Therapeutic Research
Volume 31, Issue 4, 2010
Volumes & issues:
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State of the Art
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- 高血圧臨床研究の動向2010
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Symposium
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- 第4回循環器病学の論点
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- GERD研究会 第14回学術集会
- Session I
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3. 動物モデルを用いた胃食道逆流症による歯牙酸蝕症の検討
31巻4号(2010);View Description Hide Description胃食道逆流症(GERD)に関連した食道外病変の一つとして,内因性の歯牙酸蝕症が注目されている。歯牙酸蝕症とGERDとの因果関係について,Barrett食道が発生するGERD疾患モデルであるラット胃・十二指腸液逆流モデルを用いて検討した。その結果,手術後15週および30週において強い歯牙の溶解を認め,程度の強い症例では歯質が完全に溶解され,歯髄炎を認めたものも存在し,GERDと歯牙酸蝕症の関連性が明らかにされた。以上より,GERD関連の内因性歯牙酸蝕症は,歯科医と内科医とが連携して早期加療が望まれる疾患であると考えられた。 -
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6. 下部食道柵状血管とBarrett食道の臨床診断
31巻4号(2010);View Description Hide Description[欧米における食道胃接合部(esophago ?gastric junction:EGJ)の基準には厳密さが欠け,わが国との比較が困難である。食道切除を行った42 例について下部食道柵状血管(lower esophageal palisade vessels:LEPV),扁平上皮円柱上皮境界の位置,円柱上皮食道(columnar lined esophagus:CLE)の頻度などを術前後で検討したところ,内視鏡では59.5%にCLEを認め,切除標本では95.2%で認めた。CLEの最大幅は平均で5.6mm,食道横軸との比では1.5mmと狭く,その内部に腸上皮化生を認めなかった。LEPV下端は合理的なEGJの判定基準であるが,腺癌の発生母地という意味でBar rett 食道という用語を用いる場合,5mm以下のCLEをその範疇から除くことなども一つの臨床的対応策と考えられる。, 欧米における食道胃接合部(esophago ?gastric junction:EGJ)の基準には厳密さが欠け,わが国との比較が困難である。食道切除を行った42 例について下部食道柵状血管(lower esophageal palisade vessels:LEPV),扁平上皮円柱上皮境界の位置,円柱上皮食道(columnar lined esophagus:CLE)の頻度などを術前後で検討したところ,内視鏡では59.5%にCLEを認め,切除標本では95.2%で認めた。CLEの最大幅は平均で5.6mm,食道横軸との比では1.5mmと狭く,その内部に腸上皮化生を認めなかった。LEPV下端は合理的なEGJの判定基準であるが,腺癌の発生母地という意味でBar rett 食道という用語を用いる場合,5mm以下のCLEをその範疇から除くことなども一つの臨床的対応策と考えられる。] -
7. 弱酸性(weakly acidic)咽頭内気体逆流と酸性・弱酸性の嚥下誘発性咽頭内逆流は,PPIに反応した慢性咳嗽患者において有意に増加していた
31巻4号(2010);View Description Hide Description -
8. 低用量アスピリンは胃食道逆流症のリスクファクターか?
31巻4号(2010);View Description Hide Description低用量アスピリン(ASP)の食道粘膜障害への関与は,不明な点が多い。本研究は,ASP投与による食道粘膜への影響と,酸分泌との関連を明らかにする目的で行われた。7 日間のASP投与により,45.6%の症例で胃食道逆流症(GERD)の発症を認めた。プロトンポンプ阻害薬(PPI)併用時における24 時間胃内pHは,GERD grade A群で1.5(1.1 〜 1.9),非GERD群で5.6(0.8 〜 8.4)と重症度により有意に異なり,腹部症状の出現も,胃内pH値に相関した。ASPは胃内pH値に依存して他の消化管粘膜と同様に食道粘膜障害や腹部症状を引き起こすことから,ASPを内服する高リスク例では,酸分泌抑制薬の併用を考慮すべきである。 - GERD研究会 第14回Symposium
- GERD研究会 第14回学術集会
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- GERD研究会 第14回学術集会
- Session III
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Review
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原著
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アンジオテンシンII受容体拮抗薬効果不十分例に対する低用量利尿薬配合錠の降圧効果に関する検討−AWA-DANCERS study−
31巻4号(2010);View Description Hide Description -
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治療抵抗性高血圧に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬とCa拮抗薬の併用の有用性−外来血圧,家庭血圧での降圧度評価−
31巻4号(2010);View Description Hide Description目的:アンジオテンシン I I 受容体拮抗薬投与治療中の本態性高血圧症患者に対し,単剤増量治療と Ca 拮抗薬との併用治療を行い,降圧効果を比較検討した。方法:オルメサルタン単剤で降圧治療中の本態性高血圧患者にオルメサルタンを増量およびアゼルニジピンを併用投与した。対象患者には検討期間中,より正確な降圧効果を評価するために,早朝起床時家庭血圧を測定してもらい,定期外来受診時の診察時血圧と家庭血圧との差を検討した。さらに,対象患者における白衣高血圧や仮面高血圧の存在や影響についても検討した。結果:起床時家庭血圧での収縮期血圧は,オルメサルタン単剤増量投与時と比較し,アゼルニジピン併用療法時のほうが低い傾向を示していた。結論:オルメサルタン単剤投与治療患者において効果的な降圧効果を得るためには,単剤増量治療を選択するより,アゼルニジピン併用治療を選択することが有効であることが示唆された。また,降圧効果をより正確に評価する方法として家庭血圧を利用することは,白衣および仮面高血圧の影響を除外でき,より正確で科学的な降圧治療評価が可能となる。 -
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冠動脈疾患を合併した末梢動脈疾患患者に対するベラプロストナトリウムの治療効果
31巻4号(2010);View Description Hide Description間歇性跛行を主体とした軽症の末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)の治療には運動療法が基本となるが,冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)を高率に合併するため運動療法に制限がかかる場合や間歇性跛行自体による歩行の限界などの問題点がある。この解決策としては薬物療法の併用により安全にかつ有効に運動療法が施行されることが望ましい。間歇性跛行を緩和する作用のあるベラプロストナトリウム(以下ベラプロスト)は抗血小板作用や血管拡張作用などを有しており,PAD 患者の自覚症状の改善に加えて,心血管イベントの抑制効果も報告されている。本臨床試験では,CADを合併した PAD 患者 11 例にベラプロストを3 ヵ月間投与し,歩行障害の改善について歩行障害質問票(Walking Impairment Questionnaire:WIQ)を用いて評価し,あわせて循環動態に及ぼす影響についても検討した。その結果,WIQスコアにて痛みの程度,歩行距離,階段を上がる能力のスコアは有意に改善した。一方で,足関節− 上腕血圧比(ankle brachial pressureindex:ABI),脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV),augmentation index(AI),高感度C 反応性蛋白(hs−CRP)には,有意な変化を認めなかった。また,ベラプロストは収縮期,拡張期血圧,心拍数に影響を及ぼさず,CAD 合併例においても安全に投与できた。以上の結果から,ベラプロストは CAD を合併した PAD 患者においても間歇性跛行を改善し,かつ安全な治療法であると考えられた。
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症例
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アルガトロバン超高用量療法で歩行可能となった左内頸動脈閉塞症の1例−高用量療法2例との対比−
31巻4号(2010);View Description Hide Descriptionアルガトロバン高用量投与を行った内頸動脈閉塞症の 3 例を検討し,アルガトロバンは脳塞栓にも安全性が高い治療法であることを確認した。内頸動脈閉塞症に対しては,アルガトロバン高用量療法では不十分な症例を経験し,さらに投与量を増加させた症例において明らかな臨床症状の改善を示した。アルガトロバン超高用量療法は t−PA に劣らない優れた治療法である可能性が示唆された。 -
CAS術中に生じたHITが原因の頭蓋内血栓症
31巻4号(2010);View Description Hide DescriptionCAS 術中に生じる頭蓋内血栓症は,手術手技にかかわる合併症と考えやすい。ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)による頭蓋内血栓症と判断することで,この重篤な合併症から回復することができた,まれな 1 例を報告する。症例は脳梗塞と高血圧の既往がある 70 歳,男性。脳血管造影検査で両側内頸動脈起始部狭窄を確認し,45 日後,全身麻酔下に CAS を実施した。全身ヘパリン化後の最初の造影で,治療側の内頸動脈から中大脳動脈,前大脳動脈の分枝に血管壁に沿う平板な陰影欠損を多数の箇所で確認した。術前からアスピリンとクロピドグレルの内服を行い,ACT は 300 秒とヘパリンの抗凝固作用は十分に効いている状態であった。オザグレル Na の追加点滴加療を行いながら CAS 終了直後の造影で血栓症の進行を確認した。この段階で HIT による血栓症を強く疑い,術中に血小板数を測定すると術前 36.3 万が 26.3 万まで減少し,ヘパリンを中止して,アルガトロバンの点滴を開始した。術直後に認めた右片麻痺と完全失語は,3 時間後には急速に改善した。術後2 週間アルガトロバンの点滴加療を行い,以後ワルファリンの内服に切り替えた。自覚症状は術後 2 ヵ月で消失し,神経脱落症状を残すことはなかった。血管内手術中の血栓性合併症にHIT の可能性を考えておく必要がある。
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