最新医学

Volume 63, Issue 2, 2008
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特集【脂質異常症−新ガイドラインと治療戦略−】
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アプローチ
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新ガイドラインの概要
63巻2号(2008);View Description
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今回のガイドラインでは,動脈硬化性疾患の危険因子としてのコレステロール値として,総コレステロール値ではなくLDL コレステロール(LDL-C)値を用いることとした.脂質異常の診断基準としては,従来どおりLDL-C 値140mg/dL 以上,トリグリセライド150mg/dL 以上,HDL コレステロール(HDL-C)40mg/dL 未満とした.この値は薬物療法の開始基準とは異なるものであり,薬物療法に関しては動脈硬化のリスクを充分に検討してから導入を決定する必要がある. -
脂質異常症のメカニズム— 産生システムと処理システムの視点から—
63巻2号(2008);View Description
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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007 年版より,脂質異常症の対象はLDL コレステロール,トリグリセライド,HDL コレステロールの3因子に絞られ,病態との関連がよりクリアになった.これらの血中レベルを処理系側からそれぞれ制御するLDL 受容体,LPL,CETP の作用状態が脂質異常症の発症に重要である.食事性脂質や肝臓における脂質合成も合成側として関与していく.血中リポタンパク代謝の生理ならびに脂質異常症の病態メカニズムについて,産生と処理のバランスの視点を中心に概説する. -
動脈硬化の発症メカニズム
63巻2号(2008);View Description
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粥状動脈硬化症は種々の要因により発症するが,高LDL コレステロール血症に代表される脂質異常症は,その発症・進展に重要な役割を演じることが明らかになってきた.その背景には,モデル動物の開発や分子細胞生物学の進歩などの基礎研究に加えて,大規模脂質介入試験などの臨床研究が大きく寄与している.本稿ではこれらの成果に基づき,動脈硬化の成立と脂質異常症のかかわりについて,高LDL コレステロール血症,高トリグリセライド血症,低HDL コレステロール血症の各病態における動脈硬化発症の分子機構と予防ならびに治療への展開について,最近の知見を交えて述べたい.
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ガイドラインを支える疫学研究
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冠動脈疾患と脂質異常症
63巻2号(2008);View Description
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欧米と同様,日本においても脂質異常症は冠動脈疾患に対する重要な危険因子であることが疫学研究により明らかにされている.特に,高LDL コレステロール血症,低HDL コレステロール血症は重要な危険因子である.その他の脂質異常症としては,高トリグリセライド血症,高Lp(a)血症,高レムナント血症,n-3 系多価不飽和脂肪酸などが冠動脈疾患と関連があると報告されている. -
コレステロールと脳卒中
63巻2号(2008);View Description
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我が国のコホート研究において,総コレステロールと脳卒中の明らかな関連は認められていない.一方で,高コレステロール者ほど喫煙の害が増強されている可能性が示唆されており,高脂血症患者に対する禁煙積極支援の重要性が示唆されている.また脳卒中そのものに対する有益性はあまり強くないものの,心臓病を含めた予防という観点からは,高脂血症に対する治療は全循環器疾患予防に大きな役割を果たすことが明らかとなっている. -
禁煙による循環器疾患予防
63巻2号(2008);View Description
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日本の大規模コホート研究により, 1.過去喫煙者の循環器疾患死亡・発症のリスクは喫煙者と比較して低いこと, 2.脳卒中の死亡,発症リスクの低下は禁煙後2〜4年で,虚血性心疾患の死亡,発症リスクの低下は禁煙後2年未満でみられ始めた. 3.禁煙による脳卒中,虚血性心疾患の死亡リスクの低下は禁煙後10〜14 年で非喫煙者と同レベルに達した.一方,脳卒中の発症リスク低下は禁煙後10〜14 年で,虚血性心疾患発症リスクの低下は禁煙後2年未満で非喫煙者のレベルに達した.禁煙は循環器疾患の有効な予防手段である. -
治療エビデンスをいかに評価するか
63巻2号(2008);View Description
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治療エビデンスはその正確性,精密性,一般化可能性から評価される.エビデンスの中心となるランダム化臨床試験を主な対象としてこれらの概念を説明し,MEGAStudy を例として結果解釈上の問題点について例示する.論文執筆時のガイドラインであるCONSORT を紹介し,最後に疫学研究と臨床試験研究との協調について展望を述べる.なお重要な統計用語を補注にまとめた.
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ガイドラインを支える治療エビデンス
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食のエビデンス
63巻2号(2008);View Description
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LDL コレステロール血症には飽和脂肪酸の過剰摂取が大きく関与し,コレステロール,多価不飽和脂肪酸,食物繊維も関連する.HDL コレステロールは飲酒で上昇する一方,高グリセミックインデックス(GI)食で低下する可能性が示唆されている.トリグリセライド(TG)は高炭水化物食や高GI 食での上昇が示唆されている.脂質異常症と食事・栄養との関連は病態によって異なり,患者の栄養素摂取量を把握したうえでの適切な食事指導が求められる. -
脂質異常症の運動療法
63巻2号(2008);View Description
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身体活動量の低下は動脈硬化性疾患の危険因子である.運動による消費エネルギー量と食事による摂取エネルギー量の不均衡は,内臓脂肪蓄積,耐糖能異常,高血圧,低HDL コレステロール血症,高トリグリセライド血症などを引き起こし,動脈硬化性疾患のリスクを高める.これら生活習慣病の予防には,活動的な日常生活の実践やウォーキング,ジョギングなど有酸素運動の実践が重要であり,体力レベルに合わせた運動処方が望まれる. -
日本における脂質異常症治療エビデンス
63巻2号(2008);View Description
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脂質代謝改善薬の中で,スタチンとn-3 脂肪酸は総死亡率の抑制効果がメタアナリシスで確かめられている.我が国においても,日本で開発されたスタチンを用いた大規模臨床試験MEGA Study の結果が得られ,冠動脈イベント発症抑制効果が確かめられた.さらに,n-3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)を用いたJELIS の結果から,EPA による冠動脈イベント抑制効果が確かめられた.薬物治療は生涯に及ぶことから,長期の安全性と効果に加え,QOL が我が国において確かめられた薬剤が一次選択薬になる.
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脂質異常症の治療戦略
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高 LDL コレステロール血症に対する治療の実際
63巻2号(2008);View Description
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欧米と同様,我が国でもMEGA の結果から,一次予防におけるLDL コレステロール(LDL-C)低下療法の意義が確認された.脂質異常症の治療は,個人の動脈硬化リスクを正しく評価し,特に一次予防に関しては生活習慣の改善を基本として,絶対リスクが高い患者に薬物療法を行う.強力なLDL-C 低下療法の意義については十分なコンセンサスが得られているわけではなく,有効性と安全性などを十分に考慮して行う必要がある. -
高トリグリセライド血症治療の実際
63巻2号(2008);View Description
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最近では高トリグリセライド(TG)血症は虚血性心疾患の危険因子として充分認識されており,メタボリックシンドロームに代表される冠動脈疾患の危険因子集積症候群のコンポーネントとしても重要視されている.さらに,高TG 血症にはその動脈硬化惹起性が話題となっている中間型リポタンパク(IDL)やレムナント分画,さらに small dense LDL などの出現,あるいは低HDL 血症が合併することも臨床上重要である.一方,食後高血糖のみならず,食後高脂(TG)血症も動脈硬化進展に大きく寄与することが報告されており,幾つかの疫学調査の報告もなされている.食後も含め,高TG 血症の治療はまず食事療法であり,厳密な食事内容の管理によって劇的な改善も可能である.運動療法も高コレステロール血症よりも有効で,推奨される.食事療法と運動療法で充分な効果が得られない場合に薬物療法となる.基本はフィブラート系であるが,エイコサペンタエン酸(EPA)製剤もその心血管イベント抑制効果のエビデンスがそろいつつある.本稿ではまず高TG 血症(食後の高脂血症も含め)の冠動脈疾患における危険因子としての重要性に触れ,後半では食事療法,さらにライフスタイルの是正,そして薬物療法による治療戦略をも明らかにする. -
低 HDL コレステロール血症治療の実際
63巻2号(2008);View Description
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HDL は動脈硬化症の負の危険因子であり,我が国の公衆衛生学上HDL 低下はLDL 上昇より重要な危険因子である.実際には多くの低HDL 血症は高トリグリセライド(TG)血症に対して二次的に起こっているものであり,高TG 血症の改善により是正されるものである.低HDL 血症の特異的治療法はいまだ存在しないが,多くの研究が行われ,競い合っている.しかし最近,コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害によるHDL 上昇薬の開発が失敗し,この分野の研究の今後が注目される.今のところ低HDL 血症是正による動脈硬化の予防は直接証明されておらず,厳密に言えば低HDL 血症はリスクの評価には重要であっても,直接の臨床的治療対象とはならない. -
メタボリックシンドローム対策
63巻2号(2008);View Description
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高コレステロール血症に次ぐ心血管疾患予防ターゲットとなっているのが,メタボリックシンドロームである.メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積を発症基盤とし,個人に高血糖,脂質代謝異常,高血圧などの動脈硬化危険因子が集積する病態である.メタボリックシンドローム患者の管理・治療には,ライフスタイル改善を通した内臓脂肪の減量が重要である. -
原発性高脂血症の対応
63巻2号(2008);View Description
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原発性高脂血症は体質・遺伝子異常に基づいて発症するものである.原発性高脂血症の中で家族性高コレステロール血症,家族性複合型高脂血症,家族性III型高脂血症は極めて冠動脈疾患を発症しやすく,早期発見と厳重な管理が必要である.一方,カイロミクロンの増加する家族性リポタンパクリパーゼ欠損症では膵炎や黄色腫を発症しやすく,厳重な脂肪摂取の制限が重要である. -
高トリグリセライド血症における治療指標としてのnonHDL コレステロール
63巻2号(2008);View Description
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高トリグリセライド(TG)血症診療では,TG 値が食事の影響を強く受けることから,生活習慣改善や薬物療法の効果が見えにくいことが大きな問題である.nonHDLコレステロール(nonHDL-C)は総コレステロール(TC)とHDL コレステロール(HDL-C)から簡便に計算でき,食事の影響をほとんど受けないことが利点である.nonHDL-C はLDL とともに高TG 血症で増加するVLDL,IDL,レムナント中のコレステロールを含み,悪玉コレステロール全体を表現する指標である.
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ガイドラインの今後の課題
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【エッセー】
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- 代謝病の周辺(2)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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