Volume 290,
Issue 11,
2024
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特集 拡大新生児スクリ-ニング検査の成果と展望
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医学のあゆみ 290巻11号, 955-955 (2024);
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医学のあゆみ 290巻11号, 957-961 (2024);
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1977 年10 月にはじまるわが国の新生児マススクリ-ニングは,当初は“ガスリ-法”などを用いて,フェニルケトン尿症など6 疾患を対象としていたが,2013 年度から“タンデムマス法”が導入されたことで20 疾患まで拡大した.これらはそれぞれ10 年以上の厚生(労働)科学研究を経て,母子保健課長通知によって公的事業化されているが,今後さらに新規対象疾患が追加されるための手順は明示されていない.新たな候補疾患の増加を受けて,2019 年度および2020~2022 年度日本医療研究開発機構(AMED)研究開発課題として,わが国での現状評価と新規対象疾患の選定基準案を提示した.2023 年度からはこども家庭科学研究課題として,新規疾患スクリ-ニングを社会実装するための体制構築に関する調査研究を進めている.候補疾患領域ごとに,公的事業化実現以降の情報集約まで見通した準備作業が求められる.
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医学のあゆみ 290巻11号, 963-970 (2024);
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新生児スクリ-ニング(NBS)は,治療可能な疾患を対象に,それらの疾患を有する児の一生にわたる予後改善と健康維持を目的としてユニバ-サルに行われてきた.近年は新規治療法の保険収載に伴い,さらに対象疾患を加えた拡大NBS が検討されている.NBSは国内外でELS(I 倫理的・法的・社会的課題)の観点からも議論が積み重ねられてきた.ELSI の観点からは,対象疾患をどのように選択するのか,アクセスの公平性(自治体や施設によって実施対象疾患の種類に差がある),偽陽性など検査精度にまつわる問題,発症時期や重症度に多様性のある疾患への対応,児の確定診断によって明らかになりうる血縁者リスクへの対応など,課題は多い.進化を続けるNBS が対象疾患を拡大しながら全国に地域格差なく一生にわたる健康向上に最大限いかされるためには,ELSI の視点からも議論を重ねていく必要がある.
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医学のあゆみ 290巻11号, 971-975 (2024);
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新生児スクリ-ニングは,重篤な疾患が不可逆な結果を身体に及ぼす前に疾患発症を検知し,治療介入することにより多くの新生児を疾患から守ってきた.こうした疾患の多くは遺伝的な原因を有しており,巨視的な臨床症状が現れる前にも必ず分子レベルでの表現型が現れていることがこのスクリ-ニングが成立する理由である.昨今の各種の遺伝性疾患に対する治療法の開発のおかげで,新生児スクリ-ニングの対象とすべきと考えられる疾患数は増加してきており,現在の課題のひとつは,どのようにして技術的にそれらの治療介入可能な疾患の分子表現型をスクリ-ニングとして実現するかである.本稿では,これまでの新生児スクリ-ニングの歴史を計測技術の観点から眺め,現在から近未来に向けての新生児スクリ-ニングの計測法としての課題解決に向けた展望について述べる.
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医学のあゆみ 290巻11号, 977-982 (2024);
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重症複合免疫不全症(SCID)は,乳児期早期に重症感染症で発症し,根治的治療である造血細胞移植や遺伝子治療が行われないと生後1 年以内に致死的となる先天性免疫異常症(IEI)である.T 細胞新生能の指標であるTREC を用いた新生児マススクリ-ニング検査が多くの国・地域で行われ,その有効性が示されている.また,B 細胞新生能の指標であるKREC をTREC と同時に測定している地域も存在する.愛知県では,全国に先駆けてTREC とKREC を測定するSCID に対する新生児マススクリ-ニング検査を実施し,これまでに2 例のSCID を同定し,重症感染症を発症する以前の治療介入に有効であった.近い将来,SCID が公的な新生児マススクリ-ニング検査の対象疾患として組み込まれ,より多くの患者の命が救われることが期待される.
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医学のあゆみ 290巻11号, 983-986 (2024);
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脊髄性筋萎縮症(SMA)は,主にSMN1 遺伝子の欠失により脊髄前角運動神経細胞の変性と消失が起こる運動ニュ-ロン病である.重症のⅠ型では生後早期より筋力・筋緊張低下と呼吸不全を呈し,無治療では大部分が2 歳までに死亡する予後不良の難病であった.しかし,2017 年以降に複数の画期的な治療薬が認可され,SMA は治せる病気へと変貌した.これらの治療薬の効果を最大化するために,遺伝学的手法による新生児スクリ-ニングが開始されている.具体的方法として,乾燥濾紙血からDNA を抽出し,PCR 法を用いてSMN1 遺伝子の欠失を検出する.スクリ-ニング陽性者に対してはMLPA 法による確定診断を行うとともに,SMN2 遺伝子のコピ-数も測定して重症度を予測する.陽性者に対する遺伝カウンセリングやリハビリテ-ションを含むフォロ-アップも重要である.
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医学のあゆみ 290巻11号, 987-994 (2024);
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ライソゾ-ム病(LSD)は,ライソゾ-ムに局在する酵素などの機能異常により,基質が蓄積する病態が発現し,全身症状を呈する疾患である.そのなかで頻度が高く重篤な症状を発生する可能性があり,かつ酵素補充療法(ERT)や造血幹細胞移植など現在認可されている治療法のある疾患は,早期発見し,発症前あるいは発症早期に治療することで生命・機能予後の改善につなげることが可能になるため,新生児スクリ-ニング(NBS)の対象候補となる.近年,わが国でもLSD を含む新規対象候補疾患群に対して,米国の諮問委員会による基準なども踏まえてスコアリングによる評価基準の確立が試みられている.LSD では現在,ムコ多糖症(MPS),ポンペ(Pompe)病,ファブリ-(Fabry)病,ゴ-シェ(Gaucher)病のスクリ-ニングが自治体を中心に有償で行われており,今後,有効性および安全性の向上した新規治療法の開発導入,検査方法の精度管理の整備などに伴い,NBS 対象疾患や実施自治体の拡充および公費化が期待される.
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医学のあゆみ 290巻11号, 995-1000 (2024);
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副腎白質ジストロフィ-(ALD)は副腎不全と中枢神経系の脱髄を特徴とするX 連鎖性遺伝性疾患で,最も頻度の高い小児大脳型では発症後,数年で寝たきりになることが多い.唯一の治療法は発症早期の造血幹細胞移植で,発症前診断することにより臨床症状の発症阻止も期待される.そのため,国内外で新生児スクリ-ニングが広がりつつある.一方で,発症予測の難しさや病原性の判断が難しいバリアントの存在など,さまざまな課題も指摘されている.本稿では,国内で実際に行われている取り組みを基に現状と課題ついて解説する.
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TOPICS
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救急・集中治療医学
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医学のあゆみ 290巻11号, 1001-1002 (2024);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 290巻11号, 1003-1004 (2024);
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連載
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臨床医のための微生物学講座 22
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医学のあゆみ 290巻11号, 1005-1010 (2024);
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◎ヒトサイトメガロウイルス(CMV)は本来,出生時の経産道感染や新生児期・乳児期の経母乳感染,幼少期の唾液や尿を介した水平感染によって不顕性感染した後,生涯にわたって体内に潜伏し,宿主の成長後,妊娠・出産にあわせてふたたび産道や母乳中に出現する.そうすることで世代を超えて感染し共生してきた普遍的なウイルスであり,健常人にとっては健康や命を脅かす存在ではない.ただし,その共生関係が破綻した代表的な例として,高度に免疫が抑制された患者における日和見CMV 感染症と妊婦の感染に続く先天性CMV 感染症がある.
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緩和医療のアップデ-ト 17
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医学のあゆみ 290巻11号, 1011-1016 (2024);
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◎小児緩和ケアの対象である“生命を脅かす病態”には,小児特有のまれな疾患が多く,小児がんは2 割以下で,先天性疾患や神経疾患が多くを占めているのが特徴である.子どもや家族の緩和ケアのニ-ズは多様であり,病態のタイプによっても大きく異なる.◎子どもは発達段階によって,病気や死についての理解度,意思決定能力,プライバシ-への配慮など考慮すべき点が大きく異なる.緩和ケアのコミュニケ-ションにおいても年齢だけでなく病気による影響も含めた個別の発達段階を考慮することが不可欠である.また,小児緩和ケアの対象となる家族は子どもの死の不安に直面しながら長期の介護が必要であるなどさまざまな困難に直面する.きょうだい児のニ-ズにも配慮が必要である.◎小児緩和ケアの歴史は,1980 年代に英国で始まった,病院の小児緩和ケアチ-ムとフリ-スタンディングの子どもホスピスの2 つのケアモデルに端を発しており,これらの活動は世界中に大きな影響を与え,わが国においても急速に普及しつつある.
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自己指向性免疫学の新展開 ─ 生体防御における自己認識の功罪 9
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医学のあゆみ 290巻11号, 1017-1021 (2024);
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中枢神経系疾患時に神経組織では炎症性のT 細胞は炎症誘発に寄与し,一方で炎症制御や組織修復に働く制御性T 細胞(Treg)の重要性が明らかになってきている.この“脳Treg”は,胸腺で分化したTreg が二次リンパ組織を介して脳内に浸潤し,脳特異的なフェノタイプを獲得したものであると考えられている.共通の組織Treg 前駆細胞から脳特異的なTreg への分化には,脳内の環境が大きく影響していると考えられるが,T 細胞受容体(TCR)を介した抗原認識も重要な条件であることが示唆されている.しかし,現在までに脳Treg への分化を誘導する抗原はもちろん,抗原提示細胞も同定されておらず,また,どこで抗原提示を受けているかも示されていない.Treg に対する脳内抗原提示細胞となり得る細胞はさまざまに存在する.脳Treg 特異的な抗原提示細胞の同定は,神経炎症性疾患の予防や治療に重要な貢献をすることが期待されている.本稿では中枢神経系組織Treg の抗原提示について概説したい.
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FORUM
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死を看取る ─ 死因究明の場にて 23
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医学のあゆみ 290巻11号, 1023-1025 (2024);
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死とは生命の終焉であり,誰もが最後には必ず経験するものである.この過程で起こる身体上の変化と,死に関わる社会制度について,長年日常業務として人体解剖を行ってきた著者が法医学の立場から説明する
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病院建築への誘い ─ 医療者と病院建築のかかわりを考える
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医学のあゆみ 290巻11号, 1026-1030 (2024);
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◎本シリ-ズでは,医療者であり,建築学を経て病院建築のしくみつくりを研究する著者が,病院建築に携わる建築設計者へのインタビュ-を通じて,医療者と病院建築のかかわりについて考察していきます.