最新医学
Volume 68, Issue 2, 2013
Volumes & issues:
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特集【血管炎症候群-新しい分類と名称-】
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座談会
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総説
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2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides
68巻2号(2013);View Description Hide Description血管炎疾患は,これまでさまざまな視点から分類が試みられてきた.2013 年1月,血管炎の疾患名称とその定義を決定することを目的として1994 年に刊行されたNomenclature of systemic vasculitides,proposal of an international consensus conference(CHCC1994)の改訂版である2012 Revised International Chapel Hill ConsensusConference Nomenclature of Systemic Vasculitides(CHCC2012)が公表された.CHCC2012 ではCHCC1994 と比較して対象疾患が大幅に増しており,それぞれの分類項目や疾患定義が示されている.今後,さまざまな領域で利用されていくことが期待される.
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Small vessel vasculitis
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Upper Respiratory Tract Lesion of Granulomatosis with Polyangiitis(GPA)and Otitis Media with ANCA–associated Vasculitis(OMAAV)
68巻2号(2013);View Description Hide Description上気道限局型GPA では,70% の症例で典型的病理組織所見が得られない.また,50% の症例がPR3–ANCA 陰性であるが,MPO–ANCA が陽性の症例も少なからず見られる.現在の診断基準では診断が困難な症例も多く,MPO–ANCA 陽性や上気道の2病変を含めるような診断基準の見直しが必要と思われる.また,新たな疾患概念としてOMAAV を提唱した.進行すると,顔面神経麻痺や肥厚性硬膜炎による脳神経症状の合併も来しやすい点に注意が必要である.現状においては,このような症例に対しては診断的治療を目的としたプレドニゾロン・シクロホスファミド併用療法を行うことも考慮すべきである. -
Immune Complex Vasculitis 1.Anti–GBM Disease
68巻2号(2013);View Description Hide Description2012 年のChapel Hill Consensus Conference(CHCC)において,抗糸球体基底膜(GBM)病が免疫複合体型の小型血管炎の1つとして位置づけられた.抗GBM 病は血液中に抗GBM 抗体が存在あるいはGBM に線状の抗体の沈着を認める比較的まれな疾患で,病型としては腎臓では急速進行性腎炎を,肺では肺出血を来す.強い炎症とともに急速に腎機能の悪化を来す症例が多く,早期発見と早期の治療開始が必須であるが,いまだ予後は不良である. -
Immune Complex Vasculitis 2.Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis(Anti–C1q Vasculitis)
68巻2号(2013);View Description Hide Description低補体血症性蕁麻疹様血管炎は,蕁麻疹と白血球破砕性血管炎,持続性低補体血症を特徴とする小血管炎である.全身症状を伴い,糸球体腎炎,関節痛・関節炎,血管性浮腫,閉塞性呼吸器疾患や炎症性眼病変が見られる.ごくまれな疾患で,抗C1q抗体が全例に見られる.全身性エリテマトーデス(SLE)に類似する症例もあるが,SLE の診断基準は満たさない.SLE に準じた治療が行われるが,しばしば呼吸器病変や急性喉頭浮腫が死因となる.
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Variable vessel vasculitis
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Behcet's Disease
68巻2号(2013);View Description Hide Description血管ベーチェット病では,静脈系の血栓性閉塞を来すことが圧倒的に多い.下肢の静脈血栓に続発して肺塞栓を来しやすい.動脈系では中型主幹動脈の閉塞と動脈瘤が見られ,前者は高安動脈炎と酷似している.肺動脈瘤はまれではあるが重篤な合併症であり,ときに致死的となる.血管ベーチェット病の治療における免疫抑制療法と抗凝固療法の有用性についてはエビデンスが確立していないが,本邦ではワルファリンが汎用されている. -
Cogan’s Syndrome
68巻2号(2013);View Description Hide DescriptionCogan 症候群は,間質性角膜炎,前庭聴力障害に加えて,発熱や多関節炎などの全身症状を来す極めてまれな疾患である.1945 年にCogan らが4例を報告してから症例の蓄積が進んでいるが,若年者が多く,平均発症年齢は25 歳である.動脈瘤を伴う大動脈炎など血管炎症状を認めることもあり,大量ステロイドに加えて免疫抑制薬が併用されることが多い.
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Single organ vasculitis
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Cutaneous Small Vessel Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide Description1994 年のChapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類の出現は,皮膚血管炎の分類や考え方に大きな影響を与えた.その一方で,日本皮膚科学会は,皮膚という臓器の独自性を踏まえたガイドラインを作成した.このガイドラインと2012 年のCHCC 分類を紹介し,皮膚白血球破砕性血管炎,皮膚型結節性多発動脈炎,皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter 型),IgA vasculitis,hypocomplementemic urticarial vasculitisについて論じた. -
CNS Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide DescriptionCNS vasculitis の臨床像には,高度の白質病変が主体,腫瘍性病変を形成,脳出血発症などさまざまなものがある.二次性脳血管炎を生じる感染症や全身性血管炎症候群を除外するとともに,脳血管造影所見,脳生検所見と臨床症候を併せて診断する.致死的転帰をとる例も少なくないが,組織型によってはステロイドと免疫抑制薬による積極的治療で予後改善が期待できる.早期に本疾患を認識し,診断確定することが大切である.
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Vasculitis associated with systemic disease
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Rheumatoid Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide Descriptionリウマトイド血管炎は,関節リウマチに伴う血管炎症候群で,本邦では悪性関節リウマチと呼ばれる.病理学的に血管炎を伴わない間質性肺炎を有する例も,「非血管炎型」として本症の概念に含める.典型的な「血管炎型」には,結節性多発動脈炎様の全身性動脈炎型(Bevans 型)と,四肢末梢および皮膚を侵し,内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型(Bywaters 型)の2つがある. -
Lupus Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide Description全身性エリテマトーデス(SLE)は,二次性血管炎の主要な疾患の1つとして知られている.細・小動脈を中心に壊死性血管炎や蕁麻疹様血管炎などを認めるが,これらの所見はSLE 独自の病変ではなく,他の血管炎症候群でも認められる.一次性血管炎との鑑別が問題となるが,SLE の診断が確実に行える場合にはそれに伴う二次性血管炎と考える.血管炎は主として皮膚に認められ,臓器病変はまれであるが,しばしば致死的な経過をとることから臨床上問題となる. -
Sarcoid Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide Descriptionサルコイドーシスに血管炎を合併するsarcoid vasculitis は,あらゆる血管レベルに見られる.肺に多いが,サルコイドーシスの好発部位である皮膚は少ない.各臓器の筋性動静脈の血管壁や血管周囲に肉芽腫を形成する肉芽腫性血管炎が多い.一方,まれに真皮浅層のleukocytoclastic vasculitis を見ることもある.
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Vasculitis associated with probable etiology
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Drug–induced ANCA–associated Vasculitis
68巻2号(2013);View Description Hide DescriptionANCA 関連血管炎の誘発薬剤として,抗甲状腺薬(プロピルチオウラシルなど),抗生物質(ミノサイクリンなど),降圧薬(ヒドララジンなど),TNF 阻害薬などが報告されている.薬剤誘発性ANCA 関連血管炎の臨床所見は一次性ANCA 関連血管炎と同様であるが,薬剤中止により改善することが多い.ANCA 関連血管炎患者では,まず薬剤との関連を調べることが大切である.薬剤誘発性ANCA 関連血管炎は,一次性ANCA 関連血管炎の病態解明にも繋がると期待される. -
Vasculitis Related to HBV or HCV
68巻2号(2013);View Description Hide Description肝炎ウイルスは免疫複合体が関連する小型血管炎の原因として知られており,この関連性は血管炎分類に関するChapel Hill Consensus Conference(CHCC)2 でも取り上げられている.ウイルス性肝炎に合併する腎炎は以前より知られているが,B型肝炎には膜性腎症,C型肝炎には膜性増殖性腎炎と,成因や病態が必ずしも同じではない.しかしながら両疾患とも,肝炎治療が奏効した場合には供給抗原の減少から腎炎が軽快するという特徴を持つ.そのため,ネフローゼ患者における肝炎ウイルスの検索が望ましい.また,そのほかにも肝炎ウイルスとクリオグロブリン血症や結節性多発動脈炎との関連性も知られている.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(22) 治療について― 抗うつ薬の適正使用―
68巻2号(2013);View Description Hide Descriptionうつ病に対する薬物療法は進化してきたが,近年では抗うつ薬に関連した自殺や賦活化症候群(activation syndrome)の問題が顕在化している.抗うつ薬は十分な知識を持ったうえで,慎重に使用することが必要である. -
トップランナーに聞く(26) 核酸による自然免疫および獲得免疫の制御機構の研究と核酸アジュバントのワクチンへの応用研究
68巻2号(2013);View Description Hide Description -
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【トピックス】
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最近のステロイド補充療法の考え方
68巻2号(2013);View Description Hide Description副腎皮質機能不全症に対しては,グルココルチコイドの補充は必須である.我が国での使用量は,原発性ではコートリル20mg/日,続発性では15~20mg/日と,理論値より若干多めの補充量とも言えるが,副腎クリーゼ予防に比重が置かれたものと認識できよう.生命予後は改善したとはいえ,QOL 改善のためには,理想的には日内リズムに応じ体重換算した補充が推奨される.剤型を含め至適な投与法を模索していく必要がある.
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【今月の略語】
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