最新医学
Volume 69, Issue 3, 2014
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特集 【抗体によるがん分子標的治療】
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- 序論
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- 座談会
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- がん領域の抗体薬
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抗HER2 抗体薬
69巻3号(2014);View Description Hide DescriptionHER2 は乳がんや胃がんの細胞に発現するチロシンキナーゼ受容体であり,抗HER2 薬の標的となるバイオマーカーである.乳がん領域では,抗体医薬であるトラスツズマブ,ペルツズマブ,トラスツズマブエムタンシンや小分子化合物のラパチニブなどが登場し,胃がん領域でもトラスツズマブが日常診療に導入されるようになった.HER2 を標的とした治療戦略が複雑化しており,バイオマーカーとしてのHER2や抗HER2 療法への十分な理解が必要とされている. -
抗CD20 抗体薬と抗CD52 抗体薬
69巻3号(2014);View Description Hide Description造血器腫瘍は,抗体療法が早期から臨床導入された分野で,抗CD20 抗体薬,抗CD52 抗体薬の開発が進行している.抗CD20 抗体薬でキメラ型のリツキシマブは,現在B細胞リンパ腫に広く用いられている.またヒト化抗体・ヒト型抗体の開発,定常部分の糖鎖の修飾により,抗腫瘍効果増強が図られている.抗CD20 抗体に放射性同位元素を標識した放射免疫療法も開発されており,その臨床的位置づけが今後の検討課題である.抗CD52 抗体アレムツズマブは,高リスクの染色体異常を有する慢性リンパ性白血病に一定の治療効果が認められるが,多発性硬化症承認取得の関係で欧米の市場より引き上げられた. -
抗CD22 抗体薬と抗CD30 抗体薬
69巻3号(2014);View Description Hide DescriptionCD22 およびCD30 は,リンパ系腫瘍における有望な治療標的分子と考えられていた.当初開発が先行した非抱合型抗体の治療効果は限定的であったが,その後開発された抗体-薬物複合体であるイノツズマブオゾガマイシンおよびブレンツキシマブベドチンは,近年高い有効性が示されつつある.これらの薬剤は,今後リンパ系腫瘍に対する標準治療を変革する可能性のある注目される薬剤である. -
抗EGFR 抗体薬
69巻3号(2014);View Description Hide Description抗EGFR 抗体薬は,EGFR の細胞外領域に結合することでリガンドの受容体への結合を阻害し,下流のシグナル伝達系を直接阻止し,細胞の増殖と生存の抑制,抗アポトーシス作用,細胞成長の抑制を引き起こす.有効性を発揮するためにはEGFR下流のシグナル伝達が正常に働いていることが前提で,その下流の異常は抗EGFR抗体薬の効果予測の分子マーカーとなる.抗EGFR 抗体薬は,大腸がんと頭頸部がんの治療薬として使用されている. -
抗VEGF 経路抗体薬―ベバシズマブ,アフリベルセプト,ラムシルマブ―
69巻3号(2014);View Description Hide DescriptionVEGF 経路は腫瘍血管新生において重要な役割を果たしており,多くの抗体医薬,小分子化合物が開発されている.抗体医薬では,VEGFA の中和抗体であるベバシズマブ,VEGFA,BおよびPlGF と結合するアフリベルセプト,受容体VEGFR2 を標的としてリガンドの結合を競合的に抑えるラムシルマブがある.これら薬剤のこれまでの成果と今後の開発動向について概説する. -
抗CTLA–4 抗体薬―イピリムマブ―
69巻3号(2014);View Description Hide Description細胞障害性T細胞の活性化を目的として開発された抗CTLA–4 抗体イピリムマブが,悪性黒色腫の治療薬として欧米で承認された.これは,免疫療法における新しい時代の幕開けであり,長年,際立った進歩のなかった悪性黒色腫の治療を大きく変える画期的なことと言える.イピリムマブはさまざまな併用療法の有効性,術後補助療法としての有用性,他疾患での有用性などが検討されており,ますます発展が期待される薬剤である. -
抗CCR4 抗体薬―モガムリズマブ―
69巻3号(2014);View Description Hide Description成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は難治性のリンパ性悪性腫瘍であり,いまだ有効な標準治療が定まっていない.2012年に,再発または難治性のCCR4 陽性ATLに対する抗CCR4 モノクローナル抗体であるモガムリズマブが承認・発売となった.今回はモガムリズマブの機序,開発,基盤研究,臨床研究,発売とその後に至るまでの一連の流れを紹介する. - 臓器別がんに対する抗体療法
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白血病に対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide Description種々の白血病に対して,いくつかのモノクローナル抗体医薬の開発が進行中である.対象疾患(AML/ALL ほか),標的抗原(CD33/CD20/CD22/CD19 ほか),抗体種類(非結合,毒素結合,2抗原特異的)などさまざまであるが,抗体の免疫原性,多抗原特異性などはさらに今後の改良が期待されている.単剤または化学療法など他の治療法との併用により,許容できる毒性で治癒率を高める新規治療法の開発を,対象疾患の選択を含めて適切な臨床試験によって進めることが求められている. -
悪性リンパ腫に対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide Description抗体療法薬であるリツキシマブの導入は,B細胞リンパ腫における予後の改善に大きく寄与した.また,CD30 陽性のホジキンリンパ腫や未分化大細胞型リンパ腫では,ブレンツキシマブベドチンは単剤で極めて良好な効果が示された.新規の抗体薬の開発も急速に進んでおり,抗体療法は悪性リンパ腫の治療戦略においてますます重要な役割を占めるようになってきている. -
肺がんに対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide Description肺がん治療の大きなマイルストーンの1つとして,抗体医薬の登場があげられる.現時点で承認されているのは進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がんに対するベバシズマブで,化学療法との併用による有効性が多数報告されている.さらに,免疫療法を含む新たな抗体医薬の解析が進み,今まで抗体医薬の恩恵を受けていなかった扁平上皮がんや小細胞がんに対する検討も行われ,さらなる発展が期待される領域である. -
乳がんに対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide Descriptionトラスツズマブやペルツズマブ,トラスツズマブに殺細胞性抗がん剤を結合したトラスツズマブエムタンシン(T–DM1)はHER2 のシグナル伝達を,ベバシズマブは腫瘍の血管新生を阻害する.デノスマブは破骨細胞の分化を阻害し骨吸収を抑制する.いずれも単剤や他の抗体薬・抗がん剤と併用で抗腫瘍効果を発揮する.今後は併用薬の選別や投与期間,薬剤感受性と耐性を示すバイオマーカーの同定,副作用のマネジメント,医療経済への対応などの解決が急がれる. -
大腸がんに対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide Description切除不能・再発進行大腸がんは,抗VEGF 抗体薬のベバシズマブ,KRAS 野生型に対する抗EGFR 抗体薬(セツキシマブ,パニツムマブ)の導入により,全生存期間中央値は24ヵ月以上に到達した.現在は両抗体薬の使う順序や使い分けについての議論が行われている.本稿では,分子標的薬を用いた最新の臨床試験結果を中心に,今後の大腸がん治療の展望も含めて解説する. -
胃がんに対する抗体療法
69巻3号(2014);View Description Hide DescriptionHER2 陽性胃がんに対するトラスツズマブ併用化学療法の有効性が示された.乳がんで用いられる抗HER2 抗体トラスツズマブエムタンシンやペルツズマブが胃がんでも応用され,さらにEGFR,VEGFR2,cMET を介するシグナルを阻害する新規抗体薬の臨床試験も進んでいる.適切なバイオマーカーを同定し,治療効果が期待できる患者群を対象とすることが,治療開発上,重要と考えられる.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(35) DSM–5 の抑うつ障害の診断基準について
69巻3号(2014);View Description Hide Description抑うつ障害におけるDSM–5 の変更点についての概説を行った.DSM–Ⅳで規定されていた大うつ病エピソードの診断基準自体には大きな変更点はないが,大うつ病性障害が含まれていた気分障害のカテゴリーが抑うつ障害と双極性障害その他の関連障害の2つの章に分かれ,気分障害の大項目が削除された.そのほかは,(1) 死別反応の除外基準の廃止,(2) 混合性の特定項目,および不安による苦痛の特定項目の追加,(3) 破壊性気分調節性障害,月経前不快気分障害,持続性うつ病性障害の新カテゴリーの追加,(4) 閾値下の症候についての言及,などが主たる変更点である.これらは今後の診断および薬物療法を含む治療に大きな影響を与えると考えられ,抑うつ障害における診断および治療の課題についての考察を行った. -
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【トピックス】
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Hereditary Diffuse Leukoencephalopathy with Axonal Spheroids(HDLS)
69巻3号(2014);View Description Hide DescriptionHereditary diffuse leukoencephalopathy with axonal spheroids は,常染色体優性遺伝性の白質脳症である.神経病理学的に広範な軸索,髄鞘の変性・脱落と軸索腫大を特徴とする.臨床的には前頭葉症状を主体とする若年性認知症を呈する.本症の原因遺伝子としてCSF1 受容体遺伝子が同定されたことにより,生前の確定診断例が増え,本症の臨床像,画像所見に関する知見が飛躍的に集積しつつある. -
造血幹細胞移植後GVHD と消化管傷害
69巻3号(2014);View Description Hide Description消化管は急性GVHD の代表的な標的臓器である.消化管GVHD は,ドナーのアロ反応性T細胞が腸陰窩基底部に存在する腸幹細胞を傷害することにより上皮再生機能を損なわせ,また腸幹細胞のニッチであるPaneth 細胞を破壊し腸内微小環境を変化させることによって発症する.腸内微小環境を保っているPaneth 細胞,腸管保護作用を持つInnate lymphoid cell,そしてドナーリンパ球などの相互作用を理解することは,GVHD による消化管傷害の予防・治療を考えるうえで重要である.
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【症 例】
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【今月の略語】
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