最新医学
Volume 66, Issue 4, 2011
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特集【加齢に伴う内分泌代謝疾患】
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座談会
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特集【加齢に伴う内分泌代謝疾患】
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加齢がインスリン分泌に与える影響
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢に伴い,耐糖能は低下し糖尿病罹患率は増加する.高齢者では食後高血糖を来しやすいという特徴から,加齢に伴う耐糖能低下の機序として,インスリン分泌障害とインスリン感受性の低下の両者が考えられている.加齢に伴うインスリン分泌障害の機序においては,ミトコンドリアの変化,酸化ストレスや小胞体ストレスの増大などが関与している可能性が高いものの,膵β細胞での直接的な証明はなされていないのが現状である. -
加齢とインスリン抵抗性
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢とともに増加する耐糖能異常の一因として,インスリン抵抗性の増加が挙げられる.加齢が肝臓や骨格筋のインスリン感受性を障害するのではなく,加齢に伴う肥満,運動不足,エネルギー消費の減少などがインスリン抵抗性を助長すると考えられている.したがって,これらの増悪因子を予防する食事・運動療法が加齢に伴うインスリン抵抗性の改善にも有効である. -
加齢と脂質
66巻4号(2011);View Description Hide Description高齢化社会を迎えた我が国において,加齢がもたらす脂質異常症および動脈硬化性疾患リスクへの影響をコントロールすることは重要である.また,女性では閉経後にLDL コレステロールが上昇することが知られており,平均寿命は女性のほうが長いことからも,高齢女性に対する対応も考慮しておかなくてはならない.現在,スタチンによるLDL コレステロール低下療法は男女の早期高齢者においての有用性が証明されている. -
加齢と肥満
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢に伴い骨格筋量は減少,脂肪量,特に内臓脂肪量は増加し,中高年になると肥満者の割合は増加する.この体組成の変化には,摂取エネルギー過多や身体活動量の低下だけでなく,基礎代謝の低下,成長ホルモンやテストステロン分泌低下など,加齢に伴う内分泌機能の低下も関与する.今後増加が予想される高齢者肥満をどうとらえ,どの程度介入すべきか,ホルモン補充療法は有効かなど幾つかの疑問も残り,さらなる検討が待たれる. -
間脳下垂体
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢に伴い,エストロゲンは劇的に,またテストステロン,GH およびIGF-I,DHEA およびDHEA-S は緩徐に分泌が減少する.バソプレシンは腎での反応性が低下する.ホルモン補充療法の意義は,更年期障害の症状改善についてのみ確立している.視床下部ニューロンは,細胞群ごとに固有の経年変化のパターンを有しており,ニューロン数が経年的に減少する群,不変の群,増加する群がある.経年変化に性差がある群も存在する. -
甲状腺
66巻4号(2011);View Description Hide Description高齢者においては,甲状腺機能低下症ならびに甲状腺機能亢進症の臨床症状がはっきりしない場合が多く,ときに診断が困難な場合がある.しかし,加齢に伴って潜在性を含む甲状腺機能低下症の頻度は上昇し,甲状腺機能亢進症も決して少なくはないため,QOL の維持,認知機能保持,心血管疾患の予防の観点からも,積極的に甲状腺機能検査を行うべきと考えられる.一方最近,甲状腺機能低下傾向を示す超高齢者は死亡率が低いことが報告され,今後の研究に注目が集まっている. -
副甲状腺と代謝性骨疾患
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢による内分泌代謝障害の多くは,カルシウムなどのミネラル代謝や骨代謝に大きな影響をもたらす.その結果,骨量の減少が生じ,骨折リスクが高まる.加齢によるミネラル代謝障害の機序には未解明な問題が多く残されており,今後の検討課題である. -
加齢と副腎皮質ホルモン
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢に伴い,副腎皮質網状層からのDHEA およびDHEA-S 分泌は20~30 歳代でピークとなり,その後は加齢とともに持続的に低下する(Adrenopause).DHEAは骨密度や筋力の低下,内臓脂肪,糖尿病などを抑制するアンチエイジング効果が知られている.糖質コルチコイドのコルチゾールは加齢による変化はない.鉱質コルチコイドのアルドステロンは,加齢とともにレニン・アンジオテンシン系が低下するために,基礎分泌量や食塩制限などの刺激に対する反応性が低下し,ときに低ナトリウム血症の原因となる. -
去勢抵抗性前立腺がんにおける男性ホルモンの意義
66巻4号(2011);View Description Hide Description前立腺がんは男性ホルモン依存性であるが,進行症例では各種ホルモン療法後にも病勢進行することが多く,去勢抵抗性前立腺がんとして名称が統一された.この状態でも,リガンド依存性・非依存性のアンドロゲン受容体の活性化が認められる.副腎性アンドロゲンの重要性が注目され,合成阻害(CYP17 阻害薬)や結合・核移行阻害(MDV3100)による新規薬剤が開発された.去勢抵抗性前立腺がんの新規ホルモン療法として期待されている. -
卵巣の老化と代謝性疾患
66巻4号(2011);View Description Hide Descriptionエストロゲン受容体は性腺ばかりでなく,中枢神経,骨,血管,肝臓,腎臓など生命の維持に必要な臓器に存在し,それぞれ重要な生体機能調節に関与している.加齢に伴う卵巣機能の低下は,女性に恒久的な月経の停止をもたらすばかりか,これらの臓器の生理作用に影響し,骨粗鬆症,脂質代謝異常,認知力低下などの高齢女性に特有の疾患の要因となる.女性におけるエストロゲンの生理作用を理解することは,閉経女性の健康維持や増進,さらには疾患の予防を推進していくうえで重要である. -
循環器(ナトリウム利尿ペプチド)
66巻4号(2011);View Description Hide Descriptionナトリウム利尿ペプチドは,心臓から分泌されて血管弛緩作用と腎での利尿を促進するペプチドホルモンである.特に血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度は,心不全患者の重症度評価の指標として有用性が確立している.高齢者では腎機能障害の合併に伴ってBNP のクリアランスが低下し比較的高値を示すが,血中BNPは高齢者の予後予測因子として注目されている.また,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は高齢心不全患者の治療においても有効である. -
加齢と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)について
66巻4号(2011);View Description Hide Description加齢に伴ってメタボリックシンドロームが進行し,肝臓においては脂肪肝からNASH へと進行する.NASH は,有効な治療がなされない場合は肝硬変,肝がんへと疾患が進む.その病態機序については不明な部分も多い.また,病態進展において加齢の影響は無視できない因子である.基礎研究においては加齢,加齢に伴うテロメアの変化,SIRT タンパク質は,肝臓の脂肪化,さらに炎症,肝障害,肝再生,発がんに重要な変化を及ぼすことが明らかになってきた.加齢のNASH 進展に与える機序を明らかにすることで,新たな予防法,治療法の開発が可能になる. -
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)遺伝子
66巻4号(2011);View Description Hide Description一般的に遺伝子の発現は,ヒストンのアセチル化と脱アセチル化により制御されており,アセチル化はHAT,脱アセチル化はHDAC によって修飾を受けている.本稿では,HDAC の分類,生物学的意義,神経変性における役割に関して解説する.また,クラスIII HDAC であるサーチュインファミリーに関して最新の知見を紹介する.
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【連 載】
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【トピックス】
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原発不明がんのガイドライン
66巻4号(2011);View Description Hide Description原発不明がんの診療においては,治癒可能な患者群,予後良好な患者群を的確に抽出するための系統立った検査計画が求められる.また本疾患は多様ながん種を含んでおり,それぞれの病態に応じた治療法を選択していく必要がある.本稿では,不均一な疾患群から成り立つ原発不明がんに対して適切な診療を行っていくための指針を述べる. -
新規 Treg 細胞による自己免疫制御
66巻4号(2011);View Description Hide DescriptionCD4+CD25+Treg は自己免疫寛容の根幹を担っていると考えられるが,ヒトで頻度の高い自己免疫疾患との関連はよく分かっていない.おそらくCD4+CD25+Treg 以外のTreg も,自己免疫寛容の維持に寄与していると推測される.最近,制御性活性を持つT細胞サブセットが多く報告されてきており,T細胞レベルでの多様な自己免疫制御機構の一端が分かってきている.
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【今月の略語】
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