Volume 287,
Issue 3,
2023
-
特集 異所性脂肪と心血管病
-
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 181-181 (2023);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 182-186 (2023);
View Description
Hide Description
血管周囲脂肪組織(PVAT)はさまざまな生理活性物質を放出する内分泌臓器として研究が進み,動脈硬化の進展にも深く関わることが示されている.また,PVAT で引き起こされる慢性的な炎症は動脈硬化に影響を与えることが報告されている.最近,冠動脈バイパス術(CABG)において大伏在静脈グラフト周囲の脂肪組織を温存したまま使用するNo-touch 法によりその長期成績が改善したとの報告以来,CABG のグラフト選択について世界的にさまざまな議論がなされている.PVAT から放出される血管拡張因子やvasa vasorumの温存がグラフト成績に重要な役割を果たすと考えられているが,筆者らは以前,CABG に使用するグラフトのPVAT の性質に着目して研究を行い,内胸動脈および大伏在静脈のPVAT は炎症性が低い性質を有していることを示した.この性質がCABG におけるグラフトPVAT を温存するNo-touch 法によるグラフトの開存率向上に一部寄与している可能性が示唆される.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 187-190 (2023);
View Description
Hide Description
心臓周囲脂肪はその名のとおり,心筋や冠動脈周囲に存在する異所性脂肪であり,近年の研究において冠動脈疾患のみならず心房細動や心不全との関連が報告されている.さらに,心臓周囲脂肪の蓄積が冠微小循環障害とも関連することがわかってきており,肥満関連心疾患の病態機序の解明につながることが期待されている.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 191-195 (2023);
View Description
Hide Description
過剰な心臓周囲脂肪(EAT)蓄積は,冠動脈疾患や心不全の危険因子であることが知られており,EAT は循環器疾患予防のための新たな治療標的と考えられる.心血管病の危険因子となるEAT を特異的に減少させる薬剤は確立していないが,EAT を減少させるためには運動・食事などの生活習慣病の改善を基本とし,薬剤としては代謝改善薬や抗炎症薬が候補としてあげられる.その候補としてスタチン,エゼチミブ,SGLT2 阻害薬,GLP-1 受容体作動薬,proliferator-activated receptors(PPARs)アゴニストなどがあげられる.血管内物質のみを標的とした従来の治療に加えて,冠動脈,心筋を直接外側から包み込むEAT に着目した治療により,さらなる心血管イベントの抑制が期待できる可能性がある.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 196-202 (2023);
View Description
Hide Description
哺乳類には,大きく分けて白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞が存在することが古くより知られ,白色脂肪細胞は皮下や消化管,心臓などの臓器周囲に広範かつ多量に存在し,脂肪酸をエネルギーとして蓄積し,必要時に血液中に遊離脂肪酸として放出する“エネルギーの貯蔵と放出”という役割を主に果たしている.一方で近年,異所性脂肪である心外膜脂肪と心血管疾患の関連について多くの研究・報告が行われ,その重要性が指摘されており,脂肪細胞と臓器連関についての理解はより一層の広がりをみせている.そのなかでも,心房筋に深く浸潤する心外膜脂肪組織が,心房細動を惹起しうる新たな要因として注目されている.この心房筋に浸潤する心外膜脂肪組織の理解を深めることで,心房細動抑制へとつながることが期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 203-208 (2023);
View Description
Hide Description
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,肥満や2 型糖尿病の罹患率増加に伴い,世界中で患者数が増加している.NAFLD 患者は,心血管疾患と共通のリスク因子を多く持つため,肝疾患のみならず心血管イベント発症にも注意が必要である.しかし,NAFLD の診断がなされていない患者も多くいることが推測され,心血管疾患の予防や治療の観点からも,まずNAFLD 患者を同定することが重要である.現時点ではNAFLD と心血管疾患をつなぐ病態生理はまだ不明な点も多く,有効な治療戦略は確立していない.NAFLD の重要性を理解し,診断,潜在リスクの評価,適切な心血管疾患スクリーニングを行いながらフォローアップしていくことが重要である.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 209-213 (2023);
View Description
Hide Description
わが国において心疾患による死亡数は悪性新生物に次ぐ2 番目の多さであり,心疾患のなかでも心不全による死亡が最も多い.また心不全は死亡率,再入院率も非常に高いことが知られており,社会的にも大きな問題となっている.心不全患者の病態を解明し治療を行うにあたり,心臓だけに注目するではなく,他臓器連関に着目することは極めて重要である.近年,骨格筋や脂肪組織も生理活性物質を産生・分泌する内分泌臓器と認識されるようになってきており,異所性脂肪と心血管疾患の関連も注目されている.異所性脂肪とは高脂肪食や運動不足により過剰な遊離脂肪酸が皮下脂肪や内臓脂肪以外の臓器に蓄積した組織である.異所性脂肪のひとつに筋肉内脂肪があるが,筋肉内脂肪に関してはインスリン抵抗性などとの関連について多数報告があるものの,近年まで心疾患との関連に関する報告はほとんど認めなかった.他臓器連関が注目されている現在,筋肉内脂肪と心疾患との関連について,自験例を含めた最近の文献を交えて概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 214-218 (2023);
View Description
Hide Description
肥満による異所性脂肪の蓄積と分布異常は,脂肪毒性を介してインスリン抵抗性を惹起し,メタボリックシンドロームや2 型糖尿病の基盤となり,慢性腎臓病(CKD)の進行を促進する.異所性脂肪のひとつである腎周囲脂肪は,腎臓を取り囲むように後腹膜腔に位置し,ユニークな解剖学的特徴を持つ.その機能についてはいまだ解明されていないが,腎周囲脂肪がアディポネクチンを介して腎局所環境に影響を及ぼす可能性が示唆されている.最近では腎周囲脂肪とさまざまな代謝異常や腎障害との関連が報告され,心血管疾患やCKD のリスク要因として注目されている.腎周囲脂肪は腹部超音波を用いて非侵襲的に測定可能であり,メタボリックシンドロームやCKD の新たなバイオマーカーとしての可能性を秘めている.腎周囲脂肪への介入試験も進行中であり,CKD 進展抑制の新たな治療ターゲットになるか,その研究結果が待たれる.
-
連載
-
-
医療システムの質・効率・公正 ─ 医療経済学の新たな展開 13
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 223-227 (2023);
View Description
Hide Description
人間の意思決定の特性を踏まえ自発的な行動変容を後押しする“ナッジ”の実務活用が,国内外で活発化している.しかし同時に,ナッジの効果は短期的であり,異質的であることが指摘されている.ナッジの有効性に疑義を呈し,安易な実務活用に警鐘を鳴らす研究もある.そのような背景を受けて,本稿は3 つの観点から医療健康分野の最新研究を整理する.第1 に,ナッジと金銭的報酬の組み合わせで,行動変容効果は強化されるのか.第2 に,ナッジと金銭的報酬にモバイルヘルスをさらに組み合わせることにどのような可能性があるか.第3 に,どのようなナッジまたは金銭的報酬が運動習慣の形成に寄与するのか,である.
-
遺伝カウンセリング ─ その価値と今後 3
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 228-233 (2023);
View Description
Hide Description
◎遺伝子解析技術のめざましい進歩により,ゲノム解析が一般的になりつつあり,遺伝カウンセリングで扱うゲノム情報量は増大している.ゲノム情報には一塩基多型,コピー数多型,構造多型などの多様性があり,さらに表現型にはエピジェネティック修飾やさまざまな環境要因が影響している.そのため,ゲノム解析データの解釈において,不確実性やあいまい性を伴うデータが検出される頻度も高くなる.遺伝カウンセリングの本質は,これまでと何ら変わりないが,ゲノム情報時代の遺伝カウンセリングでは,解析結果の解釈が困難な場合があることを十分に想定した情報の提供を行い,ゲノムデータにあわせて臨床所見や家族歴を考慮した健康管理を検討し,将来に備えることが重要である.ゲノム情報の多様性の理解において,遺伝カウンセリングが果たす役割は大きい.
-
TOPICS
-
-
癌・腫瘍学
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 219-220 (2023);
View Description
Hide Description
-
病理学
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 221-222 (2023);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
世界の食生活 3
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 234-237 (2023);
View Description
Hide Description
韓国の食として多くの人々が思い浮かべるのは“キムチ”であろう.2013 年には晩秋から初冬にかけてキムチを漬ける慣習である「キムジャン」が「和食:日本人の伝統的な食文化」と並びユネスコ世界無形文化遺産に登録されたことで,“キムチ=韓国の食”という認識は一層世界に広まったといえる.ただ,これも厳密にいえば,世界遺産登録されたのは「キムチ」ではなく,「キムジャン,キムチを漬け,分かち合う文化(김장,김치를 담그고 나누는 문화)」で,キムチを漬ける共同作業でみられる“分かち合い”の精神や,その伝統的な生活慣習が人類の文化遺産と認められたといえる.しかしそうはいっても,世界的にキムチという食の価値を高め,キムチは韓国固有の食と対外的に誇示したかったところにも,この登録活動の狙いがあったことは紛れもない. そこで本稿では,無形文化遺産というブランドを冠するまでに至ったキムチの生い立ちを追う.人々の生活レベルでみたとき,いかにキムチが誕生・定着し,変容し,さらに伝播していったのか,その過程でキムチが,いかに国家の駆け引きに組み込まれていったのかをみていきたい.
-
数理で理解する発がん 4
-
Source:
医学のあゆみ 287巻3号, 238-241 (2023);
View Description
Hide Description
日本人の3 人に1 人はがんで亡くなると推計されている.治療法も増えてきたとはいえ,まだ克服するには至っていない.われわれの体内でがん細胞がどのように出現してくるのかを理解することは,がんに対する有効な治療法を見出すための最初の一歩と言える.発がんのプロセスを理解するのに,一見何の関係もなさそうな“ コイン投げ” を学ぶ必要があると言われると驚くかもしれない.本連載では確率過程の観点から,発がんに至るプロセスを紐解いていく.