Volume 288,
Issue 10,
2024
-
特集 行動変容による疾病の予防
-
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 815-815 (2024);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 816-821 (2024);
View Description
Hide Description
循環器疾患や糖尿病合併症の高リスク者は,医療機関受診といった喫緊の健康行動を要する集団であるが,メタボリックシンドロームに該当するなど,現在高リスクでなくとも放置することで将来重症化の恐れがある集団もまた生活習慣の行動変容が必要になる.しかし,いずれの集団にも一定の割合でヘルスリテラシーの低い集団が含まれ,行動変容アプローチが難しい.この場合,放置することで生じる脅威をどれほど説明しても,それだけでは行動変容は起こらない.健康行動には自覚や認識,健康信念が関係し,健康行動を起こす意図が必要になる.ここでは,こうした健康行動に影響する要因を説明するとともに,J-HARP 研究(生活習慣病重症化予防のための戦略研究)で立証された高リスク者の行動変容に効果的なアプローチの手順について説明し,効果的な行動変容アプローチについて考える.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 822-826 (2024);
View Description
Hide Description
日本では痩せた女性の割合が特に高く,健康リスクが懸念されている.痩せの状態は糖尿病や骨粗鬆症,サルコペニアなどの疾患リスクを高めることが知られており,特に若い女性に痩せの傾向が顕著である.日本人女性は比較的低い体格指数(BMI)でも糖代謝異常を持ちやすく,運動習慣が少なく,エネルギー摂取量が低いことを起点とした骨格筋量の減少やインスリン抵抗性が大きな要因となっていると推測される.これらの問題を背景に,痩せた女性の健康リスクに対する社会的な認識の向上や,適切な健康指導,運動習慣の促進が必要であると考えられる.痩せ願望の高まりやメディアの影響も痩せ傾向に寄与していると考えられ,これらの問題に対して健診や教育,プロモーションといった社会全体での取り組みが求められている.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 827-830 (2024);
View Description
Hide Description
近年,高齢者を対象にスマートフォンアプリをはじめとするオンラインツールを活用したフレイル対策,介護予防が散見されるようになった.ここ数年でこのような事例数が増加した背景として,①コロナ禍の影響,②社会的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進,③オンラインツールを使用できる高齢者の増加などがあげられる.筆者らはこのような背景より,オンラインツールを活用したフレイル対策,介護予防として,“web 版集いのひろば”を展開している.これは週に1 回の頻度でメールマガジンを配信するもので,フレイル対策,介護予防に向けた意識・行動変容を目指したものである.現在の高齢者にとって,メールというオンラインツールを利用することは妥当な戦略と考えている.今後もさまざまなオンラインツールが開発されると予想されるが,提案するわれわれにとっての“便利なツール”ではなく,使用する高齢者にとっての“最適なツール”を模索していくことが必要であろう.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 831-836 (2024);
View Description
Hide Description
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5 類へ移行したが,まだ不安感を持ち,外出や活動の自粛を続けている高齢者は少なくない.このような長期的な影響によるコロナフレイルが危惧される.実際,2020 年の第1 回緊急事態宣言直後には,外出自粛により体幹筋量や握力,滑舌が低下したが,1 年後の外出制限の緩和に伴い,体幹筋量は回復するものの,四肢筋量や握力は低下し続ける長期影響が筆者らの調査で明らかになった.このような背景からも,オンラインでのフレイルチェックアプリケーション(以下,アプリ)の開発が求めれた.具体的に,既存のフレイルチェック活動の担い手であるフレイルサポーター(高齢市民)とともにアプリのデザインや開発を行い,高齢者に親和性高いものとして改善を重ねた.アプリの内容や実施では,①既存の対面フレイルチェックの良好な再現と,②高齢者同士のコミュニケーションを重視した.その結果,フレイルサポーターおよび参加者の使用感の評価が高く,対面のフレイルチェックの結果と相関が高いことが確認できた.本稿では筆者らの取り組みを紹介しながら,新しい社会交流の様式として,対面と遠隔の“ハイブリッド型フレイルチェックおよび予防活動”の重要性について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 837-842 (2024);
View Description
Hide Description
高齢期は,メタボリックシンドローム予防の中心となっている体重を減らすという画一的な対策ではなく,フレイルも意識した対策が必要となる.メタボリックシンドローム対策とフレイル対策のギアチェンジの時期のポイントは,年齢と生活習慣病の有無である.ギアチェンジの時期の栄養管理では,メタボリックシンドローム対策のエネルギー制限(塩分・脂肪制限)から低栄養対策の適切なエネルギー摂取(十分なタンパク質やビタミンD の摂取)となる.肥満や糖尿病など体重管理や食事制限がある場合も低栄養には注意が必要であり,食事と合わせて身体活動を意識することがポイントとなる.また,日々の診療においては,“後期高齢者の質問票”を活用した定期的なフレイル傾向の確認をすることで,高齢者の生活も含めた全体像の把握が可能となり,フレイルの前兆を早期に発見することにつながる.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 843-848 (2024);
View Description
Hide Description
後期高齢者では糖尿病などの慢性疾患の重症化とフレイルの両者が併存し,相互に増悪させる悪循環に陥りやすい.心不全,腎不全の予防や進行防止のためにも,身体活動の維持や低栄養防止が必要である.糖尿病ではサルコペニア,フレイル,認知機能が進行しやすいため,積極的なフレイル対策が必要である.具体的には,健診などで質問票によるフレイルの評価,および行動変容につながる具体的な指導や支援が必要である.自治体の介護予防事業,“高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施”事業として整備しているプログラムへの参加を促すことが望ましい.有病者でも安心して参加できるよう,リスクマネジメントが適切に実施できているか,個人の健康状態や体力に合わせたプログラムであるかの確認も必要であり,通いの場などへも医療専門職の関与が望ましい.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 849-853 (2024);
View Description
Hide Description
“健康長寿なまちづくり”の実現には,マルチステークホルダーの力を集約したフレイル予防の取り組みが重要視される.フレイルとは,身体的な衰えのみならず,精神心理的側面や社会的側面をも包含する包括的な衰えの概念である.したがって,フレイル予防では複合的な日常生活行動などの推進が有効とされるが,そこには住民活力を含めたマルチステークホルダーとの協働が求められる.本稿では,フレイルの概説からはじまり,なぜフレイル予防にマルチステークホルダーとの協働が重要かを述べたうえで,その視点から東京大学高齢社会総合研究機構が推し進める住民活力によるフレイル予防プログラム“栄養(食・口腔機能),運動,社会参加の包括的フレイルチェック”の特徴を説明する.そして,今まさに神奈川県平塚市でマルチステークホルダーを巻き込みながら展開している産官学民連携による地域まるごとオーラルフレイル対策を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 854-858 (2024);
View Description
Hide Description
公衆衛生学・疫学分野では,従来の予防を一次予防,二次予防,三次予防の3 段階に分類して取り組んできた.しかし,これらのいずれの予防においてもその効果に限界がある.それを克服する予防戦略として,世界保健機関(WHO)は健康の“原因の原因”である環境にアプローチし,疾病を予防する“ゼロ次予防”を提唱している.従来の予防医療は,個人に働きかけて健康的な意識や行動を促すアプローチが主であった.一方,ゼロ次予防は環境をつくり変えることにより自然に健康的な行動をとるように促し,結果として健康増進の実現を目指す予防戦略である.
-
TOPICS
-
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 859-860 (2024);
View Description
Hide Description
-
神経精神医学
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 861-862 (2024);
View Description
Hide Description
-
連載
-
-
遺伝カウンセリング ─ その価値と今後 15(最終回)
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 863-868 (2024);
View Description
Hide Description
◎日本に遺伝カウンセリングの概念が伝わってから63 年,遺伝カウンセリングの専門職として認定遺伝カウンセラー養成が開始してから20 年が経過した.この間,「遺伝カウンセリング」の解釈,「遺伝カウンセラー」の職能の定義は,その時代背景に応じて変化してきた.患者や家族に最良の遺伝医療/ゲノム医療を提供するにあたり,遺伝カウンセリングの専門家である認定遺伝カウンセラーが,遺伝医療を提供するコミュニティの一員となる必要がある.そのためには,自らの職種の専門性を理解してもらい,かつ他の専門職の特性を理解し,連携していくことが重要となる.遺伝医療における専門職連携実践が能動的に実施される将来にむけ,認定遺伝カウンセラーはその専門性の確立を追求するとともに,遺伝カウンセラーが法的な根拠を持った職種となるように訴えていかねばならない.
-
臨床医のための微生物学講座 5
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 869-874 (2024);
View Description
Hide Description
◎化膿レンサ球菌はヒトに特異的な病原細菌であり,非侵襲的な咽頭炎から致死率の高い劇症型感染症といった多様な病態を引き起こす.特に,日本における劇症型感染症の症例数はここ数年高止まりしており,年間400~1,000 例の報告がなされている.化膿レンサ球菌による侵襲性病態の発症機構として,遺伝子発現を制御する二成分制御系CovR/S に自然変異が入り,血中での生存に適した病原因子の発現パターンに変化する機構が報告されている.一方で,CovR/S の変異によって発現が低下する分子についても,壊死性筋膜炎など劇症型病態の形成に寄与することが示唆されている.劇症型感染症のすべてでCovR/S の変異が認められるわけではないため,いまだ未知の劇症化機構が存在すると考えられる. 本稿では,化膿レンサ球菌に関する近年の特徴的な報告を中心に解説する.技術の進歩に伴い,ヒトでのデータに基づいたうえで感染モデルで検証する解析が増加しており,より実際の病態を反映した分子機構が明らかとなっている.
-
FORUM
-
-
世界の食生活 14
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 875-879 (2024);
View Description
Hide Description
2013 年,“和食”とともにユネスコの人類の無形文化遺産に登録されたのが「クヴェヴリを使った伝統的なグルジア(ジョージア)のワイン製造法」である.約8,000 年前と推定される甕かめから酒石酸が検出されたことから,ジョージアは世界最古のワイン醸造国とされる.また,525 種といわれるジョージア固有のブドウ品種の存在も独自のワイン文化の存在を裏づける(図1). ジョージア人はワインを,父なる天空と母なる大地の子と考えている.葡萄は降り注ぐ日の光を受けて成長し,収穫の後,大地に埋められたクヴェヴリというまさに母胎をかたどった素焼きの甕の中で呼吸しながら成熟していくのである.古代から伝わる最もシンプルな製法である,このクヴェヴリによるワイン生産は,世界的な“自然回帰”の潮流と,ジョージアにおける脱ソ連・ネイションビルディングが重なった希有の現象といえる.
-
死を看取る ─ 死因究明の場にて 6
-
Source:
医学のあゆみ 288巻10号, 880-882 (2024);
View Description
Hide Description
死とは生命の終焉であり,誰もが最後には必ず経験するものである.この過程で起こる身体上の変化と,死に関わる社会制度について,長年日常業務として人体解剖を行ってきた著者が法医学の立場から説明する.