最新医学

2005, 60巻6月増刊号
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【免疫と疾患】
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- 序論
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アプローチ
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自己免疫疾患の展望
60巻6月増刊号(2005);View Description
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自己免疫疾患の研究においては,免疫寛容のメカニズムの理解とそれぞれの疾患における免疫寛容の異常を解析することが1つの重要なテーマと考える.それには基礎的な免疫現象の理解から疾患の理解に通じる方向とともに,臨床情報の詳細な解析から基礎免疫学への新たな命題の提示も必要であろう.これら両者の研究の発展のためには,新しい治療学を含めた臨床免疫学の強化が必要ではないだろうか.
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自己免疫疾患の基礎
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制御性T細胞の“多様性”
60巻6月増刊号(2005);View Description
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免疫系には,免疫抑制活性を有する制御性T細胞というT細胞サブセットが存在し,自己免疫などの病的な免疫応答を制御して生体のホメオスタシスの維持に重要な機能を担っている.これまでに,さまざまな実験モデルにおいて多様な制御性T細胞サブセットが記述されてきた.最近の分子レベルでの解析により,これらを細胞「実体」として規定する試みがなされ,サブセット間の異同,関連が明らかにされつつある. -
中枢性トレランスの異常
60巻6月増刊号(2005);View Description
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自己抗原に対するトレランス「自己トレランス」は,森羅万象のあらゆる外来抗原への反応性を保証しつつ自らの生体を守る免疫系に宿命的な特質の1つである.自己トレランスの破綻は,免疫系による生体自己組織への攻撃と破壊,すなわち自己免疫疾患の発症に直結する.本稿では,自己トレランス成立の主要機構であるT細胞の中枢性トレランス成立機構について,末梢性トレランスを担う制御性T細胞の中枢性生成機構を含め解説する. -
臓器特異的自己免疫疾患におけるT細胞の異常
60巻6月増刊号(2005);View Description
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臓器特異的自己免疫疾患の研究は,遺伝素因と環境因子の両面から進める必要がある.本稿では,T細胞活性化に関与する遺伝子の異常が原因と考えられる自己免疫疾患の動物モデルを取りあげ,T細胞シグナル伝達の異常が中枢性免疫寛容の破綻,末梢における自己反応性T細胞の増加,さらには臓器特異的自己免疫疾患の発症につながる可能性を論じる.ヒトでも類似の病態が存在するか否かについて,今後,研究を進める必要がある. -
B細胞の異常
60巻6月増刊号(2005);View Description
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B細胞は分化成熟の段階で多様な抗原に対する特異性を獲得するが,その過程で自己反応性B細胞が出現する.自己反応性B細胞は,クローン除去,アナジー,リセプター・エディティングという機構によって排除される(自己トレランス).自己免疫疾患は,これらの機構に関与するさまざまな分子の異常によって自己トレランスに破綻をきたした状態にあると考えられる.本稿では,自己トレランスの機構とその破綻の機序について概説する. -
サイトカインネットワークの異常による自己免疫疾患
60巻6月増刊号(2005);View Description
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生体の恒常性を維持するために免疫系は複雑かつ精緻に調節・制御されており,サイトカインネットワークはその中心的役割を担っている.サイトカイン遺伝子操作マウスの研究から,サイトカインの異常産生によるネットワークの破綻はさまざまな免疫疾患の原因となることが明らかになっている.特にIL-1 の異常はリウマチ様関節炎,動脈炎,乾癬様皮膚炎を引き起こすことから,これらの病態形成に関与する因子として注目されている. -
アポトーシスの異常
60巻6月増刊号(2005);View Description
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アポトーシスは発生過程や組織細胞の交替期に見られる能動的な細胞死であり,個体の恒常性維持を司っている.免疫系においても,アポトーシスは自己反応性リンパ球ならびに生理的死細胞の除去を通して自己寛容の成立と維持に与っているが,同時に正常細胞の破壊にもかかわっており,その異常が自己免疫疾患の発症・病態形成に深く関与している.アポトーシスの人為的コントロールによる自己免疫疾患の発症予防ならびに治療が期待される. -
Fc 受容体の異常
60巻6月増刊号(2005);View Description
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Fc 受容体(FcR)は末梢ではT細胞以外の血球系細胞に広く発現するが,活性化型と抑制性のFcR のバランスによってその細胞は活性化閾値が制御され,これにより細胞性免疫,および液性免疫が巧みに調節されることになる.活性化型FcR の機能が破綻したマウスではアレルギーや自己免疫疾患を発症しなくなる一方,抑制性FcR であるFcγR㈼b が欠損することにより逆にこれらの疾患に対する感受性が顕著に増大する.ヒトFcR の機能異常と自己免疫疾患の関連を探る研究は多くの知見を我々に示してくれている. -
抑制補助シグナル分子と自己免疫
60巻6月増刊号(2005);View Description
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抑制性の補助シグナル分子co-inhibitor は,T細胞免疫寛容およびホメオスターシス維持に重要な役割を果たしている.特に,病変局所浸潤エフェクターT細胞に発現されるPD-1 と病変臓器を構成する上皮細胞・内皮細胞・筋細胞などの組織細胞上に炎症状態で誘導されるPD-1 リガンド,B7-H1 の相互作用は,炎症局所におけるエフェクターT細胞の制御,組織におけるトレランス維持に重要な働きをしている. -
HLA
60巻6月増刊号(2005);View Description
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ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)であるHLA 遺伝子は高度の多型性を示し, HLA 遺伝子領域の優れた遺伝標識となっている.患者集団と健康対照集団との間でHLA 対立遺伝子の頻度を比較することにより, HLA 遺伝子領域における疾患感受性遺伝子の存在を検定することができる.本稿では, HLA 遺伝子の多型に基づく自己免疫疾患への感受性の個体差の形成機序を,HLA の構造と機能に照らし合わせて紹介する. -
自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子−最近の話題−
60巻6月増刊号(2005);View Description
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多くの自己免疫疾患において,疾患感受性遺伝子として確立したと言いうるものはHLA など少数に限られるが,近年,興味深い研究成果が次々に報告されている.本稿では,筆者らの全身性エリテマトーデス疾患感受性遺伝子研究の一部を紹介するとともに,国内外の最近の重要な成果を概説し,これらの研究の過程で明らかになってきた知見を論じる.
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自己免疫疾患の概念と知見
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全身性エリテマトーデス
60巻6月増刊号(2005);View Description
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全身性エリテマトーデス(SLE)は,多臓器病変を特徴とする.診断には,米国リウマチ学会の分類基準が汎用され,病歴と理学的所見からSLE を考慮した上で,血液,尿所見,自己抗体などの血清検査や画像所見から総合的に評価して診断する.疾患活動性が高く,重症臓器病変を有する症例には,ステロイド大量療法を可急的速やかに開始し,腎,肺,中枢神経障害を有する際には,免疫抑制薬を積極的に併用する. -
抗リン脂質抗体症候群
60巻6月増刊号(2005);View Description
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抗リン脂質抗体症候群は,全身の動静脈血栓症や妊娠合併症を主症状とし,抗リン脂質抗体が証明される自己免疫疾患である.APS は,後天性の血栓性疾患の中で最も頻度の多いものであり,また流産の主要な原因の1つとして重視すべき疾患である.本稿ではAPS の疾患概念と臨床的概要,およびその病態形成にかかわる抗リン脂質抗体の病理学的機序につき最新の知見を述べる. -
関節リウマチ
60巻6月増刊号(2005);View Description
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関節リウマチの病因として明らかにされたのは,多くのヒト白血球抗原(HLA)DR4 抗原が持つ特異配列のみで,他の因子の関与はあっても少ない.病態は,免疫担当細胞の活性化による滑膜での炎症,線維芽細胞増殖によるパンヌス組織の形成,関節破壊が連続して起きる.従来の治療は,病態よりも経験に基づく薬剤であったが,病態解明に伴い,抗サイトカイン薬を含む新たな治療薬剤が次々と登場しつつある. -
強皮症
60巻6月増刊号(2005);View Description
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強皮症は皮膚や内臓諸臓器の線維化,末梢循環障害,自己抗体産生の3つの特徴を有する慢性疾患である.病因はいまだ明らかでないが,最近の研究成果により線維化病態におけるTGFβシグナルの重要性,血管内皮前駆細胞の異常に基づく血管修復機転の欠如,B細胞機能異常,自己抗原の構造修飾や発現亢進による自己反応性T細胞の活性化機転が明らかにされた.これらの知見をもとに,今後のさらなる病態解明と新規治療法の開発が期待される. -
多発性筋炎・皮膚筋炎
60巻6月増刊号(2005);View Description
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多発性筋炎・皮膚筋炎は,原因不明の体幹,四肢近位筋の筋力低下を主症状とする炎症性筋疾患である.特徴的な皮膚病変を伴うものは皮膚筋炎と呼ばれる.罹患筋組織ではT細胞,マクロファージなどの炎症細胞浸潤,炎症性サイトカイン,ケモカイン産生が見られる.病変は,筋,皮膚のみではなく,全身の臓器にもおよび,また本疾患に特異的な自己抗体も同定されていることより多発性筋炎・皮膚筋炎は自己免疫性疾患の1つと考えられている. -
血管炎症候群
60巻6月増刊号(2005);View Description
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血管障害機序には① 病的自己反応性T細胞による肉芽腫形成性組織障害,② 抗好中球細胞質抗体による好中球の活性化,③免疫複合体沈着によるⅢ型アレルギーを介した組織障害,④ 抗血管内皮細胞抗体などがある.原因不明の原発性血管炎は罹患血管サイズに基づくChapel Hill 分類が広く受け入れられている.この分類は血管障害機序とも部分的に対応しており大型〜中型血管炎では細胞性免疫の関与(上記の① ),小型血管炎では液性免疫の関与(上記②,③ など)が主要な機序として想定される. -
シェーグレン症候群
60巻6月増刊号(2005);View Description
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シェーグレン症候群(SS)はT細胞を中心とした自己免疫疾患である.唾液腺,涙腺などの臓器病変発症の分子機構が明らかになってきた.特に,臓器に浸潤した自己反応性T細胞の対応自己抗原の一部が判明し,T細胞エピトープもアミノ酸レベルで明らかにされてきた.さらに,アナログペプチドを用いて自己反応性T細胞を制御することがin vitro で証明された.今後, invivo での解析,臨床治験が待たれる. -
多発性硬化症
60巻6月増刊号(2005);View Description
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多発性硬化症は,中枢神経の髄鞘タンパク質を標的とする自己免疫性脱髄性疾患である.再発と寛解を繰り返し,進行期には神経変性にいたるため,早期の自己免疫抑制が重要である.自己免疫病態形成には,Th1 サイトカインを産生するCD4+T細胞が重要であるが,その抑制にはさまざまな免疫調節性細胞が関与している.現在再発予防に㈵型IFN など限られた薬剤しかなく,副作用や無効例もあることから,新しい薬剤の開発導入が望まれる. -
自己免疫性甲状腺疾患
60巻6月増刊号(2005);View Description
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バセドウ病と慢性甲状腺炎(橋本病)は,臨床面では診断ガイドライン(日本甲状腺学会による試案)が作成されている.発症機序については,バセドウ病ではTSH 受容体に対する自己抗体が,慢性甲状腺炎では自己抗体や細胞障害型T細胞による細胞壊死およびアポトーシスが関与している.最近,遺伝子学の進歩によりHLA やCTLA-4 などの疾患感受性遺伝子が特定されてきた.さらに,動物モデルの作成も精力的に行われているので解説する. -
炎症性腸疾患
60巻6月増刊号(2005);View Description
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自己抗原が確定していないが自己免疫疾患類似な潰瘍性大腸炎とクローン病は,近年,罹患数の増加傾向が問題となっている.原因として,免疫学的異常,遺伝学的異常,環境因子など,複数挙られており,複数の原因が,複雑に絡み合って病態を形成していると考えられている.また,両者の病態,臨床症状における共通・類似点はあるが,現在では,免疫学的見地から,全く異なる疾患群であるとの認識が一般的である. -
1型糖尿病の成因
60巻6月増刊号(2005);View Description
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1型糖尿病は自己免疫性と特発性に分類される,ここでは主として自己免疫性1型糖尿病の発症機構,遺伝要因と環境要因についてこれまでの知見を述べた.今後,発症予知マーカーが確立して発症予防法が可能となることが望まれる.劇症1型糖尿病の概念が確立してきた.初診の場で正しく診断し,適切に加療しないと生命にかかわるので大いに注意が必要である.病因の解明が望まれる. -
特発性血小板減少性紫斑病
60巻6月増刊号(2005);View Description
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ITP は血小板膜糖タンパク質に対する自己抗体により誘導される後天性の血小板減少症である.抗血小板抗体が結合した血小板が網内系でFcγ受容体を介してマクロファージなどの貪食細胞に捕捉され,貪食・破壊されることが主たる病態である.最近の研究成果により,自己反応性CD4+T細胞による抗血小板抗体の産生機構が明らかにされた.また,診断,治療に関する新しい知見が集積され,15 年以上も用いられてきた従来の診断基準や治療ガイドラインの見直しが検討されている. -
自己免疫性水疱症における自己抗体
60巻6月増刊号(2005);View Description
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自己免疫性水疱症とは,皮膚の接着タンパク質に対する自己抗体により誘導される疾患群であり,天疱瘡や類天疱瘡がその代表となる.ここでは,自己免疫性水疱症における自己抗体と臨床症状との関連,ならびに自己免疫水疱症のモデル動物としての天疱瘡モデルマウスの有用性について解説する.またヒト以外の動物にも自然発症する自己免疫性水疱症の例として,犬の天疱瘡について紹介する.
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【今月の略語】
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