最新医学

Volume 66, Issue 2, 2011
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特集【自己免疫疾患−分子を標的としたトランスレーショナルリサーチ−】
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座談会
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サイトカインを標的とした治療
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TNF
66巻2号(2011);View Description
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関節リウマチにおける炎症性サイトカイン,中でもTNF を標的とした生物学的製剤の開発と臨床応用は,トランスレーショナルリサーチが最も成功した代表例である.現在我が国ではTNF 阻害薬としてインフリキシマブ(IFX),エタネルセプト,アダリムマブの3剤が使用され,市販後全例調査によるエビデンスが構築された.今後は有効性予測や,現在のところIFX でのみエビデンスが示されている寛解後の薬剤中止に関する検討は,重要な課題である. -
IL-6
66巻2号(2011);View Description
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ヒト化抗IL-6 受容体抗体であるトシリズマブは,IL-6 とIL-6 受容体との結合を阻害してIL-6 シグナルを遮断する.全身のスクリーニングと感染予防によってIL-6 産生を促すような合併症をなくすように努めると,トシリズマブは関節リウマチ(RA)に高率かつ速やかに奏効し,早期に寛解導入することができた.また,二次無効も認めていない.RA における「持続的」炎症にはIL-6 シグナルが必要と考えられた. -
自己炎症疾患における IL-1 阻害療法
66巻2号(2011);View Description
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近年,周期性発熱を特徴とする炎症性疾患において,インフラマソームと呼ばれるタンパク質群の変異を原因とする自己炎症疾患の概念が確立され,IL-1 阻害療法のターゲットは関節リウマチから自己炎症疾患へと変わりつつある.また,これまでリウマチ性疾患に分類されてきた疾患の一部は自己炎症疾患へ組み入れられようとしており,IL-1 を標的とした治療には新たな展開が期待されている. -
IL-17 を標的とした関節リウマチの治療
66巻2号(2011);View Description
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IL-17 は活性化T細胞より産生され,関節リウマチ(RA)の滑膜細胞や単球に働いて各種炎症性メディエーター発現を促進する.さらに,直接的・間接的にヒト破骨細胞形成を促進し,骨破壊にも密接に関与している.IL-17 産生ヘルパーT細胞はTh17 細胞として,RA における重要性がマウス関節炎モデル,早期RA 患者で証明されている.現在抗IL-17 抗体が臨床試験進行中であり,今後の進展が期待されている. -
IL-12/23
66巻2号(2011);View Description
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IL-12 とIL-23 は,p40 サブユニットを共通に持つがその作用は異なっており,前者はTh0 細胞をTh1 細胞へ分化させ,後者はTh17 細胞の増殖維持を担っている.IL-23 からIL-17 へ至る免疫応答が,乾癬,関節リウマチ,多発性硬化症,クローン病などさまざまな炎症性疾患の病態形成に重要で,Th17 関連疾患として注目される中,p40 に対するモノクローナル抗体であるウステキヌマブが初めて実用化され,乾癬に用いられるようになった.
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細胞表面分子を標的とした治療
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CD20 と CD22
66巻2号(2011);View Description
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関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患の治療は,ステロイドや免疫抑制薬のような副作用の多い非特異的な治療が中心であった.しかし,病態形成に重要な役割を担う分子を標的とした生物学的製剤の台頭に伴い,治療が一変した.抗CD20 抗体を用いたB細胞除去療法は,幾つかの自己免疫疾患に対して高い臨床効果を示したが,海外でのSLE に対するリツキシマブの治験の失敗,重篤な日和見感染症の併発などの課題も析出した.かような現状に対して,抗CD22 抗体を用いたB細胞標的治療が注目されている. -
CD28
66巻2号(2011);View Description
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TNFαやIL-6 などのサイトカインを標的とした生物学的製剤が,自己免疫疾患治療に用いられるようになった.一方,細胞表面分子を標的とする生物学的製剤の市場投入は遅れたが,我が国でもT細胞補助刺激分子CD28 を標的とした抗リウマチ性生物学的製剤CTLA4-Ig が市販された.この薬剤は関節リウマチでの有効性が示され,薬効発現や副作用の面で既存薬と異なったプロファイルで注目される. -
BAFF/APRIL
66巻2号(2011);View Description
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1999 年に同定されたTNF ファミリー分子BAFF は,末梢B細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている.その過剰産生は自己寛容の破綻を誘導し,自己免疫疾患の病態形成に深く関与していることが明らかとなった.BAFF を分子標的とする生物学的製剤が開発され,全身性エリテマトーデスを対象に臨床試験が終了し,現在承認申請中である. -
LFA-1/ICAM-1
66巻2号(2011);View Description
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LFA-1/ICAM-1を標的とした抗体療法としてエファリズマブ(efalizumab)が知られている.エファリズマブはLFA-1 に結合することにより,炎症細胞の浸潤およびT細胞の活性化を抑制する.炎症性皮膚疾患である乾癬に臨床応用されたものの,進行性多巣性白質脳症の発症が報告されたため,使用中止となった.現在はこれらの分子を標的とした新たなモノクローナル抗体や低分子化合物の開発が進められている. -
スフィンゴシン1−リン酸受容体
66巻2号(2011);View Description
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フィンゴリモド塩酸塩(FTY720)は,スフィンゴシンと類似の構造を有する世界初のスフィンゴシン1−リン酸(S1P)受容体調節薬であり,最近,米国およびロシアにおいて多発性硬化症(MS)の治療薬として承認された.FTY720 は生体内でリン酸化され,S1P 受容体に作用してリンパ球の体内循環を制御し,自己反応性T細胞の中枢神経組織への浸潤を阻止することで薬効を発揮する.本稿では,FTY720 によるS1P 受容体を標的としたMS 治療について概説する.
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細胞内シグナル分子を標的とした治療
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JAK
66巻2号(2011);View Description
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関節リウマチ(RA)の治療は,TNF 阻害薬などの生物学的製剤の登場により治療目標は低疾患活動性〜寛解となり,最近ではより早期にRA を診断・治療することで治癒の可能性を示唆する知見も見られる.つまり,生物学的製剤はRA 治療にパラダイムシフトをもたらし,もたらし続けていると言えるだろう.しかし実際の診療においては,投与経路の煩雑さや経済的問題で,生物学的製剤の導入や継続に困難を来すことが少なくない.これらの問題点を解決可能な新規抗リウマチ薬として,最近,低分子化合物が注目されている.生物学的製剤が細胞外のサイトカインや細胞表面分子を標的とするのに対し,低分子化合物は細胞外からの刺激によって細胞内で活性化される酵素を標的とする.通常,半減期が数時間と短く,最近行われているRA を対象とした治療試験では生物学的製剤と同等の治療効果を示しており,新たなパラダイムシフト・治療革命の到来を予感させている. -
転写制御因子IκBζを標的とした Th17細胞制御
66巻2号(2011);View Description
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近年,IL-17を産生する新たなヘルパーT細胞サブセット「Th17 細胞」が同定され,関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患の病態形成に深くかかわることが明らかとなった.そのため,創薬展開に向けたTh17 細胞分化機序の解明が重要課題とされている.最近我々は,転写制御因子IκBζがTh17 細胞分化に必須であり,ROR 核内受容体との協調作用によりIL-17 産生を誘導するという新規メカニズムを見いだした.したがって,IκBζは自己免疫疾患に対する有望な創薬ターゲットとして期待される. -
免疫系における PI3K/Akt/mTORC1 経路と今後の展望
66巻2号(2011);View Description
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近年,免疫系におけるPI3K/Akt/mTORC1 経路の働きについて,興味深い知見が次々に得られている.例えばB細胞や樹状細胞のみならず,最近ではT細胞における働きについても明らかになりつつある.本稿ではこれらの新しい知見を簡潔にまとめ,PI3K/Akt/mTORC1 経路が自己免疫疾患の新しい治療標的となる可能性を示す. -
NF-κB
66巻2号(2011);View Description
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NF-κB は炎症機転で重要な役割を果たす転写因子である.炎症性サイトカインによるNF-κBの活性化(古典的経路)にはIKKβが関与し,抑制因子であるIκB はIKKβによりリン酸化され,プロテアソームで分解される.NF-κB 活性の制御にはIKKβ阻害薬やデコイ型核酸医薬が有望である.IKKβ阻害薬として開発された新規化合物も少なくないが,まだ臨床応用された薬剤はなく,有効性や安全性に関する今後の研究の進展が待たれる.
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【連 載】
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【対 談】
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【トピックス】
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生体分子イメージングで見る肥満脂肪組織リモデリング,慢性炎症・免疫異常のかかわり
66巻2号(2011);View Description
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最近の研究により,各種生活習慣病の背景には慢性炎症を基盤とした異常な細胞間作用が生体内で生じていることが明らかになってきた.我々は,一光子・二光子レーザー顕微鏡を用いた「生体分子イメージング手法」を開発した.本手法を肥満脂肪組織に適応したところ,肥満脂肪組織では脂肪細胞分化・血管新生が空間的に共存して生じ,微小循環では炎症性の細胞動態が生じていた.肥満脂肪組織にはCD8+T細胞が存在し,肥満・糖尿病病態に寄与していた.
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【今月の略語】
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