最新医学

Volume 64, Issue 7, 2009
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特集【抗NMDA受容体脳炎】
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アプローチ:抗 NMDA 受容体脳炎— 新たな傍腫瘍性神経疾患の登場—
64巻7号(2009);View Description
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中枢神経細胞のNMDA 受容体に対する細胞膜抗体の産生によって発症する辺縁系脳炎の存在が明らかになり,注目されている.若年女性に好発し,卵巣奇形腫を合併することが多く,統合失調症様の精神症状,発熱,痙攣,四肢・顔面に特有のジストニア様の不随意運動,中枢性低換気を特徴とし人工呼吸器装着を余儀なくされ,意識障害が遷延するが,MRI 画像所見,髄液所見に乏しいこと,さらに重度意識障害は長期に及ぶものの,症状には自然寛解が見られることが特徴である. -
若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(AJFNHE)と抗 NMDA 受容体脳炎との関連
64巻7号(2009);View Description
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若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(AJFNHE)は,急性期に精神症状から意識障害,痙攣,中枢性低換気など極めて重篤な病像を呈し,遷延経過を示すも長期予後は比較的良好な経過を示し,抗グルタミン酸受容体ε2 抗体が高頻度に検出される脳炎として知られていた.最近Dalmau らは,卵巣奇形腫に合併した傍腫瘍性脳炎をまとめ,抗グルタミン酸受容体抗体であるNMDA 受容体NR1/NR2 ヘテロマー抗体が病因であることを明らかにした.本疾患はAJFNHE の臨床像と同一であり,その後AJFNHE 患者にて卵巣奇形腫が高率に検出され,両者はほぼ同一疾患と考えられる. -
若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(AJFNHE)の我が国における疫学調査
64巻7号(2009);View Description
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最近我々は,若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎(AJFNHE)の全国調査を行い報告した.その概要を示す.集積例は,若年女性に好発し,極めて均一の臨床像を呈し,従来AJFNHE として報告されたものと合致していた.今回の検討で,本症の年間発症率が人口100 万当たり0.33 であること,発症率に地域差がないこと,呼吸障害は入院時3割であるが,経過中に約7割に達し,人工呼吸器管理されていたこと,本邦における本症の治療や後遺症の実態,および腫瘍合併が約4割で確認され,卵巣奇形腫が多かったことを明らかにした.一方,少数例ながら男性例もあり,その臨床像は腫瘍の検出を除けばほぼ同一であった. -
抗 NMDA 受容体複合体抗体と抗グルタミン酸受容体ε2 抗体
64巻7号(2009);View Description
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NMDA 受容体に対する抗体には,複数のサブユニットからなるNMDA 受容体複合体を抗原として検出するものと,個々のサブユニットを抗原として検出するものがある.前者には[GluRζ1(NR1)+ GluRε2(NR2B)]を発現させたHEK 細胞を抗原とする抗体が,後者にはGluRε2 全長分子を抗原とする抗体などがある.卵巣奇形腫を伴う傍腫瘍性辺縁系脳炎の2/3 は,GluRε2 のN末端を認識する抗体を有している. -
抗 NMDA 受容体抗体からみた自己抗原の局在と意義
64巻7号(2009);View Description
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自己免疫性神経疾患において,細胞表面抗原に対する抗体を生じる群では血漿交換療法などに良好な反応を示すが,細胞質内・核内抗原に対する抗体を生じる群では抗体除去による神経症状の改善が乏しく,抗体での病態モデル作製が困難であるなど,抗原の存在様式が病態機序および治療反応性に関連すると考えられている.しかし,神経障害に及ぼす抗体の意義には不明の部分が多く,さらに基礎となる知見の集積が必要である. -
臨床症候からみた抗 NMDA 受容体脳炎の病態
64巻7号(2009);View Description
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抗NMDA 受容体脳炎は,主に卵巣奇形腫に関連して発症する若年女性に好発する急性脳炎であり,NMDA 受容体の細胞外成分に対する抗体を介して発症する.症候学的見地から,本抗体はNMDA 受容体を抑制することによって神経症状が出現すると推測してきた.しかし,本抗体存在下で細胞培養するとNMDA 受容体の数やクラスター形成が可逆的に減少することから,本抗体はシナプス後膜樹状突起におけるNMDA 受容体のクラスター形成を抑制し,NMDA 受容体機能を低下させると推測する. -
抗 NMDA 受容体脳炎の臨床症状の特異性
64巻7号(2009);View Description
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最近確立された疾患である抗NMDA 受容体脳炎は,症例の集積が進むにつれ,その特徴的な臨床像が浮き彫りとなってきた.その経過中に見られる特異な不随意運動や眼球運動障害,自律神経の不安定性,約半数あまりに合併する奇形腫などの腫瘍の存在,頭部MRI や脳波所見などから,代表的なウイルス性脳炎である単純ヘルペス脳炎とは比較的容易に鑑別できると考えられた.本稿では,これまでの報告例と自験4例の臨床症状を検討し,その臨床像の特異性を紹介した. -
腫瘍非合併例における抗 NMDA 受容体脳炎
64巻7号(2009);View Description
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卵巣奇形腫に合併する脳炎として発見された抗NMDA 受容体脳炎であるが,症例の蓄積につれ腫瘍非合併例の報告が増えている.腫瘍非合併例の予後は早期腫瘍切除例に比較すると悪く,脳炎が再発することも多い.長期経過後に卵巣腫瘍が明らかになる例も存在し,回復後も注意深く経過観察する必要がある.治療はステロイドなど免疫療法が施行され,有効な例が多いが,最適な治療法の確立に向けてなお一層の症例蓄積が望まれる. -
抗 NMDA 受容体脳炎の不随意運動
64巻7号(2009);View Description
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抗NMDA 受容体脳炎は,多彩な不随意運動が特徴的である.最も高頻度なのが口舌顔面筋の不随意運動であり,次いで四肢や体幹の舞踏病やアテトーゼ,ジストニア,筋強剛やトーヌスの亢進が認められる.これまで,グルタミン酸受容体に対する自己抗体が検出される疾患にはこのような不随意運動は認められない.抗NMDA 受容体脳炎で特異的に観察される理由として,NMDA 受容体に対する抗体認識の違いが原因かもしれない. -
抗 NMDA 受容体脳炎の精神症状— 統合失調症との比較—
64巻7号(2009);View Description
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抗NMDA 受容体脳炎は,グルタミン酸受容体の1亜型であるNMDA 受容体自己抗体による自己免疫性脳炎である.急性期には精神病症状を示すことから統合失調症と比較されることがある.しかし統合失調症の場合は, 1.てんかん患者にはほとんど発症しない(抗NMDA 受容体脳炎は痙攣を伴う), 2.幻覚・妄想の内容に特徴がある, 3.長期にわたり特異な経過をたどるなど,必ずしも一致しない点もある. -
抗 NMDA 受容体脳炎の MR Spectroscopy と MR Perfusion
64巻7号(2009);View Description
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抗NMDA 受容体脳炎のMR spectroscopy は,可逆性のN-acetylaspartate(NAA)の低下を示す.MR perfusion は急性期で全脳の高灌流を示し,回復期にはその高灌流は軽減する. -
急性抗 NMDA 受容体脳炎の脳波
64巻7号(2009);View Description
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急性抗NMDA 受容体脳炎の脳波所見を,過去の文献および自験2例での結果に基づいて一般の急性脳炎での所見と比較して概説した.急性期にはびまん性の徐波化を示す以外に,速波が消失する病態ではなく,さらに自験2例では速波のburst が徐波と律動的な複合を形成する,burst and slow complex を呈し,burst 部とslow 部で大脳皮質の興奮性の相違が示唆された.脳炎の病態把握と診断上,さらに多数例での検討が待たれる. -
抗 NMDA 受容体脳炎の治療
64巻7号(2009);View Description
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抗NMDA 受容体抗体は卵巣奇形種に随伴することが多く,傍腫瘍性神経障害の範疇に含まれる.従来,傍腫瘍性神経障害は治療抵抗性で予後不良と考えられてきたが,細胞膜抗原(NMDA 受容体)に対する抗体陽性の辺縁系脳炎は治療反応性があることが多い.抗NMDA 受容体脳炎の治療は,腫瘍摘出術,免疫療法,支持療法の3つに大別される.本稿では2008 年にDalmau らにより報告された100 例の抗NMDA受容体脳炎の解析結果を中心に,その治療について概説する.
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【エッセー】
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- 学会の旅・留学の旅−私の呼吸器病学−(7)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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