Volume 290,
Issue 5,
2024
-
【8月第1土曜特集】 乳癌のすべて2024
-
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 347-347 (2024);
View Description
Hide Description
-
予防・診断の進歩
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 350-354 (2024);
View Description
Hide Description
乳癌罹患リスク,罹患後死亡リスクに共通する因子は肥満(閉経後),喫煙,運動である.肥満(閉経前)に関しては今後の研究結果が待たれる.乳癌高リスク患者に対する化学予防としての選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)やアロマタ-ゼ阻害薬の研究は欧米を中心に研究が行われてきており,乳癌リスク低減の多くのエビデンスが蓄積されている一方,実際の使用は5%未満にとどまっている.ウェブベ-スならびに電子カルテ上の支援ツ-ルを使用したランダム化比較試験において6 カ月間での乳癌リスクの認識,化学予防の知識の理解は介入群で良好であったが,実際の化学予防薬の使用には至っていない.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 355-358 (2024);
View Description
Hide Description
近年のゲノム医療の進歩はめざましい.ゲノム医療を通して薬剤耐性に対する理解や新規薬剤開発も進んでおり,乳癌でもゲノム医療を利用した新規薬剤が臨床応用されている.本稿では,乳癌治療に関連する分子を,ゲノム医療の観点から概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 359-365 (2024);
View Description
Hide Description
臨床的サブタイプ分類は,因子(タンパクや遺伝子など)発現とそれに対する効果が期待できる治療とのセットで構成されている.一方,遺伝子発現プロファイル解析に基づく内因性サブタイプ分類は,腫瘍の多様性,およびどのようなシグナルに依存し,腫瘍が増殖・生存しているかをみてきた.従来の臨床的サブタイプ分類〔ホルモン受容体(HR)およびHER2 発現を基にしたサブタイプ分類〕をベ-スに内因性サブタイプ分類を行うことで,予後や効果予測がより精緻になることが示されている.最近では,薬物療法の進歩とともに新しいバイオマ-カ-によるサブタイプ〔例:HER2 低発現,エストロゲン受容体(ER)低発現,PD-L1陽性,gBRCA1/2 陽性など〕も出現し,治療効果のみならずその臨床的意義も極めて重要である.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 366-372 (2024);
View Description
Hide Description
cfDNA とは“cell-free DNA”の略称であり,破壊されたり死滅した細胞に由来する血中のDNA のことをいう.健常人でもcfDNA は検出され,主に赤血球などの血球系の正常な細胞から放出,あるいは正常細胞のアポト-シスによって放出される.オンコロジ-領域では,破壊された癌細胞やアポト-シスした癌細胞,循環腫瘍細胞(CTC)由来のDNA が血中に存在し,cfDNA 中でも特にctDNA(circulating tumor DNA)とよばれている.近年,癌のバイオマ-カ-としてのcfDNA/ctDNA が診断から予後予測,治療効果のモニタリングなどに用いられ,研究開発が進んできている.いわゆる“リキッドバイオプシ-”という血液検体から腫瘍の遺伝子変異を検出する手法は,近年の癌に対する治療開発でも重要な役割を担っている.本稿では,ctDNA に関して現在の位置づけ,および将来展望について述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 373-377 (2024);
View Description
Hide Description
ある薬剤を必要な乳癌患者に届けるためには,予後予測と同時に効果予測を行う必要がある.早期乳癌におけるresidual disease-guided approach では,術前化学療法後に残存病変(RD)が存在し,予後不良が予測される乳癌患者に対するエスカレ-ションとして,HER2 陰性乳癌のカペシタビンやHER2 陽性乳癌のトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の有効性が報告されている.ホルモン受容体陽性/HER2 陰性早期乳癌におけるオンコタイプDX 乳がん再発スコア® は,化学療法の効果予測が可能であると報告されている.また,腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は,予後や化学療法の効果予測因子となる可能性があるとして注目されている.さらにコンパニオン診断薬として,早期乳癌でもPARP 阻害薬であるオラパリブに対するBRACAnalysis® 診断システムが,2022 年8 月に適応範囲拡大となった.今後,人工知能(AI)などの技術革新によって,より効率的なアルゴリズムの構築が期待される.その一方で,持続可能で次世代へつながる医療も課題となる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 378-381 (2024);
View Description
Hide Description
日本ではマンモグラフィ検診が2000 年に50 歳以上,2004 年に40 歳以上の女性を対象に導入された.USPSTF(U. S. Preventive Services Task Force)は,2016 年に50~74 歳の女性に2 年ごとの受診を推奨していたが,2024 年には開始年齢を40 歳に引き下げた.日本では年齢上限はないが,USPSTF は75 歳以上の女性に対しては証拠が不十分としている.2006 年に40 歳代女性を対象に開始された「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」において,マンモグラフィと超音波検診併用の有効性が示されたが,死亡率減少効果のエビデンスは未確定である.特に高濃度乳房やハイリスク群においてトモシンセシスやMRI による検診も検討されているが,高コストや副作用の問題があり,エビデンスも不足している.米国では高濃度乳房は通知が義務化されているが,日本では時期尚早とされている.AI 技術やリキッドバイオプシ-による検診が将来的に期待されるなか,今後の技術革新とエビデンスの構築が課題である.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 382-386 (2024);
View Description
Hide Description
癌診療において,生殖細胞系列の遺伝情報を含むゲノム情報は,治療やリスク(予防)の層別化を行うための大事な情報のひとつとなっている.遺伝性乳癌の代表的な原因遺伝子であるBRCA1,BRCA2 は,わが国でもすでに一部保険収載されているが,乳癌易罹患性遺伝子のひとつにしかすぎない.今後,わが国でも海外で主流となっている多遺伝子パネル検査による遺伝性腫瘍症候群のスクリ-ニングが展開されることが予想される.本稿では,わが国における遺伝性乳癌診療の現状と,近未来の展望および課題について述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 387-392 (2024);
View Description
Hide Description
本稿では,乳癌画像診断における技術の進歩,新規画像技術について概説する.マンモグラフィ関連ではdigital breast tomosynthesis(DBT)が進歩し,synthetic mammography(SM;合成2D マンモ)が利用できる装置も増えてきた.また,乳腺濃度の自動測定ソフトも登場した.超音波を利用した新規画像技術では,acoustic tomography scanne(r ATS)による組織特性を捉えた画像や,光超音波による血管・酸素化情報が注目される.MRI 関係では,ultrafast dynamic contrast-enhanced(DCE)MRI による新たな血流情報や高空間解像度の拡散強調画像のほか,MRI でも乳癌に関連した微細石灰化の検出が試みられている.核医学では感度・空間分解能の高い乳房専用PET やレセプタ-に特異的な核種を用いた病変の描出が期待される.
-
最新の治療
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 394-398 (2024);
View Description
Hide Description
全身薬物療法や放射線療法の進歩により,乳癌に対する局所療法の範囲は縮小,低侵襲の方向に進んできている.原発性乳癌に対するラジオ波熱焼灼療法(RFA)は保険適用となり,shared decision making の下で乳房温存療法のオプションとして位置づけられている.腋窩手術に関しては,術前化学療法(NAC)で良好な病理学的完全奏効(pCR)が得られるようになったことで,より低侵襲なアプロ-チを受ける対象が広がりつつある.特に臨床的リンパ節転移陽性の診断でNAC を行い,リンパ節転移陰性となった場合は,TAS(tailored axillary surgery)が偽陰性率の低下に貢献していることが示されてきている.本稿では,原発性乳癌と腋窩に対する低侵襲手術のアプロ-チについて概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 399-402 (2024);
View Description
Hide Description
20 世紀後半から続く外科領域における低侵襲化の波は内視鏡下手術にとどまらず,ロボット支援手術の時代が到来した.わが国では2012 年にda Vinci® が泌尿器科領域に導入され,引き続いて他の領域に急速に広がった.乳腺領域では,イタリアで2015 年にNSM(乳輪温存乳房切除術)のロボット支援手術がはじめて報告され,海外では徐々に普及しはじめている.わが国でもロボット支援手術を早期に普及させる必要があり,日本乳癌学会として取り組みを開始した.ロボット支援手術の有用性は,拡大された3 D ハイビジョン画像からの手ブレがない関節のある滑らかな手術操作が可能で,内視鏡下では困難であった細かい操作が容易にできることにあるが,乳腺領域におけるその最大のメリットは3 cm 程度の皮膚切開で手術が施行可能という圧倒的な整容性にある.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 403-407 (2024);
View Description
Hide Description
元来,転移乳癌は全身病で,完治は極めて困難であり,目標は延命と症状緩和といわれてきた.しかし,近年の医療の進歩により転移乳癌の予後はどんどん延長している.その変化のなかで,これまで転移乳癌治療ではあまり用いられなかった局所療法の意義が議論されるようになった.世界でさまざまな前向き試験が行われているなかで,de-novo stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除の意義については,5 つの前向き試験の結果が出揃った.その結果は,原発巣切除はde-novo stage Ⅳ乳癌の生存期間を延ばすことはないという結果であった.しかし,局所の状態は有意に維持できること,そしてde-novo stage Ⅳ乳癌の一部には,原発巣切除により予後改善が認められる患者が存在しそうであることがわかった.また,oligometastasis に対する局所療法の意義に関しては今まさに多くの前向き試験が行われており,結果が待たれる.その結果によっては,検査を含めた乳癌治療の大きな考え方の転換を呼び起こす可能性がある.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 408-413 (2024);
View Description
Hide Description
乳癌における脳転移は骨転移,肺転移,肝転移よりも頻度は少ないが,脳転移の予後は不良であり,脳転移により神経学的症状が出現し,QOL が低下する.近年,脳転移は増加傾向であり,マネジメントが必要である.乳癌脳転移発症後の最も強い予後因子が乳癌のサブタイプである.その他の因子としてPS(Performance Status),KPS(Karnofsky Performance Status),年齢がある.現状では,乳癌脳転移が発見された際の初回治療は手術や放射線治療などの局所治療が推奨される.HER2 陽性乳癌ではトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)やtucatinib など脳転移に効果の高い薬剤が開発され,無症候性の脳転移であれば薬物療法を先行することも治療オプションのひとつとなってきた.しかし,HER2 陰性乳癌に対してはまだまだ効果が高い薬物治療は存在せず,難治性である.T-DXd は髄膜転移にも効果が示されている.本稿では,乳癌脳転移の臨床経過と治療についてアルゴリズムを示し,文献的考察を含め述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 414-421 (2024);
View Description
Hide Description
乳房再建術は,乳癌診療ガイドラインで「乳房再建術はインプラントを含むほとんどすべての再建が保険適用となったので,適応となるすべての患者に情報提供をしなければならない」と記載される,乳癌治療の一部である.再建方法は人工物と自家組織再建に大別できる.前者では2019 年にリコ-ルがあったが,順次新規にわが国に導入され,現在でも3 社の製品が販売されている.リコ-ルの原因となった乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)はまれな疾患であり,対象製品での生涯罹患率は0.03~0.045%である.これは放射線照射後肉腫などの希少な晩期合併症よりもさらに低い.BIA-ALCL については有症状者に対する介入が適切である.自家組織再建では下腹部,背部がドナ-となる方法が主流であるが,近年では大腿部や臀部も使用されるようになった.QOL 研究では自家組織再建の方が人工物再建よりも成績が上回るが,患者個々により環境が異なるため単純に比較することは難しく,ライフスタイル・ライフステ-ジを考慮した再建の提供が必要とされる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 422-426 (2024);
View Description
Hide Description
早期乳癌に対する薬物療法は年々開発が進んでいる.再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2 陰性乳癌に対してはアベマシクリブ,再発中間~高リスクのホルモン受容体陽性HER2 陰性乳癌に対してはS-1,再発高リスクのトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対してはペムブロリズマブ,BRCA 病的バリアントを有する再発高リスクHER2 陰性乳癌に対してはオラパリブが,それぞれ有効性が示され,承認されている.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 427-432 (2024);
View Description
Hide Description
ホルモン受容体(HR)陽性HER2 陰性転移再発乳癌(MBC)の治療は,内分泌療法を含めた分子標的薬が主体となってきた.従来の細胞傷害性抗癌剤が主体であった時代では,主に腫瘍の大きさにより治療が変更されていたが,分子標的薬が主体となる時代には,腫瘍の質的変化も指標とした治療戦略を構築する必要があることがPADA-1 試験で示された.現在,血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の技術が進歩し,非常に高感度に癌のクロ-ン変化を捉えることができる.HR 陽性HER2 陰性MBC 治療中に連続的なctDNA 解析により,癌の状態をより精密に把握し,画像上の増大を待たずにその変化に対応するより動的な治療が,HR 陽性HRE2 陰性MBC の予後改善につながる可能性がある.癌とのクロ-ンレベルでの戦いを見据えた新たな羅針盤を利用した治療戦略が求められている.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 433-437 (2024);
View Description
Hide Description
放射線療法の技術進歩は著しいが,乳癌においてもさまざまな新技術が適用されている.また,手術や薬物療法の進歩に伴い,トレンドも変遷している.乳癌に対する放射線療法はさまざまな場面で有効な治療法であるが,本稿では乳房手術後放射線治療について,新たな技術やトレンド,今後の展望を概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 438-442 (2024);
View Description
Hide Description
適切な支持医療を受けることで,患者は治療による副作用をより上手く管理でき,計画どおりの抗癌薬治療を完遂する可能性が高まる.結果として,より高い生活の質を維持することができる.癌薬物療法と支持医療は車の両輪のように,一体となって治療の効果を最大限に高めることが重要である.本稿では,乳癌の薬物療法において頻繁に遭遇する,癌薬物療法における有害事象対策の現状と課題として,癌薬物療法に伴う悪心・嘔吐(CINV),癌薬物療法に伴う末梢神経障害(CIPN),癌薬物療法に伴う好中球減少症について概説する.これらの有害事象への対処法は一定程度確立されているが,未解決の課題も残される.制吐療法は抗癌薬の催吐リスクに応じて最適化される必要がある.また,末梢神経障害への運動療法や冷却療法,薬物療法の位置づけを明確化することが求められている.さらに好中球減少症に対しては,顆粒球コロニ-形成刺激因子(G-CSF)や抗菌薬の適正使用を推進する必要がある.新規薬剤の登場に伴い,支持医療においてもエビデンスに基づく対策の再構築が重要な課題となっている.
-
知っておきたい関連知識
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 444-447 (2024);
View Description
Hide Description
乳癌治療の進歩に伴い,患者の多くは長期生存が望まれるようになったことから,疾病治療から健康維持へと主眼が移行するサバイバ-シップ支援が課題となっている.乳癌サバイバ-シップで考慮すべき領域には,手術療法や薬物療法による晩期合併症や長期的な身体的影響,サ-ベイランス,さらにヘルスプロモ-ションのための生活様式の推奨などが含まれる.その他,若年者であれば治療後の妊娠・出産や仕事と治療の両立支援といった発達課題に合わせた支援も必要となる.国内でもサバイバ-シップ外来や部門を設けている医療施設も増えてきているが,課題は多岐にわたるため,地域の医療資源やピアサポ-トの活用など,多職種も含めた包括的な支援のあり方が求められている.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 448-453 (2024);
View Description
Hide Description
患者報告アウトカム(PRO)は,今まさに癌に罹患し,癌治療の困難な状況にある患者の直接的な体験報告であり,第三者の解釈を経ないという主観性により特徴づけられる.従来はQOL の用語が多用されたが,PRO はQOL の持つ多領域的な概念にとどまらず,症状などの単領域を含む,より包括的な概念として一般化してきた.PRO は臨床研究のエンドポイントとして発展を遂げてきたが,PRO を日常臨床に活用しようとする取り組みが活発になっている.さらに近年ではデジタルデバイスの発展により,PRO のみならず,血圧や血糖値などの生体モニタリング,身体活動・食・睡眠などのライフスタイル,介護者のwell-being など,患者を取り巻く膨大なデ-タ(PGHD)を収集し,big-data としてヘルスケアに活用しようとする試みがなされている1).
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 454-458 (2024);
View Description
Hide Description
近年,乳癌医療にかかる医療費は増加している.その要因は新規乳癌罹患者数の増加と,革新的ではあるが高額な新規医薬品の登場であると考えられる.現状では新規乳癌罹患者数を減少に転じさせる根本的な方法は明らかではない.また,イノベ-ションによる新規乳癌治療薬の開発は患者にとって恩恵であり,これを阻害すべきではない.現状では乳癌医療にかかる医療費を大幅に減少させる方策はないものの,医療者は医療費の適正化の観点から医療経済評価の基礎知識を身に付けておく必要がある.方法論の要は,新規治療が標準治療に対して追加で支払うこととなったコストと,新規治療によって得られる効果を勘案した増分費用効果比(ICER)を理解すること,臨床的効果の指標のひとつとして質調整生存年(QALYs)を理解することである.本稿ではこれらの理解も含めて,乳癌医療に携わるすべての医療者が知っておくべき医療経済の基礎について論じる.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 459-465 (2024);
View Description
Hide Description
日本人の乳癌患者数は年々増加し,現在は年間98,300 人が罹患している.うち70 歳以上の患者は全体の31.8%(約3 万1 千人)を占めている(全国乳がん患者登録調査報告2019 年確定版).高齢者では薬剤の代謝,吸収,分布,排泄に関わる生理的機能の変化がみられるうえに個人間のばらつきが大きく,臨床試験に含まれる高齢者が少数であるため,治療の選択が不明確となることが多い.高齢者乳癌の治療にあたって,暦年齢のみで治療を手控えることは勧められず,病期,サブタイプに加え,患者個々の評価とアプロ-チが必要である.癌のベ-スラインリスクと予期される余命期間,併存症,臓器機能を考慮し,治療のリスクベネフィットを個別に勘案する.個別化アプロ-チのひとつである高齢者機能評価(GA)は,生命予後の予測,抗癌薬の副作用予測,足りない社会的資源の抽出という役割がある.結果を医療チ-ムによる適切な介入に生かし,個々に最適な治療が受けられるようにサポ-トする役割を担う段階にきている.
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 466-472 (2024);
View Description
Hide Description
生殖可能な年齢で癌に罹患した場合,薬物療法開始前にあらかじめ胚・卵子凍結をしておき,将来の妊娠・出産の可能性を高める妊孕性温存療法という選択肢がある.患者の病状だけでなく,社会的背景にも大きく影響を受けるため,患者・医療者が十分なコミュニケ-ションの下で,治療を選択していくことが重要となる.妊孕性温存療法は保険外診療であるが,条件を満たした場合に公的助成を受けることができること,いつ胚移植を含めた妊娠を試みるのか,5 年以上続く内分泌療法を中断して試みることの是非,タモキシフェンのwash out 期間の考え方など,実践の際に知っておくべき課題も多い.また,若年乳癌患者のなかにはまれではあるが妊娠中に癌が発見されることもあり,妊娠継続しながらどのような治療を行えるのか,乳癌のタイプや進行度だけでなく妊娠週数に合わせた治療計画が必要になる.若者にとって,妊娠・出産を望むのか望まないのかという話題は,本人の社会環境や価値観に大きく影響を受けるデリケ-トな話題であるが,若年乳癌患者の治療を進めていくにあたって不可避の検討課題でもあり,医療者の十分な知識や理解の下で,患者とのSDM(shared decision making)が求められる.
-
将来への提言
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 474-474 (2024);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 475-475 (2024);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 476-476 (2024);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 477-477 (2024);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 290巻5号, 478-478 (2024);
View Description
Hide Description