最新医学

Volume 66, Issue 9, 2011
Volumes & issues:
-
特集【がん薬物療法のバイオマーカー】
-
-
-
座談会
-
-
-
特集【がん薬物療法のバイオマーカー】
-
-
バイオマーカーを用いたがん第II相試験のデザイン
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
従来の殺細胞薬に対する臨床試験では比較的大きな集団が試験対象とされてきたが,分子標的薬の臨床導入が一般化する中,適切な投与対象を意識しながら臨床試験を計画することの重要性が高まっている.本稿では,バイオマーカーの利用を前提としたがん第II相試験のデザインについて概説する. -
薬力学的バイオマーカーと POC 研究
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
分子標的薬治療の臨床開発が飛躍的に増加するのに伴い,早期臨床試験においてPOC 研究および薬力学的バイオマーカー研究の重要性が明らかになってきた.特に,初めてヒトに投与するようなメカニズムの分子標的薬の場合に有用と考えられる.薬力学的バイオマーカーとPOC 研究は,薬剤がヒト体内で標的分子に作用している科学的根拠を与え,効果をモニターすることおよび投与量・治療スケジュール決定などに寄与できる可能性がある. -
体外診断用医薬品の開発と薬事要件
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
個別化医療が最も進んでいるがん領域では,分子標的治療薬の登場により,バイオマーカーの臨床意義が確立され,医薬品とバイオマーカーによる診断薬の同時開発が試みられている.しかし,診断薬の開発や薬事要件については,医薬品ほど知られていないのが現状である.今回,体外診断用医薬品について,その一般的な開発および薬事承認,保険適用プロセスを紹介するとともに,コンパニオン診断薬開発における課題についても考えてみたい. -
臨床で用いられるがん分子標的薬のバイオマーカー:HER2,KRAS
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
乳がんおよび胃がんにおけるHER2 過剰発現,結腸・直腸がんにおけるKRAS 遺伝子変異は有用なバイオマーカーであり,日常臨床においても汎用される.HER2 陽性乳がんはトラスツズマブ,ラパチニブをはじめとした抗HER2 療法により予後が向上し,他の抗HER2 薬についても開発が進められている.HER2 陽性胃がんはトラスツズマブの併用による生存期間の延長効果が示された.KRAS 遺伝子変異の有無は結腸・直腸がんの抗EGFR 抗体の効果予測因子として用いられ,変異別の意義についても探索が進められている. -
肺がん治療におけるがん分子マーカーと分子標的治療―EGFR 遺伝子変異と EML4–ALK 融合遺伝子の役割―
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
肺がん領域では,EGFR チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR–TKI)であるゲフィチニブ,エルロチニブの効果予測因子としてEGFR 遺伝子変異が最も有力であることが示され,すでに広く臨床応用されている.近年,EML4–ALK 遺伝子も肺がんの新たなバイオマーカーとなることが示され,EML4–ALK 阻害薬であるクリゾチニブの有効性が第 I / II 相臨床試験で示された. -
Cytotoxic Agents のバイオマーカー
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
殺細胞性抗がん剤は分子標的薬と異なり,作用メカニズムが十分解明されていないものも多く,そのため,その薬効を予測するバイオマーカーは開発途上の段階である.しかしながら,チミジル酸合成酵素(TS)は最も研究が行われているバイオマーカーの1つであり,5–FU,S–1 やペメトレキセドの治療標的であるだけでなく,効果予測因子として認識されつつある.そのため,今後実臨床へ向けたアッセイ法のvalidationは急務であると考えられる. -
がんにおけるゲノムコピー数異常とその解析
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
がんの発生に大きく関与しているゲノム異常の1つに,遺伝子の増幅,欠失といったゲノムのコピー数異常が挙げられる.歴史的にこれらをランドマークに数多くのがん関連遺伝子が同定され,またがん遺伝子増幅によるがん遺伝子産物の過剰産生を治療標的分子としてとらえることで,トラスツズマブなどの分子標的治療薬が開発されてきた.本稿ではゲノムのコピー数異常を解析する方法として,アレイCGH について概説する. -
ゲノム薬理学:SNP 解析
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
より効果が高く,より有害事象を軽減させることが,薬物治療にとって最も重要な課題である.近年,ゲノム薬理学によるゲノムバイオマーカーの探索が進み,日常臨床でも薬剤応答,有害事象の推定が行われ,治療の個別化がなされている.その中でもSNP 解析は定性的で再現性も高いことから,有用なゲノムバイオマーカーである.本稿ではゲノム薬理学,特にSNP 解析について概説する. -
プロテオミクスによるバイオマーカー研究
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
タンパク質バイオマーカー研究パイプライン,薬剤関連バイオマーカー研究例,課題と今後の方向性を示す.妥当性検討へ橋渡しする検証段階でのGo/No Go 判定が開発を効率化する.新規検証手法のSRM アッセイやMS イムノアッセイについて紹介する.臨床現場での実用化において,臨床試料の質,解析手法の堅牢性・再現性・定量性,臨床的意義が十分反映された研究デザインの構築など評価すべき要項があり,Discovery Science とRegulatory Science の協調が不可欠である. -
末梢循環がん細胞(CTC)計測技術のフロンティア
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
近年,最新のバイオテクノロジーや微細加工技術を応用した末梢循環がん細胞(CTC)検出技術が開発され,CTC 測定法の診断,創薬への展開が期待されている.本稿では,現状でのCTC 検出のための技術開発の最先端について紹介させていただくとともに,これらの技術の課題と今後の定量的計測への方向性について議論させていただく. -
Circulating Biomarker
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
進行がんの薬物療法の効果予測因子として,血液成分を用いる試みがなされている.血液成分は腫瘍由来のDNA,タンパク質を含んでおり,バイオマーカーのソースとして有望である.血液はすべての症例から容易に,繰り返し採取可能であり,採取に伴う侵襲性が極めて低い.治療直前に採取可能であり,モニタリングも極めて簡便である.本稿では,血液を主としたcirculating biomarker の近年の研究・開発動向について概説したい. -
半網羅的体細胞変異解析と個別化医療
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
分子標的治療が臨床導入されるに伴い,バイオマーカーに基づく個別化医療が推進されてきている.体細胞変異は定性的で普遍性を持つマーカーであり,適応症例の層別化を考えるうえで非常に有望なパラメーターである.体細胞変異に関する知見が蓄積するに伴い,その測定法・検査法も,単一遺伝子/変異へのアプローチから複数遺伝子/変異への半網羅的アプローチへ,さらには全ゲノムアプローチへと進展していくであろう. -
腫瘍組織バンク
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
腫瘍組織バンクは,治療開発において有用な手段である.基礎研究者と臨床医が協力してシステムを構築する必要がある.またシステム構築において,検体の質を維持することや,臨床情報との連結を可能にすることは非常に重要である.さらに,バンキングされた組織を用いて遺伝子解析を行い,その結果をフィードバックすることで,患者の治療選択にも役立つ可能性がある.
-
-
【連 載】
-
-
現代社会とうつ病(5)うつ病の遺伝環境相互作用
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
近年うつ病発症の分子的機構が解明されつつあり,DNA メチル化などのエピジェネティックな変化とうつ病との関係が特に注目されている.エピジェネティックな変化とは,遺伝子の塩基配列の変化を伴わない後天的で可逆的な変化であり,人生のごく初期における環境要因の影響を受け,遺伝子発現プログラミングの安定的変化として生涯を通じて維持される.本稿では,エピジェネティックな変化とうつ病との関係に焦点を当てて論ずる. -
-
-
-
トピックス
-
-
新しい遺伝性筋萎縮性側索硬化症
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
我々は,家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の新たな原因遺伝子optineurin(OPTN)を発見した.OPTN 変異を伴うFALS 患者の臨床・病理所見は,孤発性ALS(SALS)と類似していた.抗OPTN抗体による免疫組織化学では,SALS およびSOD1 変異を伴うFALS の細胞質内封入体が陽性であり,OPTN はSALS,SOD1–FALS の病態にも関与している可能性が示唆された.一方,FALS で認められた変異OPTN は,NF–кB に対する抑制機能を失っていた.今後さらにOPTNの機能解析を進めることが,ALS の病態解明と治療法の開発に重要である. -
腎細胞がんの新しい分子標的療法
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
血管新生阻害作用を有する分子標的薬であるソラフェニブとスニチニブ,mTOR阻害薬であるテムシロリムスとエベロリムスが,進行腎細胞がんの治療薬として承認された.薬剤の適応と有害事象を十分考慮したうえで,患者の年齢,リスク分類,併存疾患,治療歴,転移臓器,組織型などを考慮に入れた個別化医療の傾向が高まっている.
-
-
【総 説】
-
-
アルガトロバン高用量療法の脳血管再開通メカニズムについて
66巻9号(2011);View Description
Hide Description
アルガトロバン高用量療法前後でMRA により責任血管の変化を確認できた脳梗塞16例について検討し,16 例中15 例と高率に血管再開通を確認した.この高率な血管再開通のメカニズムについて,血管内皮やトロンビンならびにt–PA やアルガトロバンなど現在までに解明されている作用をもとに,血管再開通について考察した.その結果,トロンビン作用を完全に抑制するアルガトロバン高濃度を投与すると,血栓中のトロンビンで抑制されていた血管内皮がt–PA を放出し血栓を溶解すると考えた.すなわち,アルガトロバン高用量療法は血管内皮を介したt–PA 療法であると考え,そのメカニズムを提示した.さらにアルガトロバンがトロンビン活性を抑制するため,血管内皮同士がタイトジャンクションを構築し血管壁も強固となり,血管再開通時出血の危険性が極めて少なくなると考えた.そのことが,発症から24 時間以上たってからアルガトロバン高用量療法で治療した5例でも血管が再開通し,臨床上5例とも有効以上であったことを立証していると考えた.一方,t–PA 療法では血栓溶解で流出したトロンビンが血管壁を脆弱にし血液脳関門を破壊するため,出血の危険性が非常に高くなると考えられる.アルガトロバン高用量療法は血管内皮を介した間接的t–PA 療法と言える治療法であり,t–PA 療法で最大のリスクである血栓溶解で大量に流出するトロンビン活性を抑制する.したがってトロンビン活性を完全に抑制するアルガトロバン高用量療法は,脳梗塞治療法として最適と考える.
-
-
【今月の略語】
-
-