最新医学

Volume 67, Issue 1, 2012
Volumes & issues:
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特集【糖尿病とその合併症の成因-最新の知見】
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座談会
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総論
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ゲノムと2型糖尿病―GWAS による最新の知見―
67巻1号(2012);View Description
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これまで50 弱もの2型糖尿病や関連形質に関連する多型が全ゲノム関連解析で同定されてきた.大多数が欧米の民族を対象として見つかってきたが,日本人を対象とした解析ではKCNQ1,UBE2E2,C2CD4A/B などが2型糖尿病感受性遺伝子として報告されている.今後は低頻度の多型も含めた関連解析やエピゲノム解析などの結果も統合することによって,新規の2型糖尿病感受性遺伝子の同定や,既知の領域についてのファインマッピングが進められていくことが期待されている. -
エピゲノムと糖尿病
67巻1号(2012);View Description
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細胞核内のクロマチン構造や染色体の構築の制御には,塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現を調節するエピゲノム修飾(DNA のメチル化やヒストンのメチル化・アセチル化など)が重要である.エピゲノム修飾はさまざまな疾患の発症に密接に関与し,特にがん発症におけるがん抑制遺伝子のDNA メチル化の役割について多く研究がなされている.糖尿病に関しても,エピゲノム修飾の関与を示唆する知見が得られている. -
Regulatory RNA と糖尿病
67巻1号(2012);View Description
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ゲノム科学の進歩により新規のRNA が多数発見されている.特に,microRNAと呼ばれる小分子RNA は,1つの分子が多くのmRNA の発現を制御し,また,長鎖ながら明らかなタンパク質をコードしないnon–coding RNA は,エピゲノム制御を含む多彩な作用を有する.これら「機能性RNA」と糖尿病・糖代謝とのかかわりはまだ断片的にしか理解されていないが,遺伝・環境相互作用など糖尿病の病態の本質にかかわる可能性もあり,今後の展開が非常に注目される. -
メタボロームと糖尿病
67巻1号(2012);View Description
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近年の分析技術の発達により,従来の1分子の測定から,数百から数千というオーダーの代謝物の一斉解析が可能となり,メタボロミクスという分野が急速に発展してきた.生体内の代謝産物の恒常性が破綻した状態とも言える糖尿病のような代謝性疾患において,代謝物の総体を把握できるメタボローム解析は強力な研究ツールとなると考えられる.本稿では,メタボローム解析手法と最新の糖尿病領域におけるメタボローム研究例を紹介する. -
臓器間シグナルネットワークと肥満/糖尿病
67巻1号(2012);View Description
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生体が適切なエネルギー代謝を行うためには,全身のエネルギー収支を的確に把握し,個体を構成する臓器の相互作用を調整する必要がある.肥満症やそれに合併する糖尿病は,精妙に調整されている臓器間相互作用が破綻した状態とも言える.脳はエネルギー代謝の協調的な調節において中心的な役割を果たしている.液性因子[栄養素(ブドウ糖,脂肪酸,アミノ酸)やアディポサイトカインなど]や自律神経求心路によって,代謝情報は脳に入力され統合される.そして,脳は入力された情報を処理し,さまざまな反応を個体に起こしてエネルギー・糖代謝の恒常性を維持している.
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各論
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1型糖尿病の成因とその予防・治療への応用
67巻1号(2012);View Description
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自己免疫性1型糖尿病は,膵島炎により膵β細胞の絶対量が減少していく疾患であり,発症すればインスリン治療の継続が不可欠となる.この難病の究極の治療目的は,β細胞破壊を引き起こす膵島炎を未然に防ぐこと,あるいはいかにβ細胞量の減少を最小限に抑制するかということである.そのために,現在TrialNet やImmune Tolerance Network を中心に,免疫療法の臨床試験が進行しつつある.本稿では,現在行われている1型糖尿病の発症予防や進展阻止を目的とした臨床試験を中心に概説する. -
2型糖尿病における膵β細胞不全のメカニズム
67巻1号(2012);View Description
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2型糖尿病における膵β細胞不全には,膵β細胞の機能障害と膵β細胞量の低下が関与している.膵β細胞の機能障害は,グルコキナーゼやミトコンドリアを介するグルコース代謝の障害によって生じる.膵β細胞量の調節にはグルコキナーゼやインスリンシグナルが関与している.膵β細胞の機能障害や量の低下を改善する薬剤の開発が進んでいる. -
肥満・糖尿病におけるインスリン抵抗性のメカニズム―肝臓を中心に―
67巻1号(2012);View Description
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肝臓での糖脂質代謝は,摂食時には異化,絶食時には同化に傾き,インスリンは前者を抑制し,後者を促進する.肥満・糖尿病では,脂肪細胞からのアディポカインの分泌パターンが変化し,種々の機序を介して肝臓でのインスリン抵抗性が惹起される.これに伴う高インスリン血症は,他臓器でもインスリン抵抗性の原因となる.このように肝臓を中心とした悪循環が全身に波及することが,全身のインスリン抵抗性を考えるうえで重要である. -
糖尿病細小血管症の成因とその予防・治療への応用
67巻1号(2012);View Description
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糖尿病細小血管症の成因・予防・治療に関する基礎的研究がなされてきた.そのような基礎的研究の結果,新しい分子標的も見いだされ,今後それらを用いた糖尿病細小血管症に対する新規治療戦略がますます充実していくものと考えられる.新しい治療戦略を使いこなしトランスレーショナルリサーチを実行するためには,病態生理に対する理解のみならず,基本的な分子生物学的知識もまた必要な時代になってきている. -
糖尿病大血管症の成因とその予防・治療への応用
67巻1号(2012);View Description
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糖尿病患者は非糖尿病患者と比較し,大血管障害の発症率が高く,予後不良である.糖尿病患者が増え続ける現代において,大血管症の予防は大変重要と考えられる.大規模試験の結果から,血糖コントロールを含めた総合的な介入による大血管障害の予防の可能性が示されており,それぞれの危険因子に対し,早期軽症からの長期的な治療が必要である.
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特集トピックス
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胎内環境と2型糖尿病
67巻1号(2012);View Description
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2型糖尿病の発症要因としては,以前から遺伝因子と環境因子が重要であることが知られていた.近年になって,2型糖尿病をはじめとしたメタボリックシンドロームの発症に胎内環境が重要な役割を担っていることが明らかとなり,注目を集めている.胎生期における栄養状態が将来的な2型糖尿病を発症させるメカニズムについても,動物モデルを用いた実験によって少しずつ分かってきた.胎内環境と2型糖尿病発症の関係が明らかになれば,将来において診断や治療といった臨床応用に繋がることも期待される. -
インクレチンと糖尿病の発症
67巻1号(2012);View Description
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インクレチンとは,食事摂取により小腸から血中に分泌され,膵β細胞の受容体に作用し,インスリン分泌を促進するホルモンの総称である.2型糖尿病患者ではインクレチンによるインスリン分泌作用が低下している.GIP,GLP–1 ともに健常人とほぼ同等の分泌をしているものの,GIP によるインスリン分泌作用は低下していることから,GIP 受容体の量的・質的異常が糖尿病の発症・進展に関与している可能性がある. -
糖尿病合併症抑制における Legacy Effect
67巻1号(2012);View Description
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Legacy Effect とは,早期から厳格な血糖コントロールを行うことで,長年にわたって細小血管合併症,心筋梗塞,総死亡のリスクを低下させることができるという現象であり,UKPDS で示された.最近では,包括的治療によるLegacy Effect,スタチン治療によるLegacy Effect の報告もあり,早期からの包括的な治療の重要性が示唆されている.血圧に関してはLegacy Effect はなく,生涯にわたる血圧管理が必要である.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(9)うつ病と認知症
67巻1号(2012);View Description
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老年期の精神疾患の中で,うつ病と認知症は最も重要な疾患であり,有病率からいってもcommon disease と言うことができる.老年期うつ病には,器質性の変化や老年期特有の心理・社会的背景,身体合併症などによる,若年者のうつ病には見られない特徴がある.一方,初期の認知症にはしばしば抑うつ状態の合併が認められる.また,アルツハイマー病発症の危険因子としてのうつ病の既往も注目されている. -
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【トピックス】
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次世代シーケンサーを用いた日本人の全ゲノム配列の決定と遺伝的多様性の包括的解析
67巻1号(2012);View Description
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我々は,次世代シーケンサーを用いて日本人1個体の全ゲノム配列を決定した.1塩基多様性の検出を行い,すでに公開されている6個体全ゲノムデータと比較を行った.コピー数多型,中間サイズの欠失,逆位・転座の検出を行い,実験的確認を行った.また,標準配列に存在しない新規配列の検出を行った.我々の結果は,次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析による遺伝的多様性の包括的解析が可能であることを示している.
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【今月の略語】
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