Volume 289,
Issue 3,
2024
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特集 がん微小環境の統合的解明と治療への応用
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医学のあゆみ 289巻3号, 175-175 (2024);
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医学のあゆみ 289巻3号, 177-181 (2024);
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制御性T 細胞(Treg)は生体の恒常性を担保する重要な細胞であることは周知である.一方で,がん微小環境下においては,がん拒絶に有効な抗腫瘍免疫応答を抑制することが知られており,Treg をいかにコントロールすることができるのかが,がん免疫療法の奏効を決定付けるひとつの要因であると考えられている.腫瘍環境という特殊な条件下でのTreg の機能と,新たながん治療の標的としての可能性について,本稿で紹介する.
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医学のあゆみ 289巻3号, 182-185 (2024);
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がんの発生,悪性化進展の過程では,免疫応答は抑制的または促進的に働く二面性を持つことが知られている.がん微小環境(TME)の制御において,自然免疫が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.本稿では特にナチュラルキラー(NK)細胞,樹状細胞(DC),マクロファージ,骨髄由来抑制細胞(MDSC),好中球といった自然免疫細胞の役割について,それぞれの自然免疫細胞における多様性や可塑性,機能の二面性,そしてがん病態との関連について概説する.今後,自然免疫によるTME の制御についてより詳細に理解するため,さらには自然免疫を標的とした新たながん治療の可能性を探索するためにも,TME における自然免疫細胞それぞれの機能や役割の理解に加えて,がん細胞のみならず,他の間質細胞を含めたTME を構成する細胞間相互作用ついても理解を深化させていくことが重要である.
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医学のあゆみ 289巻3号, 186-190 (2024);
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近年,腸内細菌が産生する代謝産物や菌体構成成分が,腸から吸収され,体を循環することによって,腸だけでなくさまざまな遠隔臓器のホメオスタシスや,逆に病態変化をもたらすことが明らかになってきている.本稿では,特に腸内細菌と肝がん微小環境というテーマで,腸内細菌そのものや腸内細菌の成分・代謝物質が肝臓に移入することによる肝がんの微小環境の変化について,筆者らの研究のほか,最新の知見を概説する.
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医学のあゆみ 289巻3号, 191-194 (2024);
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がん関連線維芽細胞(CAFs)は,腫瘍の進展に関わることが知られている.近年の研究から,CAFs はさまざまな機序により抗腫瘍免疫を抑制していることが明らかとなってきた.CAFs が産生する細胞外マトリックス(ECM)は,殺細胞性免疫細胞が腫瘍へ到達するのを物理的に阻害している.また,CAFs の出す種々のサイトカインやケモカインは,殺細胞性免疫細胞の機能を減弱させ,一方で免疫抑制的な働きを持つ細胞を腫瘍内に増加させることで抗腫瘍免疫応答を抑制している.このような背景から,CAFs を標的としてがん免疫環境を改善させる研究が活発に行われている.筆者らのグループも,CAFs における血小板増殖因子受容体(PDGFR)を機能的に阻害することでCAFs をリプログラミングし,がん免疫環境の改善により免疫チェックポイント阻害薬の効果を向上させることを発見した.CAFs を標的とする治療を併用することで,がん免疫療法の効果を増強し,治療抵抗性患者の予後改善が期待される.
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医学のあゆみ 289巻3号, 195-200 (2024);
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腫瘍はがん細胞だけでなく,内皮細胞(血管内皮細胞,リンパ管内皮細胞),線維芽細胞,細胞外マトリックス(ECM),免疫細胞,血小板,神経などの間質細胞により,がん微小環境を構成している.がん細胞はこれらの細胞をがん微小環境にリクルートし,増殖・活性化させる一方で,周囲の間質細胞はがん細胞の増殖や遊走能,薬剤耐性能を亢進させることで,腫瘍の増殖,転移といった腫瘍進展を促進しており,腫瘍進展において臓器連関は重要な役割を持っている.しかし,がんとの臓器連関を探求するうえで,従来の平面培養などの単純な細胞実験系ではがん微小環境を再現できないため,成果は主に動物実験に依存してきた.ところが動物実験には生物学的ネットワークの複雑性,種差や倫理的な課題が残されており,細胞実験,動物実験とは異なる新たな実験系が求められてきた.本稿では細胞集団の三次元構造,複数種の細胞の共培養,生体に近い物理的・化学的刺激を与えることができる培養プラットフォームとしてのorgan-on-a-chip(OOC)を用いた研究が,いかに腫瘍と他臓器のクロストークを介した腫瘍進展機構の研究に利用されているかについて紹介する.
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医学のあゆみ 289巻3号, 201-204 (2024);
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細胞外マトリックス(ECM)や間質細胞を含むがん微小環境(TME)は,がんの進展や治療応答性に大きな影響を与えることから,新規治療法や薬剤開発のさらなる加速に向けて,TME の再構築が求められている.本稿では,間質細胞の主要な構成要素である線維芽細胞ならびに血管内皮細胞を中心に,それらとがん細胞との腫瘍組織内での相互作用について解説するとともに,TME を再構築するモデルとして有望な三次元(3D)細胞培養技術について,さまざまな手法の特徴を紹介する.また,構築したモデルを薬剤スクリーニングに応用・実用化し,さらに薬剤感受性試験として個別化医療へと臨床実装していくための課題について概説する.
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TOPICS
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薬剤学
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医学のあゆみ 289巻3号, 205-206 (2024);
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 289巻3号, 207-208 (2024);
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連載
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臨床医のための微生物学講座 9
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医学のあゆみ 289巻3号, 209-213 (2024);
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◎クラミジアとは,RNA とDNA を保有するが純培養系では増殖できず,生きた動物細胞内でのみ増殖可能な一群の偏性細胞寄生性細菌の俗名である.宿主である真核細胞の菌体取り込み胞(封入体)内で独特の機能的・形態的変換,すなわち基本小体(EB)の網様体(RB)への変換,RB の二分裂増殖,EB への成熟変換,宿主細胞外放出という特異なサイクルを通じて増殖する.ヒトに感染症を引き起こすクラミジアは3 種類で,肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)とオウム病病原体(Chlamydia psittaci)は呼吸器感染症を,クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)は性行為感染症を引き起こす.肺炎クラミジアとクラミジア・トラコマチスは症状が軽微または無症状であることが特徴で,持続感染が成立する.この持続感染がさまざまな慢性炎症性疾患の原因となることが指摘されている.
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緩和医療のアップデート 4
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医学のあゆみ 289巻3号, 215-220 (2024);
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◎呼吸困難は進行がん患者において50~70%以上に合併する頻度の高い症状である1—4).また,慢性呼吸器疾患や心不全,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患などの非がん進行性疾患患者においては,がん患者以上に呼吸困難の合併頻度が高いことが報告されている5()表 1).がん・非がんにかかわらず,進行性疾患患者において呼吸困難の合併は生活の質(QOL)の低下と関連していることも報告されており6),呼吸困難は緩和ケアの対象となる進行性疾患患者の診療にあたる際に避けては通れない重要な課題である.◎このたび,日本緩和医療学会「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン」の改定があった.今回の改定では,“呼吸器症状”という枠組みではどこまでの症状を扱うべきか曖昧であることから対象の症状が呼吸困難に絞られた.また,緩和ケアの対象として非がん疾患へもしっかり取り組んでいきたいという考えのもとで,一部,対象患者を非がん疾患患者も含めた内容とされた.本稿では,この改定されたガイドライン(「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023 年版」)の内容を含めて,呼吸困難に対する症状緩和治療の現状に関して解説する.
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フォーラム
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世界の食生活 17(最終回)
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医学のあゆみ 289巻3号, 221-225 (2024);
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死を看取る ─ 死因究明の場にて 10
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医学のあゆみ 289巻3号, 226-228 (2024);
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死とは生命の終焉であり,誰もが最後には必ず経験するものである.この過程で起こる身体上の変化と,死に関わる社会制度について,長年日常業務として人体解剖を行ってきた著者が法医学の立場から説明する.
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数理で理解する発がん 10
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医学のあゆみ 289巻3号, 229-232 (2024);
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日本人の3 人に1 人はがんで亡くなると推計されている.治療法も増えてきたとはいえ,まだ克服するには至っていない.われわれの体内でがん細胞がどのように出現してくるのかを理解することは,がんに対する有効な治療法を見出すための最初の一歩と言える.発がんのプロセスを理解するのに,一見何の関係もなさそうな“ コイン投げ” を学ぶ必要があると言われると驚くかもしれない.本連載では確率過程の観点から,発がんに至るプロセスを紐解いていく.
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速報
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医学のあゆみ 289巻3号, 233-234 (2024);
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