最新医学

Volume 61, Issue 6, 2006
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特集【がん領域におけるドラッグデリバリーシステム(DDS)】
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アプローチ
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がんの治療現場における DDS
61巻6号(2006);View Description
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DDS における,局所と全身療法,EPR 効果,active targeting とpassive targeting の概念を念頭に,徐放剤や抗体医薬,リポソーム,高分子ミセル,RNAi,ウイルスベクターといった分類から,がんの領域において治療現場に登場した,あるいは臨床応用化が期待されるDDS 治療を,本邦での開発,取り組みに視点を置きながら概説した.がんの分子標的療法において,DDS は分子標的創薬とともに,分子標的「創剤」として,重要な位置を占める.
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DDS における基盤技術開発
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DNA 配列を標的とした DDS
61巻6号(2006);View Description
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N-メチルピロール(Py)とN-メチルイミダゾール(Im)をペプチド結合でつないだPy-Im ポリアミドは,Py とIm の並べ方によって2本鎖DNA の特定配列に結合する.Py-Imは分子量も小さく優れた核移行性を持っている.DNA アルキル化剤をPy-Im ポリアミドに結合させ,特定の遺伝子の配列を標的化できれば,さまざまながんに対して効果を示すテーラーメード抗がん剤となる可能性がある.ここではアルキル化Py-Im ポリアミドの配列特異性と,それを用いたジーンサイレンシング,抗がん性について紹介したい. -
ナノテクノロジーによる新規がん治療法
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光触媒として知られている二酸化チタン(TiO2)に超音波を照射すると非常に酸化力の強いヒドロキシルラジカルが生成することから,この性質を利用した新しいがん治療法を提案した.表面にカルボキシル基を配向した単分散性のTiO2 ナノ粒子あるいはTiO2 ナノ粒子を内包した膜融合リポソームを作製した.マウスリンパ腫由来細胞L1210 を用いて細胞内取り込みを検討した結果,TiO2 ナノ粒子を効率良く細胞内に導入でき,また超音波照射によって有意に細胞死を誘導することができた. -
リポソーム応用の新展開
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本稿では,がん化学療法および遺伝子治療法におけるリポソーム研究の現状を述べ,そして我々の最近の研究成果についても紹介したい.ここでは「標的化リポソームによる腫瘍新生血管傷害療法」および「ポリカチオンリポソームを用いたsiRNA デリバリー」に関する研究を中心に述べる.リポソーム研究は,近年脚光を浴びているナノメディシン研究領域においても注目を集めており,がんの革新的治療法につながることが期待されている. -
インテリジェント高分子ミセルからの DDS
61巻6号(2006);View Description
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体内の標的部位へ薬物を効率的かつ選択的に送達するDDS は,抗がん剤を用いたがん化学療法に近年大きな進歩をもたらしつつある.本稿では,我々が開発してきたインテリジェント高分子ミセルを中心として,高機能性薬物キャリヤーの設計とその臨床治療効果への影響との関係について述べてみたい. -
siRNA のデリバリーシステム
61巻6号(2006);View Description
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RNAi とは,短い2本鎖RNA によって配列特異的に標的RNA が分解され,その結果遺伝子の発現が抑制される現象である.化学合成されたsiRNA を細胞内に導入するためのDDS として,リポソームやアテロコラーゲンなどの非ウイルス性キャリヤーが開発されているが,投与経路や組織特異的に運搬するDDS を考案することにより,siRNA は基礎研究に用いるツールとしてだけでなく,種々の疾患に対する新規治療法としての応用も期待されている. -
アテロコラーゲン DDS による転移性がんの RNAi Therapy
61巻6号(2006);View Description
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RNA 干渉をベースにしたsiRNA の疾患治療への応用が始まろうとしている.がん治療分野でもsiRNA による新しい治療法を開発しようとする試みが世界中で行われつつある.我々は導入効率が高く,安全面でも優れているDDS の開発を目指し,生体親和性物質であるアテロコラーゲンに着目して検討を行ってきた.本稿では,転移性がんを標的にしたアテロコラーゲンの全身性DDS によるsiRNA 製剤開発の研究を紹介する.
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創薬の立場からの DDS
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薬物体内動態の制御に関する新技術
61巻6号(2006);View Description
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DDS は,薬物治療の最適化を目的として,物質動態の視点より生体をシステムととらえ,その特性解析を通じて薬物体内動態の精密制御を図る薬物投与技術と定義され,ゲノム創薬に代表される新しい創薬手法,あるいは遺伝子治療,再生医療など将来の医療技術を支える基盤技術と位置づけられる.とりわけ,本来細胞毒作用を有する物質を治療薬として用いるがん化学療法においては,抗がん剤をがん病巣に集中させることのできるDDS 技術の開発に対する期待は極めて大きい.また,がん治療の将来を担うとされる遺伝子治療においても,遺伝子やアンチセンスDNA,siRNA を目的の細胞に選択的に送り込む送達技術の開発が,治療実現の決め手になると考えられている. -
プロテオーム創薬からの DDS 開発
61巻6号(2006);View Description
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がんなどの難治性疾患を克服するため,より有効ながん治療法の開発が急務であり,全タンパク質の構造と機能解析をもとにした創薬プロテオーム解析に注目が集まっている.本総説では,このプロテオーム解析の結果から得られた情報をもとに,医薬価値に優れた薬物開発を行うためのDDS 戦略を提示し,ファージ表面提示法を用いたタンパク質構造変異体の創出とそのDDS 的有用性を紹介する.
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ベッドサイドから見た DDS 開発の進歩
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DDS を視点とした標的化遺伝子治療
61巻6号(2006);View Description
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腫瘍だけを見つけて選択的に遺伝子導入や薬剤投与が可能なDDS システムを作ることができれば,標的化治療が達成できる.我々は,ファイバー変異型アデノウイルスと細胞表面抗原を認識する抗体を組み合わせて,遺伝子導入の選択性強化を目指した.系統的スクリーニング方法が樹立され,前立腺がんや膵がんなどの悪性腫瘍に対して選択性の高い遺伝子導入・薬剤投与を可能とする標的候補が見つかってきた. -
高分子型薬剤の臨床応用—その現状と将来の展開に向けて—
61巻6号(2006);View Description
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臨床的に高分子型薬剤は,ポリエチレングリコール(PEG)化インターフェロンの出現でその有効性がより広く認識されている.本稿では,高分子薬の概略,その有用性と特徴,EPR 効果と呼ばれる高分子薬の腫瘍デリバリーメカニズム,それに関与する因子,EPR 効果の人為的な操作による腫瘍デリバリーの増強など,将来の高分子薬剤に対してスマンクスで見られる手技と同様に多面的な応用も記した. -
DDS と細胞療法
61巻6号(2006);View Description
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悪性腫瘍に対するDDS の進歩は目覚ましいものがあるが,腫瘍標的化ならびに効果持続性の面からさらなる改良が望まれている.この観点から,DDS 開発の1つの方向性として遺伝子導入細胞を用いた治療法は有望であると考えられる.一方,現在実施されている遺伝子導入腫瘍細胞や免疫担当細胞を用いた治療法は,ある程度の効果は望めるものの腫瘍細胞の標的化効率はいまだ低く,顕著な臨床効果は得られていないのが現状である.この現状を打破し理想的な細胞DDS システムを開発するためには,機能改変免疫担当細胞,血管内皮を含む各種組織前駆細胞などの特殊な細胞の利用が今後重要になるものと考えられる. -
DDS にかかわる臨床試験の現況
61巻6号(2006);View Description
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DDS 製剤の理論的支柱であるEPR 効果の概念も世界に広まりつつある.同時に外国においてはDoxil やAbraxane など次々とDDS 製剤が認可されてきている.本邦ではミセル製剤の臨床試験が始まり,ミセル製剤の臨床的な有用性が期待されている.
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【エッセー】
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- 白血病医の御礼奉公(6)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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