Volume 288,
Issue 6,
2024
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特集 消化器外科領域におけるロボット手術の最前線
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医学のあゆみ 288巻6号, 463-463 (2024);
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医学のあゆみ 288巻6号, 464-470 (2024);
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これまで手術支援ロボットはIntuitive Surgical 社によるda VinciTM Surgical System(以下,da Vinci)が独占していたが,hinotoriTM Surgical Robot System やHugoTM RAS System,SaroaTM,さらには単孔式手術支援ロボットであるda VinciTM SP Surgical System など,近年,さまざまな手術支援ロボットが相次いで登場している.基本設計はda Vinci と同様,エンドスコープを含む4 本のアームから手振れ補正機能,関節機能がついたインストルメントを挿入し,遠隔で操作するスタイルであるが,一体型/独立型アーム,クローズ/オープンコンソール,力覚の有無など,各ロボットがさまざまな特徴を持つ.システムの成熟度やデバイスの豊富さを考慮するとda Vinci が現状総合力としては突出しているが,各ロボットが今後アップデートを重ね,独自の有用性を示すことで,ロボット支援手術はますます発展していくと思われる.
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医学のあゆみ 288巻6号, 471-476 (2024);
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急速にロボット手術の適応が拡大され,食道癌手術においても多くの施設で行われている.筆者らは,標準胸腔鏡手術は左側臥位・頭側モニターで行っているが,その利点は上縦隔から頭側への郭清における微細解剖の把握と剝離の容易性である.ロボット支援食道癌手術(RAMIE)では半腹臥位,4 ポート,助手ポートなしで施行し,左側臥位の利点を生かして反回神経麻痺の軽減を主体に安全に遂行するための工夫を行っている.エネルギーデバイスの選択は最も重要で,神経損傷をケアするために先端形状が細い鉗子のバイポーラを用いて行っている.本稿では,当センターのロボット支援手術の手技について,筆者らの取り組みを解説する.
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医学のあゆみ 288巻6号, 477-480 (2024);
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ロボット手術は高拡大3D-HD 画像による鮮明な視野に加えて,モーションスケール,手振れ防止機能,多関節機能によって,従来の手術と比較してもより精緻な手術操作が可能となる.これまで一般的には困難とされていた高度進行癌・高難度症例においても,その特性を生かすことによって安全な手術に結びつけられるようになってきている.当科では,2018 年の保険収載にあわせてロボット手術を導入し,進行胃癌,術前化学療法症例,大動脈周囲リンパ節転移症例,残胃癌を含め,すべての症例をその適応としてきた.高難度症例においては,剝離層の不明瞭化,高度癒着,主要血管や周囲臓器の損傷が命取りになり,高い観察力と手技,経験が必要と考える.ただし高難度症例にこそ,ロボット手術の特性を十分理解し,その能力を発揮する手術を展開していくことで,その有用性を高めていくことにつながる.本稿では,術前化学療法症例,大動脈周囲リンパ節郭清手技,残胃癌を中心に高難度症例に対するロボット支援手術について概説する.
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医学のあゆみ 288巻6号, 481-485 (2024);
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ロボット支援手術(以下,ロボット手術)は3D HD(三次元高解像度)のカメラを使用し,鉗子は多関節機能と手振れ防止機能を有しているため,従来型の腹腔鏡手術より正確で繊細な手術が行えるとして期待されている.直腸癌や右側結腸癌では腹腔鏡手術と比較した文献が多く報告されているが,脾彎曲部癌や下行結腸癌などの左側結腸癌は発生頻度が低いため,報告が極めて少ない.また,脾彎曲部は脾臓,膵臓,胃などの重要な臓器と近接しており,解剖のバリエーションが複雑で,定型化が難しく,手術難度が高い.さらに,リンパ節郭清範囲,授動の手順,吻合方法なども施設や症例ごとに異なる.本稿では,脾彎曲部近傍の下行結腸癌に対して下腸間膜動脈温存のD3 リンパ節郭清と,挿入孔をステープラーで閉鎖する体腔内オーバーラップ吻合をロボット支援下で行った症例について手技と工夫を概説する.
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医学のあゆみ 288巻6号, 487-492 (2024);
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ロボット支援肝切除は他の腹部領域よりも遅れて導入されたが,2022 年4 月には保険収載され,それ以降,多くの施設でロボット支援肝切除が導入されている.肝切除において,ロボット鉗子の多関節機能が有用であり,解剖学的切除における脈管の確保がスムーズに実施できる.従来の腹腔鏡手術に比べて縫合や結紮が容易であるという特徴は,確実な脈管処理のほか,急な出血時の縫合止血においても有用である.実質切離法については施設間で違いがあり,各施設がよりスムーズで出血の少ない切離法の確立に取り組んでいるところである.実施数の増加とともに,多くの外科医が安全性とその利点について認識するようになることで,今後,ロボットの利点を生かした高難度手術への応用も期待されるところである.
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医学のあゆみ 288巻6号, 493-500 (2024);
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ロボット手術は低侵襲手術として多くの臓器手術に応用されている.わが国では2012 年に前立腺癌に対する切除術が保険適用となり,以降,泌尿器をはじめとして婦人科や呼吸器など,さまざまな領域に適応が拡大された.消化器外科領域では2018 年に胃癌,直腸癌に対してのロボット支援手術が保険適用となった.膵臓に関しては,2020 年4 月に膵癌を含む膵腫瘍に対してリンパ節郭清を伴うロボット支援膵体尾部切除術(RDP)およびロボット支援膵頭十二指腸切除術(RPD)が保険収載を受け,その後,現在まで膵臓領域のロボット手術件数は増加傾向にある.東京医科大学では,2005 年にda Vinci Surgical System(Intuitive Surgical社)が導入され,泌尿器科領域を中心にロボット手術が開始された.膵臓領域では2010 年に倫理委員会承認の下,1 例目のRDP を行い,ロボット支援膵中央切除術を中心にロボット支援膵切除術を経験してきた.RPD は,腹腔鏡膵頭十二指腸切除術(LPD)の経験を積み重ねた後,da Vinci Xi の導入とともに2018 年より開始し,RPD の手術方法を定型化してきた.本稿では,ロボット支援膵切除術の現況と,筆者らが行っているRPD の適応および手術手技について解説する.
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医学のあゆみ 288巻6号, 501-506 (2024);
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2022 年4 月,わが国でほぼすべての消化器外科領域のロボット手術が保険収載された.それに伴うロボット支援手術の症例数の増加に対応するべく,指導医育成や術者教育の環境整備も急務となっている.日本内視鏡外科学会が「ロボット支援内視鏡手術導入に関する指針(全領域共通)」1)を,加えて消化器外科領域に関して「消化器外科領域ロボット支援内視鏡手術導入に関する指針」2)を作成し,安全な導入を目指した普及が進められている.しかし,実際の術者教育は各施設に委ねられているのが現状である.当分野では独自のロボット支援手術の術者要件を設け,安全性を担保したうえで,より早い年次から積極的にロボット支援手術の執刀を経験する方針としている.本稿では,当分野のロボット支援手術の術者要件や術者教育の取り組みについて報告する.
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医学のあゆみ 288巻6号, 507-512 (2024);
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大腸癌に対するロボット支援手術件数は保険収載以降,急速に増加している.ロボット支援手術では安定した術野の確保や繊細な操作が可能で,拡大視効果による解剖構造の明瞭化などの利点がある.また,術野を手術室全体で共有することが可能であり,保存した手術動画を繰り返し見直すことが可能となるため教育的側面でも優れており,さらに遠隔手術指導などへの応用も期待される.長期予後に関しての低侵襲手術の優位性は明確に示されておらず,『大腸癌治療ガイドライン 医師用2022 年版』においても,“腹腔鏡手術は大腸癌手術の選択肢のひとつとして行うことを弱く推奨する”と記載されるにとどまっており,ロボット支援手術に関する記載はないのが現状である.本稿では,大腸癌に対するロボット手術の現況と,今後の展望について概説する.
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TOPICS
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疫学
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医学のあゆみ 288巻6号, 513-517 (2024);
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連載
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医療システムの質・効率・公正 ─ 医療経済学の新たな展開 22
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医学のあゆみ 288巻6号, 518-521 (2024);
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毎年優れた医療技術や医薬品等が開発され,臨床現場で用いられるようになっている一方で,これらの技術のなかには高額な費用がかかるものもある.そこで医療技術等の効率性の評価とこれに基づく医療の実践を目指す方法のひとつとして,費用対効果の評価とその応用があげられる.イギリス,フランス等の諸外国では以前より実施されているが,日本でも中央社会保険医療協議会において医薬品・医療機器の費用対効果評価制度が2019 年度から開始された.指定された品目について費用対効果の評価結果に基づき,必要に応じて価格調整をする仕組みである.制度開始から4 年が経過し,評価品目も増えつつあるが,政策の目的に合致し,かつ学術的にも妥当な方法を用いた制度となるよう今後も検討していくことが重要である.
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遺伝カウンセリング ─ その価値と今後 12
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医学のあゆみ 288巻6号, 522-528 (2024);
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◎地域医療連携の医療行政上の地域的単位は二次医療圏とされている.一方,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー,遺伝専門看護師など,遺伝医療の担い手は三次医療圏の医療機関を中心に活動している.近年,診療における遺伝学的情報は,腫瘍領域では包括的がん遺伝子パネル検査やコンパニオン診断が保険医療で実施されるようになり,産科領域では2013 年に認定を受けた施設で臨床研究として始まった出生前遺伝学的検査が一般診療となり,2021 年にはその実施数が累計10 万件を超えるなど,二次医療圏,一次医療圏で,通常診療のなかで扱われるようになった.そこで遺伝医療を二次医療圏や一次医療圏に展開し,医療の均てん化をはかるために,地域医療連携をいかに進めていくかが重要な課題となっている.本稿では地域医療連携の状況を踏まえて,遺伝カウンセリングを含む遺伝医療における地域連携について,日本医師会や関連学会の動向などの事例をあげて考えたい.
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臨床医のための微生物学講座 2
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医学のあゆみ 288巻6号, 529-533 (2024);
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◎赤痢菌,サルモネラ,ビブリオは,いずれも腸管感染症起因菌の代表的な存在であり,当該菌に汚染された水や食品を介して感染する.細菌性赤痢,腸チフス・パラチフス,コレラの起因菌(赤痢菌,チフス菌・パラチフスA 菌,コレラ菌)を含んでおり,これらはいずれも感染症法で3 類感染症にあたる.サルモネラ(非チフス性)は家畜・家禽などの食用動物から爬虫類・両生類などの変温動物まで幅広い生物がリザーバーとなり,多くの国で食中毒の主要な起因菌となっている.ビブリオは海水などの水中に存在する環境細菌であり,腸炎ビブリオなど魚介類を介して食中毒を発生させる.赤痢菌,チフス菌はヒトが主なリザーバーであり,保菌者によって環境,水,食品が汚染されることで感染が広がる.喫食情報や海外渡航歴などに注意して聞き取りを行い,診断および疫学調査に生かすことが重要である.
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FORUM
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世界の食生活 11
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医学のあゆみ 288巻6号, 535-539 (2024);
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戦後の国際保健を彩った人々 6
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医学のあゆみ 288巻6号, 540-543 (2024);
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死を看取る ─ 死因究明の場にて 3
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医学のあゆみ 288巻6号, 544-547 (2024);
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死とは生命の終焉であり,誰もが最後には必ず経験するものである.この過程で起こる身体上の変化と,死に関わる社会制度について,長年日常業務として人体解剖を行ってきた著者が法医学の立場から説明する.