最新医学

2005, 60巻3月増刊号
Volumes & issues:
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【免疫と疾患】
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アプローチ
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自然免疫と獲得免疫のクロストーク
60巻3月増刊号(2005);View Description
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免疫にはあらかじめ備わった自然免疫と抗原侵入数日後から働く獲得免疫に分類される.自然免疫は補体,好中球,マクロファージ/樹状細胞やナチュラルキラー細胞などで担われ,獲得免疫はクローン増殖した抗原特異的T細胞とB細胞によって担われる.自然免疫は早期の抗原排除のみならず,獲得免疫の細胞性免疫,体液性免疫などのタイプを方向付ける役割を担う.一方,獲得免疫は自然免疫を活性化することによって強力な異物排除機構として働く.
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自然免疫と獲得免疫の基礎
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補体経路の免疫における役割
60巻3月増刊号(2005);View Description
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補体は,外来微生物などにより活性化して,これらを直接破壊するだけでなく,活性化の過程で,オプソニン化による貪食の促進や炎症の惹起により自然免疫の一翼を担っている.さらに,抗体産生を促進し記憶B細胞を誘導するなど,特異的な獲得免疫にも関与しており,生体防御に重要な役割を果たしている.また,免疫複合体や死細胞の除去により免疫応答の抑制にも働いている.そのため,補体成分の欠損は,再発性の感染症のみならず,過度の免疫反応による自己組織の傷害も起しうる. -
CD1:結核菌脂質に応答する新しい感染防御システム
60巻3月増刊号(2005);View Description
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免疫系は,タンパク質抗原に対してだけでなく,脂質抗原に対して特異的なT細胞反応を惹起できる.CD1 抗原提示分子によって誘導されるこの脂質特異的な免疫応答が,実は結核菌感染防御に重要な役割を果たしていることが明らかとなりつつある.CD1 依存性免疫応答の全容解明は,感染防御機構の新しいパラダイムの確立に結びつくだけでなく,その再興が社会問題化している結核の新たな診断法や予防法の開発に寄与することが期待されている. -
マクロファージによる感染防御機構
60巻3月増刊号(2005);View Description
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マクロファージは予想されていたよりも多様な戦略で感染防御を行っていることが明らかとなってきた.従来知られていた酸素依存性の殺菌機構および酸素非依存性殺菌機構に加えて,近年p47GPTase ファミリーが感染防御に関与することが明らかとなった.また,マクロファージはToll-like 受容体(TLR)群により病原体を認識すると,殺菌機構を活性化するのみならず,各種サイトカインを産生することなどにより適応免疫にも影響を及ぼすことも明らかとなった. -
NK 細胞によるウイルス感染細胞認識機構
60巻3月増刊号(2005);View Description
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NK 細胞はウイルス感染細胞や腫瘍細胞に細胞障害性を持つ細胞として知られている.最近,特定のNK 細胞受容体がウイルス産物を特異的に認識することが明らかになってきた.さらに,NK 細胞の発現する活性化と抑制化からなるペア型受容体のウイルス感染細胞認識パターンがウイルスに対する感染抵抗性を決定していることが判明した.そこで,本稿ではNK 細胞によるウイルス感染細胞の認識機構を中心に,最近の知見をふまえ紹介する. -
樹状細胞を介したウイルス特異的キラーT細胞の誘導
60巻3月増刊号(2005);View Description
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体表面に配置された樹状細胞の中には,受容体を介して捕捉したウイルス粒子を標的細胞へ伝播するものと,ウイルスタンパク質断片をMHC クラスⅠ分子とともに提示し特異的キラーT細胞を誘導するものとが存在する.通常MHC クラスⅠ分子の提示抗原は細胞内産生タンパク質に限定されるが,樹状細胞上の特定の受容体を刺激した場合,あるいは脂質二重膜の透過性を変化させた場合,細胞外から取り込んだタンパク質抗原もMHC クラスⅠ分子よりcross-present される. -
好酸球による寄生虫傷害機構
60巻3月増刊号(2005);View Description
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好酸球増多の症例に遭遇すると誰しも考えるのはアレルギー疾患か寄生虫感染である.それほど好酸球と寄生虫とは密接に関係しており,好酸球が寄生虫防御の主役という見方が定着している.しかし寄生虫には単細胞の原虫と多細胞の蠕虫があり,好酸球増多が見られるのは蠕虫感染の場合である.好酸球はその特殊顆粒中に細胞毒性の強い塩基性タンパク質をもっており,それらの作用で蠕虫を傷害すると思われているが,それを実証した研究は意外と少ない.想像から実証へ,今後の研究が期待される. -
感染防御におけるToll-like 受容体の役割
60巻3月増刊号(2005);View Description
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自然免疫担当細胞に発現するToll-like 受容体(TLR)ファミリーの各メンバーが,病原体の構成成分を特異的に認識し,自然免疫系の活性化を誘導するのみならず,炎症性サイトカインや副刺激分子の遺伝子発現の誘導を介して,獲得免疫系,特にTh1 細胞の活性化を誘導することが明らかになった.そして,TLR を介した自然免疫系の活性化は,感染防御においても重要な役割を有している. -
Toll 様受容体を介するシグナル伝達機構
60巻3月増刊号(2005);View Description
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病原体成分はその受容体であるTLRs を介してシグナルを伝達し,炎症性サイトカインやインターフェロンの産生といった強力な細胞応答を導き,個体レベルでの細菌あるいはウイルスに対する抵抗性をもたらす.一方,その過剰な応答はエンドトキシンショックなど劇的な症状を惹起することが知られている.TLRsシグナル伝達については,近年その担当分子の欠損マウスによる解析が多く行われており,興味深い知見を与えている. -
自然免疫と感染免疫における樹状細胞の役割
60巻3月増刊号(2005);View Description
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樹状細胞(DC)は感染に対して自然免疫応答を惹起し,獲得免疫応答が発動されるまでの感染防御に重要な役割を担う.マウスDC サブセットではCD8α+DC がクロスプレゼンテーションを行い,形質細胞様DC はⅠ型インターフェロンを生産する.またDC はⅠ型インターフェロンの刺激により共刺激分子の発現を増強させ,Toll 様受容体(TLR)リガンドの刺激によりクロスプレゼンテーション効率を亢進させることで,クロスプライミングを誘導している. -
腸内感染防御システムとしての粘膜免疫
60巻3月増刊号(2005);View Description
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腸管内で生体への侵入を試みる病原体に対し我々は物理的・化学的バリアに加え,GALT(Gut-associated lymphoid tissue)と呼ばれる腸管関連リンパ組織を中心とする粘膜免疫システムを備えることで感染防御を行っている.そこではM細胞を含む上皮細胞や樹状細胞,T細胞やB細胞が密接に相互作用しあうネットワークを形成し,自然免疫および獲得免疫システムを構築している.本稿では粘膜免疫による感染防御機構について最近の知見を交え概説したい. -
Th1/Th2 バランスと感染防御
60巻3月増刊号(2005);View Description
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ヘルパーT細胞は産生するサイトカインの違いから,Th1 とTh2 と呼ばれる2つの異なる細胞集団に分類することができ,異なる免疫反応を制御している.Th1 細胞は主に細胞性免疫反応による細胞内寄生性微生物に対する感染防御を,Th2 細胞は体液性免疫反応により細胞外寄生性微生物に対する感染防御に関与している.この2つの細胞集団はお互いが産生するサイトカインによって相互のバランスを平衡に保つことにより,過剰な反応が起こらないように相互に制御し合っており,Th1 あるいはTh2 反応によって起こる疾患の多くは,このバランスが崩れたことによる.これらバランスの制御には遺伝的要因の関与も考えられており,本稿ではこれらについて具体例を挙げて解説して行きたい. -
ケモカインと免疫応答
60巻3月増刊号(2005);View Description
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ケモカインは白血球やリンパ球の遊走と組織内局在を制御することにより,自然免疫と獲得免疫に必須の役割を果たしている.特に腸管に代表される粘膜組織は直接外界と接する生体防御上極めて重要な組織であり,自然免疫と獲得免疫の最前線である.そのため粘膜組織には免疫応答を誘導するための独特のリンパ組織が発達している.これらは粘膜関連リンパ組織(MALT)と総称され,マクロファージ,樹状細胞,B細胞,T細胞などがそれぞれの機能に応じて分布している.また粘膜固有層や上皮間にはT細胞やIgA 産生形質細胞などの免疫担当細胞が多数存在し,それぞれエフェクター機能を発揮している.これらの免疫担当細胞の粘膜組織への帰巣,組織内分布,機能発現にはケモカイン系が密接に関与している.本稿では,特に腸管にしぼって自然免疫や獲得免疫におけるケモカイン系の役割を概説したい.
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自然・獲得免疫と疾患
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HTLV- I 感染症
60巻3月増刊号(2005);View Description
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ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-Ⅰ)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスである.動物実験では,HTLV ?I特異的獲得免疫の強さが初感染経路により規定されることや,Tax 特異的細胞傷害性T細胞は生体内のHTLV -I感染細胞増殖を制御していることが分かった.これは,HTLV-I特異的T細胞応答不全がATL 発症リスクの1つであることを示唆している.また,最近の造血幹細胞移植後ATL 症例に関する知見は,Tax を標的とする免疫賦活のATL 発症予防・治療への可能性を支持する. -
HIV 感染症における治療と研究
60巻3月増刊号(2005);View Description
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HIV-1 の感染者は年々増加の一途をたどっている.しかしながら,HIV の発見以来,約20 年が経過したにもかかわらず,未だに有効なワクチン療法と根本的な治療法は無いに等しい.なぜHIV の研究や治療法開発は難しいのか? なぜ今までのほかの病原体のようにワクチンは開発できないのか? 現在の研究はどのような状況であるのか? ヒトレトロウイルスの特性を踏まえ,HIV-1 感染症の研究と治療に関する現状を紹介したい. -
Epstein-Barr(EB)ウイルス感染症の診断と治療
60巻3月増刊号(2005);View Description
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Epstein-Barr virus(EBV)はヘルペス科のDNA ウイルスで,唾液を介して感染する.世界中のほとんどの成人は既感染者である.健常人の既感染者はウイルス特異的免疫を有するが,ウイルスは排除されることなく宿主の細胞内に潜伏し,終生共存する.EBV と他の潜伏感染ウイルスとの大きな違いは,ターゲットとなる感染細胞が多岐にわたり,感染症から癌まで多種多様な疾患,病態に関係していることである. -
C型肝炎ウイルス
60巻3月増刊号(2005);View Description
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C型肝炎ウイルス(HCV)は他の肝炎ウイルス異なり,免疫系の完成された成人に感染しても,その半数以上が慢性化して長期の経過の後に,肝硬変・肝癌を引き起こす.従来宿主の免疫分子の1つであるインターフェロンを中心とした抗ウイルス治療が行われてきたが,その効果は十分とは言えず,HCV の慢性化,インターフェロン抵抗性機序の解明が望まれていた.一方,最近の自然免疫系理解の進展,さらにHCV の細胞内増殖モデルであるHCV レプリコンが開発されたことなどによって,宿主の免疫機構とHCV のかかわりが急速に明らかにされつつある. -
結核
60巻3月増刊号(2005);View Description
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結核症は毎年800 万人発症,200 万人が死亡の世界最大の感染症である.結核に対する宿主抵抗性は獲得免疫のT細胞免疫,特にキラーT,Th1 細胞,我々が示した結核菌殺傷タンパク質granulysin が重要である.一方,TLR などを介する結核自然免疫も明らかとなりつつある.我々は世界に先駆けてBCG より100 倍強力なHsp65+IL-12 DNA ワクチンを開発した.T細胞免疫を介する結核予防ワクチン効果を示した. -
自然免疫による真菌感染防御反応の制御
60巻3月増刊号(2005);View Description
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近年自然免疫の獲得免疫への橋渡し的な役割が注目されている.病原微生物が組織内に侵入するとその分子構造が特定のToll-like 受容体によって認識されそれ以後の防御免疫反応が開始される.NKT 細胞やγδT細胞は刺激を受けると速やかに活性化され,サイトカインの産生などを介して自然免疫のみならず獲得免疫の成立にも重要な影響を及ぼす.真菌感染においても同様なプロセスを経て防御的免疫反応が成立すると考えられる.本稿では,クリプトコッカスを例に,真菌感染防御免疫における自然免疫機構,特にTLRs およびNKT 細胞,γδT細胞の役割について解説する. -
リステリア感染
60巻3月増刊号(2005);View Description
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細胞内寄生性細菌であるリステリアは複数の病原因子を用いてマクロファージ内で殺菌をエスケープし増殖する.感染動物には強いサイトカイン応答が誘導され,最終的にはTh1 およびCD8+T細胞による強力な感染防御免疫が成立する.リステリアの菌体成分には多くのTLR リガンドがありサイトカイン応答に関与するが,リステリオリシンOなど細胞内寄生に必須の病原因子もまたサイトカイン応答と防御免疫誘導に中心的な作用を示す. -
ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う免疫応答
60巻3月増刊号(2005);View Description
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Helicobacter pylori は胃粘膜中に持続感染し慢性炎症を引き起こすが,そこには自然免疫系による抗原の認識,サイトカイン産生,T細胞を中心とした獲得免疫担当細胞による組織障害が見られ,その病態には免疫系が深く関与している.また,持続感染を成立させるための免疫回避機構を持ち,慢性炎症からの癌化へのメカニズムも想定されており,今後もさらなる研究が期待される. -
トキソプラズマ感染症に対するDNA ワクチン−ユビキチン-プロテアソームシステムの応用による−
60巻3月増刊号(2005);View Description
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トキソプラズマは細胞内寄生性原虫であり,日和見感染症を起こす主要な病原体の1つである.細胞内寄生性病原体に対する防御免疫にはCD8+ の細胞傷害性T細胞の活性化が重要であるが,従来の組み換えタンパク質を抗原とするワクチン方法では細胞傷害性T細胞を誘導することは非常に困難であった.著者らは抗原提示に着目し,標的抗原とユビキチンの融合タンパク質を発現するDNA ワクチンを用いて効率良く細胞傷害性T細胞を誘導する手段を開発した. -
寄生原虫感染症
60巻3月増刊号(2005);View Description
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寄生原虫感染症に対する免疫応答の解析は,ユニークな実験系を利用し進められている.この分野で得られた知見は他の領域へと応用され,基礎研究と臨床応用を結ぶ意味でも科学の発展に欠かせない研究領域である.そうした観点から本稿では,㈰ マラリアに対するワクチン開発の現状,寄生原虫感染時における㈪CD8 陽性T細胞の機能解析,および㈫ CD4 陽性T細胞の機能解析にテーマを絞り概説したい.
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【今月の略語】
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