Volume 291,
Issue 8,
2024
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特集 進化する胎児治療─ 研究と臨床の最新情報
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医学のあゆみ 291巻8号, 579-579 (2024);
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医学のあゆみ 291巻8号, 581-584 (2024);
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胎児鏡下レ-ザ-凝固術(FLP)は,一絨毛膜双胎において両児間の吻合血管が関与する病態に行われる胎児治療である.双胎間輸血症候群(TTTS)に対するFLP は標準治療と位置づけられ,わが国でも疾患の重症度や手術時期に関する適応拡大がなされてきた.Selective FGR では,わが国独自の適応である羊水過少と臍帯動脈血流異常を伴う症例に対してFLP が行われ,長期的な予後が明らかになってきた.TAPS においては,FLP の適応を含む標準的な管理方針は定まっていない.
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医学のあゆみ 291巻8号, 585-588 (2024);
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重症の先天性横隔膜ヘルニア(CDH)に対する胎児鏡下気管閉塞術(FETO)は,TOTAL trial とよばれる国際ランダム化比較試験(RCT)によって有効性が示された.日本においても早期安全性試験を経てTOTAL trialに参加し,FETO の経験を積み重ねてきた.現在,日本では妊娠27 週0 日~29 週6 日の重症の左側CDH(o/e LHR<25%)を対象としてFETO が実施されている.しかし,FETO によって分娩時期が早まり,早産率も上がる.また,CDH の治療成績は新生児管理方法に大きく影響される.日本では今後CDH をどのように治療し,FETO をどのように実施していくか,さらなる議論が必要である.
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医学のあゆみ 291巻8号, 589-592 (2024);
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胎児診断がなされていても出生後の予後が依然として不良な疾患,胎児死亡に至る疾患に対し,胎児期から介入することにより予後改善を図る取り組みが試みられてきた.胎児心臓疾患に対する侵襲的インタ-ベンションについては欧米諸国が先んじており,重症大動脈弁狭窄(CAS)に対する胎児大動脈弁形成術(FAV),卵円孔狭窄・閉鎖を伴う左心低形成症候群(HLHS/IAS)に対する胎児治療(心房中隔欠損作成術),純型肺動脈閉鎖(PAIVS)に対する胎児肺動脈弁形成術などが行われている.このうちCAS に対する胎児治療については二心室循環達成率の上昇が示されており,日本でも早期安全性試験が開始されている.
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医学のあゆみ 291巻8号, 593-597 (2024);
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脊髄髄膜瘤(MMC)は胎生期の神経管閉鎖不全が原因で発生し,神経損傷を引き起こす重篤な先天性奇形である.従来の出生後の治療では感染予防はできるが,すでに神経機能の回復は困難である.しかし,近年の研究で胎児手術により神経損傷を軽減し,神経予後を改善できる可能性が示された.2011 年のMOMS 試験では,胎児手術が運動機能やQOL の改善に有効であることが確認され,それ以降,米国や欧州などで積極的に導入されている.日本でも2012 年からプロジェクトが始動し,胎児手術導入に向けた体制整備が進められ,2020 年以降,複数の症例で安全性試験が実施されている.今後は先進医療,そして保険収載に向けて進めていく.
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医学のあゆみ 291巻8号, 598-600 (2024);
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母体開腹子宮開放手術の低侵襲な代替法として,子宮鏡下胎児髄膜瘤閉鎖術が行われている.この手術にはさまざまなアプロ-チがあり,①子宮へのアクセスの違い(母体開腹子宮脱転法と穿刺法),②プラコ-ド上の組織被覆法の違い(パッチ使用の有無,1 層閉鎖あるいは2 層閉鎖)がある.子宮鏡手術の利点としては,子宮破裂のリスクが減少すること,胎児手術後の経腟分娩も可能となり,母体への負担が軽減することがあげられる.しかし一方で,胎児の神経機能(下肢運動機能,キアリ奇形,水頭症),早産リスク(羊膜絨毛膜剝離,胎盤剝離),手術侵襲(周産期死亡率,手術時間)の点においては,現時点では子宮鏡手術の有効性を示すには至っていない.今後,子宮鏡下胎児髄膜瘤閉鎖術のさらなる改良が期待される.
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医学のあゆみ 291巻8号, 601-604 (2024);
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先天性代謝異常症に対する酵素補充療法は,疾患特有の症状を軽減し患者のQOL を大きく向上させた.従来は対症療法に限定されていた治療戦略において,酵素補充療法の出現は重要な転換点となった.疾患によっては胎児期から病状が進行するため,酵素補充療法を妊娠中から導入することが近年検討され始めた.胎児期の治療介入には,病状進行の早期抑制にとどまらず,制御性T 細胞(Treg)を介した抗酵素抗体の産生予防や,血液脳関門の未熟性による脳内への酵素送達などのメリットがある.2021 年からはカリフォルニア大学で先天性代謝異常症に対する胎児期酵素補充療法の臨床試験が開始された.1 例目となる乳児型ポンペ病(IOPD)での治療報告が既になされており,胎児期酵素補充療法の有用性が示された.胎児期の治療介入に必要な酵素製剤の開発も活発であり,今後も治療適応が拡大される可能性がある.
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医学のあゆみ 291巻8号, 605-609 (2024);
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胎児期に症状の増悪が懸念される腹壁破裂は,胎児手術のよい適応である.複雑型腹壁破裂への進行の予防を目的とした胎児手術の第一次臨床試験(ClinicalTrials.gov ID:NCT05704257)が,米国FDA による承認を経て2023 年より米国テキサス小児病院で始まった.近年,次々と対象疾患が増え,めざましい進化を遂げている胎児治療であるが,そもそも新しい治療の開発段階ではどのような手順が踏まれているのであろうか.腹壁破裂を例に胎児手術の対象となる疾患の特徴を紐解き,治療効果の検証のために不可欠な動物モデルを用いたトランスレ-ショナルリサ-チに焦点を当てながら,読者の皆さまにその一端を垣間見ていただければ幸いである.
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医学のあゆみ 291巻8号, 611-614 (2024);
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再生医療は,加工された細胞や組織を用いて失われた組織や臓器を修復・再生する医療である.近年では間葉系幹細胞だけでなく,多能性幹細胞であるiPS 細胞の分化誘導を用いた細胞治療の発展が著しく,ヒト難治性疾患の治療への発展が期待されている.胎児治療においては細胞治療が行われた実績はまだ少ないが,骨系統疾患における間葉系幹細胞の移植がヒト胎児において行われ,有効である可能性が示唆された.動物モデルではあるが,先天性横隔膜ヘルニア(CDH)や脊髄髄膜瘤(MMC)などに対する細胞・組織の治療法開発が積極的に行われている.本稿では,このような重症胎児疾患に今後期待される胎児幹細胞治療について概説する.
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医学のあゆみ 291巻8号, 615-618 (2024);
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人工子宮・人工胎盤システム研究は,まだまだ“産声をあげたばかり”の研究である.しかし,動物実験レベルで数週間の成育が可能になり,さらにはかなり小さい胎仔への装着が可能になってきた.その一方,研究結果が改善するにつれ新たな課題もみつかり,今もなお,修正と改善の繰り返しを行っている.本稿では,筆者らの人工子宮・人工胎盤システム開発の現在地と新たな挑戦,今後の展望を中心に示したい.
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TOPICS
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 291巻8号, 619-620 (2024);
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 291巻8号, 621-622 (2024);
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連載
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自己指向性免疫学の新展開 ─ 生体防御における自己認識の功罪 17
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医学のあゆみ 291巻8号, 623-628 (2024);
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インタ-ロイキン(IL)-17 産生ヘルパ-T(Th17)細胞は,慢性自己免疫疾患において中心的なエフェクタ-細胞として機能する.Th17 細胞は長寿命であり,自己免疫疾患の治療抵抗性や再発に関与するとされるが,その機序は未解明である.筆者らは,Th17 細胞依存性の実験的自己免疫皮膚炎モデルを確立し,CD28 拮抗薬であるアバタセプトが皮膚疾患の発症を効果的に抑制することを示した.さらなる解析により,アバタセプトはエフェクタ-型Th17 細胞の出現を選択的に阻害する一方で,IL-7 受容体(IL-7R)を発現するメモリ-型Th17 細胞の生存と増殖には関与しないこと,またメモリ-型Th17 細胞にはエフェクタ-型Th17 へと再分化する能力があることが明らかになった.生存したIL-7R+Th17 細胞は,アルコ-ルやアルデヒドの解毒といった独特の代謝経路を示し,体内でアルデヒド脱水素酵素(ALDH)阻害薬に感受性を示した.病原性Th17(pTh17)細胞には免疫抑制剤に対する抵抗性を持つ亜集団が存在し,自己免疫疾患の遷延化に関与する可能性がある.
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細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望 ─ 臨床への展開 3
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医学のあゆみ 291巻8号, 629-636 (2024);
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前立腺癌術後尿失禁の主要因は,外尿道括約筋機能の低下である.術後1 年以上が経過した後,骨盤底筋群体操および薬物治療に抵抗性の軽症~中等症尿失禁患者を対象に,残存括約筋周囲に自己脂肪組織由来幹細胞を注入し,残存機能の改善を期待する臨床研究を開始した. 前臨床として,腹圧性尿失禁モデル(LOXL1-KO ラット)を用いて,ラット由来培養脂肪幹細胞を尿道周囲組織へ移植し,尿道抵抗の有意な上昇および移植細胞の平滑筋細胞への分化を確認した. 再生医療安全性確保法のもと,がんセンタ-で局麻下に10~30 mL の皮下脂肪を吸引し,院外の細胞培養加工施設(CPC)で脂肪幹細胞の分離・培養・品質確認を行い,5~6 週間後に約5×107個の脂肪幹細胞をがんセンタ-で半分に分けて,内視鏡下に,幹細胞のみと,吸引脂肪と混ぜた幹細胞をそれぞれ括約筋部に注入している(jRCTb030220456).培養の場合,吸引脂肪が少なく,また,注入する幹細胞の量を規格化できる.8 例が終了し,定期的にパッドテスト,問診票を経過観察中である.
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FORUM
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戦争と医学・医療 6
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医学のあゆみ 291巻8号, 637-638 (2024);
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