最新医学
Volume 69, Issue 4, 2014
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特集【次世代型感染症ワクチン】
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- 座談会
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日本のワクチン政策決定プロセス
69巻4号(2014);View Description Hide Description我が国におけるワクチン行政は急速に整備され,ワクチンギャップも解消されつつある.2013年4月に予防接種法が改正され,ワクチン行政の評価・検討組織として厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会が設置された.3ワクチンが2013年4月から定期接種化され,さらに2014年10月から2ワクチンの定期接種化が見込まれている.これらのワクチンは,対象疾病の個人および社会に対する影響,ワクチンの効果・安全性,医療経済効果から評価された. -
感染症流行の数理モデルを利用した予防接種の政策判断
69巻4号(2014);View Description Hide Description感染症流行の数理モデルは,仮想的条件のもとで流行動態を検討することに役立つ.20世紀後半以降,予防接種を含む公衆衛生政策の判断や最適化に数理モデルを用いる機会が増えている.基本再生産数を利用した集団免疫度の計算はもちろんのこと,被害規模の最小化を目指した接種割合の最適化や接種による感染年齢上昇の落とし穴など,ダイナミクスを理解することで予防接種政策に新しい地平を見いだすことが可能である.インフルエンザワクチン接種の年齢別優先度に代表されるような理論的理解と現行政策との間に認めるギャップを埋める方法を模索することも今後求められる. -
グローバル感染症 1.結核におけるワクチンへの期待 ―多剤耐性結核に対する新規治療用 DNA ワクチンの開発・実用化―
69巻4号(2014);View Description Hide Description(1)国内ではワクチンの新規技術であるDNA ワクチン開発が遅れている.国内開発に必要なDNA ワクチン・ガイドライン策定には,純国産品でのfirst in human の臨床治験の実施が必要である.したがって,世界に先駆けてそれを計画した.(2)多剤耐性結核(MDR–TB)は難治性で,有効な治療法はない.したがって,MDR–TB に治療効果を発揮するHVJ-エンベロープ/HSP65 DNA+IL–12 DNA ワクチンを開発した.このワクチンはMDR–TB 感染マウスでMDR–TB 菌の減少,および超多剤耐性結核感染マウスで治療効果(生存率改善)を示した.さらに,ヒトの結核感染に最も近いカニクイザルで生存率改善などの結核治療効果を発揮した.したがって,臨床治験を計画している.まずは第Ⅰ相医師主導治験.一方,このワクチンはマウスの系でBCG よりも1万倍強力な結核予防ワクチン効果をも示した.さらに,ヒトの結核感染に最も近いカニクイザルでも強力な結核予防効果を発揮した.予防ワクチンの臨床応用も強く期待できる. -
グローバル感染症 2.エイズワクチン
69巻4号(2014);View Description Hide DescriptionHIV 感染症の克服のためにはグローバルな取り組みが必要であり,HIV 感染拡大阻止に向けて,早期診断・治療の推進に加え,予防エイズワクチンの開発が切望されている.ワクチン開発の主要戦略は抗体誘導およびT細胞誘導であるが,本稿ではそのためのデリバリーシステムとして重要視されているウイルスベクターを中心に概説する. -
グローバル感染症 3.多価生ワクチン ―現行の水痘生ワクチンをベースとして―
69巻4号(2014);View Description Hide Description弱毒生ワクチンは,生きた病原体を弱毒化して作製された生ワクチンである.近年,組み換えシステムの発展により,オリジナルのワクチンゲノムに外来遺伝子を挿入した組み換え多価生ワクチン候補が作製されるようになった.外来遺伝子を搭載した組換え生ワクチンは,一度の接種で混合生ワクチンと同じ効果が期待され,さらに1種類のワクチンの製造で済むことから製造コストの軽減が期待される.最近我々は,現行の水痘ワクチンゲノムに外来遺伝子を組み込んだ組み換え水痘多価生ワクチン作製系を開発した.本ワクチンが実用化されれば,被接種者および接種者の負担軽減に加えて低コスト製造も期待でき,医療費節減に大きく貢献できると考えられる. -
グローバル感染症 4.デングワクチン
69巻4号(2014);View Description Hide Descriptionデング熱およびデング出血熱は,近年注目されてきたグローバル感染症であるが,市場化された予防ワクチンはない.しかし種々の戦略で開発が進められ,現在第Ⅲ相臨床試験を世界10ヵ国で展開しているサノフィー・パスツール社のキメラデング4価ワクチンは2016年に試験を終了する予定にある.そのほか,不活化ワクチンなど5種の候補ワクチンが第Ⅰ相および第Ⅱ相臨床試験を進行中であり,ワクチンによりデング熱が予防できる日も遠くはない. -
粘膜免疫を基盤とした次世代ワクチン開発
69巻4号(2014);View Description Hide Description現在我が国では,注射によるワクチン投与が主流であるが,病原体侵入部位である呼吸器粘膜や消化器粘膜において十分な免疫応答が得られにくい.一方,粘膜ワクチンは粘膜面からの病原体侵入阻止ならびに体内防御免疫の両方を誘導できるため,感染症予防のための次世代ワクチンとして期待されている.本稿では,粘膜免疫システムのユニーク性に立脚した粘膜ワクチン開発の現状について紹介する. -
サブユニットワクチン開発のための分子デザインとアジュバント
69巻4号(2014);View Description Hide Description近年,組み換えタンパク質をベースにしたサブユニットワクチンの需要が高まっている.しかし,サブユニットワクチンは従来の弱毒生ワクチンや不活化ワクチンより免疫原性が低いのが課題である.この課題を克服するためには,自然免疫を活性化する新しいアジュバントの開発とワクチン抗原自体の分子デザインによる改変が必要である.最終的には,これらの組み合わせによって多くの新たなサブユニットワクチンの開発が可能になると期待されている. -
ナノ粒子アジュバントを用いたワクチン開発
69巻4号(2014);View Description Hide Description生分解性高分子からなるナノ粒子とワクチン抗原を組み合わせたナノ粒子ワクチンは,抗原提示細胞への抗原デリバリーと活性化(免疫賦活化)を可能とする次世代ワクチンとして期待されている.本稿では,ドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を応用したナノ粒子ワクチンの作用メカニズムについて概説し,我々が取り組んでいる疎水化ポリアミノ酸からなるナノ粒子アジュバントの研究開発について紹介する. -
マラリアナノパーティクルワクチン
69巻4号(2014);View Description Hide Description現在,世界中でマラリアワクチンの早期開発に向けた研究が進められている.中でも,ナノパーティクルを用いたワクチンが注目されており,リポソーム,乳酸・グリコール酸共重合体,自己組織化ペプチドナノパーティクル,酸化鉄ナノパーティクル,樹状細胞送達型ナノパーティクルなどが開発されている.今後,マラリアの専門家とドラッグデリバリーシステムの専門家が協働して,ワクチン開発を進めていくことが期待される. -
今,インフルエンザワクチンに何が求められるか
69巻4号(2014);View Description Hide Description日本を含め,世界における現行のインフルエンザワクチンは,ウイルスをエーテルまたは界面活性剤で分解したスプリットワクチン(日本ではHAワクチン)が主流である.HAワクチンは,副反応を除くことを主眼に,免疫力価を犠牲にして開発されたものであり,40 年以上改良されることなく,多くのヒトに接種されてきた.季節性インフルエンザワクチンと生物学的製剤基準の抜本的改善は,喫緊の国家・世界課題である. -
エボラ出血熱ワクチン・炭疽ワクチン
69巻4号(2014);View Description Hide Descriptionエボラウイルスおよび炭疽菌は,ともにバイオテロリズムの手段として用いられる危険性から,米国ではSelect Agent として指定されており,厳しい管理下においてのみ研究が可能である.これらの病原体による感染症の発生は散発的であるが,危機管理上の観点から,有効な予防・治療法を早急に確立する必要がある.本稿では,エボラ出血熱および炭疽に対するワクチンの現状および研究の最前線を紹介する. -
マイクロニードルワクチンの可能性
69巻4号(2014);View Description Hide Description経皮ワクチン製剤は,痛みを伴うことなく皮膚に貼るだけでワクチンを接種できるため,従来の注射ワクチン製剤と比較して迅速大規模接種や小児へのコンプライアンスにおいて優位性を持つ.近年,免疫担当細胞が豊富に存在する表皮・真皮層へと効率良くワクチン抗原を経皮送達できるマイクロニードル法が,安全で有効な経皮ワクチン製剤を開発・実用化するためのコアテクノロジーとして大いに注目されている.
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【連 載】
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現代社会とうつ病(36) 一般科医・精神科医連携を考える―大阪におけるG – P ネット構築の経験より―
69巻4号(2014);View Description Hide Descriptionうつ病においては,一般科医がさまざまな立場でその診療にかかわることが多い.しかし,一般科医においてうつ病の診断や治療は容易ではなく,危険も伴う.プライマリ・ケアの場でうつ病を診療する場合には,専門医との密接な「相談・連携システム」の構築が必要と考える.連携システムの基盤となるのは「顔の見える関係」を作ることである.顔の見える関係から相互理解が深まり,さらに,連携関係が協働作業であるという認識を新たにすることで有効な関係ができ,治療がスムーズに進む. -
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【トピックス】
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超高齢化社会における肺炎マネージメント
69巻4号(2014);View Description Hide Description日本人の死因の第3位である肺炎は,急速に進む高齢化と抱える基礎疾患から,高齢者での死亡率が増加している.このような状況の中,従来の市中肺炎(CAP),院内肺炎(HAP)診療ガイドラインでは対応が難しいため,医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインが作成された.高齢者の肺炎は,抗菌薬の選択や予防などの医学的背景だけでなく,患者や家族などの社会的条件等を考慮した治療方針を決定しなければならない. -
心臓リモデリングと TGFb シグナリング
69巻4号(2014);View Description Hide Description進行した心不全ではTGFb シグナリングが活性化されていることがヒトでも報告されているが,心肥大・心不全における役割は不明な点がまだ多い.近年の細胞特異的な遺伝子欠損モデルを用いた検討で,心臓を構成する細胞や病的ストレスの違いにより,TGFb シグナリングの心臓リモデリングにおける役割が異なることが明らかになってきた.これまでの基礎的な研究を踏まえ,治療への応用について展望する.
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【今月の略語】
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