最新医学
Volume 69, Issue 1, 2014
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特集【糖尿病-診断・治療Update-】
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- 座談会
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- 基礎研究
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2型糖尿病の成因における最近の話題―過栄養・肥満と慢性炎症―
69巻1号(2014);View Description Hide Description過栄養・肥満がインスリン抵抗性・b 細胞障害を惹起する病因として,慢性炎症の重要性が指摘されている.近年,肥満・過栄養で発生する細胞内ストレスや腸内細菌叢変化と慢性炎症を繋ぐ機序として,TLR4/NLRP3 などパターン認識受容体(PRR)の役割が解明されてきた.過栄養・肥満で増加する,遊離脂肪酸やセラミドなどの代謝物・腸内細菌叢由来のLPS が,PRR を介して炎症を増強し,インスリン抵抗性を誘導する. -
糖尿病関連遺伝子研究
69巻1号(2014);View Description Hide Description2型糖尿病の遺伝因子は,「ゲノムワイド関連(相関)解析(GWAS)」により急速に解明が進み,現在までに70 前後報告されているが,単独での効果は弱く,すべて併せても疾患発症の予測力は不十分である.今後は,次世代シークエンサーを用いたいわゆるrare variant の探索や,エピゲノム制御を含めた環境因子との相互作用の解明などにより,臨床応用の実現へ向けての発展が期待される. -
膵β細胞・膵島の再生研究
69巻1号(2014);View Description Hide Description1型糖尿病では,主に自己免疫による破壊でβ細胞量が減少する.一方2型糖尿病でも,インスリン抵抗性による膵β細胞への負担の増加や酸化ストレスによりβ細胞量が減少する.これらの膵β細胞量の減少に対し,生体内でその数を一定に保つための仕組みが存在している.このメカニズムを解明することで,糖尿病治療に向けた膵島移植が可能になるかもしれない.本稿ではβ細胞新生とβ細胞の複製制御について,最近の研究を紹介する. - 臨床研究
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糖尿病の診断基準と治療目標
69巻1号(2014);View Description Hide Description日本糖尿病学会は,2010 年に糖尿病の診断基準を改訂した.HbA1c を糖尿病型の判定基準に取り入れ,HbA1c(NGSP)≧6.5% であれば糖尿病型と判定し,血糖値とHbA1c の双方が糖尿病型であれば1回の検査で糖尿病と診断できる.HbA1c の国際標準化も推進され,日常臨床においては2012 年4月よりNGSP 値の使用が開始され,特定健診においては2013 年4月からNGSP 値に移行済みである.2013 年6月より血糖コントロールの目標が改訂され,多くの糖尿病患者における合併症予防のための目標としてHbA1c(NGSP)<7.0% が掲げられた. -
糖尿病網膜症の診断・治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description糖尿病網膜症は三大細小血管合併症の1つであり,有病者数は年々増加している.糖尿病網膜症は,現在主に国際重症度分類で分類されることが多く,そのステージにより治療法が異なる.すべての病期において血糖コントロールは非常に重要であり,糖尿病の重症度は網膜症の進展に寄与するため,内科と眼科のさらなる相互協力が今後必要である. -
糖尿病性腎症の診断・治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description糖尿病症例に「微量アルブミン尿」が出現した時点で,糖尿病性腎症と診断する.「微量アルブミン尿」は,心血管イベントの危険因子でもある.「微量アルブミン尿」を呈する症例を積極的に治療することにより,腎症の進行阻止のみならず,心血管イベント・総死亡の減少が示されている.また,正常アルブミン尿への寛解(remission)も可能である.腎症の治療には,血糖コントロールと糸球体高血圧の是正が必須である. -
糖尿病性神経障害の診断・治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description糖尿病性神経障害の診断基準として,我が国においては「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案」が,国際的にはMichigan Neuropathy Screening Instrument が用いられている.神経障害の発症・進展阻止および治療の基本は厳格な血糖コントロールの維持にあり,加えて成因に則った治療薬であるアルドース還元酵素阻害薬による介入が有用である.自覚症状の強い場合には,対症療法薬によりQOL の改善が期待される. -
高齢者糖尿病の診断と治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description超高齢社会が進行するとともに,高齢者糖尿病の頻度が増加している.高齢者糖尿病における特有の診断基準はないが,高齢発症の場合はその基準を高めに設定することも検討されている.高齢者糖尿病治療の骨子は,各高齢者の背景を包括的高齢者機能評価で吟味し,各個々人に応じた食事・運動・薬物療法を選択する.その治療目標は,我が国で行われたJ–EDIT を含めたコンセンサスにより,青壮年者よりやや高めに設定することが推奨されている. - 治療薬
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DPP–4 阻害薬による治療
69巻1号(2014);View Description Hide DescriptionDPP–4 阻害薬は,血中の活性型インクレチン濃度を上昇させ,インスリン分泌を促進するとともに,グルカゴンを抑制することで血糖を改善する.また,低血糖を起こしにくく,体重増加を来しにくいという利点があり,他の経口血糖降下薬との併用でも相加・相乗的な効果が報告されており有効である.近年は,抗動脈硬化作用や心臓や腎臓に対する多面的な作用も報告されてきており,今後の臨床研究の蓄積が期待されている. -
新規糖尿病薬としての SGLT2 阻害薬
69巻1号(2014);View Description Hide Description近年,新しい糖尿病治療薬のNa+/グルコース共役輸送担体(SGLT)阻害薬が開発され,実臨床でも使用可能となる.SGLT2 は腎近位尿細管でグルコース再吸収に寄与しており,その阻害薬は,尿中にグルコースを排泄し,高血糖改善,体重減少など有益な薬効作用を発揮する.一方,尿路感染症などの副作用報告もあり,長期の安全性についてさらなる検討が必要である. -
GPR40 作動薬による治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description・GPR40 は膵β細胞に選択的かつ高度に発現し,その活性化はグルコース濃度依存性のインスリン分泌促進作用を示す.ゲノム創薬研究から生まれたGPR40 作動薬は,新規作用機序を有する経口血糖降下薬として注目されている.・現在,国内外でfasiglifam(TAK–875)が第Ⅲ相臨床試験中であり,優れた血糖改善効果とともに低血糖の頻度が少ないことから,質の高い血糖コントロールに寄与するものと期待されている. -
GLP–1 受容体作動薬による治療
69巻1号(2014);View Description Hide DescriptionGLP–1 受容体作動薬は,DPP–4 によって分解されにくい構造を有し,GLP–1 の薬理学的効果で血糖と体重低下に強く作用する.本邦ではGLP–1 アナログであるリラグルチドと,exendin–4 骨格を有するエキセナチドとリキシセナチドが臨床で使用可能である.またエキセナチドをポリ乳酸・グリコール酸共重合体のマイクロフェア内に包埋することにより,週1回投与で可能な徐放化製剤も上市されている. -
インスリン治療
69巻1号(2014);View Description Hide Description1921 年にバンティングとベストが膵臓からの抽出物で血糖が下がることを発見したことから,インスリン治療の歴史は始まった.近年,糖尿病の治療方法はインクレチン関連薬の出現で劇的に変化しつつあるが,1型糖尿病患者,糖尿病ケトアシドーシスなどの緊急症例,血糖コンロール不良な手術待機患者の治療など,インスリンを必要とする状況は枚挙に暇がなく,適切なタイミングに適切なインスリンを選び治療していくことは,糖尿病専門医にとっては腕の見せところであり,非専門医と専門医の分かれ目でもあると考える.本稿では,インスリン治療全般に関して俯瞰することができるよう概説していく.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(33) 企業のうつ病等メンタルヘルス不調対策の現状
69巻1号(2014);View Description Hide Description企業は労働者の安全と健康の確保などを目的とした労働安全衛生法をはじめとする法令や諸規定を遵守し,絶えずリスクを予見し,改善に努めることが求められる.経済・社会状況の変化に伴い,業務内容や就労形態なども大きく変化し,職場生活の不安やストレスからうつ病などのメンタルヘルス不調や自殺に至る労働者が増えている.心身の健康確保は,使用者の責任・安全配慮義務という観点はもとより,職場のモラールや生産性の向上の観点からも非常に重要な課題である(表1,2). -
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【トピックス】
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急性期脊髄損傷患者に対する培養自家骨髄間質細胞の髄液内投与
69巻1号(2014);View Description Hide Description脊髄損傷患者は世界中で年々増加している.本邦では10 万人存在し,新たに年間5千人発生している.車椅子や寝たきりの患者が普通の生活を送れるようになれば,その貢献度は想像を絶する.我々は,骨髄間質細胞を用いての新たな治療法の開発を試み,基礎的研究にて有効性を認め臨床試験に移行した.現在のところ有害事象の発生がないことを確認した.一定の有効性は得られたが,今後症例数を増やし,さらに検討を加える.
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【今月の略語】
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