最新医学

Volume 66, Issue 7, 2011
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特集【大動脈疾患の最新知見】
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座談会
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特集【大動脈疾患の最新知見】
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総論
66巻7号(2011);View Description
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大動脈解離・大動脈瘤は,一部の遺伝性疾患を除き,典型的な動脈硬化性疾患である.発症までのメカニズムには不明な点が多いが,中膜が2層に剥離する大動脈解離は中膜変性や大動脈壁のvasa vasorum の破綻などによって発生し,大動脈瘤は内膜から中膜に存在する粥状動脈硬化,中膜弾性線維の破綻と平滑筋細胞の萎縮・アポトーシスなどによって瘤形成が起こる.重症例ほど多彩な症状で来院するが,CT を用いた迅速な画像診断と降圧療法を基本とする的確な大動脈置換術,ステント留置術が急性期より施行され,救命率は向上した.今後,病病連携を中心とした患者受け入れ体制の確立が望まれる. -
大動脈解離と大動脈瘤の病理
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大動脈解離,大動脈瘤の病因に関して,動脈硬化性以外の病因が明らかにされつつある.最近では大動脈壁の結合組織の構成要素や平滑筋細胞の収縮タンパク質の遺伝子変異例が報告されてきており,Marfan 症候群のfibrillin–1 やLoeys–Dietz 症候群のTGFβ受容体,平滑筋αアクチン2や平滑筋ミオシン重鎖11 などが原因タンパク質として同定されている. -
大動脈解離の診断:1.臨床兆候
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急性大動脈解離は誤診率が高く,急性期における死亡率も高い.その理由の1つは多彩な臨床徴候である.本疾患の診断のために有用な臨床徴候は,胸背部痛,高血圧,血圧の左右差(20mmHg 以上),移動して引き裂かれるような痛み,などである.また,胸背部痛を訴えた意識障害の患者は急性大動脈解離を想起すべきである.詳細な病歴聴取と丁寧な診察で本疾患を疑うことが,速やかな診断への早道であると考えられる. -
大動脈解離の診断:2.エコー
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大動脈解離の診断には,造影CT 検査が広く用いられている.心エコー図は非侵襲的な診断法で,救急外来やベッドサイドにおいても使用可能であり,その診断や重大な合併症の確認,血行動態の評価など,さまざまな役割を担っている.経胸壁および経食道心エコー図法では,アプローチ法によって大動脈の観察領域が異なるため,その特徴を理解し,臨床現場で用いることが重要である. -
大動脈解離の診断:3.MDCT・MRI
66巻7号(2011);View Description
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大動脈解離の診断において,CT やMRI は欠くことのできない非侵襲的診断法である.さらに近年の画像診断の進歩は目覚ましく,CT ではmultidetector–row CTが,そしてMRI では高磁場装置に加えてさまざまな撮像法が開発されるに至り,両検査法の役割は,「単なる診断法としての位置づけ」から「治療支援画像を提供する検査法」へとパラダイムシフトしつつある. -
大動脈解離の診断:4.バイオマーカー
66巻7号(2011);View Description
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大動脈瘤ならびに大動脈解離は,成人で見られる代表的な大血管の疾患である.ともに急性発症するため,迅速な診断法の開発は急務である.本稿では大動脈解離を中心に,大動脈瘤まで広げた大動脈疾患(急性)全般の診断法の研究開発の現状と,今後の可能性について概説する. -
急性大動脈解離の内科治療および合併症とその対応:内科の役割
66巻7号(2011);View Description
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急性大動脈解離の治療には,Stanford 分類に基づいて,A型解離は緊急手術,B型解離は内科治療という方針がとられる.しかしながら,合併症を有するB型解離は予後不良であるため,近年,ステントグラフトによる治療が施行されてきている.一方で,偽腔閉塞型という異なった形態の解離が存在し,別の治療方針がとられることが多い.特にA型偽腔閉塞型の治療方針には,内科治療をするべきか,多くの議論がある. -
大動脈解離の外科治療:1.A型解離(冠動脈灌流障害,脳灌流障害合併)
66巻7号(2011);View Description
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臓器灌流障害を合併した急性A型解離の手術成績はいまだ不良である.今回は灌流障害のうち,冠動脈灌流障害と脳灌流障害について述べる.いずれも術前に灌流障害発生の有無や虚血程度の診断に困難な点も多く,救命には早期手術による灌流障害の改善が必要である.しかし致死的な高度虚血が存在すると判断した症例では,大動脈手術に先行して冠動脈血流はカテーテル治療,脳血流は脳動脈灌流法で早期に再灌流することを考慮すべきである. -
大動脈解離の外科治療:2.B 型解離
66巻7号(2011);View Description
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急性B型解離においては,破裂や灌流不全などの合併症を有する10~20% の症例のみが手術やステントグラフト治療などの緊急外科治療対象となる.緊急手術成績は依然として不良であり,最近では後者が第1選択となりつつある.一方,慢性解離においては,ステントグラフト治療は新たな解離の発生,遠隔期の解離内膜破綻,認可デバイスの限界などの問題もあり,いまだ一般的ではなく,左開胸下の胸部下行・胸腹部置換が一般的である. -
大動脈瘤の分子病態
66巻7号(2011);View Description
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大動脈瘤は,無症状のまま進行し放置すれば破裂死に至るため,この破裂死を回避することが大動脈瘤治療の最大の目的である.現在のところ,物理的に破裂を防止する外科的手術しか有効な治療選択肢がないため,病態や病因に基づく新しい内科的治療法の開発が望まれている.近年ようやく,大動脈瘤の病態生理とその分子機序に関する知見が蓄積されつつある.本稿では,大動脈瘤の分子病態について概説するとともに,臨床応用への展望についても言及する. -
大動脈瘤の診断と治療
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大動脈瘤は全身動脈硬化病変の一部であることが多く,集約的治療を要する.手術数は年々増加しており,術前評価の進歩が安全な治療を可能にする一方,ステントグラフトの普及,直達手術とのハイブリッド療法,術中オープンステントの併用とデリバリーシステムの開発など,多彩な治療法も工夫されている.脳保護にも改良が行われ,従来手術困難とされていた大動脈瘤に対しても,安全に治療を行うための努力が続けられている. -
大動脈瘤に対するステントグラフト治療
66巻7号(2011);View Description
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大動脈拡張病変に対する治療は,従来より人工血管を用いた置換手術がその中心であったが,病変部位によっては体外循環を要したり,創が大きくときに出血量が多いなど,過大な侵襲を患者に与えることがある.本疾患においては,手術侵襲の低減は治療成績を向上させるうえで必要不可欠であり,最近の低侵襲治療として注目されている血管内挿型人工血管(ステントグラフト)を用いた血管内手術(ステントグラフト内挿術)は,ここ15 年で急速な進歩を遂げている.本法は血管外科領域での大動脈瘤に対する有効な治療法の1つとして,今後さらなる展開が期待されている. -
非動脈硬化性遺伝性疾患:1.Marfan 症候群と関連疾患
66巻7号(2011);View Description
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Marfan 症候群は,大動脈病変,眼症状,骨格異常を主徴とする常染色体優性遺伝疾患である.原因として結合組織を構成するfibrillin 1 の遺伝子異常が同定されており,またTGFβの活性化の関与も判明してきている.従来の身体的特徴をもととした診断基準から,原因遺伝子や分子メカニズムを考慮した新基準に移行しつつあり,類縁疾患の概念の確立や診断・治療方法の進歩が期待される. -
非動脈硬化性遺伝性疾患:2.非動脈硬化性炎症性疾患:高安動脈炎ほか― 大動脈炎症候群のバイオマーカーと画像診断を中心にして―
66巻7号(2011);View Description
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加齢やメタボリックシンドロームが原因となる動脈硬化以外に,自己免疫疾患や感染など炎症性疾患により大動脈炎が惹起される.高安動脈炎のほかに巨細胞性動脈炎,IgG4 関連大動脈炎,血管ベーチェット病,梅毒性動脈炎などが挙げられる.発症頻度がまれである点でこれらは共通する.本稿では高安動脈炎のバイオマーカー・画像診断の最新の話題を中心とし,非動脈硬化性炎症性疾患に包含される大動脈炎について概説する.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(3)診断と分類
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およそ100 年前のクレペリンによる分類を参照したうえで,うつ病を3つのタイプに分類した.タイプAは,精神病性の特徴を伴うもので,精神機能のうち知・情・意のすべてが侵される重症の病態,タイプBは,いわゆる「軽症内因性うつ病」であり,感情あるいは気分の部門だけが侵される軽症の病態,タイプCは,いわゆる「神経症性うつ状態」,「抑うつ性パーソナリティ」などで,軽症だが慢性的な病態である.さらに現代では,タイプDとでも呼ぶべき,一過性の悲哀反応やストレス反応までもうつ病と呼ぶ傾向があり,批判を受けている. -
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【トピックス】
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NBI 内視鏡による咽頭・食道がんの診断と内視鏡治療
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内視鏡技術の進歩によって,咽頭・食道領域のがんの早期発見が可能となった.特に,狭帯域光技術を用いたNarrow BandImaging(NBI)の登場により,咽頭・食道の内視鏡診断は飛躍的に進歩し,臓器温存・機能温存が可能な内視鏡治療の適応症例は今後さらに増加していくものと思われる.本稿では,NBI 内視鏡がもたらした咽頭・食道領域の内視鏡診断と治療の新たな流れに関して解説する. -
進行性多巣性白質脳症 Update
66巻7号(2011);View Description
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進行性多巣性白質脳症(PML)は,JCウイルスによる中枢神経脱髄性疾患である.通常,免疫が高度に障害された状態のもとで発症する.多くは,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を基礎疾患として発症するが,我が国では血液疾患,特に移植関連での発症数が多い.最近,薬剤誘発性PMLの報告が増加している.PML の生命・機能的予後は極めて悪い.特異治療法はなく,早期に免疫を回復することが最初のステップであり,早期診断に努めることが重要である.
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【症 例】
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【今月の略語】
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