Volume 286,
Issue 4,
2023
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特集 古代ゲノム学と医学の交差点
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医学のあゆみ 286巻4号, 247-247 (2023);
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医学のあゆみ 286巻4号, 249-253 (2023);
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ハイスループット・シークエンシング(high-throughput sequencing)の普及に伴い,古い生物の遺物に残るDNA からゲノム情報を抽出する古代ゲノム学(Paleogenomics)が過去10 年余りで大きな発展を遂げた.現生人類(ヒト:ホモ・サピエンス)と絶滅人類(ネアンデルタール人やデニソワ人)との交雑が明らかになったのは,その顕著な成果のひとつである.人類が歩んできた集団史の謎を紐解くだけでなく,ヒトの古い骨や歯などから得られるゲノム配列には,疾患リスク変異や病原体の情報も含まれる.古代ゲノム学は“ヒトはなぜ病気にかかるのか”という問いに対し,最も究極要因に近い情報を提供する.本稿では,進化医学からヒトの疾患を理解するアプローチに古代ゲノム解析が加わった最近のトレンドについて紹介する.
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医学のあゆみ 286巻4号, 255-258 (2023);
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古病理学は,遺跡から発掘された生物考古学的資料の病気の復元を目的とする研究分野であり,過去に生きた人体を対象にして,現代の医学的水準から骨病変の診断や考察を行う.古病理学において,古人骨は人類と感染症の共存の歴史を明らかにする唯一の直接的資料である.研究手法として,骨病変の特異的な形態的特徴や出現部位を調べることで,肉眼的に感染症を鑑定する.次に,病原菌のDNA の抽出を試みることで,一層精度が高い結果を得る.近年の分子生物学的な手法を取り入れた分子古病理学の進展は,肉眼的に検出ができない感染症を診断するだけではなく,感染症の起源や進化に新しい知見を与える.
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医学のあゆみ 286巻4号, 259-263 (2023);
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肥満,高血圧症,脂質異常症,2 型糖尿病といった生活習慣病の多くは多因子遺伝性疾患であり,その感受性の個人差には,運動や食事のような生活習慣の差異に加えて,一塩基多型に代表されるゲノム多型も寄与している.このような多型のなかには,古代のホモ・サピエンス集団はもちろんのこと,ネアンデルタール人やデニソワ人など数十万年前にホモ・サピエンスと分岐した後に絶滅したヒト属の種とも共有していたものがある.本稿では,生活習慣病に関連するゲノム多型のなかでも,現代人と古代人の間で共通して見出された例をいくつか紹介するとともに,近年活用が進むポリジェニックスコア解析によって,生活習慣病の遺伝的リスクが,古代から現代にかけてヒト集団のなかでどのように変容してきたのかを知る試みについて紹介する.
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医学のあゆみ 286巻4号, 265-269 (2023);
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ホモ・サピエンスは約20 万年前にアフリカで誕生し,約7 万年前にアフリカからユーラシア大陸へ進出し,地球全域に生息域を拡大した.現代人の皮膚色は多様性に富んでおり,緯度に応じた地域特異性がある.これは,出アフリカ後の約7 万年の間に明るい皮膚色が有利となる正の自然選択によって形成されたものと考えられている.近年,東北メディカル・メガバンク計画の肌のタイプ(スキンタイプ)に関連したゲノムワイド関連解析(GWAS)によって,日本人集団で日焼け・白肌を決める7 つの独立な一塩基多型(SNP)が同定された.それらのSNP を用いて都道府県別の日本人集団の白肌の程度を推定したところ,平均標高や日最大UV インデックスの累年平均値との相関は観察されなかった.したがって,日本人の皮膚色の地域差は偶然を含め,多数の因子によって形成されていると思われる.また,縄文人ゲノムデータを用いて縄文人の皮膚色を推定したところ,縄文人の皮膚色は現代日本人と同程度の明るさであった可能性が示唆された.
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医学のあゆみ 286巻4号, 270-273 (2023);
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1B 型アルコール代謝遺伝子(ADH1B)はエタノールを強毒性のアセトアルデヒドに,2 型アルデヒド代謝遺伝子(ALDH2)はアセトアルデヒドを酢酸へと無毒化する.このアセトアルデヒドの体内濃度を上げるADH1B とALDH2 の派生型アレルが東アジア集団でのみ高頻度に存在する.異なる染色体上にある2 つの遺伝子が,同じ表現型を示すアレルを持ち,それが同一地域で観察されることは偶然では説明が難しく,これらの多型は東アジアで正の自然選択によって高頻度になった可能性が議論されている.日本列島のALDH2派生型アレル頻度は,中央部から南北に進むにつれて減少する傾向があり,このアレルは渡来系弥生人によって日本列島に持ち込まれたことが示唆される.一方で,ADH1B の派生型アレルでは頻度差はみられず,このアレルは縄文人と弥生人の両方に存在した可能性が指摘されている.近年では,一部の縄文人ゲノムの調査から縄文人がお酒に強い体質だった可能性が示されている.今後はより多くの古代人データを用いることで,現代では疾患と関連が見出されているこれらの多型と東アジア人の関係性が解明できるであろう.
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医学のあゆみ 286巻4号, 274-277 (2023);
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DNA マイクロアレイや次世代シーケンシング(NGS)といったDNA 解析技術は,ゲノムワイド関連解析(GWAS)を可能とすることで遺伝子多型と形質との関連を明らかにし,一方で古人骨のゲノムを解読することを可能にした.さらに,これらの情報を組み合わせることで,古人骨個体の表現型を復元することをも可能にしている.また,ネアンデルタール人やデニソワ人といった絶滅した古代人類は,現生人類と交雑したことにより,古代人類のゲノム配列は現生人類に残っている.そのことによって,古代人類由来のアリルの機能を解析し,古代人類の表現型を推定することも可能である.現生あるいは古代人類の形質が持つ適応的意義を解明するためにも,古代ゲノム解析による表現型復元は重要な役割を果たす.
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医学のあゆみ 286巻4号, 278-281 (2023);
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「狩猟採集から農耕への生業変化によって,狩猟・採集による獲得経済から安定した食料の生産を可能とする生産経済へと移行し,人口増大へとつながっていった」とする一般論が考えられている.日本や中国における農耕栽培は,コメ,アワ,キビなど,新大陸においてはトウモロコシやジャガイモなどである.母系遺伝形質であるミトコンドリアDNA 塩基配列の集団情報を用いることで,集団の個体数変動(すなわち過去の人口変動)を探ることが可能である.その結果,興味深いことに,メソアメリカでは農耕開始以降の人口増加が観察されず,逆に人口減少が検出された.本稿では,農耕開始以降の人口減少の原因として,メソアメリカにおける主要食物であるトウモロコシへの依存度の高さ,そしてトウモロコシの栄養医学的知見から,“メソアメリカにおける人口減少”を考察した.
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連載
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救急で出会ったこんな症例 ─ マイナーエマージェンシー対応のススメ 14
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医学のあゆみ 286巻4号, 286-291 (2023);
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◎わが国には比較的限られた種類のヘビしか生息していないものの,前稿で述べたアオダイショウの例に見られるように,幼蛇の時期と成蛇の時期において体表の模様が大きく異なるヘビがいる.本稿で紹介するヤマカガシは幼蛇と成蛇とに大きな模様の変化はないが,シマヘビやジムグリは幼蛇と成蛇とで体表の模様が大きく変化する.ほとんどの教科書には成蛇の写真のみが掲載されているので,ヘビの鑑別において困難をきたす場合があり,鑑別を誤る可能性があるので注意を要する.
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医療システムの質・効率・公正 ─ 医療経済学の新たな展開 6
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医学のあゆみ 286巻4号, 292-297 (2023);
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超高齢社会の進展に伴い,要介護高齢者,特に認知症の人が増加し,そのケアの供給は社会的課題である.認知症ケアは,医療・介護保険サービスによるフォーマルケア,介護保険外サービス,主に家族介護者によって担われるインフォーマルケアによって成り立つ.特に認知症ケアでは,このインフォーマルケアが大半を占め,その経済的負担においてインフォーマルケアコストを加味することが重要である.医療・介護資源や財源が限られるなかで,認知症ケアの経済的負担について,社会的コストの推計に限らず,自己負担額など個人的視点からの負担を可視化することは,認知症ケアにかかる制度設計の土台となる.社会的視点および個人的視点双方からの検討をもって,地域内におけるフォーマルケアとインフォーマルケア,施設ケアと在宅ケア,社会的コストと個人の自己負担額のバランスを多角的に考慮することが非常に重要である.
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TOPICS
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麻酔科学
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医学のあゆみ 286巻4号, 282-283 (2023);
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 286巻4号, 284-285 (2023);
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FORUM
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病院建築への誘い ─ 医療者と病院建築のかかわりを考える
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医学のあゆみ 286巻4号, 298-302 (2023);
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◎本シリーズでは,医療者であり,建築学を経て病院建築のしくみつくりを研究する著者が,病院建築に携わる建築設計者へのインタビューを通じて,医療者と病院建築のかかわりについて考察していきます.
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後悔しない医学英語論文の投稿に向けて ─ Editorの視点から 3
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医学のあゆみ 286巻4号, 303-306 (2023);
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自身の研究成果を論文としてまとめ,その投稿先を考えるに際し,前述の項目に加え近年では,ハゲタカジャーナルやオープンアクセス化に関わる諸問題も考慮する事情がでてきている.そこでこれら2点の重要性に鑑み,参考までに紹介する.