最新医学
Volume 66, Issue 3, 2011
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特集【がん幹細胞と支持細胞を標的とする薬剤の開発】
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座談会
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本論
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がん幹細胞に対する破骨細胞標的薬剤の役割—ビスホスホネート製剤,RANKL 阻害薬—
66巻3号(2011);View Description Hide Descriptionがんの増殖・浸潤・転移には,がん細胞と周囲環境の相互関係が深くかかわっている.最近,骨芽細胞や破骨細胞とがん細胞,特にがん幹細胞との関与が明らかになりつつある.破骨細胞阻害を目的に開発されたビスホスホネート製剤や抗RANKL 抗体などに抗腫瘍作用があることが,前臨床試験のみならず臨床試験でも明らかになってきた.今後,破骨細胞を標的とした薬剤による,がんや白血病に対する新たな治療戦略の確立が期待される. -
がん幹細胞研究の動向と治療標的としての将来性
66巻3号(2011);View Description Hide Description正常組織幹細胞が自己複製能・多分化能によって当該組織を再構築する能力を有することと同様に,がん幹細胞は腫瘍組織を構成するすべての腫瘍細胞の源となるために必要な生物学的性質を有しており,腫瘍組織の維持という役割のみならず,治療後のがんの再発や転移に深く関与していることが明らかになってきた.つまり,がん幹細胞という新規概念に基づいた治療戦略を組み立てることにより,「再発・転移を標的とした抗腫瘍治療」が期待できる.本稿では,急速な進歩を遂げているがん幹細胞の研究の動向と,がん幹細胞を標的とする新しい治療戦略について概説する. -
乳がんのがん幹細胞様集団を標的とする薬剤の開発
66巻3号(2011);View Description Hide Description乳がんにもがん幹細胞が存在すると言われて久しい.がん幹細胞は治療抵抗性に関与していると考えられ,がん幹細胞に対する治療法が開発されれば大きなブレークスルーになると期待されている.乳がんではサブタイプ別のがん幹細胞の起源の研究が注目され,またWnt 経路の阻害薬など乳がん幹細胞の制御に有望と考えられる薬剤が次々に報告されているが,現状では乳がんではいまだ厳密な意味でのがん幹細胞の定義が定まっていないことを認識しておく必要がある. -
白血病細胞の MDR1/ABCトランスポーターを標的とする薬剤耐性克服薬
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionABC トランスポーターには,MDR1 とその産物であるP糖タンパク,BCRP,MRP1 などがある.いずれも抗がん剤を細胞外に排泄する作用があり,その結果細胞内の抗がん剤濃度が低下し,抗がん効果が減弱する.急性白血病細胞にP糖タンパクが発現している症例は治療成績が悪く,白血病性幹細胞にもこれらのABC トランスポーターが存在する.耐性克服薬の有効性は報告によって一定しておらず,基礎的な耐性克服効果の検討が必要である. -
白血病幹細胞を標的とする薬剤開発—チロシンキナーゼ阻害薬を中心に—
66巻3号(2011);View Description Hide Description慢性骨髄性白血病(CML)は,BCR-ABL 遺伝子が原因で発症する造血幹細胞を起源とする腫瘍性疾患である.CML 細胞が有するBCR-ABL チロシンキナーゼの選択的阻害薬(TKI)イマチニブは,第1選択治療として優れた治療効果をもたらしたが,治療抵抗性やCML 幹細胞の残存という課題も明らかにした.第2世代TKI および高い耐性を有するT315I 変異体に有効な新規TKI の開発について検討し,CML 治療の将来像を探る. -
Hedgehog 阻害薬— Smo 受容体アンタゴニスト GDC-0449 —
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionHedgehog 経路は発生の段階での重要な働きのみでなく,がん化にも関係している.基底細胞がんや髄芽腫ではHedgehog 経路の異常は腫瘍成立のcritical pathway である.近年,幾つかのHedgehog 阻害薬の開発が進んでおり,そのうちの1つSmo 選択的阻害薬であるGDC-0449 は,第I相臨床試験で基底細胞がんに対して55% の奏効率を示した.そのほか,髄芽腫,大腸がん,卵巣がん,膵がん,小細胞肺がんなどを対象として臨床試験が進行中であり,期待が持たれている. -
Notch シグナルとその阻害薬の開発
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionNotch シグナルは,主要な細胞運命制御システムの1つである.T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)では約半数でNotch1 遺伝子変異が同定され,T-ALL の少なくとも一部はNotch シグナル依存性に増殖する.一方,乳がんや脳腫瘍などでは,がん幹細胞の維持にNotch シグナルが必須である.このためT-ALL に加え,固形がんのがん幹細胞を治療標的としたNotch 阻害薬開発が進められている. -
骨髄腫幹細胞を標的とする薬剤
66巻3号(2011);View Description Hide Description一見均一に見える骨髄腫細胞集団であるが,クローン性の増殖を示す細胞はごく少数である.骨髄腫幹細胞のマーカーはCD138−/CD19+/CD27+/CD38− で,メモリーB細胞の段階で染色体転座やNF-kB 活性化により骨髄腫幹細胞が生じ,骨髄微小環境において骨髄腫として発症すると考えられる.VLA-4 を介する骨髄間質細胞との接着が,骨髄腫幹細胞の細胞周期停止,薬剤抵抗性に重要である.従来の抗がん剤のみで骨髄腫幹細胞を駆逐することは難しいが,プロテアソーム阻害薬,IMiDs,HDAC 阻害薬,抗VLA-4 抗体などとの併用は有効と考えられる. -
リンパ腫に対する分子標的薬
66巻3号(2011);View Description Hide Description分子標的薬は大きく分けると抗体薬と低分子化合物の2種類からなり,キメラ型抗CD20 モノクローナル抗体(リツキシマブ)はB細胞リンパ腫治療に画期的な進歩をもたらした分子標的薬であり,その後,放射免疫療法薬であるイブリツモマブチウキセタンが導入されたが,いまだ多くの難治性リンパ腫が存在し,数多くの新規抗体薬および低分子化合物の臨床開発が進められている.本稿では本邦で開発中の抗リンパ腫新規分子標的薬について紹介する. -
グリオーマ幹細胞と TGFβ阻害薬剤の開発
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionTGFβは一般的には腫瘍抑制因子として知られており,上皮由来の腫瘍細胞をはじめとして多くの細胞に対して増殖抑制作用を示す.しかしながら,グリオーマ細胞などにおいては逆に腫瘍促進因子として作用する.その作用機序として,TGFβシグナルによる細胞増殖の促進作用に加え,近年ではグリオーマのがん幹細胞(グリオーマ幹細胞)の維持にもTGFβシグナルが寄与していることが明らかとなった.本稿では,グリオーマ幹細胞に対するTGFβシグナルの作用とそのメカニズムや,それらの作用を標的としたグリオーマの新規治療戦略の開発の現状について紹介する.
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トピックス
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循環血中がん細胞(CTC)
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionCTC は,原発巣や転移巣から遊離し,血中に浮遊する遊離がん細胞のことを指す.サンプル採取の簡便性から,予後マーカーや治療効果判定の手段として,すでに一部で臨床応用が始まっている.本稿では,この新しい診断ツールを臨床の適切な場面で用いるために,CTC の分子生物学的な位置づけと臨床的意義に関して,これまで分かっていることと今後の展望を概説する. -
末梢循環血管内皮細胞(CEC)と末梢循環血管内皮前駆細胞(CEP)
66巻3号(2011);View Description Hide Description化学療法薬,特に血管新生抑制薬の治療効果を予測するバイオマーカーとして,血管内皮細胞および血管内皮前駆細胞の有用性が報告されている.測定法は,免疫磁気ビーズ法とフローサイトメトリー法の2つに大別される.これまでの報告では,治療奏効群でのCEC 値は乳がんでは高値で,大腸がんでは低値を示した.CEC,CEP の検出マーカーの統一化および測定法の標準化が不可欠であり,各がん種別に大規模臨床試験による研究の集積が必要である. -
がん幹細胞のマーカーと Cancer Spheroid Complex
66巻3号(2011);View Description Hide Description1997 年に白血病幹細胞の存在が証明されて以来,さまざまな悪性腫瘍でがん幹細胞を同定する研究が進められ,現在までに多くのがんでがん幹細胞の存在が報告されてきた.これらの報告は,がんが少数の細胞により発生し維持されることを明らかにし,がん治療の標的としての重要性を示唆する.本稿では,がん幹細胞を識別する方法に焦点を当てて解説を行う.併せて,がん幹細胞に対する創薬への利用が期待される三次元spheroid 培養について考察する.
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【連 載】
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【対 談】
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【トピックス】
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ARDS 発症機序解明の新たな展開—新興ウイルス感染症における ARDS を中心に—
66巻3号(2011);View Description Hide DescriptionARDS は,肺組織の過剰炎症を特徴とし,人工呼吸を必要とするような重篤な呼吸不全を惹起する.近年,SARS,H5N1 鳥インフルエンザ,2009 年の新型インフルエンザをはじめとした新興ウイルス感染症によるARDS が問題となっている.本稿では,これらのウイルス感染症によるARDS の発症機構に焦点を当て,RNAi スクリーニング,マウス遺伝学などの近年技術進歩の目覚ましい手法を活用した研究について,私たちの研究成果を中心に最新の知見を紹介したい. -
結核研究の新たな展開—潜在性結核と結核菌:休眠現象の分子メカニズム—
66巻3号(2011);View Description Hide Description結核は,年間180 万人の命を奪う最大級の細菌感染症である.結核菌はヒトの寄生菌であり,中間宿主は存在しないことから,活動性結核に加え,病原体の源泉である潜在性結核の対処が疾患のコントロールに重要である.潜在期において結核菌は休眠しており,現行の薬剤に抵抗性である.休眠は,結核菌の長期間生存を保証する高次生命現象である.休眠のメカニズムを明らかにすることが,結核の抜本的対策に寄与すると考えられる.
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【今月の略語】
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