Therapeutic Research

Volume 36, Issue 6, 2015
Volumes & issues:
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榊原カンファレンス
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Symposium:第41回難治性気道疾患研究会
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- 一般演題Ⅰ
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- 一般演題Ⅱ
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- 特別講演I
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- 特別講演Ⅱ
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原著
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わが国における抗うつ薬治療継続の実態調査-調剤薬局の調剤レセプトに基づく「処方情報データベース」を用いた治療開始から60 日間の調査報告-
36巻6号(2015);View Description
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目的:本研究は,わが国の実臨床下における治療開始から60 日時点(急性期治療の期間)でのparoxetine CR の治療継続率についてparoxetine IR やその他の速放性抗うつ薬と比較し,わが国の実臨床下における治療中止関連因子とその影響を検討するために実施された。方法:株式会社医療情報総合研究所が提供する調剤レセプトに基づく「処方情報データベース」より,2012 年6 月から2012 年12 月に新規に抗うつ薬単剤の処方をされた20 歳以上の患者データを抽出した。前回の処方の終了日から次の処方日までの間が16 日以上経過した場合を抗うつ薬治療中止と定義した。治療開始から60日までの期間について,累積治療継続率(以下,治療継続率)をKaplan-Meier法で推定した。さらに,各抗うつ薬の種類と患者背景因子(年齢,診療科,受診施設,抗不安薬(N05B)の併用の有無,睡眠薬(N05C)の併用の有無)を共変量としたCox比例ハザードモデルを作成し,治療中止に関連する因子とその影響を評価した。結果:9500 例の患者データが抽出された。Kaplan-Meier法を用いた生存時間解析により推定した治療開始から60 日での治療継続率は,paroxetine CRが41.46%(95%信頼区間:36.62 -46.30%)であり,paroxetine IR が41.41%(95%信頼区間:38.75 -44.06%)であった。さらに,治療開始から60 日までの治療継続推移について,paroxetine CRとparoxetine IR の間に差は認められなかった(Log-rank検定,p=0.5194)。治療中止に関連する因子としては,escitalopram(HR= 1.23,95%信頼区間:1.05 -1.44),診療所での治療(HR= 1.38,95%信頼区間:1.30 -1.46)であった。一方,治療継続に関連する因子としては,抗不安薬の使用(HR= 0.87,95%信頼区間:0.82 -0.92),睡眠薬の使用(HR=0.90,95%信頼区間:0.85 -0.95),高年齢(HR= 0.93,95%信頼区間:0.92 -0.94),精神科受診(HR=0.93,95%信頼区間:0.88 -0.99)であった。患者背景因子で調整したCox比例ハザードモデルのベースライン関数を用いてKaplan-Meier法により推定した治療開始から60日での調整済み治療継続率は,paroxetine CR が45.86%(95%信頼区間:41.29 -50.94%)であり,paroxetine IR が42.91%(95%信頼区間:40.32 -45.67%)であった。結論:治療開始から60 日までの治療継続について,escitalopram を除きparoxetine CR と他の抗うつ薬との間に明らかな差は認められなかった。わが国の実臨床においては,忍容性など薬剤に関連する因子よりもその他の因子が抗うつ薬の治療継続に影響を与えている可能性が考えられる。 -
体組成および代謝指標に対するSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの初期効果- TAKEDA–INSIGHT Study -
36巻6号(2015);View Description
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目的:ナトリウム・グルコース共役輸送担体2(sodium–glucose co –transporter 2:SGLT2)阻害薬は,腎での糖再吸収抑制による血糖降下作用以外に体重や脂肪組織などの体組成にも影響を及ぼすことが報告されている。SGLT2 阻害薬ダパグリフロジン投与による12 週間の経時的な変化から,投与初期における多面的効果を検討した。方法:スルホニル尿素薬を服用していない高血圧合併2 型糖尿病患者27 例(年齢59.4±9.5歳,BMI 29.0±5.4 kg/m2,腹部内臓脂肪面積〔VFA〕 138.2±42.5 cm2,HbA1c 7.43±0.68%,すべてmean±SD)にダパグリフロジン5 mg/ 日を投与し,2,4,8,12 週目の糖代謝,脂質,肝機能,尿酸値および体重,ウエスト周囲長,VFA,腹部皮下脂肪面積(SFA)など体組成指標を測定した。VFA とSFAの測定は,デュアルインピーダンス法による医療用内臓脂肪測定装置DUALSCANを用いた。結果:グリコアルブミンは投与前の18.25±0.55%(mean±SE)から2 週後より低下,12 週後に16.27±0.46%に,HbA1cは投与前の7.43±0.13% から4 週後より低下,12 週後に7.08±0.15%となった。体重は投与前の77.0±3.2 kgから2 週後より低下,12 週後は74.8±3.2 kg となった。VFAは4週後より低下,12 週後は投与前に比べ9.8±2.0%の低下,SFAは12 週後に投与前に比べ6.3±1.8%の低下を認め,VFAの変化率が最も大きかった。ALT,γ –GTP,尿酸値は低下,HDLコレステロールは増加傾向を認めた。結語:ダパグリフロジン投与早期から糖代謝,肝機能,尿酸値は有意に改善した。VFAはSFAよりも早期から低下し,その変化率も大きいことから,ダパグリフロジンが有する多面的効果に寄与していることが示唆された。ダパグリフロジンは,2 型糖尿病患者の包括的リスク管理に有用となる可能性がある。 -
DPP–4阻害薬シタグリプチンの長期効果と安全性の検討
36巻6号(2015);View Description
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当クリニック外来通院中の2 型糖尿病患者で,食事療法・運動療法および経口血糖降下薬を服用中の症例を対象として,DPP –4 阻害薬のシタグリプチン50mgを追加投与,あるいは他の経口血糖降下薬から切替え,3 年間追跡可能であった203 例において,その長期効果と安全性について検討した。その結果,シタグリプチン50mg投与開始後1 ヵ月の時点でHbA1c は7.96±1.19%から7.57±1.06%へと有意な低下(p<0.0001)を認め,3 ヵ月後(7.18±0.80%),6 ヵ月後(7.05±0.75%),1年後(7.17±0.79%),2 年後(7.06±0.72%),3 年後(7.05±0.71%)とほぼ同レベルを維持していた。シタグリプチン50mg開始6 ヵ月以降の再上昇を認めたものはわずか19例(9.4%)であり,残りの184 例においては,3 年にわたり安定したHbA1c低下作用が認められた。血糖コントロールに影響する因子として,投与前のHbA1c が高いほど,HbA1c の低下が顕著に認められた。また,年齢,BMI,および罹病期間についての検討では,罹病期間が短いほどHbA1c の低下が大きい傾向にあったが,BMIや年齢には関係が認められなかった。投与期間中に,併用経口血糖降下薬の数や量を減量あるいは中止した症例が31 例,治療法を変更しなかった症例が145 例であり,血糖コントロールが悪化し,増量したものは27 例(13.3%)であった。有害事象のため,シタグリプチン投与を中止せざるをえなかった症例はなく,血清クレアチニンおよびeGFRの検討からも,腎機能に悪影響は認められず,安全性には問題がないと考えられた。以上より,シタグリプチンは,年齢,BMIに関係なく,3 年間にわたり血糖コントロールを良好に保ち,安全性にも問題がなく,2 型糖尿病患者にとって極めて有用性の高い経口血糖降下薬と考えられた。
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