Volume 287,
Issue 11,
2023
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特集 生体膜研究の基礎と応用
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 809-809 (2023);
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 810-815 (2023);
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生体膜リン脂質は多様な分子種からなり,細胞や細胞内小器官によっても組成は異なる.また,リン脂質の多様性は多彩な生体機能に影響する.近年,この多様性の形成に関わるリゾリン脂質アシル転移酵素群(LPLAT)の発見から,LPLAT 遺伝子改変マウスを利用できるようになり,生体膜リン脂質を操作した研究が可能になりつつある.本稿では,ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むリン脂質生合成酵素(LPLAT3)を中心に紹介する.また,LPLAT 名は混乱を招いているため,新規命名法を提案した.本稿であわせて紹介したい.
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 816-821 (2023);
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何かのはずみで血管が損傷を受けると出血が起きるが,われわれの体には止血機構が備わっている.一次止血では活性化した血小板が損傷部位に凝集することで傷口を塞ぐほかに,二次止血のための足場形成の役割もあり,とても重要である.また,われわれの体を構成する細胞のうちおよそ1/100~200 の細胞が日々死滅しているが,マクロファージによって貪食されることで速やかに除去される.死細胞が蓄積すると自己免疫疾患の原因となるため,死細胞の貪食もまたわれわれの健康維持には欠かせない.2 つの現象の共通点は,リン脂質スクランブラーゼにより細胞表面の脂質二重膜非対称性を変化させることで引き起こされる,ということである.本稿では,脂質二重膜の非対称性維持とその変化の分子機構,リン脂質スクランブラーゼ研究の今後の展開について考察する
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 822-826 (2023);
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真核生物の細胞内にはさまざまな種類の膜型オルガネラが存在しているが,それらのオルガネラの膜は恒常的あるいは誘導的に分解を受けており,恒常性維持,分化,発生などに貢献している.オルガネラ膜分解の主要なメカニズムとして古くからオートファジーの関与が知られており,オルガネラ全体あるいは一部がリソソームに輸送されることで,リソソーム内の脂質分解酵素によってオルガネラ膜が分解される.一方で近年,脊椎動物にはオートファジーによらないオルガネラ膜分解機構も存在することが明らかになった.本経路では,膜損傷を受けたオルガネラにサイトゾルの脂質代謝酵素PLAAT(phospholipase A/acyltransferase)が局在化することで,それらの損傷膜が選択的に分解される.本稿では,これらのオルガネラ膜分解機構のメカニズムや生理的意義について,最新の知見を交えながら概説するとともに,未解決課題について議論する.
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 827-832 (2023);
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生体膜の基礎研究において,膜機能の理解を深めるために“膜を象り”,膜構造の詳細形態や構造同士の接触などを観察する顕微鏡法が古くから貢献してきた.近年,生体膜の顕微鏡像を三次元レベルで取得する技術が発達し,立体としての生体膜構造を解析することが主流になりつつある.本稿では,筆者らのオートファジー研究を例に,アレイトモグラフィ法を用いた三次元光-電子相関顕微鏡法(3D-CLEM)による生体膜の形態解析を紹介する.
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 833-836 (2023);
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われわれの体を構成している真核細胞は,細胞と細胞外環境を区切る“細胞膜”,細胞内小器官(オルガネラ)と細胞質ゾルを区切る“オルガネラ膜”など,多種多様な生体膜を有している.生体膜は水溶性分子を透過させない物理的なバリアとして機能しているが,多彩な細胞内シグナルを発生させる場としても機能している.そのキープレイヤーのひとつが生体膜を構成する膜脂質である.膜脂質の機能を明らかにしていくうえで,解析対象とする膜脂質の生体膜内での局在・動態を観察することは極めて重要である. 本稿では,各種膜脂質に選択的に結合するタンパク質ドメインを用いた“膜脂質プローブ”を紹介し,次にこれらプローブがどのように膜脂質の細胞内局在解析に利用されているかについて述べる.
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 837-840 (2023);
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神経変性疾患のひとつであるアルツハイマー病(AD)のリスク因子としてアポリポタンパクE(APOE)のバリアントが同定され,新たな病態として脳の脂質代謝不全が示唆されている.近年,AD 患者脳,AD モデルマウス脳,iPS 細胞由来AD 神経細胞でコレステロールエステル(CE)の蓄積が示されている.CE は超疎水性の脂質分子で,高密度リポタンパク質(HDL)や脂肪滴の主成分である.一方,細胞内オルガネラ間の膜接触部位(MCS)のタンパク質であるPDZD8 は,脂質輸送活性を有し,エンドソーム成熟を介して神経の健常性維持に働く.筆者らは,PDZD8 遺伝子欠損(KO)マウスの脳において,リポファジー不全によるCE の異常蓄積や,記憶,情動の異常を見出した.また,知的障害家系でPDZD8 遺伝子変異が知られており,ヒトにおいてもPDZD8 は脳機能に重要であることが明らかになっている.CE 蓄積の原因メカニズムは,AD を含む神経変性疾患の病態解明につながると期待される.
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 841-847 (2023);
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細胞外小胞(EV)はタンパク質,核酸,そして脂質を脂質二重膜に内包した小胞であり,2007 年にメッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)の輸送体として報告されて以来,多くの研究者の注目を集めている.今日までに多岐にわたる生命現象やさまざまな疾患に関与することが明らかにされてきた.なかでもがん領域では,がん細胞による分泌量が多いことから生理的な意義も高く,さまざまな組織型のがんにおいてEV が腫瘍進展,微小環境構築に利用されることが明らかになっている.血液がんのひとつである悪性リンパ腫も例外ではなく,EV が病態進展に深く関与するという報告が数多くなされている.本稿では,筆者らが悪性リンパ腫のなかでも予後不良な組織型であるエプスタイン・バールウイルス(EBV)陽性リンパ腫におけるEV 研究から見出したEV の“脂質”を介した新規作動メカニズム,そして発がんメカニズムについて紹介する.
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連載
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医療システムの質・効率・公正 ─ 医療経済学の新たな展開 19
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 853-857 (2023);
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現代社会において,患者はもとより一般住民のQOL を重視する風潮はもはや当たり前のこととなった.健康関連QOL 尺度は多数開発され,その多さは選択に困るほどであり,QOL 測定・評価を取り巻く環境は現在十分に整っているかのように見える.しかし,研究として測定する機会は増えてきたとはいえ,実際の臨床現場で医療者が自発的に日々の診療行為の一環として測定を行い,臨床の意思決定に活用することが十分に行われているとは言い難い.すなわち,臨床現場や社会での普段使いのハードルの高さが“最後の1 マイル”となり,QOL の活用を決定的に阻んできた.QOL の未来は,いかに研究のみならず臨床現場で広く用いられるか,そしてその結果を,重要な医療情報として医療者・患者・一般住民に認識してもらえるか,にかかっている.本稿では,現場で広く活用してもらうために必要不可欠ともいえる,負担の少ないQOL 評価を実現するためにこれまで進められてきた研究を紹介する.
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遺伝カウンセリング ─ その価値と今後 9
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 859-864 (2023);
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◎小児科領域の疾患は,生活習慣や環境などの影響が少ない状況での発症であることから,外的要因の影響より,遺伝的な要因で発症する疾患が多いことが推測できる.また,その診断を最初に聞くのは保護者であることがほとんどである.一方で,予後不良で成人まで生存できない重篤な疾患を除けば,患児はいずれ成長し,成人診療科へ移行する.そこで,小児科領域ではクライエントのほとんどは保護者であると考えられがちであるが,患児自身もクライエントとなりうる.本稿では,クライエントが保護者,患児自身の双方の場合を想定し述べていきたい.なお,本稿では疾患を特定せず,小児科領域の遺伝カウンセリングの特徴,配慮や工夫について,心理社会的支援を中心に説明する.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 849-850 (2023);
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公衆衛生
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 851-852 (2023);
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FORUM
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世界の食生活 8
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 865-867 (2023);
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数理で理解する発がん 6
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医学のあゆみ 287巻11・12号, 868-872 (2023);
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日本人の3 人に1 人はがんで亡くなると推計されている.治療法も増えてきたとはいえ,まだ克服するには至っていない.われわれの体内でがん細胞がどのように出現してくるのかを理解することは,がんに対する有効な治療法を見出すための最初の一歩と言える.発がんのプロセスを理解するのに,一見何の関係もなさそうな“ コイン投げ” を学ぶ必要があると言われると驚くかもしれない.本連載では確率過程の観点から,発がんに至るプロセスを紐解いていく.