Volume 278,
Issue 11,
2021
-
特集 ヒューマノイドロボットの医療分野での応用
-
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 937-937 (2021);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 938-942 (2021);
View Description
Hide Description
近年の少子高齢化や労働人口の減少を背景に,高齢者や障害者など,生活機能が低下した人々の自立を支援したり,リハビリを支援したり,またその周囲の人々による介護・介助を支援する支援ロボットの研究開発が盛んになっている.そのなかの一分野でもあるコミュニケーションロボットの研究開発も進み,支援ロボットとして製品化・事業化事例や,医療現場・介護現場・教育分野などでの実証・活用事例も増えている.本稿では,支援ロボットのこれまでの発展の歴史を概説し,次に現在の介護支援ロボットやリハビリ支援ロボットの動向について紹介する.最後に医療分野,とくに精神医学におけるコミュニケーションロボットの応用事例について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 943-947 (2021);
View Description
Hide Description
ロボットは“ヒトらしさ”と“モノらしさ”を併せ持つ不思議な存在である.ここから,自閉症スペクトラム障害(ASD)の研究や療育実践への応用可能性が導かれる.ASD は一般にコミュニケーション障害とも形容され,ヒト(他者)との言語・非言語的なやりとりに難しさをもつ.その一方で,モノ(玩具や機械システムなど)の扱いには問題ないことが多い.ならば,モノとしてのロボットとのストレスのない自発的なインタラクションを通して,そこに織り込まれたヒトらしさにASD 児が気づき,他者とのコミュニケーションの可能性がひらけていくようなストーリーが描けないであろうか.筆者らはこの考えに基づき,ASD 療育に適したロボットの開発や就学前のASD 児を対象とした療育支援を実践し,並行してASD の認知モデルの検討を進めてきた.本稿では,筆者らの開発した療育ロボットやその設計思想,療育支援から見えてきたことなどを解説したい.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 948-951 (2021);
View Description
Hide Description
精神科領域でヒューマノイドロボット使用に関する研究成果が蓄積されている領域に,発達障害領域,認知症領域がある.発達障害領域で使用されている背景には発達障害者,なかでも自閉スペクトラム症(ASD)者のロボットへの親和性があげられる.また,ASD 者への介入には長期的な忍耐が必要であるなかで,ロボットが疲労することなく,安定したパフォーマンスを発揮できることは大きな利点と考えられる.ASD 領域では診断プロセス支援のほか,アイコンタクト,模倣,情動認識,共同注視などの療育にロボットを使用する研究が行われている.他の精神疾患患者にもロボットは有効な可能性が考えられる.今後,患者ごとに適切なロボットの選択,患者の状態に合わせたロボットの個別化,ロボットを使用するシチュエーションの適切な選択に関する基礎研究が蓄積し,さらに実証研究が進むことで,今後,多くの患者にロボットが有用になることが期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 952-956 (2021);
View Description
Hide Description
人の生活環境のなかで人と対話ができる人間型ロボット(いわゆるヒューマノイドロボット)の研究が盛んに行われており,ロボットが人とコミュニケーションする役割,とくにロボットを話しやすい対話相手として用いることに関する実証実験が進められている.医学の分野でも同様に,患者や医療従事者の精神面に配慮した対話機会を提供することなど,人間型ロボットを用いる潜在的なニーズがあると考えられる.とくに現状の技術では,人間が人間と対話するときと同等の適応性をロボットに期待することはできないが,逆にいえば,予定していた反応を患者の感情状態に左右されず,場合によっては繰り返し,生成し続けることについては,むしろロボットに分がある可能性がある.そこで本稿では,筆者らの研究グループでの取り組みを例にあげながら,人間型ロボットの対話技術の動向を概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 957-961 (2021);
View Description
Hide Description
肥満や糖尿病,高血圧症に代表される生活習慣病は,過食,身体活動量の低下などの生活習慣の変化によって引き起こされる疾患である.生活習慣病は心血管病のみならず,がん,認知症などの誘因でもあり,先進国の疾病構造の根幹をなしている.さまざまな治療法が開発されているがこれらの疾病の管理は十分とはいえず,とくに肥満症の治療は不十分である.その理由として,肥満の病態が明らかでなく,原因となる患者の行動が精神・心理的因子により影響を受けることがあげられる.肥満者の心理的特徴として,正しい自己評価ができない傾向が知られており,そのため強いストレスに曝されると,食行動異常が生じやすくなると考えられている.このような背景を有する患者に対して,ヒューマノイドロボットを用いたコミュニケーションは,行動の適正化に有益であると考えられ,生活習慣病の外来診療での応用が試みられている.生活習慣病の臨床における新しいモダリティとしてのロボット技術の発展が期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 962-966 (2021);
View Description
Hide Description
メンタルヘルスケアはストレス社会といわれる現代において重要な課題であるが,新型コロナ禍においてはさらに重要性を増している.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防対策として対面での対話が難しくなり,電話やWeb 会議システムなどを用いた遠隔対話が当たり前になってきている.しかし,遠隔対話においてはこれまで人間が,他者とのコミュニケーションにおいて孤独感や不安,精神的ストレスを軽減するために利用してきた物理的な触れ合いが失われており,それに代わる方法を検討する必要性が叫ばれている.本稿では遠隔対話に,仮想的な他者との抱擁を導入することを目指して開発された抱擁型通信メディア「ハグビーTM」について紹介し,それを使用することで得られる不安やストレスの軽減効果について心理的・生理的・脳科学的側面から調べた研究について紹介する.また,その実応用として児童に対する読み聞かせ支援について紹介し,感情的な制御が難しい人々への支援につながる可能性について述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 967-972 (2021);
View Description
Hide Description
ロボットは視線ベクトルが存在せず,情動を伴わないことから,自閉スペクトラム症(ASD)者が恐怖を感じることがないため,ASD のコミュニケーションツールとして有効である.また言葉によるコミュニケーションでは即答することが求められるが,文字言語による会話では改善しうる.思考過程を視覚化し,キーボードなどを用いて考えを整理し,内的思考の外在化と文字化することにより,コミュニケーション機能を向上させることができ,コミュニケーションの交互性から内容の改善が可能である.ロボット,人工知能(AI)などを用いることによりASD のコミュニケーション障害は改善しうる.
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 973-976 (2021);
View Description
Hide Description
人間にとって機械は使うものであり,心の交流をするものではない.しかし,ヒューマノイドロボットと人間の間には擬似的な心の交流が発生する.これは人類史上はじめての事態であり,そこにはさまざまな倫理的問題がある.医療分野におけるヒューマノイド活用への期待は非常に大きいものがあり,病める人々を救うという大義名分を掲げた研究開発は社会に歓迎され加速されるが,その影にある問題は無視されがちである.ヒューマノイドを人間的に扱うのが倫理的なのか,それとも非人間的に扱うのが倫理的なのか.人間をフリーズさせそうなこの問いを,ヒューマノイドは人間に投げかけている.
-
連載
-
-
この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症 17
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 982-985 (2021);
View Description
Hide Description
旋尾線虫症は旋尾線虫のうち,Crassicauda giliakiana の幼虫移行症である.ヒトへの感染はホタルイカの生食(踊り食いや醬油漬け,いわゆる沖漬)によるもので,患者の報告はその漁期に一致する3~6 月に多い.流通網の発達により1987 年に産地である富山湾から全国へ生きたままの遠隔地輸送が始まって以降,患者の発生が報告され始め,1988~94 年に53 例,1995~2003 年に49 例の報告がある1).その後,2004~2017年では21 例と減少傾向にあり,これは当時の厚生労働省が生のホタルイカの販売に関する規制を通達したことに関連すると考えられる.このように旋尾線虫幼虫症の報告数は減少しているが,実態としては報告数を上回る感染があるものと考えられる.本稿では感染源の解説と,都内で購入したホタルイカから感染した旋尾線虫幼虫による皮膚爬行症の自験例を紹介し考察する.
-
いま知っておきたい最新の臨床検査 ― 身近な疾患を先端技術で診断 16
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 986-994 (2021);
View Description
Hide Description
◎先天異常疾患における遺伝学的検査の実臨床への応用が急速に進展するなか,解析機器が薬事承認され保険収載の準備が進みはじめたマイクロアレイ染色体検査,保険診療のブレイクスルーとして対象疾患が拡大してきた遺伝子パネル検査,希少疾患プロジェクト(IRUD)として新たな遺伝性疾患の同定や難病対策との連携に寄与してきたエクソーム検査,精度の高い非確定的出生前遺伝学的検査として急速に認知・拡大してきたNIPT 検査,これら臨床場面に即して分類された4 種類の遺伝学的検査はどれも近年の実臨床において強いインパクトを有しているが,次世代シークエンスを中心とした解析手法による網羅性や解像度,処理能力の向上に起因する部分が少なくない.一方で,コピー数異常やバリアントの病原性解釈や二次的所見の取り扱い,倫理社会的側面など,今後の成熟した遺伝医療に向けて取り組むべき課題も内包している.
-
オンラインによる医療者教育 3
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 995-1000 (2021);
View Description
Hide Description
◎コロナ禍で一気に進んだ医学生評価のオンライン化(デジタル化)を振り返り,7 つのポイントにまとめた.1.知識と技能・態度に分解,2.組織化,学習管理システムとマニュアルで標準化,3.出席を兼ねた学習管理システムからの小テストでの知識の形成的評価,4.教職員負担軽減と感染リスクゼロvs 信頼性・満足度のトレードオフである知識の総括的評価のオンライン化,5.事前資料提供とデジタル端末評価から始める技能・態度評価,6.効率化,感染対策に有効なビデオ判定,7.評価対象拡充と満足度を上昇させるピア評価.オンライン化(デジタル化)は,紙や教員負担(物理的,心理的)を削減し,集計・解析・フィードバックまでを自動化させることができる.一方,医学生の自己調整学習力,デジタル端末利用能力,協働学習力を前提としている.資料共用化や,医学生に対するさらなるサポートが必要である.
-
ユニークな実験動物を用いた医学研究 1
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 1001-1001 (2021);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 1002-1006 (2021);
View Description
Hide Description
性の多様性について柔軟性が高まってきた昨今の人間社会は,男女の差別をなくそうという機運(ジェンダーフリー)や,そもそも性別という概念さえなくしてしまおう(ジェンダーレス)といった声が認知されてきた.しかしながら,このような性別は心の性に起因する区分であり,性染色体構成に由来する体の性別については発生学的に固定化されている.ヒトを含むほとんどすべての哺乳類はY 染色体があればオスになり,なければメスになる.ところが,体の性を性染色体構成に依存することなく明確に区別するネズミがいる.奄美大島に生息する国の天然記念物で絶滅危惧種のアマミトゲネズミは,きわめてまれな性染色体構成(雌雄ともにXO 型)であり性染色体に依存せず雌雄が決まる.そのような性の垣根が不明瞭な動物種における“性”とはどのようなものであろうか.尾部先端からわずかに増やした体細胞からiPS 細胞を樹立し,アマミトゲネズミ特有の性的柔軟性に迫る.
-
TOPICS
-
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 977-978 (2021);
View Description
Hide Description
-
生化学・分子生物学
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 978-979 (2021);
View Description
Hide Description
-
細胞生物学
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 980-981 (2021);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
パリから見えるこの世界 102
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 1007-1010 (2021);
View Description
Hide Description
-
子育て中の学会参加 9
-
Source:
医学のあゆみ 278巻11号, 1011-1013 (2021);
View Description
Hide Description
子育て中の学会参加はサポートがなければ厳しいものがあり,それぞれの家庭状況,仕事の内容など複雑な背景がリンクしている.在籍県内に学会が開催されればよいのだが,たいてい都会で行われる.ということは,地方在住の私はすくなくとも一泊しなければ朝から晩まで集中して学会参加ができない.「夜の子どもの面倒は誰が見るの?」ということになる.私も子育て後に医師の仕事としてどうしたらいいものかと考えてきたが,これは現在進行形である.沢山の先輩方がいるので,いろんな意見を拝聴できるこの機会はとてもよいと思い,執筆をお引き受けした.