Therapeutic Research
Volume 32, Issue 3, 2011
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Symposium:第 23 回 Nicorandil 研究会
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基礎の部 ● 演題 1ニコランジルによる心筋細胞保護における GSK-3βの役割
32巻3号(2011);View Description Hide DescriptionG 蛋白連関受容体(GPCR)活性化に引き続き,ミトコンドリア KATPチャネル(mKATP)が開口することが,心筋細胞保護のためのシグナル活性化に重要である1)。一方, リン酸化glycogen synthase kinase-3β(GSK-3β)は虚血プレコンディショニングや虚血ポストコンディショニングなどによる心保護のメカニズムに共通したシグナルとして注目されている。つまりprotein kinase C や Akt などの心保護的なシグナルは GSK-3βの Ser9 リン酸化による活性低下に収束し,細胞壊死の機序として重要なミトコンドリア透過性遷移孔(mitochondrial permeabilitytransition pores:mPTPs)の開口閾値を上昇させ心保護をもたらす2)。最近われわれはmKATP開口と GSK-3βの関連を検討し,mKATPの開口は GSK-3βの Ser9 リン酸化およびそれに伴う GSK-3βの活性低下を引き起こすことにより,虚血再灌流による心筋細胞壊死を抑制することを見出した3)。そこで今回われわれは,ニコランジルの心筋細胞保護効果における GSK-3βの役割を検討した。 -
基礎の部 ● 演題 2デスミン心筋症マウスに対するニコランジルの心筋保護効果
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionデスミン心筋症は特発性心筋症の一種として知られており,構造タンパク質であるデスミン,あるいは低分子量ストレス蛋白質の一つであるα-β-クリスタリン(CRYAB)遺伝子に点変異あるいは欠損変異があると発症する。この疾患に関しては不明な点が多いが,筋細胞内に不溶性凝集体を形成することが特徴として知られている。われわれは,デスミン心筋症病態のモデルとして,α-β-クリスタリンの 120 番目のアルギニンをグリシンに点変異させた(Arg120Gly,以下 R120G)CRYAB を心臓特異的に発現させたトランスジェニック(TG)マウスを作製した。この R120G CRYAB TG マウスでは,野生型CRYAB TG マウスと比べて心臓の大きさが約 2倍になり,心筋細胞内に HSPB5 陽性の不溶性凝集体が蓄積することが確認されている。R120G CRYAB TG マウスの心筋内では,変性タンパク質(unfolded protein)の凝集過程の中間体として産生される amyloid oligomer が発生すること,および amyloid oligomer が心筋症病態の重症度に相関することが明らかになっている。amyloid oligomer の心筋毒性の機序としては,変異 HSPB5 が蓄積し,amyloid oligomer が発生する。その amyloid oligomer がミトコンドリア膜に障害を引き起こすことにより,心筋細胞死が起こり,最終的には心機能の低下による心不全発症,もしくは致死的な不整脈に至ると考えられる。本研究では,CRYAB R120G TG マウスを用いて,心筋症病態へのミトコンドリア障害の関与と,それに対するニコランジルの心筋保護効果を検討した。 -
基礎の部 ● 演題 3慢性心不全に対するニコランジルの改善作用メカニズム―心不全誘発モデルマウスを用いた検討―
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionアンジオテンシン I I,エンドセリンやノルアドレナリンは,それぞれの特異的な G proteincoupledreceptor を介して Gαq を活性化させ,ホスホリパーゼ C,イノシトール 1,4,5-三リン酸,ジアシルグリセロールを増加させることで,心肥大を引き起こす。さらに心筋での電気的・構造的リモデリングが心不全を誘発し頻脈性心室性不整脈(VT)を発生させる可能性が考えられる。われわれは第 22 回の研究会に,一過性にGTP-binding protein αq を強発現した心不全誘発トランスジェニックマウス(Gαq-TG マウス)を用いた研究で,ニコランジルの慢性投与が,左室径短縮率(LVFS)の低下,P 間隔と QT 間隔の延長,心室性期外収縮(PVC)の頻度増加,左心室筋の線維化を改善して,心機能の改善とVT 発生を抑制することを報告した。しかし,心不全,VT に対してニコランジルがどのようなメカニズムで作用するのかは解明されていない。今回われわれは,Gαq-TG マウスを用いて,また心筋の各種蛋白分子の mRNA 発現量を測定し,またニコランジル急性投与の心室筋活動電位への効果から,ニコランジルの心不全改善メカニズムを検討した。 -
基礎の部 ● 演題 4ニコランジルはパクリタキセル誘発内皮障害を改善する―ラット大oe 動脈での Flow-mediated dilation による評価―
32巻3号(2011);View Description Hide Description冠動脈インターベンション治療は drugelutingstent(DES)の登場により再狭窄のリスクは軽減された。しかしながら,その優れた再狭窄抑制効果の一方でステント内血栓症や冠攣縮惹起など新たな問題も懸念されるようになっており,これらの問題の原因の一つとして DESによる血管内皮機能障害の関与が指摘されている。血管内皮機能は種々の方法で測定が試みられているが,中でも非侵襲的な方法である flowmediateddilation(FMD)の有用性が注目されている。nicorandil は虚血性心疾患患者の予後改善効果を有し,内皮機能改善効果も報告されており,虚血性心疾患を有する患者1)や心疾患リスクを有する患者2)に nicorandil を服用させることにより,FMD の改善が認められたと報告されている。そこで本研究では,DES の代表的な薬剤である paclitaxel により誘発される内皮機能障害に対する nicorandil の効果を検討した。基礎研究での内皮機能は一般に摘出血管での内皮依存性弛緩反応により評価されているが,本研究では,より生理的な条件での検討を考え,Heissらにより報告されたラットでの FMD 測定系を用いた3)。 -
基礎の部 ● 演題 5Paclitaxel による NADPH Oxidase 系を介したROS 産生亢進へのニコランジルの影響
32巻3号(2011);View Description Hide Description第 22 回の研究会で,薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)で用いられる,paclitaxel(PTX)あるいは sirolimus(SRL)は,活性酸素種(ROS)を介して塩化鉄による血栓形成を促進したこと,そこにニコランジルを投与すると,SRL による血栓形成時間を有意に延長させたが,PTX による血栓形成時間を有意に延長しなかったことを報告した1)。また,東京大学の Ota らは,シロスタゾールを加えると,SRLによる血管内皮細胞の老化(senescence)が濃度依存性に抑制されたが,PTX に対しては効果を示さなかったと報告している2)。これらの結果から PTX と SRL では ROS 産生の機序に差異がある可能性が示唆された。そこで今回,われわれは塩化鉄処理 in vivo 血栓モデルを用いて,PTX による NADPH oxidase系を介した ROS 産生の機序と,その血栓形成促進に対する NF-κB 阻害薬 SN-50,NADPHoxidase 阻害薬アポシニン,およびニコランジルの影響を検討した。 -
基礎の部 ● 演題 6Dilatation of the Rat Ductus Arteriosus by Nicorandil
32巻3号(2011);View Description Hide Description -
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基礎の部 ● 演題 8ニコランジルの急性虚血腎障害モデルに対する腎微小循環保護作用̶腎微小循環可視化イメージング法による検討̶
32巻3号(2011);View Description Hide Description -
基礎の部 ● 演題 9低酸素による血管・心臓交感神経からのノルアドレナリン遊離に対するニコランジルの影響
32巻3号(2011);View Description Hide Description冠血管拡張薬として狭心症に適用されるニコランジルが,一酸化窒素供与体としての作用とKATPチャネル開口作用を併せ持つ薬物であることはよく知られているが,最近では KATPチャネル開口作用による虚血再灌流時の心筋保護作用に加え,交感神経保護作用も報告されている。われわれはこれまで,Wistar 系ラットの尾動脈において,電気的神経刺激による血管交感神経からのノルアドレナリン遊離に対しニコランジルが抑制作用を示すこと,また,ニコランジルのノルアドレナリン遊離抑制作用には KATPチャネルが関与するが,このチャネルの薬理学的性質は尾動脈平滑筋の KATPチャネルとは異なっていることを報告している1, 2)。本研究では,交感神経終末の KATPチャネルが,低酸素環境下の交感神経機能に関与するか否かを明らかにするために,窒素通気下の摘出動脈標本および摘出右心室標本に対するニコランジルの影響について検討した。 -
臨床の部 ● 演題 1ニコランジル冠動脈内投与とニトログリセリン冠動脈内投与による急性心筋梗塞再灌流療法後の冠微小循環障害改善効果の比較検討- Index of Microcirculatory Resistance(IMR)による冠微小循環障害の評価-
32巻3号(2011);View Description Hide DescriptionST上昇型心筋梗塞(STEMI)では経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で再灌流に成功しても,no –reflow現象など高度な冠微小循環障害を呈すると慢性期予後が不良になると言われている。伊藤らはTIMI 3 患者の16%は心筋の灌流が得られずno–reflow現象をきたすこと1),no –reflow現象をきたすと予後も悪いこと2)を報告している。no –reflow現象の評価は心筋コントラストエコーがゴールデンスタンダードであるが,われわれは,プレッシャーワイヤーで微小循環障害を定量測定するindex of microcirculation resistance(IMR)に着目した。Fearonらは,AMI 後に測定したIMRが微小循環障害の予測因子になること3),急性期のIMRが32Uより大きな症例は3 ヵ月後のwall motion score(WMS)が障害されることを報告している4)。また,Limらの報告では,IMRが33U以上の高値例ではWMSの改善は難しくFDG–PETの取り込みも不良とされている5)。われわれは第22 回の本会で,STEMI 再還流療法後のIMR高値例に対してニコランジル2mg/10mL冠動脈内投与がIMRを有意に改善することを報告した6)。今回,ニコランジルがIMRを低下させる作用について,ニコランジルと同じ硝酸薬様作用を有するニトログリセリンと比較検討した。 -
臨床の部 ● 演題 2STEMI におけるニコランジルの心筋保護効果についての検討
32巻3号(2011);View Description Hide Description急性心筋梗塞(AMI)に対して PCI 前のニコランジル経静脈投与が微小循環機能や予後を改善することが報告されている1, 2)。また,ニコランジルには NO の効果として比較的大きな血管の拡張作用を有するとともに,KATPチャネル開口作用による,細血管などの抵抗血管の拡張作用,白血球機能の抑制,フリーラジカルの抑制,虚血プレコンディショニングの増強も知られている。AMI では PCI 時にバルーン拡張などの機械的な刺激によってプラーク内容物や血栓などが末梢に塞栓して梗塞を起こすが,ニコランジルの抵抗血管拡張作用が末梢塞栓によるダメージを軽減すると考えられる。以上のことから,ニコランジルには,塞栓子が大きい場合,その心筋保護作用に加えて末梢塞栓による心筋ダメージを抑制させる効果が期待でき,塞栓子が無視できるほど小さい場合は末梢塞栓による心筋ダメージが軽減できるため,ニコランジルの直接的な心筋保護効果が評価できるのではないかと考えられた。今回われわれは,血栓吸引デバイスと末梢保護デバイスを用いて抗塞栓療法を最大限に施行した ST 上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,ニコランジルの経静脈的投与がさらに追加的な微小循環改善機能や心筋保護効果を有するのかを検討した。 -
臨床の部 ● 演題 3ST上昇型心筋梗塞に対するニコランジル冠動脈投与の予後改善効果の検討
32巻3号(2011);View Description Hide Description心筋の微小循環を評価する指標として,経皮的冠動脈形成術(PCI)中にプレッシャーワイヤーを用いて測定できる微小血管抵抗指数(IMR)がある。IMR とST 上昇型心筋梗塞(STEMI)の関係については,FearonがIMRの中央値32Uで2 群に分けて検討し,IMR高値群でpeak CK,3 ヵ月後のwall motion scoreが有意に高いことを報告している1)。また,われわれはprimar y PCI 終了後にニコランジルを冠動脈投与してIMRを改善させることを報告した2)。近年,院内死亡率,6 ヵ月後の予後予測に役立つ指標としてthe Global Registry of AcuteCoronary Events(GRACE)リスクスコアが注目されている。GRACEリスクスコアはKillip分類,収縮期血圧,心拍数,年齢,クレアチニン,心停止の有無,ST変化の有無,心筋逸脱酵素の上昇の有無の8 項目でスコア化し,重症度を評価する指標であり, GRACEスコアによってlow,intermediate,high risk の3群に分けた院内死亡率も報告されている3)。今回われわれは,STEMI 患者に対するPCI 後のIMRとGRACEリスクスコアとの関係を検討し,ニコランジル冠動脈投与による微小循環の改善の程度がGRACEリスクスコアとどのように関連するのかを評価した。 -
臨床の部 ● 演題 4急性心不全症例に対するニコランジル投与の心臓交感神経活性および左室リモデリングに及ぼす効果
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionノルエピネフリンはシナプスから放出された後,一部は血中に流出し,残りは uptake-1 という機序によって再度シナプスに取り込まれる。心不全の病態ではシナプスから放出されるノルエピネフリンの量が亢進し,かつ uptake-1 が障害されることから,血中ノルエピネフリン濃度が上昇する。123I-MIBG 心筋シンチグラフィ(MIBG 心筋シンチ)はノルエピネフリンのプレシナプスの状態を表現していると考えられており,不全心筋ではそのため MIBG の集積が低下する。ATP 感受性カリウム(KATP)チャネル開口薬のニコランジルは,虚血性心疾患において運動負荷時のノルエピネフリン血中濃度の上昇を抑制することが報告されている1)。また,三浦らの報告では,ニコランジルは虚血プレコンディショニング効果により,KATPチャネルを活性化し心臓交感神経活性の障害を抑制することが示されている2)。最近,KATPチャネルの活性化は,心筋梗塞後シナプスでのノルエピネフリンの放出と吸収を調節して uptake-1 の障害を改善することにより,心臓交感神経障害を抑制することが報告されている3,4)。われわれは 2005 年に,急性心筋梗塞(AMI)患者に PCI を施行後,ニコランジルと ISDN を投与し,3 週間後の心臓交感神経活性を MIBG心筋シンチで比較評価した。その結果,ニコランジル群では ISDN 群に比べて total defectscore(TDS),washout rate(WR)の有意な低下と心縦隔比(H/M 比)の有意な上昇がみられ,ニコランジルによる心臓交感神経活性の有意な改善効果が認められた5)。これまで AMI や慢性期の陳旧性心筋梗塞に対するニコランジル投与については,多くの検討がなされてきた。今回われわれは,非虚血性の急性心不全に対するニコランジルの心臓交感神経活性への影響を,MIBG 心筋シンチを用いて検討したので報告する。 -
臨床の部 ● 演題 5超急性期からのニコランジル投与は急性心不全患者の予後を改善する
32巻3号(2011);View Description Hide Description急性心不全は症状が急激もしくは徐々に出現し,呼吸苦などの症状の改善には超急性期からの治療が必要である。急性心不全ガイドラインでは,血圧がある程度保たれている患者には強心剤ではなく血管拡張薬の使用を推奨している。ニコランジルには硝酸薬様作用とKATPチャネル開口作用があり,静脈と動脈をバランスよく拡張させることが知られている。また,急性心不全患者にニコランジルをボーラス投与した後に持続点滴すると,急速にPCWPが下がりCIも改善し,前負荷と後負荷を下げる可能性があると報告されている1,2)。さらに心筋においては,ニコランジルはプレコンディショニング効果を持つ。石井らは,急性心筋梗塞患者に対する急性期からのニコランジル投与は心血管イベントを抑制すると報告している3)。しかし,急性心不全患者に超急性期からニコランジルを使用することの予後に対する意味づけは,いまだ明確ではない。ただ,急性心不全患者に対して超急性期から介入することは予後の改善につながる可能性があると,2008 年にレジストリデータの後ろ向きの検討において報告されている4)。そこで今回われわれは,急性心不全患者に超急性期からニコランジルをボーラス投与し,その後,持続点滴することが急性心不全患者の予後の改善へ繋がるかどうかを検討した。 -
臨床の部 ● 演題 6クリニカルシナリオ 1 の急性心不全初期治療におけるニコランジルはボーラス投与のみで腎機能を保護する
32巻3号(2011);View Description Hide Description急性心不全の治療において,その病態を迅速に把握し,それに応じた治療を速やかに開始することが重要である。急性心不全の病態把握には,臓器うっ血の有無と心拍出量が保たれているかを判断することが必要であり,以前はスワン・ガンツカテーテル挿入で心拍出量と肺動脈楔入圧を測定して分類する Forrester 分類が一般的であったが,近年は臨床所見から臓器うっ血と低心拍出の有無を判断し,四つのカテゴリーに分類する方法が用いられている1)。また,収縮期血圧で急性心不全をクリニカルシナリオとして分類する方法も多く用いられている2)。急性心不全において最も多く遭遇するのは,肺うっ血はあるが低心拍出状態ではない急性心不全であり,前述の分類では wet & warm に相当する。このような急性心不全では,血管拡張薬と利尿薬を主体とする治療となり,さらに収縮期血圧が 140 mmHg 以上のクリニカルシナリオ 1 では,その病態が volume overload ではなく afterloadmismatch による volume central shift であることから,強力な血管拡張のみで十分であり利尿薬は不要とされている。わが国では,急性心不全治療における血管拡張薬として硝酸薬やカルペリチドが多く使用されているが,2007 年 10 月にニコランジルも急性心不全に対する適応が承認された。われわれも以前,wet & warm でクリニカルシナリオ 1に相当する急性心不全に対し,ニコランジルの急速静脈注射(0.2 mg/kg/5 分)に引き続き持続点滴静脈注射 3 日間(0.1~0.2 mg/kg/時間)を行うことにより,交感神経活動の活性化や腎機能増悪をきたすことなく,急性心不全の治療が可能であることを報告した。急性心不全の治療による腎機能の悪化はその後の経過を大きく左右する因子となり,その原因の多くが不必要な利尿薬使用による影響であると考えられる観点からも,wet & warm でクリニカルシナリオ1 に相当する急性心不全治療におけるニコランジルの有用性が示唆された。一方で,ニコランジルの使用法について,急速静脈注射を行った後に持続静脈注射を 3 日間行うことが一般的であるが,その使用目的が急性心不全の超急性期における afterload mismatch を解除することであれば,急速静脈注射のみでも有用である可能性がある。しかし,ニコランジル急速静脈注射のみでの急性心不全改善効果,特に腎機能に着目した研究は少なく,統一された見解はないのが現状である。 -
臨床の部 ● 演題 7透析患者における経口ニコランジルの心臓死抑制効果
32巻3号(2011);View Description Hide Description心臓死は透析治療を必要とする慢性腎不全患者の主要な死因であり,冠動脈疾患は透析患者の心臓死の病因として重要である1)。一方,慢性腎臓病を有していない患者に比べて,透析患者では CABG や PCI などの冠血行再建後の生命予後は明らかに不良である2)。冠動脈疾患を有していない透析患者においても心臓死の頻度は高く3),冠動脈疾患の有無にかかわらず,心臓死への対策は透析患者の予後改善のため重要な課題となっている。われわれは,維持血液患者を対象とした検討において,無症候性透析患者,PCI により冠血行再建をした透析患者,ならびに冠動脈造影上有意病変を有さない透析患者の心臓死をニコランジル内服が抑制する可能性を示してきた4~6)。しかしながら,透析患者の心臓死に対するニコランジルの抑制効果が,心臓死リスクの程度に依存するものであるか否かは不明であった。今回,透析患者におけるニコランジルの心臓死抑制効果について,心臓死リスク別に分類して検討した。 -
臨床の部 ● 演題 8慢性心不全患者におけるニコランジルの長期投与効果―体表面加算平均心電図からみた検討―
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionニコランジルは強力な血管拡張薬であり,急性心不全患者の血行動態を改善させることが知られている。慢性心不全では心房,心室に構造的・電気的リモデリングをきたすが,われわれは以前に,慢性心不全患者 20 数例にニコランジルを 3 年間長期投与したところ,左室駆出率の改善により左室拡張末期径の減少,左室のリバースリモデリングがもたらされることを報告した(2009AHA)。構造的リモデリングの本質は心筋の線維化であり,われわれは拡張型心筋症(DCM)患者における左室心筋線維化の程度を体表面加算平均心電図により非観血的に評価しうることを報告した1)。一方,発作性心房細動患者では P 波加算平均心電図における P 波持続時間(Ad)が有意に長く,終末の 20 msec 間の平均電位(A20)が有意に小さいことがわかっており2),心房の線維化の程度は心房波の Ad と有意に正相関し,A20 と有意な負の相関を示すことも報告しており3),心房波の加算平均心電図を用いて心房の線維化の程度も評価しうると考えられた。そこで今回われわれは,慢性心不全患者の心房筋・心室筋の電気的リモデリングに対するニコランジル長期投与効果を,体表面加算平均心電図を用いて検討した。 -
臨床の部 ● 演題 9心臓手術後の持続血液濾過透析(CHDF)施行患者におけるニコランジルの薬物動態の検討
32巻3号(2011);View Description Hide Description目的:ニコランジルを持続投与する心臓手術後で血液透析を施行されている患者 10 例を対象に CHDF 施行前後のニコランジルの血中濃度を測定し,CHDF 施行下での薬物動態を検討する。方法:心臓手術後の患者で,CHDF 開始 8 時間以上前から開始後 7 時間後まで最低 15 時間以上ニコランジルを 0.1 mg/kg/hr の用量で持続静注した。測定点は CHDF 開始前後に 30 分間隔で 3 点ずつ,それぞれ動脈ラインより採血を行い血中濃度を測定した。また,CHDF 開始 1 時間後の時点で,CHDF の脱血側,返血側,濾液からサンプルを採取し,ニコランジルのクリアランスを測定した。結果:10 例の CHDF 開始前のニコランジルの血中濃度は平均値で 85.4 ng/mL であった。また,CHDF 開始 7 時間後の時点では平均血中濃度は 118.7 ng/mL であり,CHDF 開始 1 時間後におけるニコランジルのクリアランスは平均値で 15.3 mL/min であった。考察:ニコランジルの至適な血中濃度は 40~300 ng/mL と報告されており,500 ng/mL まで上昇すると心拍数増加,血圧低下が出現するともいわれている。今回検討した症例の中では,1 例でのみ CHDF 開始後の血中濃度が 382 ng/mL とやや上昇していたが,特に副作用はみられなかった。他の 9 例では CHDF 開始前後とも血中濃度は 40~300 ng/mL の範囲にあった。全例で調査期間内に心血管イベントの発症はみられなかった。血液透析患者における CHDF 施行時のニコランジルの持続投与量は 0.1 mg/kg/hrでほぼ有効血中濃度にあると考えられた。また,無尿の透析患者に対して CHDF 開始までに平均33 時間ニコランジルを 0.1 mg/kg/hr で持続投与していたが,ニコランジルの平均血中濃度は85.4 ng/mL と有効血中濃度内に留まっており,過剰な蓄積はみられなかった。 -
臨床の部 ● 演題 10ニコランジル単回静注を用いた難治性虚血性心不全の評価―ニコランジル負荷 MIBI 心筋シンチグラムによる検討―
32巻3号(2011);View Description Hide Description重篤な冠動脈病変に伴う難治性虚血性心不全は,多枝病変で複数回のステント治療や冠動脈バイパス術の既往を有し,至適な血行再建の追加が困難な場合が多い。そのため急性期から病態を考慮した薬物治療が重要となるが,難治性虚血性心不全の病態,特に急性増悪期における心筋虚血の程度や範囲が病態にどう関与しているかは明らかでない。ATP-sensitive potassium channel opener であるニコランジルは長く狭心症に対して使用されてきたが,最近は急性心不全への有効性も示されている1)。ニコランジルの作用機序として,冠血流増加2),後負荷減少3),微小循環改善4,5)などがいわれているが,虚血性の急性心不全において虚血の改善がどの程度得られているかは不明である。本研究ではニコランジル単回静注負荷 MIBI心筋シンチグラム法を用いて,心筋虚血の観点から急性増悪期の難治性虚血性心不全の病態を明らかにするとともに,ニコランジルの虚血改善効果について検討を行った。
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Review
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メタボリックシンドローム合併高血圧の治療におけるARBの選択-インスリン抵抗性を指標とした各薬剤の作用の違い-
32巻3号(2011);View Description Hide Description内臓脂肪型肥満・インスリン抵抗性を基盤としたメタボリックシンドローム(MetS)の病態は心血管疾患の発症リスクであることが,わが国の端野・壮瞥町研究をはじめ多くの疫学研究から明らかにされている。また,MetS を構成する因子のなかで,血圧高値は最も高頻度に認められる危険因子であり,MetSの病態から最初に発症しやすい合併症が高血圧症である。こうした背景のもと,高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)1) ではMetS 合併高血圧の治療において厳格な降圧目標値を設定するとともに,インスリン抵抗性改善作用のあるACE(angiotensin converting enzyme)阻害薬,ARB(AT1 receptor blocker)を第一選択薬として推奨している。ARBはレニン・アンジオテンシン系(RAS)の亢進を抑制し,クラスエフェクトとしてインスリン抵抗性を改善させることが広く知られているが,その程度についてはARB間により報告が異なる。そこで,本稿ではMetSを合併した高血圧患者の管理の観点から,ARB間でどの程度インスリン抵抗性改善作用に違いがあるのかについて検証を行った。
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原著
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家庭血圧測定に基づくCa拮抗薬エホニジピン塩酸塩の臨床評価
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionエホニジピン塩酸塩(エホニジピン)は,他のカルシウム(Ca)拮抗薬と異なり,L型のみでなくT型Ca チャネル拮抗作用を有する特徴的な薬剤である。これまで,エホニジピンの降圧効果だけでなく,降圧時における心拍数の増加が抑制されることが報告されている1)。一方,早朝高血圧に関しては,早朝血圧高値が脳血管疾患リスクであることが報告されており2, 3),早朝血圧管理の重要性は明らかである。本研究では,患者による家庭での血圧自己測定である家庭血圧測定に基づいて降圧効果の評価を行っている。家庭血圧測定は,白衣効果を受けないこと,良好な再現性を有すること,いくつかある血圧測定法の中でも薬効評価に最適であることなど多くの有用性が報告されている4, 5)。しかし,これまでにエホニジピンについて家庭血圧測定に基づいて評価した報告は限られている6)。本研究の目的は,エホニジピンの降圧効果,て評価することである。および薬効持続について家庭血圧測定に基づい -
家庭血圧測定を用いた低用量エプレレノン(25mg/日)の有用性に関する検討
32巻3号(2011);View Description Hide Descriptionアルドステロンは腎臓の遠位尿細管および集合管に作用し,循環血漿量の調節を介して昇圧を引き起こすことが知られている1)。近年,アルドステロンが心臓や血管,脳に作用し,直接昇圧や臓器障害を引き起こすこと2)や,治療抵抗性高血圧にも一部関与すること3)が報告された。そのため,臓器障害や適切な降圧治療の観点からアルドステロン受容体拮抗薬が重要であると考えられる。これまでの多数の研究より選択的アルドステロン受容体拮抗薬エプレレノンの有用性が報告されている。しかしながら,先行研究のほとんどがエプレレノン50 ~ 100mg/ 日の有用性について検討したものであり4 ~ 6),25mg/ 日の低用量エプレレノンの有効性に関する検討は限られている7, 8)。さらに,家庭血圧測定を用いた検討も限られている8, 9)。家庭血圧測定は白衣効果を回避することが可能であり,再現性が良好であるため,降圧薬の薬効評価に最適とされる10, 11)。われわれは以前,スピロノラクトン12.5mg/ 日からエプレレノン25mg/ 日に切り替えが行われた患者を対象に,両薬剤の有効性を比較した。そして早朝血圧管理において,両薬剤の有効性に差がないことを報告している8)。本研究の目的は,エプレレノン25mg/ 日が追加処方された早朝血圧の降圧が不十分な本態性高血圧患者において,家庭血圧測定を用いてエプレレノン25mg/ 日の有用性を評価することである。 -
高用量オルメサルタンの2型糖尿病合併高血圧患者に対する臨床効果
32巻3号(2011);View Description Hide Description糖尿病を合併した高血圧患者に対しては,高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)において厳格な降圧が推奨されている1)。JSH2009では,糖尿病合併高血圧患者の降圧治療の第1 選択薬として,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)があげられており,その心臓・腎臓・血管などに対する臓器保護効果が降圧とともに重要視されている。さらにJSH2009 では降圧不十分な症例においてはARBまたはACE阻害薬の増量もしくは他の降圧薬(Ca 拮抗薬,少量の利尿薬)との併用が推奨されている。しかし増量または併用の判断は,個々の病態により各医師の裁量に委ねられており,臨床現場ではその判断に迷う場面が少なくない。一方で海外の大規模臨床試験では,ARBの臓器保護効果は用量依存的であり,高用量投与によってさらなる臓器保護効果が期待できるとの報告2)がある。また,国内の大規模臨床試験OSCAR Study ではオルメサルタンメドキソミル(以下オルメサルタン)をベースにオルメサルタンを増量またはCa 拮抗薬を併用することのどちらが臓器保護の点で優れているかを比較検討している。この試験結果から,高血圧治療にとってオルメサルタンの増量とオルメサルタンにCa 拮抗薬の併用のどちらがより優れているのかが明らかになることが期待される3)。オルメサルタンはダブルチェーンドメインと呼ばれる結合様式により,AT1 受容体との結合力が最も強く,解離しにくいことが報告されている4)。このことからオルメサルタンは,他のARBに比べて強力な降圧効果を示す。また,降圧以外のオルメサルタンの多面的な効果として5)尿中アルブミンの減少作用6),インスリン抵抗性改善作用・アディポネクチン増加作用7),脂質改善作用8)があるとの報告がある。今回オルメサルタン20mg/ 日を投与中で降圧不十分な2 型糖尿病合併高血圧患者に対し,オルメサルタンを最大投与量である40mg/ 日まで増量し,その降圧効果と脂質代謝・腎機能への影響を検討した。 -
Azelnidipine Decreased Plasma Aldosterone andPlasminogen Activator Inhibitor Type 1 Levelsin the Hypertensive Patients with Type 2 Diabetes Mellitus―the Jikei Azelnidipine study in the patients withHypertension and Diabetes Mellitus(JAz-HDM)―
32巻3号(2011);View Description Hide DescriptionAccumulated evidences showed that the combination therapy by Ca2+ channelblockade and inhibition of renin-angiotensin I I axis improved the prognosis of hypertensivepatients. Recently we reported that some types of Ca2+ channel blockers (CCBs),including azelnidipine, may inhibit aldosterone synthesis and secretion in human adrenocorticalcarcinoma cell line, NCI-H295R adrenocortical carcinoma cells. So, we designed theclinical study to evaluate the clinical utility of azelnidipine in the hypertensive patientswith type 2 diabetes mellitus(the Jikei Azelnidipine study in the patients with Hypertensionand Diabetes Mellitus [JAz-HDM]). The patients with hypertension and type 2diabetes mellitus regularly going to the outpatient clinic of the Department of InternalMedicine of the Jikei University Hospital who received a CCB other than azelnidipine wererecruited. A prescribed CCB was discontinued and switched to azelnidipine(16 mg daily).The effects of azelnidipine were evaluated by the blood pressure and the routine laboratorytests, including plasma aldosterone concentration(PAC)and plasminogen activator inhibitortype 1(PAI-1), before and 6 months after switching the prescribed CCB to azelnidipine.Although the switch of the CCB to azelnidipine did not result in the significant change ofthe blood pressure, azelnidipine resulted in decrease of PAC without the change of plasmarenin activity(p<0.05), and PAI-1(p<0.05), one of the adipocytokines, in the overall studied patients. The JAz-HDM revealed that azelnidipine may exert additional beneficialeffects, targeting PAC and PAI-1 in the patients with hypertension and type 2 diabetesmellitus compared with other CCBs. -
DPP–4阻害薬シタグリプチンの実地臨床における有用性-使用経験における検討-
32巻3号(2011);View Description Hide Description主体とするものと,インスリン抵抗性が主体でそれにインスリンの相対的不足を伴うものなどがあり,それぞれの病態に合わせた複数の経口血糖降下薬が開発され,使用されてきた。しかし,従来の経口血糖降下薬では,低血糖症の発現や体重増加への懸念,また1 日複数回の投与が必要であるといった課題があり,必ずしも適正な血糖コントロールが実現されていなかった。このような状況のなかで2009 年12 月に,インクレチンを利用した従来の経口薬とは作用メカニズムがまったく異なるDPP–4(dipeptidylpeptidase –4)阻害薬のシタグリプチンが登場した。DPP–4阻害薬は,内因性GLP–1(glucagon –like peptide –1)およびGIP(glucose –dependentinsulinotropic polypeptide)の分解酵素DPP –4による不活性化を阻害し,これらのインクレチンホルモンの血中濃度を上昇させることで,血糖依存的にインスリン分泌促進作用,グルカゴン過剰分泌を抑制して血糖コントロールを改善する1)。血糖依存的にインスリン分泌を促進するため低血糖症が生じにくい。また,体重増加が起こりにくいという利点もあり2),従来の薬剤が抱える課題を解決する新しい選択肢として,実地臨床での有用性への期待が高まっている。そこで今回,当クリニックの2 型糖尿病患者に対してシタグリプチンを投与し,血糖コントロール状況,体重への影響,脂質プロファイルへの影響のほか,高感度CRP,尿中微量アルブミン値の推移を評価し,その有用性について検討を行った。 -
多発性硬化症患者のインターフェロン療法に対する満足度調査
32巻3号(2011);View Description Hide Description多発性硬化症(MS)は慢性的に機能障害を生じる神経疾患であり,若年成人に発症することから,長期にわたる治療を必要とすることが多い。現在,日本ではdisease–modifying therapy(DMT)としてインターフェロンβ(IFNβ)–1b皮下注製剤とIFNβ–1a筋注製剤の二つの選択肢がある。IFNβは再発を減少させ,身体機能障害の進行を遅らせることが示されており1,2),海外では1990 年代から市販され,IFNβ–1a筋注製剤においては,再発寛解型MS 患者を対象とした第Ⅲ相試験終了後,15 年以上にわたる長期の追跡試験結果が発表されている3)。IFNβを長期間使用すると,障害の進行が有意に少なくなり,QOLが改善され,セルフケアの自立度が高くなる。またIFNβは忍容性が良好であり,15 年間の使用で新たな安全上の懸念は確認されていない。IFNβの治療効果を上げるためには,正確に(compliance),継続的に (persistence) 薬剤が投与される必要がある。しかし,種々の要因が治療の定着性(adherence:アドヒアランス)に影響を及ぼしており,IFNβを長期にわたり使用し,治療の恩恵を享受するためには,患者の治療に対するアドヒアランスを高めることが必要である。本研究では, 当科におけるIFNβ–1b とIFNβ–1a の使用状況を調査し,両薬剤に対する患者の満足度を中心としたアンケート調査を実施することにより,アドヒアランスに影響を及ぼす要因と,その対策について検討した。 -
発作性心房細動(AF)に対する アプリンジンの長期予防効果 - 多変量解析による検討-
32巻3号(2011);View Description Hide Description背景:2008 年日本循環器学会ガイドラインによれば,アプリンジン塩酸塩(Apr)は基礎心疾患を合併した発作性心房細動(AF)に対する再発予防を目的とした第一選択薬として,またアップストリーム療法の併用も同時に推奨されている。目的および方法:対象は発作性AF の第一選択薬としてApr(40 ~ 60mg/ 日)が選択された発作性心房細動112 例(男性81 例,女性31例,年齢68 ± 11 歳)であり,平均観察期間63 ±36 ヵ月における再発予防効果,ならびにロジスティック回帰分析法による多変量解析により再発ならびに慢性化規定因子を検討した。再発の定義は心電図上でApr 内服後にAFを認めた場合,慢性化の定義はApr 内服後にも6 ヵ月以上洞調律維持を認めなかった場合とした。結果:(1) 観察期間1 ヵ月,3 ヵ月,6 ヵ月,12 ヵ月目の非再発率は,基礎心疾患(+)群が81%,67%,63%,56%, 基礎心疾患(-)群が76%,60%,52%,34%であり,基礎心疾患(+)群が有意に高率であった(p = 0.0361)。 (2)観察期間1 ヵ月,3 ヵ月,6 ヵ月,12 ヵ月目の非再発率は,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASI)(+)群が86%,74%,66%,63%,RAAS 阻害薬(-)群が75%,58%,53%,36%であり,RAAS 阻害薬(+)群が有意に高率であった(p = 0.0134)。(3)Apr の独立した再発の予測因子(オッズ比;95%信頼区間,p 値)は, 混合型の発症(8.16; 2.71 –24.5, p =0.001),RAASI投与(0.23; 0.07–0.74, p = 0.014)ならびに基礎心疾患(0.28; 0.09–0.85, p =0.025)であった。一方,Apr の独立した慢性化予測因子は,混合型の発症(15.2; 2.25 –102.2,p = 0.005),基礎心疾患(0.12; 0.02–0.58, p =0.009)ならびに病歴期間(1.04; 1.01 –1.07, p =0.010)であった。結語:基礎心疾患を合併した発作性AFに対するApr の薬剤選択ならびにRAASI併用療法は妥当な治療戦略であることが示された。
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症例
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テルミサルタン内服により降圧とともに内臓脂肪面積減少と糖代謝改善が得られた症例
32巻3号(2011);View Description Hide Description内臓脂肪型肥満では,インスリン抵抗性を基盤として,高血圧,高血糖,脂質異常を重積して有することが多い。これら動脈硬化症の危険因子が重積した病態であるメタボリックシンドロームは,近年わが国でも増加しつつありその対策が急務である。メタボリックシンドロームの構成要因のうち,有病率が最も高く,最初に発症しやすいのは高血圧である。高血圧治療で用いる薬剤は,その特性を活かした選択が望まれる。肥満やメタボリックシンドロームを合併している高血圧患者では,インスリン抵抗性に配慮した降圧薬の選択が求められる。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンは,AT1 受容体遮断作用に加えて選択的PPARγ活性化作用を有し,優れた降圧作用とともにインスリン抵抗性改善作用を有する。われわれは,メタボリックシンドロームを伴う高血圧症患者で,テルミサルタンにより良好な降圧とともに内臓脂肪面積減少,糖代謝改善効果を確認したので,報告する。 -
膜性増殖性糸球体腎炎に対してLDLアフェレシスを施行し有効であった1例
32巻3号(2011);View Description Hide Description61 歳,男性。既往は10 年来の糖尿病,慢性C型肝炎,高脂血症,脳梗塞などを認めた。2008 年1 月より浮腫を自覚した。TP 5.2g/dL,Alb 1.2g/dL,尿蛋白4.2g/ 日より,ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome:NS)と診断した。腎生検を施行し,膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN)と確定診断した。4 月よりステロイドを開始するも効果は乏しく,シクロスポリン(cyclosporine A:CyA)を追加した。不全寛解I 型にも至らず,2009 年8 月にLDLアフェレシス(LDL apheresis:LDL–A)を計6回施行した。2010年4月の時点でTP 5.7g/dL,Alb 2.6g/dL,尿蛋白0.5g/gCr と改善傾向である。
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