Therapeutic Research
Volume 46, Issue 5, 2025
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Information:製薬協メディアフォ-ラム
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医薬品の多様な価値「新規モダリティがもたらす多様な価値とは-脊髄性筋萎縮症(SMA)を事例に-」治療薬が変えたSMA診療
46巻5号(2025);
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脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy:SMA)はおもに乳児および小児に発症する遺伝性神経変性疾患である.近年新規のモダリティのSMA治療薬が臨床で使用できるようになり,患者をめぐる環境は大きく変化してきており,新たな課題も見えてきた.本稿では,製薬協メディアフォ-ラムで発表された講演の中から荒川玲子氏の講演を紹介する.
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日本インタ-ベンショナルラジオロジ-学会プレスセミナ-
46巻5号(2025);
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日本インタ-ベンショナルラジオロジ-学会(日本IVR学会)は5月9日に開催されたプレスセミナ-で,第54回日本IVR学会総会(5月29日・木~ 31日・土開催)に先立ち総会に関する講演を行った.本講ではIVR学会の概要と治療に関する講演を取り上げて紹介する.
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原著
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HIF–PH阻害薬が透析導入期の貧血管理に与える影響-ヘモグロビンディップのない貧血管理を目指して-
46巻5号(2025);
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導入:慢性腎臓病(CKD)患者において,CKD ステ-ジが進行するにつれて腎性貧血の有病率は高くなり1),赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis‒stimulating agent:ESA),鉄剤,輸血により管理されてきた.低酸素誘導因子‒プロリン水酸化酵素(HIF‒PH)阻害薬が登場してからは,ESA にかわる治療薬として注目されている.透析導入期にESA,HIF‒PH 阻害薬による腎性貧血管理をした際の違いに関してはいまだ不明な点があり,透析導入期までHIF‒PH 阻害薬を使用した症例はあまり多くない.そこで今回,透析導入期における両薬剤による違いを評価した. 方法:2021 年1 月から2023 年9 月までの期間に当院で透析導入した患者183 人のうち,除外基準を設け,86 人を解析対象とし,ESA で治療した群(以下,ESA 群)とHIF‒PH 阻害薬で治療した群(以下,HIF 群)の2 群に分けて透析導入期(透析導入1 ヵ月前から透析導入1 ヵ月後)のHb 値の経時的な経過などを評価した. 結果:ESA 群では透析導入1 ヵ月前から透析導入時にかけて有意な貧血の進行を認め,透析導入1 ヵ月後に有意な貧血改善を認めた.HIF群では,透析導入1 ヵ月前から透析導入時に貧血の進行を認めず,透析導入1 ヵ月後のHb 値に有意差を認めなかった.透析導入理由別でみると,尿毒症が原因で透析導入となった患者はHIF 群で有意に透析導入時のHb 値が高値であった(p<0.05). 結論:透析導入時は一時的な貧血の進行(ヘモグロビンディップ)を認めることが報告されており,当院の症例でもESA 群において同様の結果であった.一方,HIF 群においてはヘモグロビンディップを認めず,むしろ導入時のHb値上昇を認め,トランスフェリン飽和度(transferrin saturation:TSAT)はESA 群より優位に低い(p<0.05)ことから,HIF‒PH 阻害薬は鉄動態の改善に寄与した可能性がある. 尿毒症環境下においてもHIF‒PH 阻害薬は影響を受けにくく,透析導入後も継続投与することでHb 値を安定化させることができる可能性が示された. -
わが国における境界性パ-ソナリティ障害の診断と疾患マネジメントの実態調査-精神科医を対象とした横断研究-
46巻5号(2025);
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背景:境界性パ-ソナリティ障害(BPD)は,情動調節,衝動制御,対人関係および自己イメ-ジにおける広範な不安定性を特徴とする社会的,職業的機能に著しい苦痛や障害を引き起こし,高率に自傷行為や自殺に至る慢性精神疾患である.BPDを適応症とした治療薬は存在せず,欧米では弁証法的行動療法(DBT),メンタライゼ-ションに基づく治療(MBT),転移焦点化精神療法等の精神療法が標準治療とされている.一方,わが国ではBPD に関する基礎となる統計デ-タが存在せず,近年の疫学研究は限られているため,欧米における標準治療(DBT,MBT 等)の普及状況を含め,BPD の診断や治療に関する現況は不詳である. 目的:わが国の精神科医を対象としてBPDの診断および治療の現況に関する横断的な調査を実施した. 方法:BPD の治療経験を有する精神科医を対象にオンライン調査を実施した.本調査のおもな評価項目は,精神科医の所属と利用可能な資源,BPD の診断基準と臨床症状,治療の目標設定,精神療法,薬物療法,BPD の臨床評価,評価の頻度,予後因子であった. 結果:わが国では,幅広い所属の精神科医がBPD 患者の疾患マネジメントに従事しており,BPD 患者は一定の割合で社会資源を活用できる治療環境にあることがわかった.また,精神科医はDSM‒5 等の診断基準を用いてBPDを診断しており,診断結果の告知率は過去の研究に比し大幅に上がっていた.精神科医の多くが鑑別診断に困難を認識していた.精神科医の大多数はBPD の治療に精神療法と薬物療法を併用しており,精神療法は支持的精神療法,および認知行動療法が多く,多岐にわたる併存精神疾患のため薬物療法はさまざまであった. 結論:本調査はわが国における今後のBPD診断,および治療に資するものと考えられる.
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