最新医学

Volume 65, Issue 8, 2010
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特集【肺高血圧症の最新診療早わかり】
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アプローチ
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「肺高血圧症の最新診療早わかり」オーバービュー
65巻8号(2010);View Description
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本特集「肺高血圧症の最新診療早わかり」の全体を展望した要約を記した.肺高血圧症の分類と鑑別診断法,肺高血圧症の疫学,問診と身体診察,胸部X線写真と心電図,心エコー図,右心カテーテル検査,エポプロステノール,ボセンタン,シルデナフィル,併用療法,新しい治療薬,肺移植,慢性肺血栓塞栓症に関して概説した.
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総説
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肺高血圧症の最新分類と鑑別診断の仕方
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2008 年に肺高血圧症臨床分類が改訂され,肺高血圧症は 1.肺動脈性肺高血圧症(PAH), 2.左心疾患による肺高血圧症, 3.肺疾患および/または低酸素による肺高血圧症, 4.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH), 5.原因不明の複合的要因による肺高血圧症の5群に分類された.この分類では,PAH に遺伝性PAH が追加され,慢性血栓症によるPH に対して「CTEPH」という疾患名が確定したことが特徴である. -
肺高血圧症の疫学
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平成20 年度の全国の原発性肺高血圧症の医療受給者は1,140 例であった.本邦の推定有病率は人口100 万人当たり8.92 人であり,年々増加していた.平成17,18 年に送付された臨床調査個人票653 例を対象として,年齢や性別,重症度を解析した.平均年齢は46.0±19.6 歳であり,高齢化してきている.男女比は全体では1:2.09と女性優位の発症を示した.各種疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症の中では,膠原病に伴う肺高血圧症が患者数としては最も多い.膠原病の中では全身性エリテマトーデス(SLE)が最も患者数が多いが,混合性結合組織病(MCTD)では高頻度に発症する.
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診断法のエッセンス
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問診と身体診察の要点
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最近,肺高血圧症の概念と治療法は大きな変貌と進歩を遂げ,さまざまな病態や治療法に対する理解が必要になってきた.しかし,診断の第一歩がその存在を疑うことであり,そのために問診と身体所見の評価が不可欠で重要であることは時代を超えて同様であり,特に新しい知見はない.早期発見のために特に重要な点は,前者では労作(運動)時の息切れと倦怠感の評価であり,後者では肺動脈拍動や肺動脈弁閉鎖音の亢進を検出することである. -
胸部X線と心電図からどこまで診断可能か
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肺高血圧症において,胸部X線と心電図はスクリーニングツールとして感度は必ずしも十分ではない.しかし,胸部X線では肺動脈拡大と末梢血管影の減少,右室拡大,局所の乏血所見などが見られ,心電図では右室肥大や右房負荷所見があり,それぞれ比較的特徴的な所見である.いずれも初診時に施行される検査であり,肺高血圧症を見逃さないよう,これらの所見に留意する必要がある. -
心エコー図検査での肺動脈圧ならびに右心不全の評価の注意点
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心エコー図検査は肺高血圧症患者の診療に必須であるが,その解釈には注意が必要である.肺動脈圧推定に三尖弁逆流血速度の計測は有用であるが,精度は必ずしも優れていない.右心不全評価に三尖弁輪運動や右室Tei インデックスなどが役に立つが,これもその他の検査法と総合しないと誤った判断に行き着きやすい.本稿では,心エコー図法を用いて肺高血圧症患者の病態を評価する際の注意点を概説する. -
右心カテーテル検査の施行法,注意点,解釈の仕方
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肺高血圧症における右心カテーテル検査は,診断および治療効果判定において必要不可欠な検査である一方,安全性も極めて高い検査である.本稿では,肺高血圧症症例に対してどのような項目をどのような手法で測定する必要があるのか,さらにシャント率の算出方法などを解説する.また,右心カテーテル検査の結果を評価する際には,肺動脈圧の評価のみならず右心不全の有無を的確に判定する必要がある.
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最新治療法のまとめ
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エポプロステノールの使用法,効果,副作用
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エポプロステノールは,肺高血圧症患者の生命予後を大幅に改善し,肺高血圧症治療における画期的な治療薬と言える.その一方,副作用の問題や感染などのリスク,および患者のQOL を制限するという問題もある.ゆえに,適応基準の判断や使用開始後の経過観察には細心の注意を要する.本稿では,エビデンスや我々の自験例も交え,エポプロステノールについて必要な内容を網羅できるよう努めた. -
肺動脈性肺高血圧症に対するボセンタン治療
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経口デュアルエンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタンは,エンドセリンA受容体とエンドセリンB受容体の両方に対するエンドセリンの結合を拮抗阻害することで効果を発揮し,血管収縮抑制作用,細胞増殖抑制作用,抗線維化作用,抗炎症作用などの薬理学的作用を有している.ボセンタンは,WHO 肺高血圧症機能分類II度およびIII度の肺動脈性肺高血圧症(PAH)症例に対しての使用がエビデンスレベルAで推奨されている.ボセンタンは多剤併用療法のみならず,単独療法のみでも安全に短期的な血行動態の改善をもたらす.また,長期的にも臨床症状,運動耐容能,生命予後を改善させることが報告されており,ボセンタンは軽症から重症までのPAH 症例に対して安全かつ長期的に有効性の期待できる薬剤である. -
肺高血圧症に対するシルデナフィルの有効性と安全性
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シルデナフィルは勃起不全治療薬として発売が開始されたが,そのターゲットとなるホスホジエステラーゼ5型(PDE5)は陰茎血管以外に肺血管にも多く分布しており,肺高血圧症にも極めて有効な治療薬であることが明らかとなった.我が国では肺動脈性肺高血圧症治療薬レバチオとして2008 年1月に承認され,その優れた臨床効果が注目されている.本稿ではシルデナフィルの有効性と安全性について,自験例の成績を交えて紹介する. -
併用療法の施行法およびその効果
65巻8号(2010);View Description
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近年,ボセンタン,シルデナフィルなどの肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬が相次いで認可になり,PAH 治療の選択肢は拡大してきている.しかしながら,各薬剤の単剤での効果には限界があり,併用療法の必要性が広く認識されてきている.いまだエビデンスの不足している分野ではあるが,近年では併用療法の有効性を示唆する報告も増えてきている.それらの報告や自験例をもとに,併用療法の施行法とその効果,さらには注意点について述べる. -
新しい治療薬の展望— タダラフィル,アンブリセンタン,トレプロスチニル,イマチニブなど—
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肺高血圧症の薬物治療はここ十数年で飛躍的に進歩し,病態の進展に関与するPGI2,エンドセリン,NO の3系統に作用する薬剤が使用可能となり効果を挙げている.近年ではそれぞれの系統において既存の薬剤の欠点を克服する新薬が開発され,また全く新しい機序の治療薬として分子標的治療薬も注目されている.本稿では,タダラフィル,アンブリセンタン,トレプロスチニル,イマチニブを中心に,肺高血圧症の新しい治療薬について概説する. -
肺移植の適応と成績
65巻8号(2010);View Description
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肺移植は終末期肺疾患患者に対する有効な治療法として確立しており,これまで約3万例の手術が行われている.肺移植の適応となるのは,慢性進行性肺疾患により生命予後が限定され,ほかに有効な治療手段がない患者である.特発性肺動脈性肺高血圧症は,肺移植国際登録においては全症例の3〜4%,本邦においては25% を占める主要肺移植適応疾患である.術後急性期には循環動態が不安定で管理が難しい症例が多いものの,肺移植による心肺機能の改善は顕著で,長期予後は良好である. -
慢性肺血栓塞栓症に対する手術治療:適応と成績
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肺高血圧を伴う慢性肺血栓塞栓症における肺血栓は,淡白色で肺動脈壁に固く付着した器質化血栓である.内科的治療は対症療法や予防的治療であり,根治療法としては外科的治療が必要である.最近になって手術成績が良好となった.手術方法として器質化血栓を肺動脈内膜とともに摘除することが必要であり,超低体温間欠的循環停止法を用いた肺動脈血栓内膜摘除術が行われる.この手術により,術後は臨床症状と呼吸循環動態が著明に改善する.
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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