Therapeutic Research

Volume 46, Issue 1, 2025
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Roundtable:J-CLEAR特別座談会
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胃酸分泌抑制薬の長期投与に伴う安全性は?
46巻1号(2025);View Description
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最近,胸焼けなどの胃食道逆流症が増えており,循環器科や整形外科領域で抗血栓薬や消炎鎮痛薬の内服者が多くなると同時に,プロトンポンプ阻害薬(PPI)を中心とした強力な胃酸分泌抑制薬を長期に内服する人が増加しています. 胃酸分泌抑制薬の治療における変遷について簡単に紹介します.1980 年から現在にかけて,ピロリ菌陰性者が約20%から80%程度になり,ピロリ菌感染率の低下に伴い胃酸分泌が著明に増加してきて,逆流性食道炎の患者数も10倍以上に増加しました.一方,胃酸分泌抑制薬は,潰瘍の治療を目的としてH2 受容体拮抗薬(H2RA)が1980 年に登場しました.その10 年後の1990年には胃食道逆流症(GERD)や除菌治療にPPIが広く使用されました.さらに10年後の2000年にはGERDの維持療法にPPIが承認され,2015年にはより強力なPPIであるボノプラザンが登場し,長期投与が非常に増えてきています.それに伴い表1に示す有害なリスクが発生しています. われわれはボノプラザンによる5 年間の長期維持療法における安全性を検証したランダム化比較試験(5 年間)「VISION研究」を行いました1).逆流性食道炎と診断されたピロリ菌の陰性者を対象に,生検を含む内視鏡検査により内視鏡所見および組織学的所見の変化を長期的に評価した臨床研究です.実際の診療現場において頻用されているボノプラザンとランソプラゾ-ルに関する安全性を検証した,臨床的に非常に重要な世界で初めての臨床研究です.2016 年2 月から患者の登録を開始し,2024 年8 月にClinical 上村直実 氏Gastroenterology and Hepatologyのオンライン版に掲載されました. 海外からも有害事象の報告がありますので,今回,日本人における胃酸分泌抑制薬の長期投与の安全性に関して,専門の先生方に見解をご提示いただきたいと思います.
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原著
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日本の肺動脈性肺高血圧症患者を対象としたマシテンタンの安全性および有効性の評価-マシテンタン10 mg 製造販売後調査デ-タを用いた解析結果-
46巻1号(2025);View Description
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目的:日本のリアルワ-ルドにおける肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者に対するマシテンタンの長期的な安全性および有効性を評価することである. 方法:マシテンタンが使用されたPAH を対象とした全例調査方式とし,登録は中央登録方式により行った.マシテンタン投与開始後最長3 年間にわたる安全性および有効性の評価を行った. 結果:国内の878 施設から4344 例の患者が調査票固定症例として収集され,最終的に安全性解析対象症例は3293例,有効性解析対象症例は2275 例とした.副作用発現割合は25.8%(重篤な副作用発現割合9.0%を含む)であり,おもな副作用とその発現割合は貧血5.6%,頭痛3.0%,肝機能異常2.1%,血小板数減少1.9%,末梢性浮腫1.4%であった.WHO機能分類の改善率は6 ヵ月後22.3%,1 年後22.8%,2 年後22.7%,3 年後21.2%であった.PAH患者2792 例における1 年生存率は92.7%,3 年生存率は84.0%であった. 結論:本調査は,日本におけるPAH の実臨床調査研究として最大規模のコホ-トにて実施され,PAH を有する患者におけるマシテンタンの長期的な安全性と有効性を裏付けるものであった(Graphical Figure).
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