最新医学
Volume 62, Issue 4, 2007
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特集【糖尿病の新しい治療戦略】
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アプローチ
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糖尿病のこれまでの治療とこれから
62巻4号(2007);View Description Hide Description1990 年以降,それまでのインスリンやスルホニル尿素薬,ビグアナイド薬に加え,新たにαグルコシダーゼ阻害薬,チアゾリジン薬,グリニド薬が次々と登場し,インスリンアナログも開発された.また,膵島移植による細胞治療も始まった.さらに,インクレチンによる治療が我が国で用いられる日も近い.今後は,糖尿病の病態に応じてこれらの治療薬や治療法を使い分け,エビデンスに基づいた治療が必要となる.
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糖尿病の治療戦略
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新しいインスリン治療—さらなる改良を目指して—
62巻4号(2007);View Description Hide Description生理的インスリン分泌を再現するため,遺伝子組み換え技術を用いてアミノ酸構造を修飾したインスリンアナログ製剤が開発された.超速効型アナログは速やかな吸収と短い作用持続時間により食後高血糖の是正に,持効型アナログは長い作用時間と安定した効果により基礎分泌を補うのに適している.注射に変わる方法として開発された吸入インスリンの効果発現時間は超速効型インスリンと同等であり,食前インスリンとして使用可能である. -
GLP-1 による糖尿病治療—迫り来る治療の変革—
62巻4号(2007);View Description Hide Description食事の摂取とともに消化管から分泌されるインクレチン(GIP や GLP-1)が,2型糖尿病の新しい治療薬として脚光を浴びている.インクレチンは膵β細胞からのインスリン分泌を促進するのみならず,膵β細胞数を増加させる可能性も示唆されている.我が国の2型糖尿病は膵β細胞数が少ないと考えられており,このようなインクレチンを用いた治療の開始は,糖尿病診療を“care”から“cure”に向ける転換点になるかもしれない. -
DPP-IV阻害薬による糖尿病治療—GLP-1 誘導体との比較—
62巻4号(2007);View Description Hide DescriptionGLP-1は新しい2型糖尿病治療薬として注目されているが半減期が短いため,その分解酵素であるdipeptidyl peptidase-IV(DPP-IV)の阻害薬と,DPP-IV に分解されにくい GLP-1 誘導体が開発されてきた.DPP-IV阻害薬は経口薬であるため注射薬の GLP-1 誘導体に比べて認容性が高いが,GLP-1 以外のさまざまなペプチドホルモンにも作用するため GLP-1 誘導体とは異なる作用を示す可能性がある. -
インスリン抵抗性改善薬の現状と未来
62巻4号(2007);View Description Hide Descriptionインスリン抵抗性改善薬として現在使われているのは,ビグアナイド薬とチアゾリジン誘導体である.ビグアナイド薬は肝臓でAMP キナーゼを活性化し,糖新生の抑制や脂肪酸燃焼を促進してインスリン抵抗性を改善する.一方,チアゾリジン誘導体は,脂肪組織においてPPARγ を活性化し,骨格筋・肝臓からの中性脂肪の引き抜きとアディポカイン異常の是正によってインスリン抵抗性を改善させる.今後,アディポネクチンあるいはその受容体AdipoR の増加薬,活性化薬が,原因に基づいた新規治療法として期待される. -
1型糖尿病治療の現状と未来
62巻4号(2007);View Description Hide Description1型糖尿病の治療目標は,強化インスリン療法を用いて低血糖を回避しつつ,血糖を正常に近づけることである.強化インスリン療法の具体的な方法は,インスリン頻回注射療法と持続皮下インスリン注入療法に分けられる.本稿では,インスリンアナログ製剤登場後の1型糖尿病におけるインスリン治療の現状と,将来的な展望について述べる.
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合併症の治療戦略
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糖尿病網膜症の新しい治療戦略—VEGF とアンジオポエチン—
62巻4号(2007);View Description Hide Description近年,糖尿病網膜症において血管内皮増殖因子(VEGF)が主要な役割を果たしていることが明らかとなり,VEGF を阻害する治療法が実用化の段階にある.その一方で,一時的にVEGF を阻害するのみでは網膜症の沈静化には不十分であることも分かってきた.アンジオポエチンは血管の成熟・安定化に作用する増殖因子で,血管透過性を抑制する作用を持つため,将来的にはアンジオポエチン作用を応用した治療法の開発が期待される. -
PKCβ阻害薬による糖尿病合併症治療の可能性
62巻4号(2007);View Description Hide Description21 世紀に入ってますます進歩した糖尿病治療薬やレニン・アンジオテンシン系阻害薬が臨床応用されているにもかかわらず,増加の一途をたどっている糖尿病患者の増加とその結果生じる糖尿病合併症が,いま我々が直面している医学的・社会的な課題である.したがって,血糖や血圧の管理状況にかかわらず,合併症の発症・進展を阻止する新たな治療が望まれる.特に,高血糖によるPKC,特にPKCβの活性化は,TGFβ,CTGF,そして細胞外マトリックスタンパク質の遺伝子発現,VEGF の発現などを介して糖尿病血管合併症を惹起することが,糖尿病モデル動物において示されてきた.その後,経口投与可能なPKCβ阻害薬が開発され,糖尿病モデル動物のみならず糖尿病網膜症,神経障害,腎症に対して有効である可能性を示す報告がなされている. -
AGE 阻害薬による糖尿病合併症治療の可能性
62巻4号(2007);View Description Hide Descriptionadvanced glycation endproducts(AGE)と,これを認識して細胞応答を起こすreceptor for AGE(RAGE)は,糖尿病合併症発症・進展の主要因の1つである.AGE の形成阻害・分解,RAGE 遮断,デコイ受容体を用いたリガンド捕捉などによる糖尿病合併症予防・治療の可能性について述べる. -
糖尿病腎症の血圧管理—エビデンスに基づいた治療—
62巻4号(2007);View Description Hide Description糖尿病腎症を有する患者においては,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬か,アンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)を用いて厳格な血圧管理が推奨される.この理由は,これらレニン・アンジオテンシン系を抑制する降圧薬が,全身の血圧低下に加えて糸球体高血圧を改善するからである.事実,多くの臨床試験でACE阻害薬かARB が腎症の進展を抑制することが証明されてきた.最近では寛解や退縮がもたらされることも明らかになり,また早期からの治療により微量アルブミン尿の発症を予防する試みも始まっている. -
糖尿病予防のための戦略研究—J-DOIT3—
62巻4号(2007);View Description Hide Description糖尿病およびその合併症は増加の一途をたどっている.糖尿病予防のための戦略研究(Japan Diabetes Outcome Intervention Trial:J-DOIT)は糖尿病および合併症予防のために厚生労働省が開始した3つの大規模介入研究である.J-DOIT3 は死亡,心筋梗塞,脳卒中をはじめとする合併症の高リスク群において,強化治療により合併症の30% 減少を目指す研究である.強化治療の内容としては生活習慣介入・自己管理をベースに,糖尿病患者における大血管症抑制のエビデンスがある薬剤を用いて,血管・血圧・脂質をこれまで以上に厳格に管理するものである.J-DOIT3 は糖尿病治療の重要なエビデンスを提供することが期待される研究である.
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先端の治療戦略
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肝臓のインスリン抵抗性を標的とした糖尿病治療の可能性
62巻4号(2007);View Description Hide Description肝臓はインスリンの最重要な標的臓器であり,肝臓の糖代謝制御にかかわる分子はインスリン抵抗性の薬理学的治療の標的となる.グルコース流入とグリコーゲン合成を促進するグルコキナーゼの活性化薬や,糖産生を触媒するPEPCK やグルコース6−リン酸脱リン酸化酵素の阻害薬などは有用な薬剤となろう.最近,中枢性の肝糖産生抑制のメカニズムも明らかとなりつつあり,新しい糖尿病,インスリン抵抗性の治療標的として注目される. -
エネルギー代謝調節における臓器間相互作用を標的とする治療の可能性
62巻4号(2007);View Description Hide Description生体が適切なエネルギー代謝を行うためには,全身のエネルギー収支を的確に把握し,個体を構成する臓器の相互作用を調整する必要がある.肥満症やそれに合併する糖尿病は,精妙に調整されている臓器間相互作用が破綻した状態とも言える.脳がエネルギー代謝の調節において中心的な役割を果たしていることは言うまでもないが,近年の精力的な研究によりエネルギー情報の脳への入力経路の解明が進展した.本稿では,まずこの分野の最近の進歩を紹介し,実際の治療への展望も論じてみたい. -
新生児糖尿病治療の新展開—スルホニル尿素薬の有効性—
62巻4号(2007);View Description Hide Description永続型新生児糖尿病は,新生児期に発症し,生涯インスリン治療が必要とされてきた.最近,膵β細胞インスリン分泌において重要な役割を担っているKATP チャネル遺伝子の異常が同疾患発症原因遺伝子であることが判明し,さらに経口血糖降下薬への反応性残存が明らかにされた.これは経口薬による治療の可能性を意味し,患者にとっては新たな治療選択肢の提示を意味する.これらは臨床的に大きな意味を持ち,今後の展開が期待されている. -
膵臓・膵島移植による糖尿病治療—現況と展望—
62巻4号(2007);View Description Hide Description膵臓移植と膵島移植は,どちらもインスリン依存状態糖尿病に対する外科的治療法である.細胞移植である膵島移植は安全性が高く,臓器移植である膵臓移植は高いインスリン離脱率を維持できることが特徴である.現時点では,両者のメリット,デメリットならびに患者の病期を考慮して選択されるべきである.将来的には,低侵襲の治療法である膵島移植の技術がトランスレーショナルリサーチのプロトタイプとして発展していくことが予想される. -
糖尿病の再生医療—現状と未来—
62巻4号(2007);View Description Hide Description近年の研究の進歩により,糖尿病に対する根本的治療戦略として「膵β細胞再生療法」の可能性が示され,注目されている.これまでに,さまざまな手法によって成体内幹細胞からの膵β細胞の再生促進や体外培養における膵β細胞の分化誘導が報告され,臨床応用が期待されているが,一方で多くの問題点も残っている.本稿では膵β細胞再生療法に関する基礎的・臨床的アプローチの現状および将来の展望について解説する.
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【エッセー】
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- 白血病医の御礼奉公(16)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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