Volume 293,
Issue 11,
2025
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特集 デ-タシェアリングと個人情報保護の課題
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医学のあゆみ 293巻11号, 1035-1035 (2025);
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医学のあゆみ 293巻11号, 1036-1040 (2025);
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本稿では,医療デ-タシェアリングの意義と課題について述べた.「デ-タシェアリングの必要性と意義」の項では,ゲノムデ-タのシェアリングが進んでいるが,医療デ-タ全体でのシェアリングも重要であること,医療デ-タは個人の健康維持や回復のために収集されるが,二次利用として医学的知識や科学的評価に用いることも重要であることを述べた.「権利保護に関わる課題」の項では,医療デ-タはプライバシ-に機微な情報であり,二次利用には本人の同意が必要な場合が多いことや,知的財産権や経済的観点からの課題について解説した.「デジタル化の推進と標準化」の項では,医療デ-タのデジタル化は進んでいるが,アウトカム情報のデジタル化はまだ十分ではなく,デ-タシェアリングには標準化が必要であり,たとえば測定法の違いが問題となることがあることを述べた.「デ-タガバナンス」の項では,デ-タの安全管理やライフサイクル管理が重要であり,適切なガバナンスが求められることについて詳述した.最後に,医療デ-タのデジタル化とシェアリングは進んでおり,適切なデ-タシェアリングを推進することが重要であることを述べた.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1041-1046 (2025);
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医療機関における患者の情報は,ほぼすべてが個人情報保護法上の個人情報・個人デ-タであり,要配慮個人情報に該当する.医療情報の利用は一次利用(患者治療目的)と二次利用(研究目的)に分けられるが,特に第三者提供において課題がある.一次利用では医療機関間の情報共有に黙示の同意が擬制され,二次利用では学術研究例外や公衆衛生例外などが用いられている.しかし現行法では制約も多いため,2025 年以降の法改正では同意要件の緩和や医療機関の学術研究機関などへの包含など,医療情報の適切な利用拡大が期待されている.本稿では,個人情報保護法制の概要と医療情報に関する課題を論じる.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1047-1051 (2025);
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ヒトゲノム計画の完了により全遺伝情報が明らかとなったことで,ゲノム情報を医療に活用する時代への扉が開かれた.そして,次世代シ-ケンサ-(NGS)が実用化された現在においてゲノム解析は加速度的に進展し,必要となるコストも指数関数的に低下している.それに伴い,世界各国において大規模ゲノムコホ-トの構築が競うように進められ,個別化予防・医療,精密医療の研究開発がはじまった.さらには,国際共同研究も活発化し,膨大なゲノム情報と健康医療情報が共有されつつある.本稿では,ゲノム医療のさらなる発展に欠かせないデ-タシェアリングの意義を述べるとともに,そこに存在する課題について,プライバシ-とセキュリティの問題,デ-タ標準化・相互運用性の問題,法制度・倫理・ベネフィットシェアリングの問題を中心に概説し,近く到来するだろうゲノム社会を展望する.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1052-1056 (2025);
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欧州健康デ-タ空間(EHDS)規則は,EU 全体の健康デ-タ利用に関する法律で,2025 年に正式に制定された.全9 章105 条からなり,①一次利用(国境を跨いだ患者診療),②EHR(電子健康記録)システム規制,③二次利用(医学研究,製品開発など)の3 つの柱で構成される.二次利用については,対象となる健康デ-タを保有する者に,健康デ-タ利用者の二次利用のためにデ-タを提供する義務が課される.保有者と利用者の間には,各国に設置される健康デ-タアクセス機関が介在し,健康デ-タ利用者の利用申請の審査や,健康デ-タ保有者から提供を受けた健康デ-タを安全な処理環境を通じて提供するなどの業務を行う.EHDS 規則は2029 年から本格適用予定であるが,すでに準備プロジェクトが進行中である.日本への影響としては,直接利用は難しいが共同研究や欧州支社を通じた利用可能性があり,日本の制度構築の参考にもなっている.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1057-1061 (2025);
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医療デ-タシェアリングは学術研究と産業の両面で大きな価値を創出している.国際的ゲノム研究,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対応での迅速なデ-タ共有,国内バイオバンク連携による希少疾患研究などが学術面での成功例である.産業面では,製薬企業とバイオバンクが連携した創薬研究,医療機関とAI 開発ベンチャ-による診断支援AI 開発,健保組合・保険会社によるデ-タ駆動型ヘルスケアサ-ビスなどが進んでいる.しかし価値を最大化するには,公益と私益のバランスを考慮したデ-タアクセスモデルの確立,国際的相互運用性とデ-タ品質の確保,医療情報二次利用に関する法制度の調和と簡素化が必要である.さらに,デ-タ共有への学術的評価制度の改善や組織間競争の緩和も課題である.高齢化と医療費増大に直面する日本では,患者中心のガバナンスと社会的便益を最大化する制度設計により,持続可能なデ-タエコシステムの構築が求められている.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1062-1066 (2025);
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幅広い医療分野における世界最高水準のゲノム医療を広く国民が享受できるようにしていくため,生命科学・医学系研究分野では機微情報を含む個人レベルのデ-タを,公的デ-タベ-スを通じて共有・活用する重要性が高まっている.2013 年に運用を開始したNBDC ヒトデ-タベ-スでは,個人レベルのデ-タの保護と利活用の両立を実現するための制度設計に努めている.一方で,研究倫理指針や「個人情報の保護に関する法律」の度重なる改正により,ル-ルの複雑化や運用上の課題も顕在化している.特にデ-タベ-スやバイオバンクといった“試料・情報の収集・提供を行う機関”を通じたデ-タ共有の検討が進んでいない点や,用語の複雑化,デ-タのアクセスレベルに関する合意形成の欠如などが指摘される.今後は研究者,研究対象者,デ-タベ-ス運営者などの関係者間の信頼と共通理解に基づいた連携体制の構築が不可欠であり,国際的な枠組みとの整合も視野に入れた制度整備が求められている.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1067-1073 (2025);
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2013 年7 月に,欧州製薬団体連合会(EFPIA)/米国研究製薬工業協会(PhRMA)が「責任ある臨床試験(治験)デ-タ共有の原則」を公表したことを契機に,製薬企業が医学研究者らに対して臨床試験の個別被験者デ-タ(IPD)の共有を積極的に行うようになってきた.また,近年は医薬品開発においてもビッグデ-タの利活用は喫緊の課題であり,自社のビジネスにいかすためにIPD の二次利用が製薬企業内で大きな関心事となっている.一方で,IPD には要配慮個人情報が含まれているため,他者と共有するには個人情報保護法などの法規制を遵守しなければならない.また,複数の異なる試験で収集されたIPD のデ-タベ-スを統合して活用するためには,デ-タの標準化とともにデ-タの統合基盤が必要になるなど多くの課題があり,IPDの二次利用はいまだ限定的である.本稿では,製薬企業が自社の臨床試験のIPD を共有するようなった経緯と実際のIPD の活用事例を紹介し,IPD 共有の意義について述べるとともに,IPD 共有に関して製薬企業が直面している課題をまとめた.
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医学のあゆみ 293巻11号, 1074-1078 (2025);
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日本政府は医療DX 推進とともに,医療デ-タの共有・利活用を進めているが,現行法制度では個人情報保護を重視した厳格な同意取得が課題となっている.一次利用においては過剰な同意依存が地域医療連携を妨げ,二次利用では匿名化やオプトアウト方式の導入が進むものの,匿名化の技術的限界や倫理審査委員会の乱立,質のばらつき(倫理審査委員会3000 個問題)が障壁となっている.今後,EU のEHDS(European Health Data Space)法や米国の事例を参考に,“入口規制”からリスクベ-スの“出口規制”へ転換し,その際,倫理審査委員会3000 個問題を踏まえた適切なガバナンス体制を構築する必要がある.デ-タ法制,AI規制,医学独自のル-ルの3 者の調和したデ-タシェアリングの国際的なモデル構築が期待される.
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TOPICS
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疫学
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医学のあゆみ 293巻11号, 1080-1081 (2025);
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小児科学
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医学のあゆみ 293巻11号, 1083-1084 (2025);
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連載
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細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望 ─ 臨床への展開 21
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医学のあゆみ 293巻11号, 1086-1090 (2025);
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脊髄損傷(SCI)におけるヒト多能性幹細胞由来神経幹/前駆細胞(hiPSC-NS/PCs)を用いた移植療法は,複数の基礎研究で有効性を示しており,有望な治療として注目されている.一方で,移植単独ではその効果が限定的であるのも事実であり,さらなる治療法の改善が望まれる.筆者らは亜急性期SCI に対する遺伝子治療,さらには慢性期完全損傷に対する新たなスキャフォ-ルドを用いた研究に取り組んでおり,従来の移植単独療法を超える効果が得られることを証明してきた.研究をさらに進めて複数の治療を最適化することで,損傷の程度や時期に合わせた再生医療を提供することが可能になる.
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ケ-スから学ぶ臨床倫理推論 12
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医学のあゆみ 293巻11号, 1092-1095 (2025);
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イチから学び直す医療統計 4
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医学のあゆみ 293巻11号, 1097-1103 (2025);
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ランダム化比較試験(RCT)の成功には,試験の科学的妥当性と倫理的配慮を両立させることが重要である.RCT の核心であるランダム化は,介入群と対照群間の公平な比較を可能にし,バイアスを最小限に抑えるための不可欠な手法である.しかしながら,その実施には慎重な計画が求められる.特に,試験結果に影響を与える予後因子のバランスを確保すること,クラスタ-ランダム化における混交の回避,適切なサンプルサイズの確保が課題となる.これらの課題に対応するため,試験デザインにおいては目的に応じたランダム化手法の選定と統計解析方法の工夫が必要である.さらに,RCT の実施にあたっては,倫理的側面も考慮しなければならない.本稿を通じて,RCT の設計および実施における重要なポイントを明確にし,臨床研究の質の向上につながる指針を提供することを目指す.
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司法精神医学への招待 ─ 精神医学と法律の接点 7
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医学のあゆみ 293巻11号, 1105-1109 (2025);
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「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)は,心神喪失もしくは心神耗弱の状態で,殺人,放火,強盗,傷害,不同意性交等,不同意わいせつのいずれかにあたる重大な他害行為を行った精神障害者のうち不起訴処分,無罪又は刑の減軽により執行猶予となった人を対象とし,その人を「対象者」,そして行われた重大な他害行為を「対象行為」と定義する. 法の目的は,対象者に対して,精神保健福祉と司法の緊密な連携に基づく専門的かつ継続的な医療と福祉サ-ビスを提供する体制を確保することにより,再他害行為の防止を図り,社会復帰を促進することである.