Volume 291,
Issue 7,
2024
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特集 脳血管内治療の最前線と近未来
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医学のあゆみ 291巻7号, 509-509 (2024);
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医学のあゆみ 291巻7号, 511-514 (2024);
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脳動脈瘤の破裂を防ぐために行われる血管内治療は,動脈瘤コイル塞栓術を中心として発展してきた.開頭手術に比べて低侵襲かつ短時間に施行可能であり,破裂脳動脈瘤に対するランダム化比較試験では外科手術に対して優位性が示された.その後,未破裂脳動脈瘤においてはステントの併用が可能となり,ネック(動脈瘤の入口)の広い動脈瘤にも適応できるようになったため,治療件数が増加した.しかし,特に大型脳動脈瘤ではコイル塞栓術後の再発が多いことなどが問題となり,新たな治療機器が導入された. そのうちのひとつ,フロ-ダイバ-タ-(目の細かいステント)は母血管に留置するだけで動脈瘤が徐々に血栓化して治癒するという新しい概念の治療法である.また,分岐部動脈瘤に対する瘤内デバイス(袋状のメッシュ,動脈瘤内フロ-ダイバ-タ-)も使用可能となった.本稿では,従来のコイル塞栓術と新しい治療器具を紹介する.
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医学のあゆみ 291巻7号, 515-518 (2024);
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脳動静脈奇形(AVM)は治療経験の蓄積が困難な希少疾患であり,年齢,部位,サイズ,血管構築などの考慮すべき多彩な要素を併せ持つ疾患であることから,最適な治療戦略についてコンセンサスが形成されているとは言い難い.AVM 治療における血管内治療の果たす役割は多岐にわたり,摘出前塞栓術,定位放射線治療前塞栓術,標的部分塞栓,根治的塞栓術など,目指すべき塞栓範囲や治療戦略はさまざまである.AVM の補助治療として血管内治療の果たす役割は大きく,症例ごとの目標設定を達成すべくNBCA(n-butyl 2-cyanoacrylate)とOnyx の使い分けが肝要である.一方,nidus の塞栓率向上に伴う術後出血などの合併症リスクもあり,pit fall に留意した治療戦略の構築が重要である.本稿では,AVM 治療における血管内治療の果たす役割について概説する.
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医学のあゆみ 291巻7号, 519-523 (2024);
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硬膜動静脈瘻(dAVF)は何らかの原因により硬膜上の動静脈間に短絡(シャント)を生じる疾患であり,血管雑音による耳鳴や,脳皮質静脈への血液逆流による脳出血,けいれんなどの症状を引き起こす.古くより脳血管内治療が治療の主軸を担ってきており,シャントおよびそのすぐ下流の静脈側の塞栓を行うべく,経動脈的塞栓術と経静脈的塞栓術の2 つの方法が行われてきたが,安全性と確実性の観点から後者が行われることが多かった.近年,MRI/MRA 画像の進歩によりシャント部位の同定が正確になったこと,また遠位到達性の向上したマイクロカテ-テルの開発と液体塞栓物質であるOnyx TMの普及もあり,治療,特に経動脈的塞栓術による根治性が格段と向上してきている.複雑な血管解剖を理解したうえで脳血管内治療を適切に行うことが治療医に求められる.
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医学のあゆみ 291巻7号, 524-527 (2024);
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2015 年に脳主幹動脈閉塞症による急性期脳梗塞に対する脳血栓回収療法の有効性が証明され,2018 年には発症後24 時間までその適応時間が拡大された.また,2022 年には対象血管が脳底動脈閉塞へも広がり,広範囲に虚血性変化を認める症例に対してもその適応が拡大された.一方で,遺伝子組換え組織型プラスミノゲン・アクティベ-タ(rt-PA,以下,アルテプラ-ゼ)を投与せずに脳血栓回収療法を行う群と,アルテプラ-ゼ投与後に脳血栓回収療法を行う群との非劣性試験ではその非劣性は証明されず,アルテプラ-ゼの適応症例には,アルテプラ-ゼ投与後に脳血栓回収療法を行うことが推奨される.現在,軽症例と中等度の血管閉塞症例や,最終健常確認時刻から24~72 時間が経過した症例に対する脳血栓回収療法の有効性を証明するためのランダム化比較試験(RCT)が進行中であり,その結果が待たれる.今後も脳血栓回収療法の適応拡大が期待されるなか,医療経済学的な検討も重要である.
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医学のあゆみ 291巻7号, 528-533 (2024);
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本稿は頚動脈狭窄症の治療戦略について,特に頚動脈ステント留置術(CAS)の最新情報を提供する.頚動脈狭窄症は50~79 歳の男性で7.9%,女性で1.3%の有病率があり,年齢とともに増加する.治療には内科的および外科的手法があり,外科的治療には頚動脈内膜剝離術(CEA)とCAS がある.CAS は血管内治療の一種であり,ランダム化比較試験(RCT)により外科的手術のリスクが高い患者に有効とされる一方,脳卒中などの合併症リスクが伴う.最新のガイドラインでは熟練の術者によるCAS が推奨されており,新規ステントのCASPER や新技術の経頚動脈ステント留置システムについて紹介する.
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医学のあゆみ 291巻7号, 534-541 (2024);
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頭蓋内動脈硬化性病変(ICAD)は白人と比べてアジア人で多く,その頻度は白人が脳卒中の8~20%に発症する一方,アジアでは約30~50%に発症すると報告されており1),わが国の実臨床において,内科治療抵抗性のICAD に対する経皮的血管形成術(PTA)およびステント留置術(PTAS)を含む血管内治療(EVT)の重要性は高い.ICAD の病態・治療戦略は,ICAD を基盤とした急性期脳主幹動脈閉塞症(ICAD-LVO)に対する急性期EVT と,頭蓋内動脈硬化性狭窄症(ICAS)に対する待機的EVT に分類されるが,2024 年7 月現在,いずれも内科治療に対する有効性は示されていない.本稿では,①ICAD-LVO に対する急性期EVT,②ICASに対する待機的PTAS に関する最新の知見および展望について概説する.
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医学のあゆみ 291巻7号, 542-547 (2024);
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慢性硬膜下血腫は,中硬膜動脈(MMA)より栄養される血腫外膜からの血液漏出によって発生,増大する.この栄養血管を遮断するための血管内治療がMMA 塞栓術である.MMA 塞栓術は,2000 年に再発性慢性硬膜下血腫に対して,従来の穿頭術への追加治療として報告されて以降,多数のコホ-ト研究でその有効性が示されてきたが,ランダム化臨床試験(RCT)では有効性が示されていなかった.2024 年の国際脳卒中学会(ISC 2024)で3 本のRCT の結果が報告され,はじめてMMA 塞栓術を含む治療の有効性が示された.今後,血管内治療が慢性硬膜下血腫に対する標準治療となる可能性がある.
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医学のあゆみ 291巻7号, 548-550 (2024);
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脳血管内治療は,デバイスとX 線装置の開発・改良に基づき急速に進歩している.脳動脈瘤に対する治療では,ネックブリッジステントの導入により術後の再開通が大きく減少したが,課題とされる大型脳動脈瘤に対してフロ-ダイバ-タ-が登場し,分岐部脳動脈瘤に対してはネックをカバ-するデバイスや瘤内血流転換機器などが開発,導入されてきた.一方,急性虚血性脳卒中に対してはステントレトリ-バ-,血栓吸引カテ-テルが開発され,現在は各製品に再開通までの時間短縮と高率な再開通を目指した改良が加えられる一方,大口径吸引カテ-テルの開発も進んでいる.機器の開発と改良によって劇的に変化してきた脳血管内治療を適切に展開するためには,改良がたゆまなく続けられているデバイス開発の動向に常に関心を払うことが求められている.
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TOPICS
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疫学
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医学のあゆみ 291巻7号, 553-554 (2024);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 291巻7号, 555-556 (2024);
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連載
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自己指向性免疫学の新展開 ─ 生体防御における自己認識の功罪 16
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医学のあゆみ 291巻7号, 557-562 (2024);
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転写因子Foxp3 を発現する制御性T 細胞(Treg)は,自己反応性通常型T 細胞(Tconv)を抑制することで,個体の免疫恒常性維持に寄与する.Treg の分化と機能には,T 細胞受容体(TCR)を介して特異的抗原を認識することが重要である.Treg は胸腺において自己抗原を認識することで分化し,末梢に移行する1).そして,末梢リンパ組織において抗原を認識することで機能的に活性化し,非リンパ組織あるいはリンパ濾胞へと移行する2).組織に移行したTreg は,炎症抑制,組織修復促進,代謝制御を介して組織恒常性維持に寄与する3).Tregは一様な集団ではなく,組織ごとに異なるTCR レパトア,遺伝子発現,機能を示す.本稿では,この組織間でのTreg の不均一性について紹介し,この不均一性がTreg の抗原特異性によって規定される可能性を議論する.さらに,抗原特異的なTreg が組織においてどのような抗原特異性を有するTconv を抑制するのかについてもこれまでの研究を紹介し,最後に組織におけるTreg による抗原特異的な抑制機構について今後解明されるべき課題を議論する.
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細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望 ─ 臨床への展開 2
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医学のあゆみ 291巻7号, 563-568 (2024);
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肝臓は,さまざまな原因による障害が続くと線維化が進行し,肝硬変に至ることで生命に関わるようになるが,根本的な治療は肝移植のみである.当科では肝再生療法の細胞源として骨髄細胞に注目し,肝硬変モデルマウスにおいて骨髄細胞投与により肝線維化が改善することを発見した.これを基盤に骨髄単核球分画を末梢静脈投与する自己骨髄細胞投与療法を考案し,先進医療B を含む多施設共同研究で肝硬変に対する治療効果を確認した.さらに,骨髄単核球分画のうち骨髄間葉系幹細胞(BMSC)を投与することで肝硬変モデルマウスの肝線維化が改善することを報告し,肝硬変患者の少量の自己骨髄液から培養したBMSC を末梢静脈投与する低侵襲肝臓再生療法を考案した.しかし,末梢静脈では多くのBMSC が肺に捕捉されるため,より効率的に肝臓へ細胞を送達する経路として肝動脈を選択し,イヌ肝線維化評価モデルで安全性と末梢静脈投与を上回る治療効果を確認した.このような経緯を経て,現在は医師主導治験「自己完結型肝硬変再生療法」においてBMSC 肝動脈投与療法を実施している.
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FORUM
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数理で理解する発がん 17
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医学のあゆみ 291巻7号, 569-572 (2024);
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日本人の3 人に1 人はがんで亡くなると推計されている.治療法も増えてきたとはいえ,まだ克服するには至っていない.われわれの体内でがん細胞がどのように出現してくるのかを理解することは,がんに対する有効な治療法を見出すための最初の一歩と言える.発がんのプロセスを理解するのに,一見何の関係もなさそうな“ コイン投げ” を学ぶ必要があると言われると驚くかもしれない.本連載では確率過程の観点から,発がんに至るプロセスを紐解いていく.
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戦争と医学・医療 5
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医学のあゆみ 291巻7号, 573-575 (2024);
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