最新医学

Volume 63, Issue 8, 2008
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特集【冠動脈疾患と炎症】
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アプローチ
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冠動脈疾患における炎症の意義
63巻8号(2008);View Description
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炎症は生体の生存に必須の防御反応である.冠動脈疾患の主な原因病態である粥状動脈硬化症は,血管壁における慢性炎症性疾患と考えられる.臨床的・基礎的研究から,動脈硬化症は血管内皮細胞とマクロファージなどによる血管内膜における炎症ととらえられ,臨床的には血中バイオマーカー測定によりその炎症レベルが検討される.心血管治療薬の中に抗炎症効果を有する薬剤が検討され,冠動脈疾患を炎症の立場から研究した新たな治療戦略の検討が期待される.
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成因解明
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病理学的に見た冠動脈疾患における炎症の役割について
63巻8号(2008);View Description
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近年,冠動脈プラークの発生・進展における炎症の関与が重要視されている.内皮障害に引き続いて起こるマクロファージの集簇と平滑筋細胞の増生は,最も重要な病理組織学的変化で,プラークの形成だけでなく不安定化にも深くかかわっていると考えられる.また,急性冠症候群の発症に直接的な原因となる血栓形成においても,炎症細胞の関与が示唆されている. -
急性冠症候群におけるマクロファージの重要性
63巻8号(2008);View Description
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急性冠症候群の発症機序において,プラークの構成成分であるマクロファージは重要な役割を担っている.冠動脈プラークにおいて酸化LDL を貪食したマクロファージは,種々のサイトカインによって活性化され,タンパク質分解酵素を産生し,線維性被膜を脆弱化する.また,外因系凝固マーカーである組織因子や線溶系障害のマーカーであるPAI-1 などを産生することにより,冠動脈プラーク破綻後の血栓形成に重要な役割を果たす. -
冠動脈疾患における接着分子の意義
63巻8号(2008);View Description
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動脈硬化の発症・進展に,接着分子を介する白血球の血管壁への接着・浸潤といった炎症性機転が関与する.接着分子は細胞接着に際して糊としての役割のみならず,細胞内あるいは細胞間シグナル伝達を担う重要な機能分子であり,冠動脈疾患においてもさまざまな病態を形成する.今後,接着分子を標的とした炎症機転の制御が,冠動脈疾患の治療戦略として重要な位置を占めるようになる可能性がある. -
冠動脈疾患と免疫
63巻8号(2008);View Description
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不安定狭心症や急性心筋梗塞,あるいは虚血性心臓突然死のほとんどは,冠動脈プラーク(粥腫)の破裂あるいはびらんを来し,それに続いて冠動脈内腔に血栓が形成され,内腔が閉塞ないしは亜閉塞されるために発症することが明らかにされ,一括して急性冠症候群(ACS)と呼ばれる.破綻しやすい冠動脈プラークには多くのマクロファージが存在し,T細胞からの刺激を受けてプラーク破綻へと進展する.ACS患者で活性化している接着分子やT細胞は冠攣縮性狭心症の患者においても亢進しており,血管内皮細胞下への白血球の浸潤やプラークの線維性被膜の菲薄化に関与する可能性がある.このように,冠動脈疾患に免疫(炎症)細胞の関与が重要である. -
冠動脈疾患とPPARγ
63巻8号(2008);View Description
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近年,脂肪細胞の分化調節のマスター転写因子であるPPARγ を活性化することでインスリン感受性が亢進し,糖・脂質代謝が改善されることが報告された.PPARγの活性化は,血管壁においても抗炎症・抗酸化作用を発揮し,動脈硬化症に対して保護的に作用する.本稿では,冠動脈疾患におけるPPARγ の役割について解説するとともに,最近発表されたピオグリタゾンを用いた大規模臨床試験の成績を紹介し,今後の展望についても言及する.
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冠動脈疾患における炎症に関与する血中バイオマーカーの意義
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高感度 CRP
63巻8号(2008);View Description
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アテローム性動脈硬化症は,炎症過程を基盤に進行していく慢性疾患である.高感度C反応性タンパク質(CRP)は炎症マーカーとして現在広く用いられている指標であり,健常成人では冠動脈疾患発症の予測に,安定狭心症患者および急性冠症候群患者では病態の把握や重症度ならびに予後予測において有用である.また,薬物治療でHMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)治療の指標としても,高感度CRP は有用であることが示されている. -
アディポサイトカインと炎症・冠動脈疾患— アディポネクチンを中心に—
63巻8号(2008);View Description
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これまで単なるエネルギー貯蔵庫とされていた脂肪組織は,実は多彩な生理活性物質を分泌する内分泌臓器であることが明らかにされ,脂肪細胞由来の分泌タンパク質は「アディポサイトカイン」と呼ばれるようになった.近年,アディポサイトカインと動脈硬化・炎症との密接な関係が明らかにされており,本稿では中でも脂肪細胞に最も高頻度かつ特異的に発現する遺伝子産物「アディポネクチン」を中心に,その臨床的意義について概説する. -
可溶型接着分子
63巻8号(2008);View Description
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動脈硬化進展過程において,血管内皮細胞にsICAM-1,可溶型Pセレクチン,可溶型Eセレクチンなどの接着分子が発現し,単球やT細胞といった白血球との間に強固な接着が起こり,単球やT細胞は内皮細胞に結合し,やがて内皮下へ侵入していくことが明らかになってきている.急性冠症候群および冠攣縮性狭心症の患者において,これらの接着分子は末梢血においてあるいは冠循環で過剰に発現しており,それぞれの炎症反応に関与していると考えられる.
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炎症の観点に立った冠動脈疾患の治療
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アスピリン
63巻8号(2008);View Description
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アスピリンは大規模臨床研究により,動脈硬化,血栓性疾患である心筋梗塞,脳梗塞などの疾病の発症予防効果を有することが確認されている.また,アスピリンは薬理学的にはシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)を阻害することも理解されている.心筋梗塞発症予防効果の一部は,COX-1 の阻害に基づく活性化血小板からのトロンボキサンA2 産生阻害による抗血小板効果に依存している可能性が高い.また,一部はアスピリンの古典的な抗炎症効果に依存している可能性もある.大規模臨床試験の結果を薬効薬理から演繹的に説明しきれない部分に,アスピリン治療の難しさがある. -
抗炎症薬としてのスタチン
63巻8号(2008);View Description
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スタチンの多面的作用の1つである抗炎症作用は,LDL コレステロール低下作用と併せて心血管イベントの発症抑制に有効である.スタチンによるメバロン酸経路の抑制は,コレステロール生合成にかかわるファルネシルピロリン酸とともにタンパク質の翻訳後修飾の1つであるイソプレニレーションをつかさどるゲラニルゲラニルピロリン酸をも生成する重要な細胞内経路であるため,炎症の抑制など種々の細胞機能に影響を与える. -
カルシウム拮抗薬
63巻8号(2008);View Description
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冠動脈のプラーク形成とその不安定化には,血管壁における炎症および免疫学的機序の関与が示されている.カルシウム(Ca)拮抗薬には血管壁における炎症反応に抑制的に作用するものも報告されている.現在,実地臨床においては数多くのCa 拮抗薬を使用することが可能であるが,病態に応じて適切に使用するためにはCa 拮抗薬の基礎を十分に理解したうえで薬剤を選択することが望ましい.本稿では,Ca 拮抗薬の冠動脈疾患における抗炎症作用と治療効果について概説する. -
アンジオテンシン II 受容体拮抗薬
63巻8号(2008);View Description
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高血圧や糖尿病などのさまざまな冠危険因子が存在することで動脈壁に炎症性変化が発生し,その結果動脈硬化が出現する.また冠動脈に出現した炎症性変化が不安定プラークを生じ,それが破綻することにより急性冠症候群に至る.この過程で重要な役割を果たすのが,レニン・アンジオテンシン系(RAS)である.RAS を効果的に抑制することを目的として開発されたアンジオテンシンII 受容体拮抗薬の果たす役割は,今後さらに大きくなると考えられる. -
チアゾリジンの我が国における臨床研究— 冠動脈疾患病態改善作用—
63巻8号(2008);View Description
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炎症は冠動脈疾患病態に強く関与するため,冠動脈疾患治療の主たる標的の1つが炎症ストレスの抑制・軽減である.冠動脈疾患治療におけるチアゾリジンの効果を列挙すると, 1.炎症および糖・脂質代謝改善作用,耐糖能改善によらない 2.狭心症病態改善作用, 3.冠予備能および内皮機能改善作用, 4.脈波伝播速度や流量依存性上腕動脈拡張反応等の血管機能改善作用, 5.動脈壁肥厚抑制作用, 6.ステント内再狭窄抑制作用などである.
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【エッセー】
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- 代謝病の周辺(8)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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