最新医学
2013, 68巻3月増刊号
Volumes & issues:
-
自己免疫疾患・アレルギー疾患(前篇)免疫の基礎,検査,治療
-
- 序論
-
- 免疫学の基礎
-
自然免疫とその破綻
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
自然免疫は生体防御の第一線において,初期反応を担っていると同時に獲得免疫の活性化への橋渡しを行っている.近年の研究により,自然免疫に関与する分子機構が明らかとなってきた.自然免疫の過剰活性化は狭義の自己炎症性疾患のみならず,痛風などの結晶誘発性関節症,そして動脈硬化や糖尿病などの慢性代謝性疾患にも関与していることが示された.多くの疾患において,自然免疫の関与の解明が新たな治療につながることが期待される. -
獲得免疫の構成と作動原理
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
獲得免疫はTおよびBリンパ球(細胞)によって担われる免疫システムで,免疫記憶により,“免疫の獲得”として知られる感染抵抗性にかかわる.TおよびB細胞は,多様な抗原特異性を持つ抗原受容体の発現により,抗原特異的な免疫応答や免疫記憶を起す.さらに,自然免疫細胞による微生物感染への応答を“危険シグナル”として感知することで,病原微生物へは効率的に免疫応答を起すが,自己抗原や微生物以外の異物への免疫応答は起さない. -
サイトカインとそのシグナル
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
サイトカインとは免疫担当細胞どうし,あるいは免疫担当細胞と周辺細胞とのコミュニケーションをつかさどる可溶性分子である.主に,炎症や免疫応答を促進したり調節したりする働きがある.サイトカインの制御の破綻は,自己免疫疾患やアレルギーなどの免疫疾患に直結する.その主なシグナル伝達機構はJAK-STAT 経路であり,免疫疾患の分子標的として注目されている. -
樹状細胞
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
樹状細胞(DC)は,自然免疫系や環境からのシグナルを感知して,T細胞の活性化やトレランスを誘導し,病原微生物の排除や免疫ホメオスタシスの維持に必要な多様な獲得免疫反応を誘導する免疫系の中心的な細胞である.したがって,DC の活性を増強することが感染症やがんに対するワクチンの開発につながる一方,DC の活性を抑制することが自己免疫疾患やアレルギー疾患の新規治療につながる. -
B細胞と免疫制御
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
B細胞は,抗体の産生能を持つ細胞として,液性免疫において中心的な役割を果たしている.B細胞は,抗原刺激によって活性化されると,迅速な抗体産生を開始するとともに,胚中心において高親和性抗体を産生するメモリーB細胞や形質細胞に分化する.さらに,B細胞は,抗体産生以外にも,サイトカイン産生や抗原提示などの機能を介して免疫反応を増幅することが,近年明らかになってきた.一方で,IL-10 を介して免疫反応を抑制する“制御性B細胞”の存在も明らかになってきている. -
T細胞とサブセット
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
胸腺にて成熟したナイーブT細胞は,特定のサイトカイン環境下で抗原刺激を受けることにより特定の免疫反応を制御するヘルパーT細胞へと分化する.ヘルパーT細胞は,サイトカイン産生パターンに基づきサブセットへと分類され,このサブセットにはTh1・Th2・Th17・濾胞型ヘルパーT細胞(TFH)がある.それぞれのサブセットは感染症・自己免疫性疾患・アレルギーなどのさまざまな免疫性疾患の病態形成の局面に関係する.本稿では,それぞれのT細胞サブセットの特徴と制御について紹介する. -
制御性T 細胞
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
T細胞応答は抗原特異的な獲得免疫を決定し,正の応答を担うヘルパー/エフェクターT細胞と,負の応答を担う制御性T細胞(Treg)が存在する.Tregの中でも最も解明が進んでいるCD4+ CD25+ Foxp3+ Treg は自己免疫寛容の根幹を担っている.しかし関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)など頻度の高い自己免疫疾患とCD4+ CD25+ Foxp3+ Treg の関連は良く分かっていない.CD4+ CD25+ Treg 以外のTreg の自己免疫寛容への寄与も推測される. -
腸管の共生細菌と粘膜免疫
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
消化管は常に,あらゆる微生物侵入の危険に曝されている.そのため消化管は,強い活性を持つ免疫細胞から構成される頑強な粘膜免疫システムを備えている.一方で,消化管免疫システムは,日常的に接する無害な食物抗原や共生細菌に対しては,不必要に免疫応答しないよう制御されている必要がある.この活性化と抑制がいかにして制御されているのか,そのメカニズムの詳細は十分に明らかになっていない.最近のgerm-free マウスやgnotobiote マウスを用いた研究から,腸内フローラを構成する個々の常在細菌が,それぞれ異なる免疫細胞サブセットを誘導することが明らかとなってきている.つまり,腸管共生細菌の構成が,消化管免疫活性化と抑制のバランス制御に大きく貢献しているという概念が確立しつつある. -
IL-33 とアレルギー
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
Interleukin-1(IL-1)ファミリーサイトカインの1つであるIL-33 は,主に上皮細胞で恒常的に発現しており,細胞核内に局在している.核内のIL-33 は,感染などの際にネクローシスを起した細胞から放出され,炎症の初動を担うalarmin として働く.IL-33 はさまざまな細胞からTh2 サイトカインの産生を誘導し,寄生虫感染に対する生体防御に重要な役割を担う一方で,不適切および過剰なIL-33 の生理作用は,アレルギーなどの疾病の発症および病態の形成への関与が示唆されている. -
自己免疫疾患の免疫応答
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
生体においては,T細胞やB細胞といった獲得免疫細胞に対して,さまざまな段階で免疫自己寛容が誘導されている.この免疫自己寛容が破綻することで,さまざまな自己免疫疾患が発症すると考えられており,これまでマウスモデル,ヒト患者検体を用いた研究の双方から多くの知見が得られてきた.しかし,病的な自己免疫反応を起す獲得免疫細胞がどの自己抗原を認識しているのか,など病態の鍵を握る問題については十分な理解が得られていない.自己免疫疾患の治癒を可能にする治療法を開発するためにも,核となる病態に迫るさらなる研究が望まれる. -
感染と免疫
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
食細胞による自然免疫は,パターン認識レセプター(PRR)や補体を介して病原体を排除する.自然免疫リンパ球(ILC)や自然免疫T細胞は,自然免疫と適応(獲得)免疫との橋渡し的役割を担う.適応免疫は,遺伝子再構成で産生される抗原レセプターと記憶細胞が特徴である.IFNγ を産生するTh1 細胞やCD8+T細胞は細胞内寄生性病原体への感染と防御に働く.IL-4 を産生してB細胞を抗体産生細胞に分化させるTh2 細胞やIL-17 を産生して好中球を集簇するTh17 細胞は,細胞外寄生性病原体の防御に働く. -
腫瘍と免疫
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
がんは形成過程で免疫抵抗性が獲得され,がん患者では多様な免疫細胞や分子が関与して免疫抑制環境が構築されている.しかし,抗腫瘍免疫ネットワークの制御により,最近の臨床試験では明確な治療効果が認められ,今後,免疫療法は「効果が期待できる症例に対して長期延命をもたらす治療法」として確立されることが期待されている.そのために,効果が期待できる症例を選択できるバイオマーカーの同定や,強力な複合免疫療法の開発が進められている. -
移植免疫
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
臨床移植免疫の観点から,造血細胞移植では拒絶予防に加え,同種移植では必ず起る移植片対宿主病(GVHD)の予防・治療,および臨床上の最大の問題点である感染症および移植後腫瘍再発に対する移植免疫療法の開発,が重要な課題となっている.これらの分子レベルでの病態解明は着実に進められており,それに基づいた新たな治療戦略の開発が進んでいるが,一方で移植時におけるさまざまな問題はお互いに関連しており,GVHD 抑制と感染症や再発対策などのように,1つの治療介入が及ぼす免疫効果が,他方の問題に対しては逆効果をもたらすことも多くある.その克服には,それぞれの治療法による相乗効果を計算したうえでの治療戦略設計が必要である. - 新しい研究手法・検査
-
ヒトリンパ球のFACS 解析
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
現在,フローサイトメトリーは免疫学における研究の基礎的手技であり,ヒトリンパ球の免疫学的解析も進められている.ヒト細胞サブセットを分離同定する際,細胞表面マーカーの有無を基本に分類されるが,現時点では各細胞サブセットの定義が国際的に標準化されているわけではない.Human ImmunologyProject Consortium(HIPC)は,ヒト細胞サブセット分類の標準化を目標として検討を進めている米国のプロジェクトである.本稿では,HIPC の話題中心に,ヒトリンパ球の実際の解析と,FACS 解析についての最近のトピックについて解説する. -
新しい自己抗体
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
膠原病患者血清中には自己の細胞核や細胞質成分と反応する多種類の自己抗体が検出される.自己抗体には特定の疾患や病型と密接に関連するものが多く,疾患の補助診断,病型分類,予後の推定,治療効果判定などで臨床的な有用性が高い.また,自己抗体の産生機序と膠原病・自己免疫疾患の発症機序は互いに深く関連しあっていると考えられ,自己抗体の検出とそれらの対応抗原の分析は,自己免疫疾患の臨床に役立つのみならず,病因・病態の解明にも重要な手掛かりを与えてくれる.近年,特にその臨床的意義や対応抗原が注目される新たな自己抗体を解説する. -
ゲノムと免疫疾患
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
自己免疫疾患やアレルギー疾患などの免疫疾患の多くは,遺伝・環境因子によって発症する多因子疾患である.ゲノム全体を網羅的に探索するゲノムワイド関連解析(GWAS)が可能となったことにより,多くの免疫疾患において疾患感受性に関連する遺伝子多型が明らかになった.さらに,次世代シークエンサー(NGS)の登場によって,個人の病態に大きく寄与していると考えられる,頻度の低い遺伝子変異の探索も始まっている. -
関節炎とマイクロRNA
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
マイクロRNA(miRNA)の研究は,分子生物学の最後のフロンティアの1つとも言える.本稿では,関節リウマチ(RA)を例に挙げて,攻撃する側の免疫・慢性炎症反応と,攻撃される側の関節軟骨組織の双方からmiRNA の研究の現況を概説し,今後の疾患の早期診断,治療の開発に進める方向性を考えたい. -
ヒト化マウス
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
ヒト細胞をマウスに生着させるxenograft の試みは,ヒト造血幹細胞(HSC)の分化・免疫細胞の機能・疾患病態の形成などを知るうえで有用と考えられた.新たな免疫不全マウスの開発・HSC の移植法・フローサイトメトリーを用いたHSC の純化法など,さまざまな工夫を重ねて確立された造血・免疫系ヒト化マウスは,免疫学・血液学など基礎科学と,創薬・細胞治療などトランスレーショナルリサーチの両者において貢献することが期待される. - 新しい治療法
-
サイトカインを標的とした治療
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
サイトカインを標的とした生物学的製剤による治療として,腫瘍壊死因子やインターロイキン(IL)-6 あるいはその受容体などに対するモノクローナル抗体製剤が,関節リウマチ(RA)を始めとした免疫疾患に画期的な効果を示している.製剤の特徴や薬物動態を十分に考慮した使い分けが行われており,さらなる標的に対する製剤開発も進んでいるため,免疫疾患の治療は現在最もホットな医学領域の1つとなっている. -
免疫担当細胞を標的とした治療
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
サイトカインを標的とした生物製剤は,関節リウマチ(RA)の治療において有効であった.近年,免疫担当細胞であるT細胞,B細胞を標的とした生物製剤の開発,臨床試験が行われている.CTLA4-Ig,抗CD20 抗体,抗BLyS 抗体といった新たな治療薬の有用性や安全性に関するエビデンスが蓄積されており,RA のみならず,全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病,炎症性腸疾患,乾癬,多発性硬化症など,さまざまな疾患への応用が期待されている. -
低分子化合物を用いた細胞内シグナル分子を標的とする治療
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
自己免疫疾患の病態形成においては,多様な細胞内シグナル伝達を介する細胞の活性化とその制御が関与するが,その代表が高エネルギーを生み出すリン酸化酵素キナーゼである.大部分のサイトカインシグナルは,チロシンキナーゼを介して伝達され,多様な疾患の病態形成において重要な役割を担う.チロシンキナーゼJanus kinase を標的とした低分子量抗リウマチ薬(DMARD)tofacitinibは,関節リウマチ(RA)を対象とした治験が終了して承認申請中である.また,脾チロシンキナーゼ(Syk)阻害薬もRA を対象に治験が進行している.いずれも内服可能な低分子化合物で,生物学的製剤と同等の高い臨床効果が示されており,新たな治療の変革がもたらされるものと期待される. -
粘膜マスト細胞と疾患
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
消化管粘膜は,腸内常在細菌や食餌性成分に曝されていると同時に,多くの病原体の侵入門戸となる.このような非自己因子の多様性に対応するために,免疫系が機能的に構築され,高次的に調節されている.粘膜免疫系の破綻は,アレルギーや炎症性腸疾患などの粘膜病変の引き金となり,各種疾患の発症につながる.本稿では,粘膜免疫監視・防御に関与する粘膜マスト細胞に着目し,恒常的な役割と粘膜疾患への関与について,筆者らの最新の知見とともに概説する. -
抗原特異的な治療
68巻3月増刊号(2013);
View Description
Hide Description
自己免疫疾患では,自己抗原に対する免疫寛容が破綻し,臓器特異的または全身の抗原に対する免疫異常が見られる.自己免疫疾患の治療として,再寛容の獲得は理想的ではあるが,ヒト疾患においては標的とすべき自己抗原が必ずしも明らかではないことや免疫寛容の効率的な誘導法が確立していないこともあり,実験的な範囲を出ていない.1型糖尿病(T1D),全身性エリテマトーデス(SLE)などを対象とした代表的なトライアルを紹介し,現状と今後の可能性を考察する. - 今号の略語
-

