最新医学

Volume 68, Issue 6, 2013
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特集【COPD(慢性閉塞性肺疾患)-病態解明から治療まで-】
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- 座談会
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- 疾患概念と病因論
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疾患概念と疫学
68巻6号(2013);View Description
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COPD は,タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である.呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す.気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり,通常は進行性である.臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳,痰を特徴とするが,これらの症状に乏しいこともある. -
ゲノム解析
68巻6号(2013);View Description
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分子生物学的手法や情報解析技術の進歩により,ゲノムワイド関連解析(GWAS)がさまざまな疾患の関連遺伝子の探索に用いられるようになった.COPD の易罹患性にかかわる遺伝子も複数同定され,別集団での再現性も得られているものもある.しかしながら現時点でmissing heritability などの問題点もあり,今後の研究の進展により,これらの問題点が解決されることが期待される. -
炎症・アポトーシス
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COPD は,長期にわたる喫煙を主な原因として発症する慢性の炎症性肺疾患である.その病態は複雑であるが,従来から慢性炎症細胞浸潤,プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡,酸化ストレスが発症メカニズムの中心と考えられている.さらに,最近の知見ではアポトーシスの深い関与が示唆されている. -
COPD の病態生理
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COPD の病態生理を理解するうえで,肺気腫,慢性気管支炎(慢性気道感染症)の認識は必要である.COPD ではさらに,肺循環障害(肺高血圧症)の併存が認められる.“Out of proportion PH”は,肺病変に伴う低酸素血症,肺血管床のリモデリングのみでは説明のできない肺動脈圧の上昇が認められるときに診断される.肺高血圧症の併存を考えるとき,“CPFE”の概念の認識も必要になる. -
全身の併存疾患・合併疾患
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COPD は,さまざまな併存症を伴う全身性疾患である.呼吸機能障害に対する薬物療法のみならず,全身性疾患として病態や重症度を評価し,包括的な治療戦略を構築することがQOL や予後の改善に必要である.全身性炎症は併存症の基盤病態であり,その発症メカニズムの解明と適切な対策の確立が重要な課題である. - 診断
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COPD の画像
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COPD の診断において,胸部単純X線写真は他疾患の除外に有用であり,また進行したCOPD では特徴的な所見を示す.高分解能CT(HRCT)により気腫性変化や気道病変の形態学的変化を定量的に評価することにより,重要な臨床指標との相関が示されている.近年の画像診断技術の向上により,今後のさらなる発展と日常臨床への応用が期待される. -
広域周波オシレーション法
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広域周波オシレーション法は,強制オシレーション法(FOT)に基づいた方法である.FOT は非侵襲的に安静換気で呼吸抵抗などの呼吸器系のメカニクスを評価する.呼吸抵抗(Rrs)およびリアクタンス(Xrs)の周波数特性のほか,その時間経過を時系列で並べて3D 画像変化パターンによって評価することもできる.R5 – R20 は末梢気道抵抗値ではないが,Rrs の周波数依存性を表す指標であり,気管支拡張薬治療後などで改善が見られる. -
肺循環・右心機能
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COPD の肺高血圧症は,軽度から中等度(平均肺動脈圧20~35mmHg)のことが多く,心拍出量は正常もしくは増加していることが多い.一般に,安定期のCOPDでは右室収縮能は保たれているが,急性増悪期には右室不全を呈する.肺高血圧症の診断は,心臓超音波検査によるスクリーニングが推奨されるが,推定肺動脈圧値の誤差が大きく,肺血管拡張薬治療開始前には右心カテーテル検査による正確な評価が推奨される. -
運動負荷試験
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運動負荷試験は,安静時の呼吸機能検査あるいは心機能検査からでは得られない情報が得られる.運動負荷試験の方法には,フィールド,すなわち検査室外で実施される6分間歩行試験,シャトルウォーキングテスト,および検査室で実施される自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いた心肺運動負荷試験がある.また運動の負荷方法により,徐々にあるいは段階的に増加させる漸増法と,一定の負荷をかける定常法がある.運動能力はCOPD の重症度と相関が強く,運動時に得られるさまざまな指標はCOPD 患者の予後と関連が強い. - 治療
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薬剤介入による大規模試験
68巻6号(2013);View Description
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近年,TORCH 研究,UPLIFT 研究,POET–COPD 試験といった大規模薬剤介入試験がCOPD 患者を対象として行われた.その結果,COPD に対する長時間作用性気管支拡張薬を中心とした薬物治療は,持続性の呼吸機能の改善による息切れなどの症状改善に加え,増悪回数や疾患進行,さらには死亡率まで抑制することが明らかになった. -
今後の薬剤
68巻6号(2013);View Description
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国内・海外においてCOPD は疾患別死因の上位を占めており,COPD 患者数はさらに増大しつつある.現時点で,長期的な呼吸機能の低下を抑えると証明されている薬剤はない.COPD 新薬として臨床応用が最も期待されるのが,選択的PDE4 阻害薬である.呼吸器学と分子細胞生物学を融合した研究アプローチにより,薬剤開発のプロセスを短縮し,実用化に寄与することが期待される. -
COPD に対する肺移植
68巻6号(2013);View Description
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国際心肺移植学会の報告によると,これまでに約4万例の肺移植が実施されており,COPD は適応疾患の中で最も頻度が高い.一方,日本では脳死ドナー不足が大きな問題であった.2010 年に臓器移植法が改正され,日本でも脳死肺移植が広く行われるようになった.2013 年4月現在,300 例の肺移植(脳死肺移植169 例,生体肺移植131 例)が施行された.このうちCOPD は13 例(4.3%)であった.COPD に対する肺移植はQOL を著明に改善し,5年生存率も92.3% と良好であった. -
COPD と再生医療
68巻6号(2013);View Description
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COPD,特に気腫性変化による肺実質の喪失は,既存の治療では改善不可能であり,肺移植以外に根本的な機能の回復を期待できる治療はない.しかしながら症例の多くは高齢者であり,移植の適応になるのは若年性肺気腫などに限られるのが現状である.肺疾患の再生治療として,細胞治療と臓器再生の研究が進められており,動物レベルでは肺気腫モデルに対する幹細胞治療の有効性が報告されている.治療に用いる幹細胞として,iPS 細胞は,理論上どの個体からでも自己の任意の細胞種を作ることができ,また体外で十分に細胞を増やすことが可能で,かつ拒絶の心配がないことから,再生医療において大変有望と考えられている.肺の臓器再生として,脱細胞肺組織を鋳型とした人工臓器の作成が試みられており,この鋳型にレシピエントの細胞を生着させることで,肺の複雑な高次構造を保った再生治療が可能となるかもしれない.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(26) うつ病の自殺予防
68巻6号(2013);View Description
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うつ病は,あらゆる精神障害の中で最も自殺行動と密接に関連しているが,うつ病患者の自殺は決してうつ病の症状だけで引き起こされるわけではない.その意味で,自殺予防という観点から言えば,うつ病診療においては,家族関係,職場の問題,経済的問題といった現実的問題も含めた総合的なアセスメントが必要と言える.本稿では,Joiner らの『自殺の対人関係理論』に基づくアセスメント法を紹介した. -
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ノーベル賞と医学の進歩・発展(9) アイソトープ・トレーサー法の発明と核医学の歩み―ゲオルク・ド・ヘヴェシーの業績―
68巻6号(2013);View Description
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【トピックス】
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NK/T 細胞リンパ腫に対する SMILE 療法
68巻6号(2013);View Description
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NK/T 細胞リンパ腫は鼻咽頭などの節外病変を特徴とし,CHOP 療法などリンパ腫に対する通常化学療法の有効性が小さい特徴を有する.初発Ⅳ期および初回治療後再発・難治例の予後改善を目指して,東アジア多国間共同臨床試験で開発された新規化学療法がSMILE 療法である.その優れた有効性から,現在では東アジアにとどまらず米国での日常診療に導入されるとともに,SMILE 療法にヒントを得た類似化学療法の治療開発が活発化している. -
糖尿病の病態とインクレチン関連薬の臨床効果
68巻6号(2013);View Description
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2型糖尿病は,インスリン分泌不全と抵抗性増大という2つの障害を特徴とする.日本人を含むアジア人の2型糖尿病はインスリン分泌不全,特に初期分泌不全を主体とするため,血糖依存的にインスリン分泌を促進するインクレチン関連薬(DPP–4 阻害薬,GLP–1 受容体作動薬)が奏効するとされる.本稿では,糖尿病の病態からインクレチン関連薬の臨床効果を考えるとともに,インクレチン関連薬の血糖改善効果に影響を与える因子について議論したい.
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【今月の略語】
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