Therapeutic Research
Volume 45, Issue 2, 2024
Volumes & issues:
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Information:日本高血圧学会 2024年度 臨時プレスセミナー
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被災地における高血圧疾患予防について
45巻2号(2024);View Description Hide Description日本高血圧学会は令和6年能登半島地震の発生を受けて,災害関連死などを予防するための情報提供が急務であるとし,臨時プレスセミナーをオンラインで行った。災害時における高血圧を中心とした循環器疾患予防や災害の対応活動などについての報告の概要を紹介する。
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Symposium:第56回ペーシング治療研究会
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- 一般演題
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(1–1)冠静脈洞から一時的ペーシングを施行した洞不全症候群の2症例
45巻2号(2024);View Description Hide Description一時的心房ペーシングを行う場合,通常右心耳がペーシング部位として選択される。しかしながら,右心耳はカテーテルの固定が悪く,カテーテル逸脱によるペーシング不全を生じる頻度が高い。今回われわれは,冠静脈洞から安定して一時的ペーシングが可能であった洞不全症候群の2症例を経験したので報告する。 -
(1–3)植込み手技に工夫を要した開心術後の2症例
45巻2号(2024);View Description Hide DescriptionStructural Heart Disease(SHD)を有する患者は伝導障害部位や解剖が複雑な場合があり,ペースメーカー挿入時に通常手技のみでは困難なことがある。開心術後の症例でリード留置に工夫を行った2症例を報告する。 -
(2–1)植込み型心臓デバイス患者の心房細動における標準作業手順書を用いた管理下の脳卒中発症率の検討
45巻2号(2024);View Description Hide Description植込み型心臓デバイス(以下CIEDs)患者のAFは多いと言われている。無症候性心房細動と脳卒中のリスクを研究したASSERT試験では,植込み後6 分以上持続するAFは10.1%と多く,6 分以上持続するAFがあった症例の脳卒中リスクは2.49倍高いと言われている1)。AFなどの不整脈は遠隔モニタリングにより早期発見が行えることが,さまざまな臨床研究で報告されている。不整脈非薬物治療ガイドラインでは,院内ワークフローを構築した病院が行うCIEDs患者の遠隔モニタリングは推奨クラス1 に分類されているため,近年普及している2)。当院は遠隔モニタリングのワークフローを構築するうえで標準作業手順書(以下SOP)を用いた患者管理を行っているが,脳卒中発症に有用であるかは検討したことがない。今回,当院で遠隔モニタリング管理しているCIEDs患者の脳卒中発症率を検討した。 -
(2–2)当院のデバイス外来
45巻2号(2024);View Description Hide Description当院は 2019 年10月より臨床工学技士がデバイス外来に携わっている。定期の外来は毎週月曜日の午前と水曜日の午後に行っており,登録患者数は 2023 年8 月時点で約 1,300 名(遠隔モニタリング管理 905名),外来件数は 2022 年度実績で 1,957件であった。 -
(2–4)自動閾値測定機能作動の際に生じたペーシング不全の1例
45巻2号(2024);View Description Hide Description近年,植込み型心臓電気デバイス(Cardiovascular implantable electronic device:CIED)は,各社それぞれのアルゴリズムで自動閾値測定機能が搭載されている。自動閾値測定機能は定期的に自動で閾値測定を行う機能であり,自動出力調整による電池消耗の軽減,閾値上昇の際のペーシング不全の予防で有効性が報告されている1,2)。今回,両室ペーシング機能付植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator:CRTD )植込みの患者で,CRTD 交換術後,自動閾値測定機能が作動したときにペーシング不全を起こして,徐脈を認めた症例を経験したので報告する。 -
(3–1)穿刺部位でのリードノイズ検証
45巻2号(2024);View Description Hide Descriptionデバイス外来で発見されるリードノイズについて,系統的な調査研究が必要と考えられた。リードノイズと穿刺部位に関連性があると考え調査研究を行った。 -
(3–3)心房頻拍に対する心房ATP治療直後に,心室頻拍となりショック作動をきたした1例
45巻2号(2024);View Description Hide Description心房性不整脈に対する心房抗頻拍ペーシング(以下A –ATP)は,持続性心房細動への移行率,心室ペーシング率を減少させることが知られている1,2)。MINERVA試験では,A–ATPが心室頻拍(以下VT)を誘発する事象は認めなかったが,不適切なA–ATP治療が起こりVTを誘発した症例や,A –ATP中にVTが誘発された症例が報告されている1,3,4)。われわれは,A –ATPにより心房頻拍(以下AT)が停止した直後にVTが誘発され,ショック作動をきたした症例を経験した。文献検索したかぎりでは同様の報告はなく,同現象が起こったメカニズムと治療に関して考察を加え報告する。 -
(3–4)MicraTM AVの設定に苦慮した1例
45巻2号(2024);View Description Hide Description近年,Medtronic 社より VDD モード搭載のリードレスペースメーカ(以下 MicraTM AV)が登場した。MicraTM AV は,従来のリードレスペースメーカと異なり,独自のアルゴリズムを用い,心室内から心房の動きを検出し,同期することで,より生理的なペーシングを行うことが可能となった。今回,当院において MicraTMAV 植込み症例で設定に苦慮した 1 例を報告する。 -
(3–5)房室結節アブレーション後にAV再伝導を認め,設定に苦慮したCRT-D植込み患者の1例
45巻2号(2024);View Description Hide Description心房細動を有するCRT植込み患者に関して,AFを薬剤コントロールした患者と比較して,房室結節アブレーションを併用した患者では死亡率が低くなったとの報告1)がなされている。この報告では,AFによる両室ペーシングの低下を房室結節アブレーションで予防することが,この結果をもたらしたと考察されている。また臨床でも,薬剤抵抗性のAFを有するCRT植込み患者に対して房室結節アブレーションを施行することはしばしば散見される。今回CRT –Dの植込み患者で房室結節アブレーション後にAVの再伝導を認め,CRT–Dの設定に苦慮した1例を経験したため報告する。
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総説
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血液透析濾過(HDF)は透析患者の生命予後を改善するか?-CONVINCE試験(NEJM 2023)
45巻2号(2024);View Description Hide DescriptionCONVINCE 試験はヨーロッパで行われたランダム化比較試験であり,高フラックス血液透析(HD)と比較して血液透析濾過(HDF)の生命予後に対する優位性を評価した。HDF が高フラックスHD にくらべて総死亡率を低下させることが示されたが,糖尿病や心疾患をもつ患者での総死亡率の低下は有意ではなかった。心血管死に対する有意な改善は観察されなかった。感染症による死亡率を有意に低下させたことが示された。ただし,COVID‒19 を除くと,感染症死因での生命予後改善は有意ではなかった。COVID‒19 関連死が多く含まれ,死因を特定できない症例が多く生じたことが,この試験の解釈を難しくさせていると考えられる。糖尿病や心疾患をもつ患者が多い日本の透析治療への,HDF で生命予後が改善されるという結果の適応は,現時点では限定的であり,今後の議論が必要である。
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