最新医学

Volume 67, Issue 5, 2012
Volumes & issues:
-
【特集】脊髄小脳変性症(SCD)のUp–To–Date
-
-
-
座談会
-
-
-
孤発性 SCD
-
-
多系統萎縮症(MSA)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
多系統萎縮症(MSA)は,小脳失調,パーキンソニズム,自律神経障害がさまざまな程度で出現する孤発性神経変性疾患である.1999 年の合意声明により,パーキンソニズムが主体のMSA–P,小脳失調が主体のMSA–C に分類された.2008 年には病初期の感度の改善された第二版が作成され,臨床指標としてはUMSARS が広く用いられている.また,診断に有用な新しい頭部MRI やPET の指標が開発され,突然死にかかわる気道閉塞の病態理解も重要である. -
皮質性小脳萎縮症(CCA)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
皮質性小脳萎縮症(CCA)は,孤発性の脊髄小脳変性症(SCD)の一型である.臨床的には緩徐進行性の小脳失調を主徴とするが,錐体路徴候や末梢神経障害などの小脳外徴候をしばしば併発する.診断において最も重要な点は,遺伝性SCD,既知の原因・外因による小脳失調症,多系統萎縮症を除外することである.現時点でCCA は臨床・病理学的に単一の疾患単位ではない可能性があり,今後,病因・病態の解明が待たれる.
-
-
常染色体優性遺伝性 SCD
-
-
Machado–Joseph 病(MJD)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
Machado–Joseph 病(MJD)は,常染色体優性遺伝形式の遺伝性脊髄小脳変性症(SCD)の一型であり,本邦で最も頻度の高いものであると考えられている.MJD は多彩な臨床病型をとることが知られている.MJD における最近の分子生物学的研究の進歩,治療法開発の最近の動向および臨床マネジメントについてレビューする. -
脊髄小脳失調症6型(SCA6)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
脊髄小脳失調症6型(SCA6)は,CACNA1A 遺伝子のエキソン47 に存在するCAG リピートの異常伸長による常染色体優性遺伝性変性疾患で,選択的プルキンエ細胞脱落とプルキンエ細胞内の凝集体形成が特徴的である.近年,SCA6 の発症機構に関して,病態を再現するモデルマウスの解析や患者小脳組織の分子病理学的・生化学的解析から多くの知見が得られており,病態生理に基づいた治療法の開発に大きな展開が期待される. -
脊髄小脳失調症 31 型(SCA31)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
脊髄小脳失調症31 型(SCA31)は,我が国で頻度が高く,諸外国にはほとんど見いだされない日本人特有のSCA である.その原因は非翻訳領域に存在する5塩基繰り返し配列の挿入伸長であり,内部に(TGGAA)n リピートが存在することが必須である.本稿ではその臨床的・神経病理学的特徴を記し,人種によってリピートの配列が異なるというユニークな特徴を概説する. -
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPL A)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は,DRPLA 遺伝子(atrophin–1)中のCAG リピートの異常伸長が原因のポリグルタミン病の一種で,日本での有病率が高く顕著な表現促進現象を認める点,リピート長に依存した多彩な神経症状を示す点が特徴的である.変異タンパク質の核内蓄積による「神経細胞死を伴わない神経細胞の機能障害」が有力な病態仮説であり,転写活性化に主眼を置いた治療に期待が寄せられている. -
その他のポリグルタミン病(SCA1,SCA2,SCA7,SCA17)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
原因遺伝子翻訳領域内のCAG リピートが異常伸長することで発症するポリグルタミン病は,1990 年代から2000 年代初めに原因遺伝子が同定され,多くの遺伝性神経疾患,特に常染色体優性遺伝性小脳失調症(ADCA)の病態解明研究に繋がった.脊髄小脳失調症(SCA)は遺伝的背景や創始者効果から人種,国,地域により頻度が異なり,本邦ではMachado–Joseph 病(MJD)/SCA3,SCA6,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の頻度が高い.本稿では,これら3疾患以外の4つのポリグルタミン病(SCA1,SCA2,SCA7,SCA17)について,頻度,病理所見,原因遺伝子,臨床的特徴について概説した. -
通常の変異による脊髄小脳失調症(SCA11,SCA14,SCA15,SCA35)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
常染色体優性遺伝性脊髄小脳失調症の多くは,原因遺伝子上に存在するCAG などの3塩基の繰り返し配列の異常伸長をその原因とするが,翻訳領域における点変異や欠失などを認める例もまれではない.その例として,SCA11,SCA14,SCA15 およびSCA35 をとりあげ,原因遺伝子発見までの歴史的経緯,臨床的特徴,分子生物学的背景の概略を示す. -
非翻訳リピート異常伸長による脊髄小脳失調症(SCA8,SCA10,SCA12,SCA36)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
SCA8,SCA10,SCA12,SCA36 は,非翻訳領域リピート伸長を責任遺伝子変異とする.筋強直性ジストロフィー,脆弱X関連振戦・失調症候群などを含めて,優性遺伝性非翻訳領域リピート病またはRNA リピート病と総称されてきた.RNA 機能獲得(RNA gain–of–function)という新たな疾患発症概念が提唱され,伸長RNA リピートに結合する核内RNA 結合タンパク質の制御異常が共通する主な病態機序と考えられているが,疾患特異的なメカニズムも存在する.今後の詳細な病態解析と,それに基づく合理的な分子標的療法の開発が望まれる.
-
-
常染色体劣性遺伝性 SCD
-
-
眼球運動失行を伴う失調症1型,2型(AOA1,AOA2)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
眼球運動失行(OMA)は衝動性眼球運動の開始障害である.Friedreich 運動失調症に類似する早発性運動失調症の一群は,OMA と低アルブミン血症を特徴とすることからEAOH/AOA1 と呼ばれ,原因遺伝子としてaprataxin が同定された.同じくOMA を特徴とする早発性失調症で,アルブミンは正常でa-フェトプロテインが高値となる一群はAOA2 と呼ばれ,セナタキシンに変異が認められる.いずれもDNA 損傷修復機構の異常が想定されている. -
Friedreich 病とビタミンE単独欠損性失調症
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
Friedreich 病とビタミンE単独欠損性失調症は,脊髄後索型の進行性失調を呈する常染色体劣性遺伝の疾患で,同定された遺伝子異常も酸化ストレスに関連する点で共通する.しかし多様な臨床・病理像の詳細は異なる点もあり,「酸化ストレス」という概念で病態や部位特異性を説明できるわけではない.関連分子フラタキシンやa–トコフェロール転移タンパク質の機能は酸化ストレスを越えて多様であることを踏まえて,治療戦略を構築する必要がある. -
シャルルヴォア・サグネ型痙性失調症(ARSACS)
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
シャルルヴォア・サグネ型痙性失調症は,カナダ,ケベック州の患者で初めて報告されたが,現在では本邦をはじめ世界各地でその存在が知られている.ケベック例の臨床像はほぼ均一であるが,本邦を含む非ケベック例では多様性があり,本疾患に特徴的な網膜有髄線維の増生や下肢痙縮を欠く例,知能低下を認める例があることに注意する必要がある.今後,SACS 遺伝子変異が次々に同定されるにつれて,「サクシノパチー」の臨床スペクトラムは広がる可能性がある.
-
-
SCD の治療
-
-
脊髄小脳変性症治療の現状と展望
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
脊髄小脳変性症(SCD)の小脳症状に対する治療薬は,プロチレリン酒石酸塩とタルチレリンのみである.実際には,小脳失調,小脳失調以外の付随する症状に対して,適切な対症療法を行うことが重要となる.研究面では,二重盲検比較試験にて,イデベノン(idebenone),リルゾール,反復経頭蓋磁気刺激療法の有効性が示されており,臨床応用が期待されている.本稿では臨床面と研究面から,SCD 治療の現状と展望について概説する. -
脊髄小脳変性症のリハビリテーション
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
脊髄小脳変性症(SCD)のリハビリテーションに対する有効性の検証には,自然史の把握や妥当な評価スケールの使用が必要である.本邦の包括的な介入研究では,4週間の集中リハビリテーションが小脳性運動失調に効果あり,約3ヵ月間持続した.一方,感覚入力強化など特異的なリハビリテーション介入手法に対する検証は乏しい.進行性の変性疾患において,活動性を維持向上できるような病初期からの環境設定が望ましい.
-
-
【連 載】
-
-
現代社会とうつ病(13) 若年者の非定型的なうつ病
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
勤勉・他者のための奉仕というメランコリー親和型的な倫理観に根差した典型的なうつ病とは異なり,近年の診療場面では,若年層を中心に,自責感に乏しく他責傾向が目立つ「現代型うつ病」患者が増加している.「現代型うつ病」の臨床的特徴とその治療的対応のポイントを示したい. -
-
-
-
【トピックス】
-
-
関節炎におけるマイクロ RNA の機能
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
新しい遺伝子群として,タンパク質に翻訳されずに働くノンコーディングRNAのグループの1つであるマイクロRNA(microRNA,miRNA)が注目されている.miRNA の働きは複数のターゲット遺伝子発現の抑制にあり,それら制御の総和として強力な生物学的活性を持つことが明らかになってきている.関節炎における病態解明においても,慢性炎症の病態への関与と破壊される軟骨の保護,再生の両面から,解析,解明が進んでいる. -
心不全のトランスクリプトーム
67巻5号(2012);View Description
Hide Description
新しく心不全と診断された患者の予後は患者ごとに著しく異なる.既存の予後予測因子に加え,さまざまな基礎疾患により異なる病期にある個々の患者の治療を最適化するには,新たな指標が必要である.トランスクリプトーム解析により,病態によって変化する特定の遺伝子や遺伝子セットの変化を見いだすことにより,新しい心不全の診断と治療の開発に繋がるものと期待されている.
-
-
【今月の略語】
-
-