最新医学

Volume 68, Issue 8, 2013
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特集【消化器疾患における超音波内視鏡検査-現況と将来展望-】
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- 序論
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- 座談会
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- 総説
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消化器疾患における超音波内視鏡検査―現状とこれから―
68巻8号(2013);View Description
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内視鏡的超音波断層法(EUS)は,体腔内超音波診断法として開発され,膵胆道病変,消化管病変診断に活用されてきた.しかしながら,画像診断法として限界のある病変診断や鑑別診断を目的に,また組織病理診断を目的に,EUS 画像下に対象を穿刺して組織診断を行うEUS–FNA が開発され,高い診断能が確認され急速に普及してきた.この手技を応用したドレナージ術や局注術などさまざまな処置が可能となり,臨床応用の範囲は広がった.今後,処置具の開発を含めた手技の拡大が期待される. - EUS の現況と新展開
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超音波内視鏡検査による消化管疾患の診断の現況
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超音波内視鏡検査(EUS)は,胆膵疾患のみならず消化管疾患においても,その診断に必要欠くべからざる検査法である.EUS により粘膜下腫瘍は,① 主存在層,②エコーレベル,③ 内部エコーパターンにより,組織診断の推定がある程度可能であり,脂肪腫,リンパ管腫などでは確定が可能である.消化器悪性腫瘍の深達度診断は,特に三次元超音波内視鏡(3D–EUS)を用いることでその精度が向上することが知られ,内視鏡的粘膜剥離術(ESD)の術前診断として参考となり,無駄なESD を避けることができる.その他,静脈瘤,炎症性腸疾患においてもその有用性が知られている. -
超音波内視鏡検査による胆膵疾患の診断の現況
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超音波内視鏡検査(EUS)は,高い局所分解能を有することが最大の長所であり,小病変の指摘,質的診断に有用性が高い.胆膵領域でのEUS の役割は,膵ではがんの早期発見,進展度診断,充実性・嚢胞性病変の鑑別,IPMN の結節の評価,胆道では胆嚢・胆嚢管がんの早期発見,胆嚢隆起・壁肥厚性病変の鑑別,小さな胆管結石の診断,胆管狭窄の鑑別,乳頭部腫瘍の進展度診断など,準スクリーニングから質的診断,進展度診断,そして組織採取まで幅広い用途がある. -
超音波内視鏡の新展開―造影 EUS―
68巻8号(2013);View Description
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第2世代超音波造影剤が開発され,造影ハーモニックEUS が可能となった.特に胆膵領域では,造影ハーモニックEUS は,通常のハーモニックEUS の悪性腫瘍の進展度診断,鑑別診断の診断精度を向上させることが報告されている.造影輝度の解析ソフトウエアの開発も進み,より客観的な診断も可能となってきた.造影ハーモニックEUS は,これまで指摘されてきたEUS/EUS–FNA の限界を克服する検査手技として期待されている. -
EUS を用いた Elasticity Imaging―EUS–elastography―
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現在臨床応用されているEUS–elastography(Real–time tissue elastography)はstrain elastography に分類されるElasticity Imaging であることを理解することが何よりも重要である.EUS–elastography 画像の解釈は,対象が局所病変か,びまん性病変かで異なる.局所病変の診断にはパターン認識とstrain ratio(SR)を用いた半定量分析が行われている.また,びまん性疾患の診断においては各種特徴量が何を示すものかを熟知し,特徴量を組み合わせて診断を行うことが必要である. - EUS–FNA の現況
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EUS–FNA の標準的手技と診断能向上の試み
68巻8号(2013);View Description
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超音波内視鏡検査(EUS)は,消化器がんの深達度診断や,消化管粘膜下腫瘍や膵胆道腫瘤性病変の鑑別診断などに広く応用され,消化器疾患の診療にとって欠かせない診療機器である.しかし,画像診断中心であるEUS の診断能力には限界があり,その問題をクリアする技術として超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS–FNA)は開発された.EUS–FNA は高い診断能,低侵襲性,安全性の面から確定診断法としての有用性は高く,これまでは非侵襲的な検体採取が困難であった膵疾患,消化管粘膜下腫瘍,縦隔・腹腔腫大リンパ節の病理学的確定診断に大きく寄与している.その他,肝・胆道・脾臓病変などの経消化管的に穿刺可能な病変にも広く応用されている.また,最近ではさらなる診断能向上のための各種技術の開発もなされており,EUS–FNA は今後のさらなる発展が期待できる診断手技である. -
消化管粘膜下腫瘍に対する EUS–FNA の現況
68巻8号(2013);View Description
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超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法(EUS–FNA)は,消化管粘膜下腫瘍(SMT)の組織診断を安全かつ正確に行える確立された検査法である.消化管SMT の代表的悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)の術前診断には,EUS–FNA による免疫組織化学的検査でc–kit またはCD34 陽性を証明することが不可欠である.GIST の術後転移率は腫瘍径が大きいほど高率となるため,穿刺可能な消化管SMT は早期にEUS–FNA を行い組織診断することが,GIST を含む消化管SMT の早期診断・早期治療を可能とし,予後改善に繋がるものと考えられる. -
胆膵疾患に対する EUS–FNA の現況
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2010 年に本邦でもEUS–FNA が保険収載となったことから,急速にEUS–FNA が普及するのと同時にEUS–FNA の需要も増している.EUS–FNA の膵腫瘍に対する感度は90% 以上であり,偶発症も全体で1% 以下と低値であることから,その有用性と安全性は明らかである.従来からの診断的EUS–FNA とEUS を用いたその他の手技を併せてinterventional EUS と称されるようになった.EUS–FNA の治療への応用は今後もますます発展すると考えられており,今後の成果に注目が集まる. - EUS ガイド下治療の現況と将来展望
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EUS ガイド下腹腔神経叢・神経節ブロック
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腹腔神経叢ブロックは,上腹部悪性腫瘍(主に膵がん)に伴うがん性疼痛に対して比較的古くから行われてきた手技である.これまで術中開腹下,CT ガイド下などに行われてきたが,近年超音波内視鏡ガイド下に行う方法(EUS–CPN)が紹介され,実際に臨床の場で行われるようになっている.この手技の利点は,EUS 画像をリアルタイムに観察しながら正確かつ安全に対象部位への穿刺が行えることであり,これまでに一定の治療成績が報告されている.さらに最近,腹腔神経節を直接穿刺する手技(EUS–CGN)が紹介され,より高い除痛効果が期待されている. -
EUS ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージ
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EUS ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージは,超音波画像上で穿刺針の刺入からドレナージチューブの留置までの一連の手技をリアルタイムで観察可能であるため,安全に施行できる.本法は低侵襲で有用な治療法であるが,十分に体制を整えたうえで慎重に手技を遂行することが望まれる.また,本手技および応用手技である内視鏡的ネクロセクトミーをより安全な治療法とするためには,さらなる手技の改良および専用デバイスの開発が必要である. -
EUS ガイド下胆道ドレナージの実状
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EUS ガイド下胆道ドレナージ術(EUS–BD)はEUS 下穿刺術を応用した手技で,経乳頭的胆管ドレナージが困難な胆道閉塞に対する代替治療として実施されている.経消化管的ドレナージ法とランデブー法,順行性ステント法がある.EUS–BD に関する多数の報告がなされており,手技成功率,臨床症状改善率はおおむね90% 以上と良好な成績であるが,専用デバイスがないなどの幾つかの問題点がある. -
EUS ガイド下膵管ドレナージ
68巻8号(2013);View Description
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膵管狭窄・断裂や膵管-消化管吻合部狭窄に伴って腹痛や急性膵炎などが生じる場合に,膵管減圧が必要となる.減圧方法として外科的治療や内視鏡的治療が挙げられるが,低侵襲な内視鏡的ドレナージが選択されることが多い.通常,内視鏡的逆行性膵管ドレナージが施行されるが,困難例が存在する.近年,新しい膵管ドレナージの手法として,EUS–FNA の手技を応用したEUS ガイド下膵管ドレナージ(EUSPD)が報告された.これまでの報告では手技成功率は25~100% とばらつきがあり,偶発症率は5.6~42.9% と高率であった.通常法の内視鏡的ドレナージが困難な症例にとって新たな選択肢となる可能性があるが,手技の難易度は高く,内視鏡治療に熟練・精通した医師のもとに慎重に行われるべきである. -
膵腫瘍に対する EUS ガイド下治療
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膵腫瘍に対するEUS ガイド下治療として欧米やアジア諸国を中心にさまざまな報告がなされてきた.これら治療は,① 各種デバイスや薬液を用いたablation therapy,② 抗がん剤やウイルスベクターなどの局注療法,③ 小線源を留置するbrachytherapyに大別される.本稿ではそれぞれの治療法を紹介し,その成績や偶発症などについて概説する.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(28) 特別な精神療法(1)認知行動療法の応用
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認知行動療法(CBT)は,ストレスケアのための心理学的アプローチである.出来事,認知,気分・感情,身体反応,行動の5要素からなるCBT の基本モデルに沿って,患者の抱える問題を循環的に理解し,認知と行動のコーピングによって問題の解決を目指す.うつ病のCBT にはエビデンスがあり,特に再発予防効果が高いことが知られている.ただし,うつ病は個別性の高い疾患であるため,CBT を適用する際には柔軟な臨床的工夫が必要である. -
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【トピックス】
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GATA3 によるナチュラルヘルパー細胞の制御
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これまでリンパ球の働きは,抗原認識機構を兼ね備えた獲得免疫のT細胞とB細胞に重きが置かれてきたが,近年,自然免疫機構でTh1 型免疫応答を行うNK 細胞とその近縁細胞,胎児期のリンパ節形成と出生後のTh17 型免疫応答をつかさどるLTi細胞,そしてナチュラルヘルパー(natural helper:NH)細胞のTh2 型免疫応答の重要性が注目されるようになってきた.本稿では,自然免疫系細胞の新しいリンパ球であるNH 細胞のTh2 型サイトカイン産生機構について,最新の知見を交えて紹介する. -
造血幹細胞の「休眠」を誘導する微小環境
68巻8号(2013);View Description
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自己複製能および多分化能を持ち,生涯にわたり血液細胞を供給し続ける造血幹細胞は,骨髄中の特別な微小環境中に休眠状態で存在すると考えられている.この微小環境は,造血幹細胞の増殖,分化,細胞周期,骨髄への生着などの制御に重要な役割を果たしている.造血微小環境という概念が提唱され,約40 年が過ぎた(Curry J. L. and Trentin J. J.).この概念は1978 年にSchofield により造血幹細胞「ニッチ」と名づけられた.この微小環境に関して,近年の免疫組織染色などの技術の進歩により,数多くの報告がなされるようになった.本稿では,骨髄ニッチがどのように造血幹細胞を休眠状態に誘導しているか紹介する.
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【総説】
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肝障害と誘導型一酸化窒素合成酵素―ラット初代培養肝細胞を用いた肝保護試薬のスクリーニング―
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ラット初代培養肝細胞を用いて,「in vitro の肝障害モデル」を作成した.細胞を炎症性サイトカインで刺激し,発現誘導した一酸化窒素合成酵素(iNOS)から産生される一酸化窒素は肝障害因子の1つと考えられる.一酸化窒素の抑制を指標として,さまざまな試薬,漢方薬,機能性食品の肝保護効果をスクリーニングした.その結果,肝保護効果を持つ成分を動物モデルに比べて安価で迅速に検出することが可能となった.
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【今月の略語】
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