医学のあゆみ
Volume 286, Issue 14, 2023
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【9月第5土曜特集】 内視鏡医学のすべて─各領域における診断・治療の進歩
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- 消化器内科
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頭頸部・食道癌に対する内視鏡診断と治療における進歩と展望
286巻14号(2023);
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頭頸部・食道癌の発がん様式は,扁平上皮癌や異型上皮が多発する“field cancerization 現象”として報告されている.国際がん研究機関(IARC)はアルコール飲料に関連するアセトアルデヒドをGroup 1 発がん物質と認定しており,アルコール代謝関連酵素の遺伝子多型は発生リスクに関連する.食道癌リスク検診問診票(HRA-F model)は食道癌の内視鏡検診に有用な問診票であり,食道粘膜のヨード不染帯(LVL)の程度は頭頸部・食道癌の発生を予測するバイオマーカーである.頭頸部・食道癌の存在診断,鑑別診断,深達度診断において,narrow band imaging(NBI)拡大内視鏡を用いた内視鏡観察は必須の検査方法になった.食道表在癌に対する内視鏡的切除においては,切除標本の病理組織学的所見に基づいて根治性を評価し,リンパ節再発のリスクが高い症例には追加治療を実施する治療戦略が確立された.頭頸部表在癌に対する内視鏡的切除においては,頭頸部表在癌全国登録調査によって安全性と有効性が報告されたが,今後は適応を確立する必要がある.内視鏡的切除後に発生する異時性他臓器癌の発生は予後に影響するため,今後はサーベイランス方法を確立する必要があり,二次予防を目的とした禁酒と禁煙の指導が推奨される. -
胃・十二指腸腫瘍に対する診断・治療の進歩と今後の展望
286巻14号(2023);
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胃・十二指腸の腫瘍性病変に対する内視鏡診断における特に新規性・発展性の高い分野として,内視鏡AIおよび超拡大内視鏡があげられる.近年のAI による画像認識技術の急速な発展に伴い,内視鏡AI の有用性に関する報告が加速度的に増加している.胃癌においてはその検出・診断に加えて深達度評価についても有効性が示されており,診断精度向上や内視鏡診断の質の均てん化に寄与することが期待されている.超拡大内視鏡であるendocytoscopy(EC),共焦点レーザー内視鏡(CLE)は,生体内で非侵襲的かつリアルタイムに細胞レベルの観察を可能とするものであり,内視鏡画像から病理検査に匹敵する組織学的情報を取得する,optical biopsy を具現化する手段として期待が持たれる.内視鏡治療の分野では,非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)の内視鏡治療についてより安全で有効な治療を目指した新たな手法として,浸水下内視鏡的粘膜切除術(UEMR),十二指腸腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)が報告されており,従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)/内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)治療に加えて有用な治療選択肢となりつつある. -
胃・十二指腸非腫瘍性疾患における内視鏡診断の進歩と展望
286巻14号(2023);
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特発性潰瘍は近年増加傾向にあり,Helicobacter pylor(i H. pylori)潰瘍と比較して難治性で,再発および出血をきたす頻度が高く,前庭部大彎を中心とした小さな穴様潰瘍と随伴する粘膜下腫瘍様隆起,窪み・溝様の潰瘍瘢痕がその内視鏡的特徴である.近年,自己免疫性胃炎(AIG)の診断基準が確立され,逆萎縮像を特徴とする進行例に加えて,偽ポリープ様の顆粒状隆起,胃小区の腫脹などを呈する初期像の検討が期待されている.Non-Helicobacter pylori Helicobacte(r NHPH)感染症は人獣共通感染症のひとつで,NHPH はH. pyloriとは明らかに形状の異なる大型のらせん菌である.H. pylori感染率の低下および除菌治療の普及とともにNHPH の頻度は高くなることが予測され,注目すべき疾患である.画像強調内視鏡検査(IEE)は胃炎診断や癌の拾い上げに有用であり,これに畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)を用いることで,高い感度で迅速にこれらを診断することが今後可能である.近未来における内視鏡診断支援システムの実用化や内視鏡検診への貢献が期待される. -
小腸病変に対する内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望
286巻14号(2023);
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小腸内視鏡の登場までは,小腸は“暗黒の臓器”と称され,内視鏡観察が不可能な臓器であった.2000 年代に入りカプセル内視鏡(CE)が臨床導入され,小腸診療は一変した.CE は改良を重ね,その低侵襲性と高い診断精度により広く普及している.また,バルーン内視鏡(BAE)に加えて,パワースパイラル内視鏡(PSE)などのdevice-assisted enteroscopy(DAE)が使用可能となり,小腸粘膜の観察,生検による組織学的診断のみならず,従来であれば外科手術を要してきたさまざまな疾患に対して内視鏡治療も可能となった.現在,小腸内視鏡に適した内視鏡補助デバイスも開発され,内視鏡治療も進歩してきており,CE 診断に関しては読影医の負担軽減を目的に人工知能の開発も進められている.本稿では,現在使用可能な小腸内視鏡の特徴と将来展望について概説する. -
大腸腫瘍に対する内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望
286巻14号(2023);
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大腸内視鏡機器の改良とともに内視鏡治療の診断,治療も進歩を続けている.画像強調観察(IEE)により診断ストラテジーの簡便化がなされ,従来の拡大内視鏡よりさらに拡大倍率が上昇した超拡大内視鏡が臨床応用されるようになった.治療に関しては2012 年に保険収載された大腸内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)が,手技のストラテジーの確立と治療デバイスの開発ともに全国的に安全に施行されるようになった.また近年,あらゆる分野を席巻している人工知能(AI)機器が大腸内視鏡の分野でも臨床応用されており,病変検出,質的診断などの診断支援を行っている.その潜在能力は未知数ではあるが,今後の内視鏡診療を大きく変化させる可能性を秘めており,今後は大腸腫瘍のみならず,さまざまな領域や他臓器における研究も期待される. -
胆・膵腫瘍に対する内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望
286巻14号(2023);
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胆・膵腫瘍は他臓器の悪性腫瘍と比較して悪性度が高く,早期発見から速やかな治療の介入が望まれる.早期発見には,これまでのCT やMRI などのモダリティと合わせて,超音波内視鏡(EUS)による詳細な画像診断,経口胆道鏡(POCS)による直視下での肉眼的診断が行われるようになった.それらに人工知能(AI)技術のサポートを導入することで,さらに診断精度の向上を認め,見落としも防ぐことができる.また胆・膵腫瘍の治療に関しては,根治術として外科的手術が第一選択となるが,EUS を用いた抗腫瘍療法や,ドレナージ治療としてEUS を用いたインターベンション治療が行われるようになってきた.内視鏡関連手技のデバイスの向上や技術の標準化に伴い,胆・膵腫瘍に対する内視鏡診断と治療は,大きく進歩している. -
胆・膵良性疾患に対する内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望
286巻14号(2023);
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胆・膵良性疾患は多岐にわたるため,CT やMRI などの画像検査のみでは良悪性の鑑別をはじめ,診断が困難であることが多い.さらなる診断のため,超音波内視鏡(EUS),内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)といった内視鏡を用いた診断技術が発展しており,近年では,経口胆道(膵管)鏡を用いることで,診断における上乗せ効果が期待できるようになってきた.治療においても,ERCP 関連手技や経口胆道(膵管)鏡の発展により治療困難胆管・膵管結石の除去が可能となっている.良性胆管狭窄に対しては,狭窄拡張やステント留置による内視鏡治療が行われている.さらにバルーン内視鏡の開発により,従来困難とされていた術後再建腸管症例におけるERCP 関連手技も可能となってきた.本稿では,胆・膵良性疾患に対する内視鏡診断・治療の進歩と今後の展望について概説する. -
内視鏡的全層切除術・縫合法および粘膜下層内視鏡の最新の進歩─“内視鏡的外科手術(A-FES)”への道程
286巻14号(2023);
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内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の確立により,粘膜および粘膜下層病変までの切除は,標準治療となった.内視鏡治療に残された課題のひとつは,内視鏡的全層切除術(EFTR)を含む深層切除法(EDLD)であり,その組織欠損の閉鎖法の確立である.1 つの方向性は,“外科手術の縫合にあたるものを内腔側から行う手法”であり,もう1 つの方向性は“クリップと支持糸を駆使して内腔側から閉鎖する手法”である.それぞれ着実に創意工夫が進んでおり,ここに筆者の視点から概説したい.一方,POEM(per-oral endoscopic myotomy)にはじまる粘膜下層内視鏡は,3rd space での治療という,これまでの外科手術・内視鏡治療のいずれにも該当しない新たな内視鏡治療領域を生んだ.食道アカラシア,咽頭食道憩室,傍横隔膜食道憩室,食道噴門粘膜下腫瘍,胃不全麻痺などに適応され,従来,外科手術で行われていたものが,さらに低侵襲の内視鏡手術として施行できるようになった.本稿ではこれらについても概説する. - 消化器外科
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手術機器の進歩が切り拓いた現在の内視鏡外科および今後の展望
286巻14号(2023);
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内視鏡外科の発展は外科医の技術の進歩だけでなく,手術機器の進歩によってもたらされたといっても過言ではない.特に4K や8K などの解像度の高い画像や超音波凝固切開装置,ベッセルシーリングシステム,自動縫合器や自動吻合器などの手術機器の登場は,内視鏡外科の短所を完全に補完した.また手術支援ロボットの登場は,世界の内視鏡外科の現状を革新的に変化させた.それ以外にもトロッカーやクリップ,リトラクターまで,さまざまな手術機器の進歩が現在の内視鏡外科の発展を支えている.手術機器の進歩が今後のさらなる内視鏡外科の発展を支えていくことに疑いの余地はない. -
内視鏡外科手術における遠隔手術・教育の進歩
286巻14号(2023);
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外科医療において外科医不足,地域偏在,女性外科医割合の増加,がん治療成績の格差など,解決すべき問題に直面している.これらの解決には多方面からのアプローチが必要であるが,ひとつのツールとして遠隔手術が重要である.遠隔手術の実現にはインフラの整備,法や制度整備,指導医の養成などの課題があり,筆者らも企業と共同で低遅延通信システムを開発し,遅延時間の短縮を実現した.さらに関連する学会,省庁,事業体,企業の産官学一体となったプロジェクトが組まれ,実証実験が行われている.遠隔手術により外科治療の体制が改善し,患者にとってよりよい治療を享受できるようになることが期待される. -
胸部食道癌に対する内視鏡下手術の進歩─ロボット支援食道切除・胃管再建術
286巻14号(2023);
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胸部食道癌に対して内視鏡下手術が導入されてから約30 年が経過し,近年はロボット支援手術の普及が急速に進んでいる.また,局所進行癌における集学的治療の進歩に伴い,外科治療の位置づけが見直され,低侵襲手術による高い局所制御が求められている.ロボット支援手術は従来の内視鏡下手術に比べて多くのメリットを有するが,現時点で従来法に比べて明らかな客観的優位性は示されていない.食道癌手術において,特に上縦隔郭清の操作は難易度が高く,手術成績にも直結するが,ロボット支援手術では従来法に比べて神経や周囲臓器に対して愛護的でありながら,より精緻な操作が可能である.難易度の高い食道癌手術において,ロボット支援手術のメリットを最大限に生かすことにより,汎用性・再現性の高い手術の実践が求められている. -
胃癌に対する内視鏡手術の進歩
286巻14号(2023);
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Stage Ⅰ胃癌に対する腹腔鏡手術は,これまでランダム化比較試験などのエビデンスが積み重ねられ,2021 年の『胃癌治療ガイドライン 医師用2021 年7 月改訂 第6 版』では標準治療として推奨されている.進行胃癌に対しても日本,韓国,中国から開腹手術に対する非劣性を示すエビデンスが報告され,ガイドラインの速報で標準治療として推奨された.また近年,進歩の著しい手術支援ロボットを用いた胃癌手術については,先進医療B の枠組みで行われた多施設共同単群前向きコホート研究で合併症を減少させることが示された.それを受けて2018 年から保険適用となり,2022 年には診療報酬上の加算が認められた.それに伴って今後,ますますロボット支援胃切除術(RG)が増加していくと考えられるが,費用対効果の改善,より有用性の高いデバイス開発,トレーニング法,SDGs(sustainable development goals)への配慮など,解決すべき課題は多くある.現在,ロボット支援胃癌手術の腹腔鏡胃癌手術に対する優越性を検証するJCOG1907試験が進行中であり,結果が待たれる. -
大腸癌に対する内視鏡手術の治療戦略と今後の展望
286巻14号(2023);
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大腸癌に対する低侵襲手術の普及は著しく,腹腔鏡手術,ロボット支援手術,transanal minimally invasive surgery(TAMIS),transanal total mesorectal excision(taTME)など,さまざまなアプローチ方法がある.特に,2018 年4 月からロボット支援直腸切除・切断術,2022 年4 月からロボット支援結腸悪性腫瘍手術が保険収載され,大腸癌に対するロボット支援手術の件数は増加している.ロボット支援手術のエビデンスとして,周術期や腫瘍学的な安全性は示されている.また肥満患者や男性患者などの難易度の高い症例で低い開腹移行率と手術時間・術後在院期間の短縮が示唆されているが,開腹手術や腹腔鏡手術と比較してロボット支援手術の優越性に関する明確なエビデンスはない.今後,ロボット支援手術の有用性を明らかにしていくために,大規模なRCT の結果が待たれる.いずれにせよ,再発のリスクや患者のQOL を考え,症例ごとにそれぞれの方法のメリット・デメリットを考慮し,適切に手術アプローチを選択する必要がある. -
低侵襲肝切除─腹腔鏡およびロボットを用いたアプローチ
286巻14号(2023);
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低侵襲肝切除はこの10~15 年の間に長足の進歩を遂げ,多くの肝切除術式の標準的アプローチとなった.開腹肝切除に比較して,創部の小ささや整容性,創痛の低減という身体的メリットだけでなく,気腹や拡大視野での操作による術中出血量の低減,術後合併症率の低下,早期回復による在院日数の短縮などのメリットをもたらした.また,悪性疾患における長期成績も開腹手術に比べて遜色なく,抗がん治療モダリティとして信頼性の高いアプローチとなった.さらに,低難度のみならず高難度術式にも適応が拡大され,多くの患者にメリットを提供できるようになった.また最近,新規プラットフォームであるロボット支援手術も保険収載された.ロボットの機能的利点をいかすことで,肝切除の低侵襲性や安全性がさらに向上し,また腹腔鏡手術では適用困難な手技にも適用することで,より多くの患者に低侵襲肝切除を提供できると期待する. -
膵臓を対象とした内視鏡手術の進歩
286巻14号(2023);
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膵臓の解剖学的・生理学的・病理学的な特徴のため,膵切除術は複雑かつ難度,侵襲性,合併症の頻度の高い手術であり,膵疾患を対象とした内視鏡手術の普及は,胆囊摘出術や上部・下部消化管外科領域と比べて遅れてきた.近年,その臨床研究のほとんどが後ろ向き研究ではあるが,腹腔鏡下手術,ロボット支援下手術を総称した低侵襲膵切除術に関するエビデンスも徐々に集積されている.わが国では,低侵襲膵切除術に関する施設基準や保険適用が厳格に定められ,その導入が安全に進められてきた.腹腔鏡下膵体尾部切除術がランダム化比較試験などのエビデンスを背景に一般的に普及しはじめた一方で,腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(PD)やロボット支援下膵切除術の有用性を明確に示すエビデンスはまだなく,わが国では施行可能な施設は限られている.ロボット支援下膵切除術は開腹手術や腹腔鏡下手術と比較して多くの利点がある可能性が示されているが,費用や長い手術時間,手技や成績が安定するまでに多くの手術経験を要するなどの問題点があり,これらの解決と質の高いエビデンスの構築が望まれる. - 産科婦人科
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子宮鏡手術の新たな展開
286巻14号(2023);
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子宮鏡手術は子宮粘膜下筋腫,子宮内膜ポリープなどの子宮腔内病変によって生じる症状の改善や妊孕性の向上に寄与する低侵襲手術である.手術数は年々増加しているが,従来の子宮鏡手術は入院,手術室での麻酔管理が必要である.また手技習得が困難であり,パワーソースの使用などで一定頻度の合併症を生じる.Office hysteroscopy で使用する最近登場した細径子宮鏡や組織摘出回収システムであるモルセレーター/シェーバーを用いる子宮鏡手術は,対象症例に制限があるもののパワーソースを使用せずに局所麻酔や鎮静での日帰り手術が可能である.日本子宮鏡研究会では,これらの子宮鏡手術が安全・安心な術式として普及することを目的に,子宮鏡ハンズオンセミナーや子宮鏡教育セミナーを開催している. -
骨盤臓器脱に対する腹腔鏡手術とロボット支援手術の現状
286巻14号(2023);
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骨盤臓器脱(POP)は,前腟壁,後腟壁,子宮頸部,腟尖部(子宮摘出後の場合)の1 つ以上が下降することと定義される.POP 手術には長い歴史があり,すでに行われなくなって久しい手術も多くあるが,現在では主に,経腟手術と経腹手術(主に腹腔鏡またはロボット支援手術)の2 つの主流がある.子宮を懸垂する機能が損なわれているDeLancey 分類レベルⅠ(以下,レベルⅠ)のPOP に対しては,仙骨腟固定術を代表とする腹腔鏡またはロボット支援手術による補強は効果的であると考えられている.一方,典型的な従来型手術である経腟手術の腟式子宮全摘術+前後腟壁形成術は,再発率が高いこと,腟壁の過剰な切除,狭小化を起こす懸念があることが指摘されており,レベルⅠ補強を行うことが理論上難しいこともあるため,行われる頻度が減少している.下垂の過半数はレベルⅠ下垂が原因であり,腟壁形成だけでは再発率が高いことも指摘されていること,レベルⅠ補強を追加することにより,POP 再発率を高めずに生理的に近い修復が可能になると考えられていることから,POP 手術において内視鏡手術の果たす役割は大きくなっている.仙骨腟固定術は人工物・メッシュを利用する手術であるが,メッシュの長期使用に関するデータが乏しいこと,異物反応やメッシュびらんの発生といった合併症がありうることが臨床上,問題になり,2022 年に保険収載された腟断端挙上術は,内視鏡下で行われるnative tissue repai(r NTR)であることから,臨床医にとっては習得しておきたい術式である.本稿では,POP に対して用いられる内視鏡手術として,傍腟形成術,腹腔鏡またはロボット支援下仙骨腟固定術(RSC),腟断端挙上術に焦点をあて,これら術式の背景,方法論,ポイントについて紹介する. -
子宮内膜症における内視鏡手術
286巻14号(2023);
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子宮内膜症とは,子宮内腔に存在するはずの子宮内膜組織が子宮外の骨盤腔などで増殖・浸潤する疾患で,生殖年齢の女性の約10%が罹患しているとされる.主たる自覚症状は,月経痛,下腹部痛,腰痛,性交痛,不妊があり,患者のQOL を著しく低下させる疾患である.治療には,保存的治療と外科的治療がある.外科的治療については卵巣子宮内膜症性囊胞,深部子宮内膜症,腹膜病変,疼痛のそれぞれについて有効性が報告されている.ただし,手術により病変を完全に除去・修復することはできず,逆に卵巣機能を損ない妊孕性を低下させることもありうる.そのため,挙児希望のある子宮内膜症患者においては,体外受精との兼ね合いも視野に入れつつ,いつどのような手術を施行するかを決定する必要がある.子宮内膜症は婦人科疾患以外にも,不安定狭心症,心筋梗塞,アテローム性動脈硬化の発症のリスクとなることが明らかになっている.さらに,卵巣子宮内膜症性囊胞は卵巣癌を発症するリスクを内包しており,慎重に管理していく必要がある. -
子宮体癌の内視鏡手術─ロボット支援手術を含む
286巻14号(2023);
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子宮体癌は,婦人科癌のなかで最も多く,近年増加傾向にある癌であるが,その74%が子宮に限局するⅠ期で発見され,手術療法が中心的な治療となる.手術においては,術後疼痛の軽減や整容性が保たれ,拡大視野による微細な手術操作により出血量は少なく,手術侵襲に伴う腸閉塞などの術後合併症が少ないこと,早期子宮体癌において開腹手術と予後に差はなく,根治性は同等であることから,近年,腹腔鏡手術やロボット支援手術が普及してきている.子宮体癌では肥満症例が多く,術中合併症の発症リスクが高いことが知られているが,合併症の点からも開腹手術よりも腹腔鏡手術やロボット支援手術の方が術中出血量,周術期合併症も有意に低い.さらにロボット支援手術に十分に習熟した術者であれば,腹腔鏡手術に比べてロボット支援手術の方が周術期合併症の発症は同等であり,開腹手術への移行も少ない点からも適していると考えられる.子宮体癌に対する内視鏡手術では,腹腔鏡手術からはじまり,その後,ロボット支援手術が導入され,今後さらにロボット支援手術が中心的な位置づけになると思われる. -
子宮頸癌の内視鏡手術─現状と将来展望
286巻14号(2023);
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子宮頸癌に対して行われる根治手術である広汎子宮全摘術の歴史は古く,1928 年に京都大学の岡林博士により系統的術式が発表され,現在に至るまで基本術式となっている.近年,鏡視下での広汎子宮全摘術が行われるようになり,腹腔鏡下広汎子宮全摘術が先進医療A を経て2018 年に保険適用となった.しかし,ロボット支援広汎子宮全摘術は先進医療B を経たものの,現時点で保険収載には至っていない.2018 年に発表された鏡視下手術と開腹手術のランダム化比較試験(LACC trial)では,鏡視下手術の予後が開腹手術に比べて明らかに悪いことが報告され,世界中の婦人科腫瘍医が衝撃を受けた.鏡視下手術の予後が悪くなる要因として技術的な習熟度のほかに,気腹圧で助長されるcancer cell spillage の問題が指摘され,その対策として子宮マニピュレーターの不使用,腟カフの形成による癌病変の被包化,リンパ節や摘出子宮を袋に入れてからの取り出しなど,さまざまな工夫が試みられている.国内外でこれらを踏まえた新たな臨床試験が立ちあがり,鏡視下手術の新たなエビデンスの構築が望まれている. - 呼吸器
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中枢気道病変の診断
286巻14号(2023);
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中枢気道病変の診断は,気管支鏡手技の基本である.しかし,近年の中心型肺癌の激減により,末梢肺病変からの検体採取,あるいは肺門・縦隔病変からの超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)が気管支鏡の主な役割となりつつある.特に若手医師は中枢気道病変の診断や対応の経験が少ないため,異常所見を見すごさないように注意が必要である.中枢気道病変では,通常の白色光観察に加え,自家蛍光気管支鏡(AFB)や狭帯域光観察(NBI)を併用することで病変をより明瞭に観察することができる.加えて,日ごろから日本呼吸器内視鏡学会の気管支鏡所見分類に沿って形態を把握し,病変の主座を意識しながら生検を行うことは確実な診断につながる.本稿では,中枢気道病変の診断で注意すべき点と実際の検体採取方法について概説する. -
個別化医療を見据えた末梢肺病変の気管支鏡診断
286巻14号(2023);
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この20 年ほどの間にさまざまな技術が導入され,末梢肺病変に対する気管支鏡を用いた経気管支生検の診断率は着実に向上してきた.しかし,個別化医療が急速に浸透している現在の肺癌診療においては,診断をつけるだけではなく生検検体を用いた遺伝子解析や腫瘍免疫微小環境の評価が必要不可欠となっており,これらの検査に適した良質な検体を十分量採取することも求められている.診断率を高めるための技術としてラジアル型気管支腔内超音波断層法(R-EBUS),仮想気管支鏡ナビゲーション,極細径気管支鏡などがあり,状況に応じてこれらを適切に組み合わせることが重要である.本稿では,それぞれのこれまでの知見を中心に解説する.また,良質な検体を十分量採取するための技術として期待されている,クライオ生検についても述べる. -
超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)─肺門・縦隔病変に対するアプローチ
286巻14号(2023);
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肺門・縦隔病変には,悪性腫瘍によるリンパ節転移や炎症性病変などがある.これらの病変に対して,低侵襲かつ診断精度の高い方法のゴールドスタンダードとして位置づけられているのが,超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)である.EBUS-TBNA は,気道に接する病変に対し,超音波画像を観察しながらリアルタイムに穿刺生検する方法である.特に肺癌診療においては,組織診断,リンパ節ステージング,治療に直結する遺伝子変異検査,programmed cell death 1-ligand 1(PD-L1)検査などのバイオマーカー検査が必須であり,EBUS-TBNA は重要な役割を果たす.本稿では,EBUS-TBNA の方法,適応,新技術について概説する. -
呼吸器診療におけるクライオの位置づけ
286巻14号(2023);
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気管支鏡下クライオ生検が2017 年に薬事承認とともにわが国へ導入されてから,およそ6 年が経過した.機器導入済施設数は130 施設を超え,さらに拡がっていく様相を呈している.本手技は経気管支鏡下でありながら,これまでになく大きな検体が採取できるという点が特徴であり,気管支鏡診断の発展という点において導入当初から大きな期待がされてきた.一方で,採取検体が大きいために,合併症の発症率が従来の気管支鏡下生検法に比較して多いことがあり,導入黎明期では安全性についての議論が先行し,診断精度に関する検討は不足がちであった.しかし,その診断についてのエビデンスも,近年では間質性肺炎と肺がんの領域で充実しつつある.本稿ではクライオ生検が発展した経緯について述べるとともに,文献的考察を交えながら,その活用領域について詳説したい. -
呼吸器領域における低侵襲手術の歴史と実際
286巻14号(2023);
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現在行われているすべての手術手技の発展は,偉大な先人たちの努力によるものであるが,手術を人間の手で行う限り,そろそろ限界に近づいているのかもしれない.呼吸器低侵襲手術は今2 つの道を進んでいる.1 つはより低侵襲を目指す道,もうひとつは低侵襲でありながら高精度な手術を目指す道である.現時点では,前者は単孔式手術であるし,後者はロボット支援手術である.現在,肺癌手術や胸腺摘出術において最も低侵襲と思われる単孔式手術や難易度の高い手術も可能なロボット支援手術が広く行われるようになっているが,この2 つの道は単孔式ロボット支援手術の出現により融合しようとしている.人間の手で行う手技の発展には限界があると思われるが,ロボットシステムを含めた工学の発展に限界はない.機器の発展は呼吸器外科領域においても,より低侵襲で,より高精度な手術を可能にするであろう. -
気管支鏡治療
286巻14号(2023);
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Interventional pulmonology という用語は,European Respiratory Society/American Thoracic Society (ERS/ATS)より「the art and science of medicine as related to the performance of diagnostic and invasive therapeutic procedures that require additional training and expertize beyond that required in a standard pulmonary medicine training programme」と定義されている1).ここで述べる“invasive therapeutic procedures”には,光線力学的治療や高周波治療,アルゴンプラズマ凝固法(APC),レーザー治療,ステント挿入,腔内照射などが含まれている.本稿では,これらの気管支鏡を用いた治療手技“therapeutic bronchoscopy” について概説する. - 循環器
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急性冠症候群の病態と不安定プラーク
286巻14号(2023);
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急性冠症候群(ACS)とは,組織学的に脆弱で不安定な冠動脈粥腫(不安定プラーク)が破綻し,血栓が形成されることにより血管内腔が急速に狭小化あるいは閉塞し,不安定狭心症,急性心筋梗塞,心臓突然死といった一連の疾患を引き起こす症候群である.病理学的報告の蓄積により,ACS の発症には,プラーク破綻と血栓形成が関わることが知られている.不安定プラークは将来ACS を発症する危険性の高い破裂しやすいプラークと定義され,血管内イメージングによる検出が試みられている.血管内視鏡では,黄色調によってプラークを評価し,不安定プラークの検出や予後予測が試みられている.本稿では,ACS の病態ならびに血管内視鏡で観察される不安定プラークの特徴について概説する. -
冠動脈ステント留置後の血管反応
286巻14号(2023);
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血管内視鏡はフルカラーの実像で評価することのできる唯一の血管内イメージングデバイスである.血管内視鏡は,冠動脈ステント留置後の血管反応として,新生内膜被覆,黄色プラーク,血栓の評価が可能である.第一世代薬剤溶出性ステント(DES)は,金属ステントでは解決できなかった再狭窄の問題を克服したが,留置1 カ月以降に血栓症を発症する現象である遅発性(1 カ月~1 年)・超遅発性ステント血栓症(1 年以降)(LST/VLST)という新たな問題を起こした.このLST/VLST のリスクを評価するうえで,血管内視鏡は生体内の血管治癒を評価することのできるデバイスであるため,大きな役割を果たしてきた.さらに第一世代DES の問題を克服するために,第二世代・第三世代DES が開発され,現在広く使用されている.本稿では,各世代DES の血管内視鏡所見を提示し,血管内視鏡の有用性について文献的考察を踏まえ概説する. -
大動脈内視鏡が示唆する新しい疾患概念
286巻14号(2023);
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冠動脈をはじめとする血管内治療において,血管内イメージングデバイスは非常に大きな役割を果たしてきた.なかでも血流維持型血管内視鏡(NOGA)は,血管内腔の性状や動脈硬化の程度,血管内治療後の血管性状変化などを直接的に観察可能であり,日本発の血管内イメージングデバイスとして,本領域の発展に貢献してきた.2014 年に,新たにNOGA を用いた大動脈内腔の観察方法が考案され,従来外科手術や剖検以外では観察が十分ではなかった大動脈壁の性状を詳細に観察可能となった.大動脈の多様な動脈硬化所見や血管内皮損傷,またこれらの所見の臨床的な意義や血管内治療への応用などが次々と報告されている.本稿では,NOGA による大動脈観察の方法や現時点までに明らかとなっていること,今後の展望として期待されていることなど,紙幅の限り論じていく. -
生体内肉眼病理としての血管内視鏡
286巻14号(2023);
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血管内視鏡は,血管内超音波検査(IVUS)や光干渉断層法(OCT/OFDI)などのほかの冠動脈イメージングモダリティと異なり,血管内を直視下に観察できるため,色調のある奥行きを持った3D 画像が得られ,ダイナミックな動きを観察することができる.冠動脈プラークや血栓の診断に優れ,生体内肉眼病理といわれている.冠動脈疾患の進展機序を考えるうえで重要な情報をもたらし,これまで冠動脈疾患の病態解明に重要な役割を果たしてきた.本稿では,急性心筋梗塞やステント血栓症の血管内視鏡像を提示し,生体内肉眼病理としての血管内視鏡の役割を考える. - 神経
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神経内視鏡を用いた水頭症の手術
286巻14号(2023);
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神経内視鏡による水頭症手術は歴史も古く,1 世紀も前から行われてきたが,その変遷には紆余曲折があり,安全性の高いシャント術が確立した当初は,一時期手技として廃れた期間もある.わが国では,ようやく1990 年代になり低侵襲的かつ生理的な治療としてふたたび脚光を浴び,軟性鏡による現在の神経内視鏡下第三脳室底開窓術(ETV)手技が確立され,閉塞性水頭症の治療の第一選択となった.近年,脳脊髄液(CSF)の総体流が一定方向に流れるbulk flow theory に懐疑的な専門家の意見が多く報告されるようになり,ETV により第三脳室底部から橋前槽への交通をつける意義は,CSF の拍動が脳室から脳実質へもたらす負荷を脳槽へ逃す緩衝作用にあるとされる.わが国では軟性鏡による手術手技が世界的にも特有の発展を遂げ,脳室内周辺の病変に対する内視鏡手術を確立しており,脳神経外科の領域では軟性鏡の扱いを含めた神経内視鏡の専門医を多数輩出している. -
内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術の進歩と展望
286巻14号(2023);
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下垂体および下垂体近傍腫場に対する経鼻的腫瘍摘出術は,近年の手術機器の進歩により内視鏡手術が主流となっている.そして,この術式は2012 年の診療報酬改定で新たな術式として追加された.内視鏡手術はトルコ鞍上部や海綿静脈洞など,従来の顕微鏡手術では死角となる部分も観察・摘出可能であり,手術成積が向上している.また従来開頭手術が行われてきた頭蓋咽頭腫や髄膜腫など,他の頭蓋底腫瘍に対しても,トルコ鞍外の頭蓋底の骨を削除し,術野を拡大することによって経鼻的手術が可能となった.一方,2006 年から日本神経内視鏡学会により技術認定制度が発足した.この学会で主催されている講習会で神経内視鏡手術の基本的手技を学ぶことにより,脳神経外科領域においても内視鏡手術の裾野が大きく広がっている.今後,若手の脳神経外科医を中心にこの術式が広まっていくものと思われる. -
内視鏡下キーホール手術
286巻14号(2023);
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内視鏡の特徴は,小さな入り口から視点が術野内に入り,広い視野角を持つことである.この特徴は脳神経外科においては低侵襲性だけでなく,骨構造や血管,神経などによる死角を観察できることで根治性が上がるという点が重要である.下垂体病変に対する内視鏡下経鼻手術は広く普及し,一般的に行われるようになった.開頭手術における内視鏡の使用は広く普及はしていないが,開頭を含めて骨削除を最小限とすることで根治性を高める可能性があり,注目されている.狭い術野に内視鏡自体が入ることにより器具と内視鏡の干渉が生じる点が問題であり,この術式を実現させるためには内視鏡を持つスコピストが適切な位置に内視鏡を置くことと,道具の工夫が必要である.また近年登場した外視鏡は,3D モニターを見て行う手術であり,内視鏡と相性がよい.本稿では,内視鏡と外視鏡を組み合わせ,必要最小限の開頭で内部を観察し,腫瘍を摘出する取り組みについて報告する. -
神経内視鏡による脳血管障害の外科治療
286巻14号(2023);
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脳血管障害の外科領域では,脳動脈瘤に対する顕微鏡下開頭クリッピング術の手術支援と,脳出血に対する内視鏡下血腫除去術に,内視鏡が主に使用される.脳動脈瘤クリッピング術では,脳深部や頭蓋底構造物の背面が顕微鏡視野の死角となりうるが,側視鏡を用いた内視鏡支援は,この死角を明瞭に描出し,手術の安全性と確実性を向上させる.また,近年では内視鏡下蛍光血管撮影も開発され,動脈瘤の完全閉塞と周囲血管の温存をより確実に確認することができるようになっている.脳内血腫は従来,開頭術あるいは定位的吸引術で除去されてきたが,透明シースを用いた内視鏡下手術により低侵襲,かつ高い精度で血腫除去が可能となった.被殻や皮質下,小脳などの脳内出血,さらには脳室内の血腫除去術において内視鏡手術が広く普及するようになってきている. - 泌尿器
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尿路結石に対する最新の内視鏡治療
286巻14号(2023);
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わが国の尿路結石の罹患率は,10 年ごとに行われる全国疫学調査を基に調べられている.最新の2015 年の調査から,この40 年間で約2 倍に罹患率が増加していることがわかる1).尿路結石に対する治療としては,薬物療法などによる自然排石を期待する保存的治療と,積極的治療としての体外衝撃波結石破砕術(ESWL),経尿道的腎尿管砕石術(TUL),経皮的腎尿管砕石術(PCNL),経皮・経尿道的腎尿管砕石術(ECIRS),開腹/体腔鏡/ロボット支援腎尿管結石摘出術がある.本稿では,近年の技術進歩により結石治療における割合が増えているそれぞれの積極的治療の特徴や適応を解説し,最新の尿路結石に対する内視鏡治療について概説する. -
わが国における新規手術支援ロボットの導入とその特徴
286巻14号(2023);
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わが国では,2012 年にはじめてロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が保険収載されて以降,約6 年間はロボット支援腎部分切除術を含めた泌尿器科領域でのロボット支援手術が先陣を切って広がってきた.2018年以降は消化器外科や胸部外科,婦人科領域などへのロボット支援手術の保険収載が拡大され,現在では多くの診療科において保険診療によるロボット支援手術が日常的なものとなっている.一方,ロボット支援手術の広がりとともに,近年,世界各国において手術支援ロボットの開発も急速に進んでいる.現時点(2023年4 月)で,わが国においてロボット支援手術による保険診療が認められている機種を販売している企業は3社あり,本稿ではそれぞれの機種における特徴や新機種導入時の注意点などについて概説する. -
泌尿器科におけるロボット支援手術の現状
286巻14号(2023);
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わが国の泌尿器外科領域における腹部メジャー手術のほとんどがロボット支援下に実施されている.本稿では,特にわが国への導入後早期に保険収載されたロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP),ロボット支援腎部分切除術(RAPN),ロボット支援根治的膀胱全摘除術(RARC)につき解説する.国産手術支援ロボットhinotoriTMは,わが国の多くの外科医の意見を集約することにより,さらなる機能改善を果たしていくことが期待され,各種手術支援ロボットの上市により,国民に対して安価で質の高い手術が届けられるようになることや,今後の機能付加による医療革新が期待される. -
前立腺肥大症に対する最新の低侵襲的外科治療
286巻14号(2023);
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前立腺肥大症に対する従来の基本的な手術療法は切除,蒸散,核出により前立腺腺腫組織の過不足のない除去を伴う方法である.いずれの方法も,原則は入院したうえで手術室において麻酔下に施行され,出血のリスクを伴うものであった.このため,高齢者や併存疾患を有する患者に対しては,手術適応があったとしてもその実施が困難な症例があった.低侵襲的外科治療(MIST)は,侵襲性を低く抑えながらある程度の有効性を担保する方法であり,薬物療法と従来の手術療法の中間に位置づけられる.現在,わが国においては経尿道的前立腺吊り上げ術(PUL)と経尿道的水蒸気治療(WAVE)が保険承認となっており,全国に施行可能施設が増加している. -
尿路上皮癌に対する光力学診断を用いた尿路内視鏡手術
286巻14号(2023);
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昨今の癌医療の進歩はめざましく,感度の高い早期診断ツール,低侵襲を目指した治療,新規薬物の開発などによって癌患者の予後とquality of life(QOL)は改善しつつある.わが国で,経口5-アミノレブリン酸塩酸塩(5-ALA)を使用したイメージング技術が“経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”を目的として使用されはじめて5 年以上が経過した.泌尿器科領域における蛍光イメージング診断技術に関する興味はますます膨らんでくるものと推察され,臓器横断的な応用・普及の動きは加速している.本稿では,光力学診断(PDD)の原理からはじめ,膀胱癌に対するPDD,上部尿路癌に対するPDD,そしてPDD の将来展望について概説する.

