最新医学
Volume 68, Issue 3, 2013
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特集【B型肝炎再活性化の現状と対策-肝臓,血液,リウマチ,腫瘍領域の現状を踏まえて-】
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座談会
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特集【B型肝炎再活性化の現状と対策-肝臓,血液,リウマチ,腫瘍領域の現状を踏まえて-】
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B 型肝炎の疫学―キャリア率,キャリア数について―
68巻3号(2013);View Description Hide DescriptionHBV 母子感染予防対策事業により,1986 年以降に出生した集団のHBV キャリア率は極めて低い値を示している.2つの大規模集団の資料をもとに算出したHBs 抗原陽性率を見ると,全国いずれの地域も,団塊の世代と考えられる2005 年時点年齢換算で55~59 歳前後の集団で緩やかな一峰性を示している.「感染を知らないまま潜在しているHBV キャリア」数は903,145 人(95%CI 83.7~97.0 万人)と推計されるが,さらに「患者としてすでに通院・入院しているキャリア」と「受診,あるいは継続受診に至っていないキャリア」の把握が必要である.HBV 再活性化の可能性のあるHBV 感染既往者は,高年齢層になるに従いその割合が高いことが示された. -
B型肝炎の病態と治療
68巻3号(2013);View Description Hide DescriptionB型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者の一部では慢性肝炎を発症し,肝硬変・肝不全に進行したり,肝細胞がんを発症したりするリスクが増大する.一方で,HBs 抗原の陰性化した症例はキャリアから離脱し,その後の予後は良好である.しかしながらHBs 抗原が陰性化しても,肝細胞内にはHBV が存在していることが報告されており,HBs 抗原が陰性化しても,将来強力な化学療法を施行したり,移植を受けたりした場合にHBV が再増殖する可能性がある. -
肝移植後 de novo B型肝炎
68巻3号(2013);View Description Hide DescriptionB型肝炎ウイルス(HBV)の既往感染者であるとこれまで考えられてきたHBs 抗原陰性・HBc 抗体陽性を示す健常人の肝組織中には,HBV が潜伏持続感染しており,化学療法や免疫抑制薬使用によりウイルスの再活性化が生じる,いわゆる「de novoB 型肝炎」が注目されている.このHBc 抗体陽性例からのHBV の再活性化は,もともとは肝移植後の臨床知見から明らかとなった病態であり,その臨床エビデンスは本邦で多数蓄積されている.本稿では,肝移植を契機に確証されたHBV の潜伏感染の臨床像について概説する. -
B型肝炎再活性化の機序
68巻3号(2013);View Description Hide DescriptionB型肝炎ウイルス(HBV)のゲノムDNA には,S遺伝子,preC/C 遺伝子,P遺伝子,X遺伝子が存在する.HBV 複製起点はcccDNA であり,このcccDNA のみ核内に存在すればウイルス複製を継続することが可能である.急性肝炎治癒後も,肝細胞の核内にHBV 遺伝子がcccDNA の形で残存することが明らかとなった.B型肝炎再活性化は3つのステージ(免疫抑制状態によるcccDNA からの活発なウイルス産生,免疫能の回復による肝障害の発症,肝機能の回復から潜伏感染への帰還)に分類される. -
本邦における de novo B 型肝炎症例の背景と予後
68巻3号(2013);View Description Hide Description本邦におけるde novo B 型肝炎の背景疾患の頻度は非ホジキンリンパ腫が最も多く,次いで幹細胞移植後の多発性骨髄腫である.リンパ腫では治療薬のリツキシマブの使用がde novo 肝炎の発症と関連が強い.de novo 肝炎は28% が劇症肝炎を発症し,全例死亡しており予後不良である.今後の課題は,疾患・治療薬の違いによるde novo 肝炎発症リスクを明らかにし,その予防法を明らかにすることである. -
本邦におけるB型肝炎再活性化ガイドライン
68巻3号(2013);View Description Hide Description免疫抑制および化学療法の進歩によって,これまで臨床的治癒と考えられていたB型肝炎ウイルス(HBV)既往感染者において,HBV 再活性化によるde novo B型肝炎が見られるようになった.特に,悪性リンパ腫治療薬である抗CD20 抗体(リツキシマブ)投与例では高率にHBV が再活性化し,de novo B型肝炎による劇症化例も多い.さらに新たな分子標的治療薬の開発も進められており,今後も注意が必要である. -
造血器腫瘍におけるB型肝炎再活性化の現状
68巻3号(2013);View Description Hide Description造血器腫瘍におけるB型肝炎再活性化リスクは,抗CD20 モノクローナル抗体(リツキシマブ)の登場によって大きく変化した.特に,がん化学療法前にHBs 抗原陰性例からの肝炎発症例においては質の高いエビデンスが限られており,その標準的対策法の確立を目指して多施設共同前向き研究が進行中である.また,造血幹細胞移植療法においては,免疫の再構築や合併する移植片対宿主病,併用する免疫抑制薬によって再活性化のリスクや臨床経過が異なることに留意する必要がある. -
リウマチ性疾患におけるB型肝炎ウイルス再活性化の現状
68巻3号(2013);View Description Hide Descriptionリウマチ性疾患への免疫抑制療法によるB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化とそれによる肝炎発症(de novo のB型肝炎)の報告が増えている.特にde novo のB型肝炎は劇症化例が多く,極めて重篤であり,内科治療による救命率が低く,その対策が急がれる.本稿では,免疫抑制療法におけるHBV 再活性化の現状と,前向きに行った厚生労働省研究班(持田班)の成績の一部,そして予防対策と今後の課題について解説する. -
日本リウマチ学会 B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言
68巻3号(2013);View Description Hide DescriptionB型肝炎ウイルス感染の既往感染率が比較的高い我が国では,化学療法や免疫抑制療法に伴うB型肝炎再活性化が問題となっている.リウマチ性疾患患者の治療には副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が頻繁に用いられるため,日本リウマチ学会は平成23 年に「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」を発表し,スクリーニング,マネジメントおよび日本肝臓学会肝臓専門医との連携について注意喚起している. -
固形がん領域におけるB型肝炎再活性化の現状
68巻3号(2013);View Description Hide Description固形がんでのB型肝炎の再活性化は,HBs 抗原陽性例ではあらゆるがん腫で報告があり,その割合は10~40% 前後である.HBs 抗原陰性でHBs 抗体またはHBc 抗体陽性例からはまとまった報告は限られており,症例報告が散見される程度である.今後しっかりした前向き研究を行い,固形がんにおける再活性化の現状を明らかにし,再活性化の対策を確立することが必要である. -
乳がん領域における化学療法によるB型肝炎ウイルス再活性化
68巻3号(2013);View Description Hide Description乳がん化学療法においては,免疫抑制を伴う抗がん剤や支持療法としてのステロイドの使用により,B型肝炎ウイルスの再活性化を来す可能性がある.既往感染例では再活性化の頻度自体は高くないも,再活性化からde novo 肝炎を発症した場合には死亡まで至る可能性がある.乳がん化学療法を安全に行うためには,再活性化リスクの認識とガイドラインに沿った対応が必要である. -
大阪市立大学におけるB型肝炎再活性化前向き研究について
68巻3号(2013);View Description Hide Description大阪市立大学病院では,院内の多数の臨床科と協力して,2007 年12 月よりB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化前向き研究を継続している.血清HBV マーカーを測定し,HBs 抗原陽性あるいはHBc 抗体陽性例(HBs 抗体単独陽性例も追加)を登録し,免疫抑制治療や化学療法中,HBV DNA をモニタリングする研究である.現在まで,HBV DNA 定量検出例に対するエンテカビル投与介入にて,HBV 再活性化による肝不全は発症していない. -
東北地方におけるB型肝炎再活性化前向き研究について
68巻3号(2013);View Description Hide Description既感染B型肝炎関節リウマチ患者157 人のうち18 ヵ月間でHBV DNA が再活性化した13 人では,生物学的製剤,エタネルセプト,メトトレキサート,高用量ステロイド,タクロリムスの使用が多く,再活性化のハザード比はCox 回帰ハザード分析で生物学的製剤10.9(p=0.008),エタネルセプト6.9(p=0.001),多重ロジスティック回帰解析でタクロリムス11.1(p=0.0015)であった. -
AASLD,EASL,APASL ガイドラインB型肝炎再活性化の解説
68巻3号(2013);View Description Hide Description米国肝臓学会(AASLD),欧州肝臓学会(EASL),アジア太平洋肝臓学会議(APASL)の発表しているB型肝炎ガイドラインのうち,B型肝炎再活性化に関する記述を検討し論評した.ガイドラインの発表年によって記述の内容,深さには差が認められた.年次におけるエビデンスの蓄積,地域におけるB型肝炎ウイルス(HBV)既感染率の相違などによって,ガイドラインには相違がある.今後,共通の認識が得られるであろうが,医療経済的制限により,各地域でのガイドラインには相違が継続すると予想される.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(23) うつ病の経過と治療
68巻3号(2013);View Description Hide Descriptionうつ病エピソードは変動しながら増悪し,しばらくすると変動しながら回復する.治療は回復過程を促進するが,1年程度の治療期間が必要なことが多い.エピソードから回復してからも,うつ病の再発や躁病相の出現などの課題が生じることも少なくない.他の精神疾患の併存が経過を複雑にすることもある.長引いたとしても,医療者として息の長いサポートを続け,いつか訪れる回復を待つ姿勢が大切である. -
トップランナーに聞く(27) 内分泌における新しい領域開拓を目指して―転がってきた幸運を,ものにする一例―
68巻3号(2013);View Description Hide Description -
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【トピックス】
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早期再分極症候群の特徴
68巻3号(2013);View Description Hide Description早期再分極(またはJ波)は,健常人の1~10% 程度に認められる心電図所見であり,良性の所見と長らく考えられてきた.しかし近年,早期再分極が心室細動や突然死に関与していることが明らかになり,大きな関心を集めている.早期再分極症候群症例の70~80% は男性であり,診断年齢は40 歳前後である.突然死の家族歴を10~20%に認め,これは早期再分極症候群の発症に遺伝的背景が関与していることを示唆しており,実際に現在までに5種類のイオンチャネル遺伝子が原因遺伝子として報告されている.心室細動発作を来す状況は一様でなく,夜間や睡眠中に発作を来す症例が多いが,労作時や運動時に発作を来す症例も少なからず存在する.当初は下壁ないしは側壁誘導の早期再分極が心室細動に関連することが報告されたが,右側胸部誘導に早期再分極を認める症例もある.J点の高さはさまざまな状況において変動し,時に消失するが,ポーズや徐脈時に増強し,心室細動発作の直前に通常は最もJ点は高くなる.心室細動発作の既往のある症例においては植え込み型除細動器(ICD)が適応となる.ICDは突然死予防には最も有効な治療であるが,発作の頻度が頻回である症例には発作予防の薬物療法が必要となる.頻回発作時には,b 刺激薬であるイソプロテレノールや心拍を早くするためのベーシングが有効である.再発予防にはキニジンの有効性が報告されている.また,抗不整脈薬が無効な症例において,心室細動をトリガーする心室性期外収縮を標的としたカテーテルアブレーションの有効性も報告されている.
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【今月の略語】
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