最新医学

2008, 63巻6月増刊号
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特集【新興・再興感染症(後篇)】
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各論
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マラリア
63巻6月増刊号(2008);View Description
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グローバル化が進行しアフリカや東南アジアとの経済文化交流が活発化している.そのため,現地の感染症は旅行者や海外勤務者を通してリアルタイムで日本へ流入する可能性が高まっている.マラリアは熱帯地域に広く蔓延し感染する確率も高い疾患であり,国内で見落とされ重症化して死亡する例も報告されているため,日常の診療においても心にとどめておく必要がある. -
コクシジオイデス症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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コクシジオイデス症は輸入真菌症の1種で,最も危険性の高い真菌症と言える.健常者に極めて容易に感染し,全身播種を起すとしばしば致死的となる.培養検査は極めて危険で基本的に禁忌であるため,普段から十分な知識に基づいて早い段階で本症の疑いを持てるかどうかが,正しい診断・治療への鍵となる. -
腸管出血性大腸菌感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の臨床像は腸管病変としての出血性腸炎のほかにベロ毒素(VT)または志賀毒素(Stx)による溶血性尿毒症症候群,血栓性血小板減少性紫斑病などの重篤な合併症を伴う点に特徴がある.したがって,腸炎罹患後1〜2週間程度は経過観察し,合併症の早期発見に努める必要がある.1999 年4月から施行された『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』(感染症法)において,EHEC 感染症は三類感染症に類型化された.三類感染症では患者・保菌者を含む全例が届出対象となる. -
MRSA 感染症(市中感染型MRSAを含む)
63巻6月増刊号(2008);View Description
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染の主要な菌であり,感染抵抗力が減弱した患者に重篤な感染を引き起す.さらに,欧米を中心に一般社会の健常者からもMRSA の分離例が報告されるようになり,市中感染型MRSAとして注目を集めている.院内感染型と市中感染型では菌そのものの性状が異なっており,臨床的にも市中感染型MRSA は皮膚軟部組織感染症が多く,多くの抗菌薬に対する感受性が保たれている.今後,日本でも市中感染型MRSA が増加する可能性は高く,より注意が必要である. -
バンコマイシン耐性腸球菌感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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腸球菌は腸内細菌叢を構成し,通常は無症状保菌の状態だが,医療行為に合併する感染症としてカテーテル関連感染(尿路・血管),手術創感染の起因菌となりやすい.バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)はvanA またはvanB 遺伝子によりバンコマイシン耐性となった腸球菌である.高用量アンピシリン,リネゾリド,キヌプリスチン・ダルフォプリスチンが治療に用いられるが,フォーカスの診断とカテーテル類の除去が治療のうえでも重要である. -
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)は,黄色ブドウ球菌のみならず腸球菌や肺炎球菌などの連鎖球菌属, Clostridium 属菌などの幅広いグラム陽性菌に対し抗菌活性を有するバンコマイシン(VCM)に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌である.2002 年6月に米国のミシガン州の病院でvanA 遺伝子を保有するVRSA が検出されたのに続き,現在までにペンシルベニア州(1例),ニューヨーク州(1例),ミシガン州(4例)から,同様のVRSA 株が計7株確認されている.しかし幸いにも,いずれの事例においてもVRSA はやがて消失したため,長期に保菌したり患者間で伝播・拡散して,院内感染症を発症した事例は確認されていない. -
MDRP 感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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緑膿菌は感染防御能力の低下した患者に日和見感染症を引き起す重要な微生物である.最近,緑膿菌に効果が期待されるカルバペネム系薬やフルオロキノロン系抗菌薬ならびにアミノ配糖体系抗菌薬などに幅広く耐性を獲得した“多剤耐性緑膿菌(MDRP)”の増加が懸念されている.MDRP が分離されやすい患者背景としては,長期入院,抗菌薬投与ならびに免疫抑制状態などが重要である.有効な抗菌薬が存在しないため,厳重な院内感染対策を実施する必要がある. -
耐性肺炎球菌感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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肺炎球菌はヒトに対する病原性が強く,また臨床検体から高頻度で分離されるグラム陽性球菌である.本菌は依然として成人市中肺炎の原因の第1位であり,また髄膜炎,敗血症など致死的な感染症の原因としても重要である.その肺炎球菌において抗菌薬耐性が進行している.近年ではペニシリン・マクロライド・テトラサイクリン耐性に加え,フルオロキノロン耐性株の出現が問題となっている. -
レジオネラ症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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レジオネラ症の1病型であるレジオネラ肺炎は日本の成人市中肺炎の3.9 %を占め,致死的肺炎として知られている.院内肺炎や集団発生としてもみられ,公衆衛生の観点からも注意が必要である.レジオネラ菌は細胞内増殖菌であり,その病態について精力的な研究が進められている.レジオネラ肺炎は適切な治療が遅れることにより致死的となる疾患であり,まず本症を疑うことにより早期に適切な治療を開始することが重要である. -
結核
63巻6月増刊号(2008);View Description
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日本の結核問題は欧米先進国より数十年遅れており,問題の軽視が相まって対応困難な問題になりつつある.これに対応して最近改編された感染症法への統合対策の概要を述べた.対策を効果的にすべき新技術(菌検査,感染診断,創薬,ワクチンなど)の開発も活発で,一部はすでに実用化されている.最後に,世界の結核対策の流れとそれに呼応した日本の動き(『ストップ結核パートナーシップ・日本』の設立)についても触れた. -
ヘリコバクター・ピロリ感染症
63巻6月増刊号(2008);View Description
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2005 年のノーベル医学・生理学賞を受賞したBarry Marshall とRobin Warren両博士のヘリコバクター・ピロリ(HP)の発見から四半世紀が過ぎようとしている.この間に,全世界で多くの基礎的・臨床的研究が精力的に進められ,この両博士のノーベル賞受賞の背景には我が国の多くの優れた研究成果が貢献している.1982 年の本菌発見の初期には,全世界の多くの消化器病研究者は本菌の病原性に関して懐疑的で,激しい議論が繰り返された.一方,我が国ではHP 感染に対する除菌治療が今日のように消化性潰瘍の標準治療法として広く認知されるまでには多くの時間を要し,世界の先進国からは大きく遅れた.また,近年のクラリスロマイシン耐性HP の著増への対策としてメトロニダゾールを用いた2次除菌が公知申請で保険適用が承認され,今後の課題は除菌治療の適応疾患の拡大へと向かう.本稿ではHP 感染の現状と将来展望について概説する. -
バイオテロリズムと肺炭疽
63巻6月増刊号(2008);View Description
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炭疽(anthrax)は,炭疽菌(Bacillus anthracis)による人畜共通感染症である.主にウシ,ヒツジなど家畜の疾患であるとともに,感染動物あるいはその製品物を扱う従事者に認められる疾患である.炭疽菌はR. Koch により1876 年に初めて純培養され,1881 年L. Pasteur により家畜の炭疽予防用弱毒生菌ワクチンが開発された細菌学史上特筆すべき細菌でもある.芽胞を吸入することにより,致死率が高い肺炭疽を引き起すことから生物兵器の病原体としても注目されている. -
百日咳
63巻6月増刊号(2008);View Description
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百日咳は,乾性咳嗽が通常の鎮咳薬では軽快せず,連続性・反復性の咳となり,咳込み後に笛声が聞かれる一連の咳発作を繰り返す再興呼吸器感染症の1つである.ジフテリア・破傷風・百日咳(DTP)ワクチン既接種の年長児や成人の百日咳が認識されるようになった.咳が長期間続くのみで特有な咳が少なく,診断・治療が遅れ,乳幼児の感染源となっていることが問題となっている.疫学上の変化,成人百日咳の臨床像およびその対策について検討した. -
水痘
63巻6月増刊号(2008);View Description
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水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染像で,帯状疱疹は水痘感染後神経節に潜伏感染したVZV の再活性化像である.また,耳介の水疱と同側の顔面神経麻痺を来した場合Ramsay Hunt 症候群と呼ばれる.一般に,健康小児では軽症な疾患であるが,成人や妊婦,特に免疫抑制患者では重症化し,抗ウイルス薬を投与しても致死的となることがある.我が国で水痘ワクチンが開発されたが,任意接種で接種率も低い.しかし,米国では水痘予防のために小児に2回接種,高齢者に帯状疱疹防止のために接種されるようになっている.
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【今号の略語】
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