者の相互関係の理解が進むことが期待される.
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医学のあゆみ 278巻9号, 757-760 (2021);
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免疫グロブリンA(IgA)抗体は主に血清中と粘膜面に存在しており,とりわけ腸管管腔中に分泌される分泌型IgA 抗体は粘膜面の恒常性維持に非常に重要な役割を持つ.IgA 抗体は主にパイエル板を含む腸管関連リンパ組織や粘膜関連リンパ組織において,IgM+B 細胞からactivation-induced cytidine deaminase(AID)により誘導されるクラススイッチ組換え(CSR)を介して分化するIgA 産生細胞から産生される.これらの細胞から産生されるIgA 抗体は上皮細胞基底膜に発現するpolymeric immunoglobulin recepto(r pIgR)が J 鎖を介して多量体IgA 抗体と結合することで,小胞体輸送により細胞基底膜側から粘膜面側へ移行する.腸管における病原微生物の感染時,病原体および病原毒素に対して高親和性IgA 抗体が産生されることで,これらの異物の体内への侵入を防止している.また,病原性細菌のみならず腸内細菌に対してもこれらのIgA 抗体は作用することで,宿主の恒常性維持に寄与している.
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医学のあゆみ 278巻9号, 761-765 (2021);
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近年,腸内細菌叢の割合の変化(dysbiosis)がさまざまな疾患で報告されるようになってきている.そのなかには,dysbiosis が疾患の原因となりうることが報告されている.関節リウマチ(RA)は遺伝的素因だけでなく,さまざまな環境因子がその病態に関与していることが知られている.筆者らは,発症初期のRA 患者と健常人の腸内細菌叢を解析した.一部のRA 患者で健常人にはない,Prevotella copri が著明に増加している腸内細菌叢を有していることが明らかとなった.RA で認められる腸内細菌叢の変化が,RA の結果なのか,原因となるのかを解析するために,関節炎を発症するSKG マウスをgerm-free 化し,健常人(HC)型,RA 型の腸内細菌叢を定着させ,HC-SKG マウス,RA-SKG マウスを作製した.そして,RA-SKG マウスは,HCSKGマウスに比べて重症の関節炎を発症した.メタゲノムショットガンシークエンス法では,Prevotelladenticola などのPrevotella 属細菌がRA 患者で増加していることが確認された.この結果から,RA 患者で認められる腸内細菌叢の変化は,RA の発症に深く関わっていることが示唆された.
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医学のあゆみ 278巻9号, 767-769 (2021);
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中枢神経系自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の腸内細菌叢異常については,2015 年の筆者らの世界初の論文の後,欧米各国から報告が相次いでいる.これらの論文は再発・寛解型MS(RRMS)の糞便試料を扱っているが,短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌の減少,あるいはSCFA 自体の減少,さらにはプロピオン酸長期投与によるMS 病態の改善など,おおむね一貫性のある結果が報告されている.筆者らは最近,RRMS を経て慢性進行型MS〔二次進行型MS(SPMS)〕を発症した症例の腸内細菌叢解析を実施しているが,メタゲノム解析の結果から,SPMS の腸管内で酸化ストレスの亢進が顕著であることや,神経症状の進行に関連した細菌が存在することなどを明らかにしている.これらの知見が治療や予防につながることが期待される.
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医学のあゆみ 278巻9号, 770-772 (2021);
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ヒトの消化管全体を構成する腸内細菌は500~1,000 種類あり,その総数は100 兆個にも及び,宿主の150 倍以上の遺伝子が存在するといわれている.腸内細菌は宿主が摂取した栄養分を利用しながら生息し,他種細菌と宿主と相互に影響を及ぼしながら腸内にエコロジーを形成する.肝臓は門脈や胆管を介して腸管と直接的な交通があり,消化管由来の腸内細菌やその代謝産物に対して適切かつ迅速な免疫応答を誘導することにより,生体の1st barrier として重要な役割を果たしている.一方で,上記に対する過剰な免疫応答は自己免疫疾患を惹起することから,腸内細菌の質的,および量的変化が種々の肝臓疾患の病態に寄与することが想像できる.本稿では肝臓疾患の病態への腸内細菌の関与について概説するとともに,自己免疫性肝胆疾患のひとつである原発性硬化性胆管炎(PSC)病態に寄与する腸内細菌についての筆者の最近の知見を紹介する.
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医学のあゆみ 278巻9号, 773-777 (2021);
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腸内細菌叢は免疫系に働きかけ,非自己に対する免疫監視と自己に対する免疫寛容の調節において重要な役割を果たす.一方で,特定の腸内細菌叢は大腸がんの発生や炎症性腸疾患などの自己免疫疾患にも影響することが示されてきた.また,腸管以外の臓器のさまざまながんの腫瘍内の炎症細胞や免疫細胞へも作用し,免疫チェックポイント阻害薬を含むがん薬物療法の効果に影響を与えることも明らかになっている.測定方法の違いや地域差などデータを解釈するうえで課題はあるものの,腸内細菌叢の解析は複雑ながん免疫応答の一端を担っていることが示唆される.
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連載
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この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症 16
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医学のあゆみ 278巻9号, 784-787 (2021);
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肝蛭症は世界中に広く分布する人畜共通寄生虫症である.国内感染と輸入感染症として重要な疾患であるが,診断にしばしば時間を要することがある.症状,検査所見からの鑑別診断は細菌性肝膿瘍,アメーバ性肝膿瘍,胆管細胞がん,胆石嵌頓,胆管炎,胆囊炎などであり,好酸球増多が肝蛭症を疑うきっかけとなる.患者背景と食歴の確認が重要である.急性期と慢性期の病態を理解し,病期に応じた適切な検査を提出する.治療薬はトリクラベンダゾールが第一選択である.本薬剤は国内未承認であり,熱帯病治療薬研究班薬剤保管施設において,臨床研究として治療が可能である.
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いま知っておきたい最新の臨床検査 ─ 身近な疾患を先端技術で診断 15
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医学のあゆみ 278巻9号, 788-794 (2021);
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◎遺伝性循環器疾患の多くは,重篤な合併症を高率に発症する一方で,早期診断・早期治療介入によりこれらの合併症を予防することができれば予後改善が期待できる疾患が少なくないことから,以前から診断を目的とした遺伝子解析研究が積極的に進められてきた.とくに,近年の遺伝学的検査技術の進展はめざましく,解析コストの低減化の一方で,解析精度は飛躍的に向上し,臨床の現場においても遺伝学的検査は欠かすことのできない検査のひとつとなっている.わが国においても,遺伝性循環器疾患の診断のための遺伝学的検査の多くがここ数年の間に保険収載された.しかし,実際の運用に際しては,検査の意義と結果の解釈についての正しい知識が必要であり,それを患者と共有するための遺伝カウンセリングも重要である.
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オンラインによる医療者教育 2
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医学のあゆみ 278巻9号, 795-800 (2021);
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◎令和2 年度の広島大学はCOVID-19 流行対策から始まった.従来,解剖学実習はご遺体に対面して実際に解剖を行うことによって人体の構造を学ぶ実習である.しかし,COVID-19 流行の影響により実習室での実習が不可能となり,筆者らは学生が遠隔地で実習に参加することのできるオンラインバーチャル解剖学実習を計画,実施した1).オンラインバーチャル解剖学実習では,学生は短時間で効率的に構造について学ぶことができた一方,ご遺体から得られる“リアル”な経験を得ることができなかった.その後COVID-19 流行の改善を受け,対面式解剖学実習が実施可能となった.COVID-19 流行防止措置を徹底した結果,内容および期間が圧縮された対面式解剖学実習を実施することになったが,学生のモチベーションは高く,集中した実習を行うことができた.これら2 つの解剖学実習を終えて,医師を育む教育として,ご遺体を解剖させていただく対面式解剖学実習の必要性を改めて強く感じた.
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TOPICS
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社会医学
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医学のあゆみ 278巻9号, 779-780 (2021);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 278巻9号, 781-781 (2021);
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免疫学
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医学のあゆみ 278巻9号, 782-783 (2021);
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FORUM
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子育て中の学会参加 8
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医学のあゆみ 278巻9号, 801-804 (2021);
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女性医師の診療・研究・教育活動を含む継続就業には,仕事と家庭との両立が不可欠であり,個人の努力はもちろんだが,家族や託児サービスなどのサポートが必須である.筆者が育児を開始した2013 年の時点ではすでに厚生労働省における女性医師支援事業,文部科学省や科学技術振興機構によるダイバーシティ研究環境整備事業など,男女共同参画および女性医師支援の機運が高まっている背景があり,託児所の利用や学会発表の日程の調整など,所属医局や参加学会からのご理解と協力をいただける状況であった.
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速報
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医学のあゆみ 278巻9号, 805-808 (2021);
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